Title [203]Hg-Neohydrinによる,腎Scintigram及び腎摂取率の研 究

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[203]Hg-Neohydrinによる,腎Scintigram及び腎摂取率の研
究( Abstract_要旨 )
高橋, 陽一
Kyoto University (京都大学)
1966-11-24
http://hdl.handle.net/2433/212023
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
【177 】
頃 i
氏
名
橋
陽
はし
よう
いち
博
士
高
たか
学 位 の 種 類
医
学 位 記 番 号
論
学位授与 の 日付
昭 和 4 1 年 11 月 24 日
学位授与 の要件
学 位 規 則 第 5 条 第 2 項 該 当
学位論文題 目
203H g -N eoh yd rin による, 腎 S cin tig ram
腎摂取 率 の研究
論文 調査 委員
教 授 稲 田
学
医
博
第 326 号
及び
(主 査)
論
文
務
教 授 脇 坂 行 一
内
容
の
要
教 授 高 安 正 夫
旨
見 るべ き腎 scintigram が得 られるよ うにな ったのは1960年 に R adio-neohydrin が応用 されて以来 の
ことであるが , 臨床的 には末だ試験的段階であ り, ことにその基礎的な面での検討 はほ とんどなされてい
ない。 またこの R adio-neohydrin の腎摂取率測定 とその臨床応用 は, 腎 scintigram
の定量的表現 と し
て考えたものであ り, 新 しい試 みである。
第 Ⅰ篇 においては, 最 も適 当な腎 scintigram を得 るための測定条件の設定 , 解像 力 , 内部線量などの
基礎的問題を中心 に検討 し, 第 Ⅱ篇 において, これ らの基礎的検討 の下 に施行 した正常腎者 10例を含む各
種腎疾患 145症例 の腎 scintigram
につ いて, その診断的意義を考察す る。 第Ⅱ篇 で は正常及び各種腎疾
患 につ いての左右別 203H g 腎摂取率 と他種分腎機能検査 との相関性 の検討 を中心 に , 203H g 腎摂取率 の新
しい分腎機能検査法 と しての有用性 につ いてのべ る。 以下 に主な結論的事項 を列記す る。
第 工篇
腎 scintigram の基礎的検討
( 1 ) back scatter を除 き得 る detection energy の設定 , その他 scanner の可変因子調整 につ いて
検討 した。
(2 ) 腎- の isotope の集積状態 , 血 中残留率 の時間的推移 の追跡 によ り最 も適 当な腎 scintigram 矢
施時期は試薬 の静脈 内投与後 2 時間半か ら 3 時間 にかけてであることを知 った。
(3 )
203H g-N eohydrin lOO 〟C 静脈 内投与後の全身中心軸上 , 片腎中心軸上 における内部線量 は, そ
れぞれ 55.8 m R A D , 21.7 R A D と推定 された。
(4 ) 数種 の COllim ator について腎 scintigram
に対す る適格性 を検討 し, 7 holes honey cone が
目的 に合 うことを見 出 した。
(5 ) 腎模型 による解像力の検討では, 腎 scintigram で と らえ得 る模型 内ガ ラス球 の最小直径 は 2.0
cm であ った。
(6 ) 実験的阻血腎 についての腎 scintigram では, 腎動脈主幹狭窄 のみな らず分枝狭窄例 につ いて も
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検 出す る ことがで きた。
(7 ) section 方式 と通常方式 の腎 scintigram
を実験的阻血 腎 につ いて比 較 した結果 , 前者 の方 が有
利 な方法 で あ る ことを認 め た。
第 Ⅱ篇
(1)
腎 scintigram
の臨床
特 に偏 腎性高血圧 に対す る診 断的意義 とい う点 に留意 したが , 腎 scintigram
は Ⅰ
V P , 腹部大動
脈撮影 , R L renogram な どに比べ , 優 れ た検 出力を示 した。 ま た他種検査 で検 出困難 な segm enta1 isch-
em ia の場合 に も有効 で あ った。
(2 ) 腎 にお ける space occu pying lesion に対 しては , 摘 出標本 との比較 の結果 , 辺縁部で直径 2・O
cm
内外 , 中心 部 で 3.0 cm
以上 の ものは検 出 され ると考 え られ た。
(3 )
先天性 の腎形態異常 , 位 置異常 な どに対 して診 断的意義 が大 で あ った。
(4 )
腎結核 , 嚢 胞腎な どで は機能残存 部 の探索 に有用で あ った。
(5 )
腎 scintigram
第 Ⅱ篇
(1)
の再現性 につ いての症 例 を示 したが , いず れ も良好 な再現性 を示 した。
203H g 腎摂取率 につ いて
体 表 よ り腎中心 まで の距離 の推定 を もとに胴体 phantom
を用 い , 203H g-N eohydrin の左 右別 腎
摂取率測定法 をのべ , 正確 な摂取率測定 の ため考慮すべ き諸条 件 につ いてのべ た。
(2 ) 正常 腎機能者 14 例 , 各種 腎疾患患者 55 例 につ き 203H g-N eohydrin 50 /′
C を投与 して 203H g 一腎摂
i 1e scanning を施 行 した。
取 率 , 血 中 isotop e 残 留率 , 尿 中排 潤率 を測定 し, 一 部 に prof
(3 )
正常 腎 の摂取率 曲線 は , 静注 直後 の急速上昇 に続 いて緩徐 な上昇 曲線 を たど り, ほ ぼ 2 時間半で
頂点 に達 し, 以後徐 々に低下 してい く。 特 に 2 時間半 の値 (U 2.5) につ いてみ る と, 右 腎で は平 均 25 .8% ,
標準偏差 1.97 , 標準誤差 0 .55 , 左 腎で はそれぞ れ23 .8% , 1.66, 0 .46 で あ った。
(4 ) pro丘le scanning を経 時的 に行 ない ,i sotope の全身分 布 お よび腎 , 肝 - の蓄積状態 を明 らか に
した。
(5 ) isotope の体 内分 布 を 血中 , 腎 , 尿 中 , その他 の組織 中 に大別 して時間的 に測定 し, 相互 の移行
状 態 をみ た。 尿 中排 潤率 が50 % に達 したの は 7 時間後 , 14 時間後 には70 % が尿 中 は排 潤 され た。
(6 ) 各種 腎疾患 において は腎 の荒廃程度 に応 じた摂取低下 を認 め た。 単腎者 で は
U2
.5
は平 均 30 .9 %
で 明 らか に正常 両 腎者 の- 側腎 よ り高値 で あ った。
(7 )
腎性高血圧 9 例 につ いて U 2.5 はいず れ も患側 の摂取低下 を示 した。 特 に腎 scintigram
上, 視
覚 的 に左 右差 を認 めが たい症 例 も摂取率 曲線 上 患側 を明 らか に し得 た0
(8 ) 簡易法 P A H 分 腎 ク リア ラ ンス と U 2.5 とは比較的良好 な相 関関係 を示 し相 関係数 は0 .53 で あ っ
た。 分 腎 P SP 試験 15分値 と U
2 .5
は順相 関を示す傾 向を認 め た。
203H g 腎摂取率 は , 結局簡単 で確 実 な分 腎機能検査法 と して , ま た腎 scintigram
の定量的表現 と して
有 用 な検査法 で あ る。 特 に偏 腎のみな らず両 腎性機能低下 で も定量的 に検 出 し得 る点 は , 左 右 の比較 を主
目的 とす る 131日 abelled isotope renogram
に比 し大 な る利点 で あ る。
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論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
203H g-N eohydrin による腎 scintigram の研究 は基礎的に も臨床的にもいまだふ じゆ うぶんな段階にあ
る。
まず腎 scintigram の実施 に伴 う基礎的問題点 と して , scanner の可変因子の調整 , scanning 開始時
期 , C ollim ator の撰択 , 内部線量 , 解像力などを とりあげて検討 した。 また実験的腎動脈狭窄および分
枝狭窄 に対す る腎 scintigram の検 出力について調べ た。 これ らの諸点 については従来ほとんど報告を見
ず , 腎 scintigram
のための重要 な基盤 となるものである。 これ らの結果 に基ずいて施行 した145例の腎
scintigram を通 じて, 各種腎疾患 に対す る診断的意義を検討 した。 特 に虚血腎 , 腎 内膜癖 , 腎形態およ
び位置異常などに対 して価値が大なることを示 した。 また, 腎病巣の検 出限界 , 再現性 などについて も論
及 した。
多 くの症例では腎 scintigram
と同時 に N eohydrin の左右別腎摂取率を測定 した。 この値 と他種分腎
機能検査値 との比較か ら, 腎摂取率が腎機能の一面を表現す ることを見 た。 臨床例の測定を通 じて, 腎摂
取率は簡単で確実な, 新 しい分腎機能 検 査 法 と して, また腎 scintigram の定量的表現 と して有用であ
る。
この研究は学術上有益 に して, 医学博士 の学位論文 と して価値 あるものと認める。
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