サウンドドラマの制作

第 37 話 スタジオ夜話(番外編)
サウンドドラマの制作
(音の入り口・音源 2)
「平成 28 年(2016 年)熊本地震」被
災された多くの皆様に心よりお悔やみ、お
★「音源について」シンセサイザーもアナ
ログからデジタルへ
人のピーター・ヴォーゲルと友人のキム・
ライリーによって 1979 年「CMI」という
見舞い申し上げます。いち早い復旧復興が
デジタルシンセサイザー製品を世に送り出
なされ、普通の生活が送れるようお祈り申
1957 年 に シ ン セ サ イ ザ ー が 誕 生 し、 したのがその始まりです。
(会社は 1975
し上げます。
64 年にはモーグ博士が使い易いトランジ
年に設立プロトタイプの製品:Quasor 発
スタ製の楽器タイプシンセサイザーを市場
表)79 年に発売に至った製品は「CMI」
に送り出しました。その後国産では京王技
名称は正にそのもの「コンピュータ・ミュ
研のコルグやローランドシステム 700、ヤ
ージック・インスツルメント」それはすな
マハ等々が、そして 75 年にはアナログシ
わちコンピュータを使ってシンセサイザー
ンセサイザーがコンピュータと合体して当
を構成して音楽を創る機器でした。当時の
時最高峰の電子楽器メーカー「フェアライ
シンセサイザー?としては一線を画するも
の前にということで音源についてのお話、 ト社」が登場します。ちょうど 70 年代な
のでした。CMI の基本構成を見てみるとそ
電子楽器音源、アナログシンセサイザーに
かばのことです。それまでのシンセサイザ
れは容易に理解できます。システムはモト
ついての歴史、解説でした。今回のスタジ
ーは音を創るのも、その音を使って作曲、 ローラ MC6800 を当時デュアルで使い、
オ夜話(番外編)はその続き、アナログ電
演奏するのもすべて手作業、耳作業でした。 OS は OS9、当然 8 ビットです。音源ユ
子楽器などの技術が進化すると音に係わる
コンピュータの利用でこの環境がこれから
☆はじめに
前号 VOL199 号では「音の入り口」そ
ニットは 8 ボイス、基盤が筐体にきれいに
制作環境がこんなに変わった?というお話、 一気に変わって行くことにになります。
8 枚並んでいました。さらに 208 kbRAM
次回から予定しているアコースティックな
で最大 24 kHz で可変のサンプルレートを
音源、楽器についてそのイントロダクショ
ン的なお話です。
★「音源について」フェアライトの出現は
驚き!
また今回 FDI は 200 号を迎えました。
もつサンプリング機能、8 インチのフロッ
ピーディスク 2 枚でオペレーティングシス
テムと音源などを扱っていました。現在か
編集部の皆様、執筆者の皆様お疲れ様でし
フェアライト社は読者の皆様はすでに御
た、筆者の一人として読者諸先輩の方々に
存知の最先端 DAW 関連のメーカーです。 るものではありませんが、CRT モニターと
お礼申し上げます。今後とも「FDI」よろ
現在、音は基より映像機器との融合など幅
ライトペンを使った GUI がすでに完成され
しくお願いいたします。
広く手がけています。同社の歴史は古く元々
ていました。
はコンピュータ制御のシンセサイザーメー
波形合成は 32 音を CPU で演算させグ
カーとしての出発でした。オーストラリア
ラフィックで描いた波形を生成することが
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FDI・2016・05
らすると音のクオリティなどとても期待でき
川 上 央(KAWAKAMI
Hiroshi)教授 1968 年生まれ
今回一部ご紹介した製品は、
日本大学芸術学部 音楽学科専
任教授 川上 央 氏ご担当の情報
音楽コースの機材です。川上氏
のご専門は情報音楽系で音に関
係するデザイン的なことです。
電子音の研究、創作などでフ
ランス国立音響音楽研究所に招
聘されモンパルナス駅の誘導音
デザインなどを担当。国内でも
様々な音のデザインを手がけて
いるスペシャリストです。 音創りのサウンドドラマ制作では担当
コースの学生たちにご協力いただいています。スタジオ夜話でもその
様子を以前紹介しました。機会をみてまたくわしく紹介いたします。
日本大学芸術学部放送学科
茅原良平 専任講師
前回のアナログシンセに続き、今回は
フェアライト「CMI]の説明をしていた
だきました。筆者が「CMI」を導入した
当時と現在ではその使い方もずいぶんと
違いアナログシンセサイザーの延長的使
い方と古い音を出すライブラリー的な使
い方のようです。現在に生きるサウンド
ドラマ作家ならではの新たな使い方や、
茅原先生のコメントにはある意味新たな
興味をひかれました。
できました。またサンプリングした音や生
またサンプリングした音源を使いスタジ
初期「CMI」シリーズⅡはページ R という
成した音をフロッピーに保存ミュージック
オに作曲家がいれば様々な楽器音による音
音楽制作打ち込みソフトを実装して音源を
コンポーザというシーケンスソフトを使い
楽制作がその場でテストできる利点などそ
使い「音楽プログラマー・マニュピュレター」
8 トラックの演奏と出力が可能となってい
の活用方法は多肢にわたりました。この
という新しいスタイルの職業?を生み出し
ます。また今でいうシンクトラックを始め 「CMI」は音楽制作系に創られミュージック
ました。新たにリリースしたフェアライト
に用意することで、外部マルチトラックレ
キーボードなどタッチセンサーによって鍵
はその後「MFX」機器に受け継がれて行く
コーダーに記録されている信号を録音して
盤を叩く強さの情報などライブ的使用も可
のですが、すでに世の中ではポストプロダ
おけば、マルチレコーダーに同期してシー
能でした。かつて筆者も初台の芸術劇場に
クション作業が行われ、エンジニア達はそ
ケンスできるという機能も備えていました。 てライブ演奏、シーケンス演奏とアコース
の作業に追われていました。フェアライト
サンプリングした音などをフロッピーで保
ティックなバイオリン、フルート、打楽器
新シリーズは 16 ビット 44.1KHz のマル
存したようにシーケンス作業の記録やその
とのコラボ演奏を行なった経験があります。 チトラック DAW へと変貌したのです。
時使う音源の選択なども管理できる優れも
それほど便利な楽器?機器でした。
ハードディスクレコーディング DAW
のでした。
日本での販売は大阪の商社、なにわ楽器
の さ き が け で す。 す で に CRT を 使 っ た
が松下貿易を介して行っていました。当時 「GUI」には自信のあったフェアライト社
★フェアライトの出現が今日のデジタルオ
ーディオの音創り作業環境に貢献
の担当者には、その後も様々なフォローを
はハードディスクレコーダーのコントロー
して頂き、フェアライト次世代機種を購入
ラーと CRT グラフィックによる録音編集
することになりました。実はここが重要な
環境を実現したのです。筆者の勤務してい
筆者は勤務先で「CMI」を導入、サウン
転換期なのです。フェアライト社は「CMI」 た大学の音楽学科ではこの製品をいち早く
ドドラマの効果音制作、特にミュージック
で培った技術を音楽制作に特化したもので
導入、当時のヤマハデジタルコンソール
エフェクトの制作に大いに活用しました。 は無く「音制作」という作業に注目して新 「DMC1000」と組み合わせ音楽などの専
多少の音楽的知識があれば打ち込みによる
しい製品の開発にふみきります。楽器とし
用制作スタジオを有効に利用していました。
楽曲の制作が演出家やエンジニアにも可能
ての機能はほんの少し残すもののなんと録
今日的録音編集などの作業スタイル、環
となったのです。
音作業中心の機器へと変貌させたのです。 境などが整備されはじめた原点がここにあ
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FDI・2016・04
「CMI」のバックパネルには通常の 8CHOUT のほかサンプ
リング用音声入力やシンク用の信号入力、モニター OUT など
の入出力がある。
フロントパネルを開けると
「CMI]
の CPU 基盤やボイスユニッ
トが整然と並んでいます。空白スペースは拡張用でその後 MIDI
などを実装するように用意されていましたが本文中の新しい製
品に変わってから MIDI などとの同期
が取れるようになりました。
写真右側の黒い部分が 8 インンチ
フロッピードライブです。2 台実装さ
れていて左側がシステム用で、右側が
保存されている音ライブラリーやシー
ケンスデータなどに差し替えて使いま
す。
余談になりますがフロッピーのオリ
ジナルドライブが故障したとき代理店
のご担当者は当時三菱製のドライブと
無造作に交換したように見えたのです
が、デバイスドライバーとか「OS 9」
はどうなっていたのか未だに不明で
す。現用機器なので是非次回お会いし
た時に聞きたいと思っています。
フェアライトのコントローラ、現在の MFX 系とほと
んど変わらないデザインと機能がこの写真からも伺え
ます。本体はラック実装の単なる箱といった感じで裏に
様々な入出力端子があるだけです。
ヤマハ DMC1000
当時フェアライトと組み合わせて使用していたヤマハ DMC1000 です。タッチセ
ンス付きのフェーダを実装してすでにオートメーション、シーン設定はもとよりコ
ンフィグレーションも様々と設定できるすぐれものでした。
ると感じさせます。毎回のようにお世話に
した共同作業環境を若い制作者に提供、教
独音、ソロ演奏や合奏など現場でもゆっく
なる日本大学(芸)の茅原先生、また今回
育していただけたら幸いです。
りと確認する機会も少なくなっています。
音源を知ることは大切な作業前の第一ステ
お世話になりました音楽学科情報音楽コー
スの川上先生に感謝いたします。両先生は
☆次回は
ップです。スタジオ夜話のテーマ
「創意工夫」
同じ学部所属ですが専門が違います。茅原
音の入り口続きです。2 回にわたりシン
の音創りを基本に。次回もよろしくお願い
先生はサウンドドラマなどの制作系、川上
セサイザーその仕組み、今日的使い方、デ
いたします。
先生は音楽学科で音楽制作やその情報処理、 ジタル機器への移行などフェアライトを例
利用の専門家です日々作品制作では互いに
にお話しました。次回も音源についてアコ
コラボしてその創作にあたっています。読
ースティックな楽器を中心にお話する予定
者諸先輩の方々の制作作業でも絶えずこう
です。最近ではなかなか楽器そのものの単
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FDI・2016・04
ー 森田 雅行 ー