障害のある人の地域生活実態調査の結果報告

2016 年 5 月 17 日
障害のある人の地域生活実態調査の結果報告
2014 年1月、日本政府は障害者権利条約(以下、権利条約)を批准し、障害のない「他の者との平等」
を基礎とした法律や制度づくりへの大きな節目となった。障害のある当事者や家族、支援者は権利条約
批准を機に、制度改革が一層推し進められることを期待したが、地域での生活は充実するどころか、厳
しさを増している。また、現在、国会で審議中の障害者総合支援法の改正案には、障害のある人個々の
所得や生活保障の拡充策はみられない。
とくに、障害のない市民との所得水準の格差は、日常の生活のなかで切実な問題として生じているに
もかかわらず、その実態は十分に把握されてきたとは言えない。そこに、地域における社会資源の乏し
さ、変わらない家族依存の実態があいまって、障害のある人にとって「他の者との平等」を阻む障壁が、
幾重にも横たわっているのである。
なお、慶応大学の山田篤裕教授らの研究グループは、2016 年2月に障害のある人の貧困研究の成果を
発表し、同世代の人たちに比べて、障害のある人の貧困率が倍以上になることを明らかにした(厚生労
働科学研究費補助による調査研究)
。
権利条約を批准した日本政府は、国連の障害者権利委員会への最初の報告書(案)を公表したが、残
念ながら日本政府は、障害のある人の所得と生活実態を十分に把握していないため、同報告書(案)に
障害のある人たちの所得や生活の実態は記載されなかった。
こうした状況を踏まえて、きょうされんでは、障害のある人の所得と生活の実態を明らかにすること
に意義があると考え、2012 年に公表した「障害のある人の地域生活実態調査」
(きょうされん実施)の結
果を踏まえ、再度、調査を実施することとした。山田教授らの研究成果にあるように、貧困状態の把握
は世帯の所得と家計状況を把握しなければならないが、障害のある人の世帯の所得と家計という個人情
報にまで立ち入った調査を民間団体が実施することは難しい。
そのため、わたしたちは障害のある人を対象に行なった前回調査をもとに、さらに調査対象者を増や
し、収入の内訳とそれにもとづく所得や生活実態を把握することを目的に、本調査を実施した。
前回調査からわずか4年とはいえ、前回調査の結果をふまえて指摘した改善策などは一向に進んでお
らず、その結果、障害のある人の生活実態に大きな前進面はなかった。とりわけ収入という面で言えば、
障害のない人との格差が「固定化」していると言える。本稿では、障害のない「他の者との平等」とい
う観点から、どれほど隔たりのある生活実態におかれているかを浮き彫りにしたい。
1.調査概要
(1)目的
本調査は、障害のある人の所得状況と生活状況を把握し、それを国民一般の統計などと比較し、格差
の実態を明らかにすることを目的に実施した。また、現在開会中の第 190 回通常国会で審議されている
障害者総合支援法の改正案の議論、権利条約批准後2年を経た「他の者との平等」の到達度の検証など
を想定して、改革すべき障害者施策について明らかにすることを主眼とした。
(2)調査実施主体
きょうされん(旧称、共同作業所全国連絡会) 理事長 西村 直
東京都新宿区北新宿4-8-16 北新宿君嶋ビル9階
電話 03-5937-2444 FAX
1
03-5937-4888
(3)調査対象・方法
きょうされん加盟の事業所を中心に、2015 年7月から 2016 年2月までに、FAX または郵送によって直
接回収した。また、加盟事業所に加え、2013 年に当会が実施した「地域活動支援センター実態調査」で
作成した全国名簿に掲載された地域活動支援センター、関連する障害団体(全国社会就労センター協議
会、ゼンコロ、全国精神保健福祉会連合会<みんなネット>)にも調査を依頼、協力を得て回収した。
(4)回答数
回答のあった障害のある人は 14,745 人で、障害者総合支援法に基づく就労継続支援A型やB型事業、
就労移行支援事業、生活介護事業、地域活動支援センターなど障害福祉サービスを利用している人たち
であった。一般就労している人はわずかで、障害の重い人の実態が浮き彫りになった。
2.回答のあった障害のある人の概況
性別では、男性が 8,865 人(62.0%)、女性が 5,443 人(38.0%)であった(表1)。
年齢階層では、40 歳から 44 歳がもっとも多く 1,987 人(13.9%)で、次いで 35 歳から 39 歳が 1,678 人
(11.7%)であった(表2)。平均年齢は 41 歳、最高齢は 92 歳であった。
主な障害種別は、重複を含めて知的障害が 9,381 人(64.7%)、次いで身体障害が 3,861 人(26.6%)、
精神障害が 3,641 人(25.1%)、発達障害が 937 人(6.5%)、難病が 205 人(1.4%)であった(表3)。
障害者手帳の取得者は、複数取得を含めて知的障害のある人の療育手帳が 8,877 人(67.4%)、次いで
身体障害者手帳が 3,627 人(27.5%)、精神保健福祉手帳が 2,815 人(21.4%)であった(表4)。
表1 性別
(有効回答:14,308、単位:人)
男性
女性
8,865 人
5,443 人
(62.0%)
(38.0%)
表2 年齢階層 (有効回答:14,332、単位:歳)
~19
20~24
25~29
30~34
35~39
40~44
45~49
50~54
55~59
60~64
65~
467
1,564
1,586
1,605
1,678
1,987
1,593
1,144
908
844
956
(3.3%)
(10.9%)
(11.1%)
(11.2%)
(11.7%)
(13.9%)
(11.1%)
(8.0%)
(6.3%)
(5.9%)
(6.7%)
表3 主な障害(複数回答あり、有効回答:14,492、単位:人)
身体障害
知的障害
精神障害
発達障害
難病
その他
3,861
9,381
3,641
937
205
122
(26.6%)
(64.7%)
(25.1%)
(6.5%)
(1.4%)
(0.8%)
表4 障害者手帳の種別(複数回答あり、有効回答:13,169、
「障害者手帳」ありの回答者、単位:人)
身体障害者手帳
療育手帳
精神保健福祉手帳
3,627
8,877
2,815
(27.5%)
(67.4%)
(21.4%)
2
3.障害のある人の日中や暮らしの状況
本調査の対象が、障害福祉の施設・事業所を利用している障害のある人であることから、日中の主な
活動の場の圧倒的多くは、就労継続支援B型の 6,639 人(46.3%)だった。次いで、生活介護が 5,130 人
(35.8%)、地域活動支援センターが 1,281 人(8.9%)となっている(表5)。
「誰と暮らしているか」では、親と同居が 7,967 人(54.5%)と過半数を占めた。次いで、友だちが 4,133
人(28.3%)、きょうだいが 3,317 人(22.7%)となっている。一人暮らしをしている人は 1,382 人(9.4%)
と、一割に満たなかった(表6)。
「どこで暮らしているか」では、自宅が 10,392 人(71.6%)で大半を占めた。次いで、グループホーム
が 2,633 人(18.1%)、入所施設が 1,381 人(9.5%)となっている(表7)。
表5 日中の主な過ごしかた(複数回答あり、有効回答:14,328、単位:人)
就労継続
就労継続
就労移行
支援 A 型
支援 B 型
支援
273
511
6,639
450
5,130
1,281
88
173
234
(1.9%)
(3.6%)
(46.3%)
(3.1%)
(35.8%)
(8.9%)
(0.6%)
(1.6%)
(1.6%)
一般就労
生活介護
地域活動
支援センター
医療
行き場が
ない
その他
表6 誰と暮らしているか(複数回答あり、有効回答:14,627、単位:人)
一人
配偶者
子ども
親
きょうだい
祖父母
友だち
親類
その他
1,382
648
368
7,967
3,317
868
4,133
124
60
(9.4%)
(4.4%)
(2.5%)
(54.5%)
(22.7%)
(5.9%)
(28.3%)
(0.8%)
(0.4%)
表7 どこで暮らしているか(複数回答あり、有効回答:14,520、単位:人)
自宅
グループホーム
入所施設
その他
10,392
2,633
1,381
114
(71.6%)
(18.1%)
(9.5%)
(0.8%)
4.障害のある人の主な収入状況
生活保護は世帯単位の受給であるため、今回は収入状況の統計には算定しなかった。ただし、所得保
障の根幹となる制度であるため、受給状況を調査した。
「受給している」と回答したのは 1,677 人で、全
体の 11.4%であった(表8)。
続いて、障害のある人の主な収入を、月額、内訳毎に聞いた。このうち、障害基礎年金1級の人は、
5,263 人(37.6%)で、
障害基礎年金2級の人は 6,111 人
(43.6%)
、
障害厚生・共済年金の人は 620 人(4.4%)
だった(表9)。なお、特別障害者手当を受けている人は 1,286 人(8.7%)、都道府県、市町村等の自治体
の独自手当を受けている人は 1,269 人(8.6%)で、自治体独自の手当を支給している自治体は、東京都、
神奈川県、愛知県、京都府などだった。
障害基礎・厚生年金、障害手当、給料、工賃など全て含む本人の月額収入では、4万2千円以上8万
3千円未満が 6,839 人(48.8%)と最も多く、
次いで8万3千円以上 10 万5千円未満が 2,987 人(21.3%)、
10 万5千円以上 12 万5千円未満 1,568 人(11.2%)という結果であった(表 10)。
3
表8 生活保護費受給者数(有効回答:14,745、単位:人)
受給している
受給していない
1,677
13,068
(11.4%)
(88.6%)
表9 障害年金の種別(有効回答:14,012、単位:人)
基礎年金 1 級
基礎年金 2 級
厚生・共済年金
5,263
6,111
620
(37.6%)
(43.6%)
(4.4%)
表 10 月額収入の分布(有効回答:12,531、生活保護受給者を含んでいない、単位:人)
0円
1 円~
1 万円~ 2 万円~ 4.2 万円~ 8.3 万円~
235
699
499
461
6,839
(1.7%)
(5.0%)
(3.6%)
(3.3%)
(48.8%)
10.5 万円~
12.5 万円~
16.7 万円~
2,987
1,568
478
246
(21.3%)
(11.2%)
(3.2%)
(1.8%)
5.調査が浮き彫りにした障害のある人の所得と生活の現状
(1) 障害のある人の 81.6%が、相対的貧困以下の生活に
月額収入から年収を積算した結果、相対的貧困とされる 122 万円の「貧困線」を下回る障害のある人
たちが 10,223 人、81.6%にも及んでいた。この「貧困線」は、厚生労働省の国民生活基礎調査で公表さ
れているもので、まず前年の世帯収入のうち直接税・社会保険料を除く可処分所得を世帯人員の平方根
で割り、国民一人当たりの収入を算出している。平成 25 年の同調査結果では、この可処分所得を積算・
比較した結果、その実質中央値は年収 244 万円と算定され、その2分の1の年収 122 万円が、いわゆる
「貧困線」となり、それを下回る世帯は総世帯のうち 16.1%という結果が報告されている。
一方、わたしたちの調査は、本人の所得状況を把握しているので、「貧困線」と単純比較できないが、
年金や手当、その他の収入などを含めて実収入で、障害のある人のうち 81.6%もの人たちが、相対的貧
困の「貧困線」を下回っていること自体、尋常ではない状況である。
あわせて、国税庁の平成 26 年民間給与実態統計調査の結果とも比較した。同調査は就労所得の調査で
あり、その結果によると、いわゆるワーキングプアといわれる年収 200 万円以下が、24.0%を占めてい
た。ワーキングプアとは、フルタイムで働いても、生活維持が困難もしくは生活保護の水準にも満たな
い収入しか得られない就労者のことであり、すなわち「働く貧者」のことである。
わたしたちの調査では、このワーキングプア以下の障害のある人は 98.1%という結果だった。
このように、いずれの国民生活の収入水準の客観的な指標と比べても、障害のある人たちの収入状況
はきわめて低い。そのことが本調査で改めて立証されたといえる。
さらに今回の調査では、年金の種別を把握したため、それらを所得状況と比較してみた(表 12)。いず
れの障害年金であっても、年収 100 万円以下が多くを占めていたが、突出していたのは障害基礎年金2
級の 4,633 人(75.8%)であった。この結果は、2 級年金の低額さを証明するものといえる。
4
表 11 障害のある人と国民一般の収入比較
本調査
民間給与実態統計調査
前回調査
2,000 万円超
0人
20.6 万人(0.4%)
0人
2,000 万円以下
0人
30.6 万人(0.6%)
0人
1,500 万円以下
0人
148.3 万人(3.1%)
0人
1,000 万円以下
0人
82.1 万人(1.7%)
0人
900 万円以下
0人
125 万人(2.6%)
0人
800 万円以下
1 人(0.01%)
189.6 万人(4.0%)
0人
700 万円以下
0人
280.4 万人(5.9%)
0人
600 万円以下
0人
450.2 万人(9.5%)
0人
500 万円以下
2 人(0.02%)
663.3 万人(13.9%)
1人(0.01%)
400 万円以下
18 人(0.1%)
824.1 万人(17.3%)
8人(0.08%)
300 万円以下
221 人(1.8%)
802.9 万人(16.9%)
90 人(0.98%)
200 万円以下
456 人(3.6%)
150 万円以下
1,524 人(12.2%)
125 万円以下
2,655 人(21.2%)
100 万円以下
7,654 人(61.1%)
417.8 万人(8.8%)
5,112 人(56.11%)
12,531 人(100%)
4,756.3 万人(100%)
9,111 人(100%)
合計
607 人(6.66%)
721.4 万人(15.2%)
698 人(7.66%)
2,595 人(28.48%)
(出典 国税庁 平成 26 年民間給与実態統計調査)
(本調査の有効回答数 12,531 人には、生活保護受給者を含んでいない)
グラフ1 障害のある人と国民一般の収入比較
4.2%
1000万円超
1.7%
1000万円以下
2.6%
900万円以下
4.0%
800万円以下
国民一般
0.01%
5.9%
700万円以下
障害のある人
9.5%
600万円以下
500万円以下
0.02%
400万円以下
0.1%
300万円以下
13.9%
17.3%
16.9%
1.8%
15.2%
200万円以下
37.0%
8.8%
100万円以下
0%
10%
61.1%
20%
30%
5
40%
50%
60%
70%
表 12 障害年金の種別と所得状況(有効回答:14,012、単位:人)
障害基礎年金 1 級
障害基礎年金 2 級
障害厚生・共済年金
300 万 1 円以上
10 ( 0.22%)
2 ( 0.04%)
8 ( 1.3%)
300 万円以下
123 ( 2.3%)
58 ( 0.9%)
42 ( 6.8%)
200 万円以下
138 ( 2.6%)
225 ( 3.7%)
108 (17.4%)
150 万円以下
1,237 (23.5%)
257 ( 4.2%)
96 (15.5%)
125 万円以下
1,769 (33.6%)
936 (15.3%)
109 (17.6%)
100 万円以下
1,986 (37.7%)
4,633 (75.8%)
257 (41.5%)
合計
5,263 ( 100%)
6,111 ( 100%)
519 ( 100%)
(2) 障害のある人の生活保護の受給率は、国民一般の6倍以上
本調査のうち、生活保護を受給している人は 1,677 人であり、有効回答者 14,729 人中 11.4%だった。
一方、国民一般の生活保護を受けている人の割合は 1.7%であり、障害のある人は国民一般と比べて、受
給率が6倍以上も高かった(表 13)。また、年代ごとの生活保護の受給率をみたところ、年齢を重ねるご
とに受給率が上がっていく傾向がはっきりと出された(表 14)。
表 13 障害のある人と国民一般の生活保護受給率の比較
生活保護受給者数
国民一般
母数
割合
216 万 3394 人※1
1 億 2692 万人※2
1.7%
1,677 人
14,745 人
11.4%
障害のある人
※1厚生労働省・被保護者調査(平成 28 年 1 月分概算) ※2総務省統計局人口推計平成 28 年 3 月号
表 14 障害のある人の年代ごとの生活保護受給率の比較(有効回答:14,332、単位:人)
20~24
25~29
30~34
35~39
40~44
45~49
50~54
55~59
60~64
65~
61
83
112
140
237
233
176
165
206
179
(3.9%)
(5.2%)
(7.0%)
(8.3%)
(11.9%)
(14.6%)
(15.4%)
(18.2%)
(24.4%)
(18.7%)
(3) 50 代前半まで「親依存の生活」
①年代別、年収別の暮らしぶり
本調査では、障害のある人の多くが親族、とりわけ親との同居生活の割合が 54.5%と半数以上を占め
ることが特徴として見られた。40 代前半までは、親との同居が 50%を超えており、50 代前半でも3人に
1人以上が親との同居となっている。依然として「親依存の生活」の現状にあることが、浮き彫りにさ
れた表 15、グラフ2)
。
グループホームや入所施設等での生活者は、同居者を友だちとして集計した。友だちとの同居、つま
りグループホーム等での共同生活は年齢が上がるにつれて増加しており、この傾向は一人暮らしも同様
である。つまり、親の年齢が上がるに連れ、親との同居生活が困難となり、グループホームや入所施設、
または一人暮らしという生活スタイルに変化していったと推測できる。
同居者と年収を合わせてみたときに注目すべきは、年収 100 万円以下で一人暮らしと答えた人が 900
人弱にのぼったことである。200 万円以下までを含めると 1,200 人を超え、有効回答の約1割を占めてい
た。きわめて少ない収入での一人暮らしの実態について、今後明らかにすることが求められる(表 16)。
6
表 15 年齢と同居者の状況(複数回答あり、有効回答:14,240 人、単位:人)
年齢
一人
配偶者
子ども
親
兄弟
祖父母
友だち
親類
合計
18~19
0
3(0.6%)
1(0.2%)
420(90.3%)
272(58.5%)
90(19.4%)
31(6.7%)
4(0.9%)
465
20~24
14(0.9%)
9(0.6%)
2(0.1%)
1356(87.1%)
728(46.8%)
268(17.2%)
160(10.3%)
10(0.6%)
1557
25~29
24(1.5%)
15(0.9%)
4(0.3%)
1289(81.6%)
593(37.6%)
209(13.2%)
223(14.1%)
9(0.6%)
1579
30~34
63(3.9%)
20(1.3%)
6(0.4%)
1141(71.4%)
399(25.0%)
142(8.9%)
329(20.6%)
15(0.9%)
1597
35~39
89(5.3%)
34(2.0%)
21(1.3%)
1104(66.2%)
356(21.3%)
69(4.1%)
412(24.7%)
10(0.6%)
1668
40~44
155(7.8%)
67(3.4%)
44(2.2%)
1053(53.3%)
302(15.3%)
32(1.6%)
659(33.4%)
23(1.2%)
1975
45~49
186(11.8%)
77(4.9%)
50(3.2%)
726(46.1%)
221(14.0%)
14(0.9%)
537(34.1%)
13(0.8%)
1575
50~54
175(15.4%)
77(6.8%)
47(4.1%)
395(34.9%)
127(11.2%)
14(1.2%)
444(39.2%)
11(1.0%)
1133
55~59
197(21.8%)
101(11.2%)
56(6.2%)
170(18.8%)
99(11.0%)
11(1.2%)
370(40.9%)
6(0.7%)
904
60~64
223(26.6%)
108(12.9%)
54(6.4%)
91(10.9%)
74(8.8%)
3(0.4%)
357(42.6%)
7(0.8%)
838
65~
196(20.7%)
119(12.5%)
76(8.0%)
29(3.1%)
63(6.6%)
1(0.1%)
511(53.8%)
15(1.6%)
949
グラフ2 年齢と同居者の状況
100%
親, 90.3%
90%
80%
70%
60%
きょうだい, 58.5%
50%
40%
30%
20%
10%
一人暮らし, 0.0%
0%
18~19
20~24
25~29
30~34
35~39
40~44
45~49
50~54
55~59
60~64
65~
表 16 年収と同居者の状況(複数回答あり、有効回答:12,447 人、生活保護受給者を含まない、単位:人)
一人
配偶者
子ども
親
きょうだい
祖父母
友だち
親類
合計
100 万
396
316
167
4505
1885
520
2104
79
7600
以下
(5.2%)
(4.2%)
(2.2%)
(59.3%)
(24.8%)
(6.8%)
(27.7%)
(1.0%)
125 万
114
71
44
1672
731
164
701
18
以下
(4.3%)
(2.7%)
(1.7%)
(63.4%)
(27.7%)
(6.2%)
(26.6%)
(0.7%)
200 万
140
91
43
1105
453
128
576
19
以下
(7.1%)
(4.6%)
(2.2%)
(56.1%)
(23.0%)
(6.5%)
(29.3%)
(1.0%)
200 万 1 円
32
42
21
101
38
7
67
1
以上
(13.3%)
(17.4)%
(8.7%)
(41.9%)
(15.8%)
(2.9%)
(27.8%)
(0.4%)
7
2638
1968
241
②障害のある人・ない人の暮らしぶり
障害があってもなくても、子どもの頃に親と同居する割合は、ほぼ差がみられない。しかし仕事に就
き、新しい家庭を築き、親から経済面・生活面ともに自立していく成人のころから、徐々に格差がうま
れている(グラフ3)
。もっとも格差が大きいのは 35~39 歳である。障害のある人の 66.2%、実に3人に
2人が未婚で親と同居しており、これは国民一般のおよそ4倍の数字となっている。
また、一人暮らしについて、障害のある人とない人で比較すると、障害のない人が 20 代から 30 代に
かけて一人暮らしを経験しているのに対して、障害のある人の 20 代から 30 代における一人暮らしの割
合は一割にも満たない(グラフ4)
。
グラフ3 それぞれの年代で、親との同居している人の割合比較
100%
90%
80%
障害あり, 90.3%
国民一般, 89.2%
70%
障害あり, 66.2%
60%
50%
40%
30%
国民一般, 17.8%
20%
10%
0%
18~19
20~24
25~29
30~34
35~39
40~44
45~49
50~54
55~59
60~64
65~
55~59
60~64
65~
障害あり:きょうされん実態調査から、年齢別に、親と同居、配偶者なしの割合を算出
国民一般:総務省・2010 年国勢調査から、年齢別に、親と同居、未婚の割合を引用
グラフ4 それぞれの年代で、一人暮らしの割合比較
100%
国民一般, 97.2%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
障害あり, 0.0%
0%
18~19
20~24
25~29
30~34
35~39
40~44
45~49
50~54
障害あり:きょうされん実態調査から、年齢別に、一人暮らしの割合を算出
国民一般:2010 年国勢調査から、世帯主の年齢別に、単独世帯の割合を引用
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6.まとめ ― 調査結果が浮き彫りにした政策課題
まず前回の調査結果と今回の調査結果で、異なった点を指摘しておく。それは障害の種別において、
精神障害、発達障害の割合が多かった点である。前回調査では、精神障害が 18.7%、発達障害が 4.9%
だったが、今回の調査では精神障害が 25.1%、発達障害が 6.5%と割合が引きあがった。精神保健福祉
手帳取得者数においても差異がみられた(前回 13.8%、今回 21.4%)
。これらは、障害支援区分の要件が
課せられない、就労継続支援B型や地域活動支援センターの回答が多かったことが要因といえる。
次に、今回の調査結果で浮き彫りになった政策課題について述べる。
今回の調査結果は、前回調査の結果と同様に、障害のある人たちの多くが、きわめて所得水準が低く、
国民一般の貧困基準に照らしても、その低水準の実態は、社会の最下層に置き去りにされた人々といわ
ざるを得ない、という結果だった。また生活状況も「親依存の生活」は、依然として変わらず、50 歳を
過ぎてもなお、高齢の親に依存した生活を続けている状態にあった。
こうした実態は、権利条約で示された、障害のない「他の者との平等」の生活水準や、
「誰とどこで暮
らすかは自らが決める」という条約の水準にとても及ばない現状にある。
(1)本格的な所得保障制度の確立
障害のある、なしに関わらず、自立した生活を送るために経済的自立は欠かすことができない。障害
のある人にとっての経済的な自立のための制度基盤は、障害基礎年金を基本とすべきである。しかし、
現行の障害基礎年金制度は 1985 年度に創設されて以来、その水準は約 30 年にわたって据え置かれたま
まである。他方、生活保護受給者についてもたび重なる基準額の引き下げによって厳しい状況に置かれ
ている。障害のない市民との平等性を実質化させる上で、所得格差の縮減は喫緊の政策課題である。
なお、障害基礎年金に関連して気がかりな点がある。それは、昨年厚生労働省が「障害基礎年金の支
給判定の地域間格差を解消する」ことを目的に見直した、判定の新ガイドラインについてである。都道
府県間の認定の不公平を是正するだけではなく、障害年金の全体にわたる運用の改善策とされている。
しかし、等級の判定の目安は、日常生活能力の程度をマトリックス(行列表)に表したものを日本年
金機構の事務職員が決め、総合的な判断は認定医の仕事とされた。これらの新たな等級認定の仕組みは、
増え続けている障害年金受給者の増加に歯止めをかけることを目的にしているとも考えられ、予断を許
さない。
(2) 「家族への依存」「家族負担」からの脱却を
上記で述べた不十分な所得状況を補っているのは、親を中心とした家族への依存であり、家族からす
れば経済面や身体面の負担と言うことになる。こうした現象は、障害のある人の「自立」からは程遠く、
障害のある人、家族とも限界に達している場合が少なくない。本質的な解決となると、「家族制度」「扶
養義務制度」など民法の改正にまで及ぶことになる。
ただし、民法改正となると容易ではなく、現実的な解決策にはなりにくい。一方で、早急な「依存解
消策」「負担軽減策」が図られなければならない。当面の策としては、住まいの分離であり、「世帯分離
策」の柔軟な運用などが考えられる。とくに、住まいについては、個々のニーズや生活実態に応じて選
ぶことのできる暮らしの場の量的な整備、あわせていつでも相談ができ、いざという時にかけつけてく
れる体制づくりが求められる。
9
(3) 権利条約を関連法制や社会のすみずみに
上記の所得保障という課題、
「親依存の生活」という課題は、障害のある人や家族、関係者の積年の課
題である。しかし、今国会で議論が進んでいる障害者総合支援法の改正案では、こうした問題にメスを
入れる見直しは期待することができない。法案準備の検討をすすめてきた社会保障審議会障害者部会で
は、財務省の「予算編成の建議」が提起され、それが議論の重点とされてきた。その内容は、
「障害の居
宅支援の支給量は介護保険並みにすべきである」と主張する一方で、
「グループホームから地域での暮ら
しに移行することがノーマライゼーションである」という矛盾した方針が提起された。65 歳になると介
護保険優先原則が徹底され、多くの高齢期を迎えた障害のある人たちは、障害福祉の支援が薄まり、1
割負担が課せられてしまう問題についても、有効な解決策は示されていない。
まさに「誰とどこで暮らすか」は、制度と予算が決めるというのが実感である。
今年度より、障害者差別解消法が実施されたが、はたして障害のある人たちのさまざまな差別や障壁
を解消するための実質的な制度になり得るのかが問われてくる。
前述した所得保障の現状や、地域での暮らしの実情も含めて、差別や障壁をなくしていかなければ、
実質的な効果を生むとはいえない。その意味では、権利条約の水準から、改めて障害のある人にかかわ
るあらゆる法律・制度の内容を再検討することが必要となる。そのためには政府の責任にもとづいて、
障害のある人たちのおかれている所得や生活実態の詳細、かつ全国的な実態把握を早急に実施すること
が求められる。
(以上)
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