第4章 地域資源を生かした活力のあるまち 第1節 農林漁業の振興 第2節 商工業の振興 第3節 観光関連産業の振興 第4節 地域産業の連携 - 78 - 第1節 農林漁業の振興 〈現況と課題〉 近年、農産物の輸入自由化による国内農産物の価格低迷や農業従事者の高齢化と後継者 不足、消費者ニーズの変化、あるいは地域間競争の激化など農業を取りまく状況はますま す厳しくなっています。このような状況の中、白浜町においても農家の兼業化、高齢化等 の進展により、生産力の低下や遊休農地の増加を招いており、生産基盤の整備とともに担 い手の育成・確保など農業振興に向けた施策が求められています。また、有害鳥獣による 農作物の被害が深刻な問題となっており、その防除対策も必要です。 このような厳しい農業情勢に柔軟に対応するとともに、従来の農業経営を見直し、効率 的、効果的な農業の確立を図ることが課題となっています。 林業については、近年、木材需要の不振や林業従事者の後継者不足など林業経営の環境 は極めて厳しいものがあります。しかし、国土保全、水資源のかん養、生活環境の保全等 森林の果たす役割は大きく、今後も住民生活の安定のため、森林の維持管理に努める必要 があります。また、白浜町の林野面積は町土の約8割を占めていますが、山間地域の過疎 化、高齢化の進展に伴い、維持管理が十分に行われていない状況です。近年、従来の生産 性重視の山林から環境保全機能重視の山林へと変わりつつある中、この変化に対応するた め、山林の保育・間伐を適正に実施していくことが重要となっています。 漁業についても、漁獲量の伸び悩み、就業者の高齢化、後継者難など厳しい状況にあり ます。白浜町は、漁業資源が豊富で漁業条件に恵まれていますが、漁船隻数、経営体数は 減少傾向にあります。今後は、沿岸海域の生産性を高めるとともに、安定した漁獲量を確 保し、活発な漁業の振興を図る必要があります。 〈基本方針〉 農業については、付加価値の高い農作物の生産振興に努め、多様な販売・流通機構の確 立を図ります。また、後継者の育成と確保を図り、就労者の高齢化への対応を進めるとと もに、効率的な生産基盤の整備を行い、農業従事者が継続して営農できる環境の確保に努 めます。 林業については、素材や特用林産物の生産を促進します。また、森林の有する多面的な 機能の発揮に積極的に取り組み、森林の総合的な利用を推進します。 漁業については、漁港施設の整備や沿岸漁場の整備開発、資源管理型漁業の推進を図る - 79 - とともに、近代的かつ合理的な漁業経営基盤をつくり、漁業後継者の育成に努めます。 また、内水面漁業については、日置川、富田川での鮎の放流、鮎産卵場の整備を実施し ます。 〈施策体系〉 農林漁業の振興 ①効率的・安定的農業経営の構築 ②生産基盤の整備 ③有害鳥獣の対策 ④畜産業の振興 ⑤森林整備の推進 ⑥林業の振興 ⑦漁港施設の整備・管理 ⑧漁業振興・漁業資源の育成・保護 ⑨内水面漁業の振興 ⑩農林漁業団体等への支援等 〈施策の内容〉 ①効率的・安定的農業経営の構築 ○効率的・安定的な農業経営を目指す農業者の育成・支援 ○担い手の育成・確保 ②生産基盤の整備 ○農業生産に必要な優良農地の確保 ○農地の水準を高めることによる生産性の向上と活性化 ○農用地区域の設定、有効利用、農業生産基盤整備の計画的推進 ○農道・用水路等の保全改良の推進 - 80 - ③有害鳥獣の対策 ○防護柵等の設置や狩猟者の協力を得た駆除の展開 ④畜産業の振興 ○畜産業の経営安定による「熊野牛」ブランド化の推進 ⑤森林整備の推進 ○木材の安定的、低コスト供給の体制づくりの推進 ○新設林道計画の策定による適切な維持管理の推進 ⑥林業の振興 ○林産物の供給等経営的機能の向上による森林の維持・増進 ○間伐等による適切な管理の推進 ○担い手の育成・確保 ⑦漁港施設の整備・管理 ○漁港施設の整備や適正な管理による漁業関係者等の活用促進と漁業の活性化 ⑧漁業振興・漁業資源の育成・保護 ○漁場の高度利用と水産資源の維持増大 ○担い手の育成・確保 ⑨内水面漁業の振興 ○内水面漁場の高度利用と水産資源の維持増大 ⑩農林漁業団体等への支援等 ○農林水産物や加工製造品の生産拡大・高付加価値化の支援や供給体制の整備 ○観光関連産業等との連携強化 ○農林水産業活性化のための団体等への支援 ○町内に立地する大学研究所等との連携強化 - 81 - 第2節 商工業の振興 〈現況と課題〉 住民生活に必要な小売店や飲食店をはじめとする商業は、まちの活性化に大きな役割を 果たしています。しかし、近年、ライフスタイルの多様化、車社会や情報社会の進展、流 通システムの変革などにより、商業を取りまく環境は大きく変化しています。白浜町では、 田辺市をはじめとする周辺市町への郊外型大型店舗の出店が進んだこともあり、住民は主 に町外に立地する大型店舗での購買が多く、地元小売店の利用が少なくなっています。こ のような状況の中、商業を活性化していくためには、身近な地元商店街を支援するととも に、消費者ニーズに対応した商業機能の強化を図り、町外への購買力流出を抑制すること が必要です。 工業を取りまく環境は、経済状況との関係が強く、既存工業の活性化とともに、立地条 件や地域資源を生かした振興が求められています。白浜町では、産業の振興や雇用機会の 拡大を図ることを目的とし、企業誘致に努めていますが、今後も産業等の振興を図ってい くため、県と連携して企業誘致活動を継続するとともに、経済団体、大学、行政の連携と 技術の開発や販路拡大などの施策を図っていくことが大切です。さらに、中小企業の生産 性や競争力の向上が求められます。 〈基本方針〉 多様化する消費者ニーズに対応した商業の育成に努めるとともに、商店街の個性を生か し、活力ある商店街やコミュニティ空間の形成を図ります。また、各種研修会等を実施し、 効率的経営や経営意欲づくりを推進するとともに、地元消費の拡大を図り、地場産品の販 路拡大にも取り組みます。さらに、商工会の運営を促進し、経営指導の充実強化に努めま す。 また、白浜町の経済活性化や産業の振興、雇用機会の拡大のため、企業誘致促進条例を 活用するとともに、県と連携して企業誘致を促進します。 さらに、水産加工業をはじめとする製造業の生産性向上のための設備投資、新技術導 入・開発についての支援に努めます。 - 82 - 〈施策体系〉 商工業の振興 ①地域特性に応じた産業の振興 ②企業誘致の促進 ③消費者生活の安定と向上 ④商工業団体等への支援等 〈施策の内容〉 ①地域特性に応じた産業の振興 ○既存の商店街の活性化や地場産業の振興支援 ○南紀白浜空港の活用 ○商工業中小企業者の発展等のための融資制度の充実 ②企業誘致の促進 ○企業誘致促進条例による誘致促進 ○県と連携した企業誘致の促進 ③消費者生活の安定と向上 ○消費者向けの講座開催や広報啓発の充実 ④商工業団体等への支援等 ○商工会の財政・組織基盤安定のための支援 ○商工会等との連携による地域商業の活性化と指導体制の強化 ○商工会の広域化に向けた取り組みの支援 - 83 - 第3節 観光関連産業の振興 〈現況と課題〉 観光産業は、総合産業かつ成長産業であるといわれている中、近年、地域の自然、歴史 の名所等を観る観光だけでなく、地域の歴史や文化、産業を手軽に楽しめる体験型観光も 人気を集めています。 白浜町は、風光明媚な海岸、湯量が豊富で泉質の良い温泉、また、清流と森と海が織り なす豊かな自然に恵まれ、世界遺産「熊野参詣道大辺路」をはじめ、歴史・史跡・文化財 などの豊富な観光資源があり、県内唯一の空港である南紀白浜空港を有した温泉宿泊地と なっています。 白浜温泉地域は、大型の宿泊施設が建ちならび、また、自然動物公園等の観光施設も多 く、滞在型の観光地です。椿温泉地域は、湯治場として全国に知れ渡り、また、日置川地 域は、変化に富んだ海岸線や日置川、テニスコート、道の駅等があり、清流や生活文化な どを生かした「ほんまもん体験観光」に力を入れています。今後は、町内の資源を活用し た取り組みや周辺市町との連携を強化するとともに、地域の特性を生かした広域周遊や既 存施設の有効活用が課題となっています。また、町の観光資源を生かした交流人口の増加 を目指し、近畿自動車道紀勢線の延伸を視野に入れ、広域的な観光の振興を図ることが求 められています。 今後ますます進展する国際化社会に向け、友好都市提携を結んでいるアメリカ合衆国ハ ワイ州ホノルル市との関係を含め、白浜国際交流協会をはじめとする民間団体等と連携を 図っていくことが必要です。 〈基本方針〉 既存の町内観光施設の連携強化を図りながら、農林漁業や商工業等他の産業との連携を 進め、地場産品を活用した観光産業の振興を図ります。また、海・山・川を利用して、観 光客と住民が共に楽しめる新しい交流の場づくりに努めるとともに、日置川地域において は、農林業体験をはじめとした「ほんまもん体験観光」に取り組みます。さらに、温泉や 海水浴だけでなく、自然体験、歴史学習等により、地域の資源を多面的に活用するための 施設整備やイベント企画を進め、効果的に都市部へ情報発信します。 - 84 - 〈施策体系〉 観光関連産業の振興 ①観光資源の育成・活用 ②観光イベントの開催 ③観光施設の整備・充実 ④観光ネットワークの形成・促進 ⑤観光情報の発信強化 ⑥観光関連産業団体等への支援等 ⑦国際交流の推進 〈施策の内容〉 ①観光資源の育成・活用 ○既存観光資源(自然・施設)の維持 ○新たな観光資源の発掘と活用 ○世界遺産「熊野参詣道大辺路」を生かした取り組みの推進 ○多様な資源を生かした体験型観光の活用 ○教育旅行誘致の推進 ②観光イベントの開催 ○既存イベントの実施と新規イベントの企画 ③観光施設の整備・充実 ○観光客が気軽に利用できる観光施設の整備 ○観光資源を有効活用した観光交流拠点の整備 ○障害者等の利用に配慮したバリアフリートイレ等の整備 ○景観を配慮した分かりやすい案内板・多国語併記案内板等の整備 ④観光ネットワークの形成・促進 ○語り部、観光ボランティア、NPO等の連携による観光ネットワークの構築 ○観光地やイベント、体験型観光等を組みあわせた周遊型観光ルートの設定 - 85 - ⑤観光情報の発信強化 ○観光関連ホームページの充実 ○白浜町の魅力を掲載したパンフレット等の作成 ⑥観光関連産業団体等への支援等 ○観光地を支えるイベント等の開催支援の検討 ○農林漁業、商工業との連携強化 ⑦国際交流の推進 ○国際交流体制の充実・推進 ○外国人観光客の誘客促進と受け入れ体制の整備 - 86 - 第4節 地域産業の連携 〈現況と課題〉 地域経済を取りまく環境が大きく変わりつつある中、既存産業や地域資源に着目した従 来からの産業振興を進める傾向や、既存産業と情報関連産業を結合していく傾向、また、 異業種を含めた既存産業間の連携を強化していく傾向があります。 白浜町の地域産業を活性化させるためには、観光産業を中心として他の産業との連携を 図り、町内で生産された食材を使用した料理を旅館や民宿、学校給食等で提供するなど、 地産地消の取り組みを進めていくことが必要です。 〈基本方針〉 地域の特性を生かした新しい産業や雇用の創出、生産・加工・流通・販売等の地域内・ 地域間での連携等を支援します。また、地域の産業を担う多様な主体づくりや情報関連産 業を活用した地域産業の活性化を進めます。 〈施策体系〉 地域産業の連携 ①地域産業の活性化 〈施策の内容〉 ①地域産業の活性化 ○各産業間の連携交流の促進と雇用対策の充実 ○地産地消の推進 ○情報関連産業を活用した地域産業の活性化 - 87 - - 88 -
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