『ロボットのココロを創る試みを通じて人間の心の不思議に迫る』

『ロボットのココロを創る試みを通じて人間の心の不思議に迫る』
講師名:浅田 稔(あさだ みのる)
大阪大学大学院工学研究科 教授
http://www.er.ams.eng.osaka-u.ac.jp
学 歴 : 1977 年 大阪大学 基礎工学部制御工学科卒業
1982 年 大阪大学
大学院基礎工学研究科 後期課程 修了
職 歴 :1982 年 大阪大学 基礎工学部 助手
1989 年 大阪大学 工学部 助教授
1995 年 同教授
1997 年 大阪大学 大学院工学研究科 知能・機能創成工学専攻 教授
工学博士(大阪大学) となり現在に至る。
1986 年から 1 年間 米メリーランド大学 客員研究員
講演の概要:
最近,囲碁の世界で,世界最強と言われていたプロに勝つアルファGOと呼ばれる人工知能(以
降,AIと略記)システムが開発されました.コンピュータを始め,近年の技術革新の速度は,め
ざましく,超大量のデータを超高速に処理可能になり,AIがやがて人間の職を奪うとも危惧さ
れています.職を奪わないまでも,人間社会に導入され,さまざまな仕事をこなすことが期待
されています.特に,日本をはじめとする超高齢社会では,介護・福祉の課題が大きな問題と
なっており,ロボットによる代替が望まれています.ロボットには,物理的な支援だけではな
く,人間の意図や行動を理解し,それに応じた対応が求められます.ちょうど,人間の心のよ
うな機能を持った存在です.それでは,ロボットにどのようにして,心のような機能を持たせ
ることが出来るのでしょうか?逆に,人間は,どのようにして,心をもつようになったのでし
ょうか?
私たちは,認知発達ロボティクスという研究分野を立ち上げ,この課題に挑戦しています.
認知発達ロボティクスでは,人間の認知発達過程をロボットやコンピュータシミュレーション
を駆使して,新たな理解を得ると同時に,そのこと自体が,将来導入されるロボットの設計論
になると想定しています.ロボットと人間の心の問題を解くヒントは赤ちゃんの発達にありま
す.赤ちゃんが,どのようにして,さまざまな環境のなかで学習・発達していくのか?赤ちゃ
んロボットがどのように設計され,環境の中で機能や行動を獲得していくのか?本講演では,
その試みを紹介します.
最初は胎児の感覚運動シミュレーションです.お母さんのお腹の中で,どのような学習が可
能かという問題に迫ります.生まれた赤ちゃんが,お母さんとのさまざまなコミュニケーショ
ンを通じて,知的な知識や行動の獲得に向けた発声練習をしたり,視線を合わせて注意を共有
したり,また,お母さんとのやりとりから感情や共感を学ぶなどの過程をロボットやコンピュ
ータシミュレーションを使って示します.そして,それらをまとめ上げることで可能なロボッ
トの姿を描き,これからの課題を皆さんと一緒に考えていきます.