遺伝性・代謝性・中毒性ニューロパチー診療のポイント

日本神経学会学術集会(H28 年 5 月 20 日 於 神戸市)
抗がん剤によるニューロパチーの診療のポイント
徳島大学大学院医歯薬学研究部 臨床神経科学(神経内科)野寺 裕之
講義のポイント
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がん患者のニューロパシーは抗がん剤によるニューロパシーと同義ではない。
その他の原因を検索すべきである。特に多発性骨髄腫では多様な病態が考えられる。
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末梢神経障害を引き起こしやすい抗がん剤は以下のとおりである。
プラチナ製剤・ビンカアルカロイド・タキサン系・プロテアーゼ阻害薬・サリドマイド
系・分子標的薬(いわゆる「マブ」薬)
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オキサリプラチンには急性期の疼痛、興奮性異常と、慢性期のしびれ感がある。
急性期症状はナトリウムチャネルの不活性化異常による。
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ボルテゾミブにより、無髄神経優位の疼痛・自律神経障害が生じる。膜電位の
脱分極性偏移が原因と思われる。
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神経内科医が積極的に関与することで、抗がん剤による末梢神経障害の発症や
進行がある程度抑制される。神経伝導検査が重要である。患者申告による疼痛スケール
の利用も有効である。
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薬物による鎮痛のエビデンスは現在デュロキセチンに限られる。