〔科目名〕 〔単位数〕 2 単位 ゲーム論 〔担当者〕 大石尊之 Oishi Takayuki 〔科目区分〕 選択科目 〔オフィス・アワー〕 時間: 授業時にアナウンスする。 場所: 527 研究室 〔科目の概要〕 ゲーム理論を講義する。ゲーム理論とは、簡潔に言えば、社会の特別のケースとして、参加主体やルールがはっきり しているものを、ゲームと呼ばれる形式で定式化し、このゲームを研究することを通じて、社会・経済問題を考察する学 問である。この理論は、20 世紀初頭の数学の危機を起源として、社会と社会問題を数学的に分析しようと、1944 年にフォ ン・ノイマンとモルゲンシュテルンの大著「ゲームの理論と経済行動」によって本格的に始められた。今日では、ゲーム理 論は、経済学だけでなく、経営学・社会学・政治学・進化生物学・コンピュータ・サイエンスといった広い学問領域に浸透 している。 この科目では、ゲーム理論のもつ多様な視点と分析のための方法を学ぶことを通じて、社会や経済の問題に対する 受講者の洞察力を深めることを目的とする。講義では、主に非協力ゲームの理論の内容を展開するが、今年は後半に 「破産問題」と呼ばれる分配問題を引き合いに出しながら、協力ゲームの理論についても簡単な解説を行うことを予定し ている。各回のテーマについて、受講者の反応を勘案しながら、なるべく丁寧に解説を行う。 なお授業で扱うテーマはスケジュールで提示されているが、授業の進捗状況によっては一部扱わない場合もありう る。 〔「授業科目群」・他の科目との関連付け〕・〔なぜ、学ぶ必要があるか・学んだことが、何に結びつくか〕 ゲーム理論、特に非協力ゲームの理論は、簡潔に言えば、他人の意思決定が個人の利得に直接影響する状況(ゲー ム的状況)において、行動主体の意思決定が、どのように行われるのかを研究する。これは、各個人が自分の利益の最 大化に努めることが、市場経済全体の調和をもたらすという、アダム・スミス以来の英知が及ばないような状況で、人間の 経済・社会的行動を分析することを意味する。実際、経済やビジネス、政治や私たちの日常生活をみても、ゲーム的状 況における意思決定に、私たちは日々直面しているのは明らかであろう。 このように人間の経済・社会行動の分析視点から研究されてきたゲーム理論の学習を通じて、受講者は現代の経済・ 社会問題の本質を照射するための思考プロセスを形成できることが期待できる。このような思考プロセスを形成すること は、例えば受講者諸君が今後社会人として、自分の人生を自ら切り開いていく、すなわち自ら意思決定を行うなかでも、 有益なものになると考えられる。 他の科目との関連について言えば、ミクロ経済学や応用ミクロ経済学はゲーム理論に深く関連している。例えば、寡占 市場に登場する標準的なモデルでは、非協力ゲーム理論の概念がその背後にあるし、純粋交換経済のエッジワース・ ボックスに登場するコアは、(講義では扱わないが)協力ゲーム理論の概念である。従って、本科目を履修することは、ミ クロ経済学や応用ミクロ経済学の理解をさらに深めることができるであろう。さらに、産業組織論においてゲーム理論は 不可欠な分析道具であるので、産業組織論に関心のある学生に対しては、ゲーム理論の基本的概念と方法の習得が期 待できるであろう。 〔科目の到達目標(最終目標・中間目標)〕 中間目標: 非協力ゲーム理論の基本的概念と方法の習得を目標とする。 最終目標: 現代の経済・社会問題の本質を照射するための思考プロセス形成を目標とする。 〔学生の「授業評価」に基づくコメント・改善・工夫〕 授業評価で好評であった演習を数回盛り込みながら、授業を行う。 具体的には以下の通りである。 各回のトピックの解説が終わったら、その都度演習を行い受講者がその内容を理解しているかどうか、確認できる機会 を設ける。演習直後に演習問題の解説を行う予定であるので、受講者は自分が理解できなかった点をその場で確認で きる。また、応用例を多く提示しながら、講義を進めることで、ゲーム理論が身近に感じられるよう創意工夫したい。 〔教科書〕 『社会的ゲームの理論入門』、中山幹夫著、勁草書房、2005 年 〔指定図書〕 なし 〔参考書〕 ・ ・ ゲーム理論のさまざまな具体的な応用例を、やさしく紹介している入門書として、以下がある。 『ゲーム理論で解く』、中山幹夫・武藤滋夫・船木由喜彦編著、有斐閣ブックス、2000 年 社会科学としてのゲーム理論のより深い理解のためには、以下の本が参考になる。 『ゲーム理論と蒟蒻問答』、金子守著、日本評論社、2003 年 〔前提科目〕 な し 〔学修の課題、評価の方法〕(テスト、レポート等) ○ 期末試験によって評価する。 出欠はとらないが、言うまでもなく授業にすべて参加することが、本科目の単位取得 には欠かせないだろう。 ○ 期末試験の詳細は授業中に連絡する。 〔評価の基準及びスケール〕 A: 得点比率 80%~100% B: 70%~80%未満 C: 60%~70%未満 D: 50%~60%未満 F: それ以外 〔教員としてこの授業に取り組む姿勢と学生への要望〕 講義は教科書を中心に展開するが、適宜プリントを配布して、講義内容の充実を図る。また受講者の反応を勘案しな がら、なるべく丁寧にわかりやすく解説を行う。一方で、受講者との双方向的な議論を展開して、講義の活性化を図りた い。またオフィス・アワーを設けることで、受講者をフォローする。 理論というのは、一般的に、問題にしたい部分に着目して、他の多くを捨象する。この捨象を通じて、問題にしたい部 分を明確に分析することがはじめて可能になる。従って、ゲーム理論で焦点を当てている部分の目的や対象を吟味しな がら、なぜその理論で提唱されている概念や手法が重要なのかを考えることが、ゲーム理論の基本的概念の習得には 欠かせない。受講者には、上記の理論習得の姿勢を期待したい。また、積極的に議論に参加してほしい。なお、本科目 では予習は不要だが、復習は毎週行うことが望ましい。この積み重ねが、理論習得の1つの近道でもある。 第1回 授業スケジュール テーマ(何を学ぶか): ゲーム理論の学問的背景 内 容: 数学の危機とゲーム理論の誕生 第2回 教科書 第 1 章 テーマ(何を学ぶか): ミニマックス定理について 内 容: ミニマックス戦略 第3回 教科書 第 1 章 テーマ(何を学ぶか): ミニマックス定理について 内 容: ミニマックス戦略についての復習 教科書 第 1 章 第4回 テーマ(何を学ぶか): ミニマックス定理について 内 容: ミニマックス戦略についての演習 第5回 教科書 第 1 章 テーマ(何を学ぶか): ナッシュ均衡について 内 容: 戦略形ゲーム 第6回 教科書 第 2 章 テーマ(何を学ぶか): ナッシュ均衡について 内 容: ナッシュ均衡の意思決定基準 第7回 教科書 第 2 章 テーマ(何を学ぶか): ナッシュ均衡について 内 容: ナッシュ均衡についての復習と演習その1 第8回 教科書 第 2 章 テーマ(何を学ぶか): ナッシュ均衡について 内 容: ナッシュ均衡についての復習と演習その2 第9回 教科書 第 2 章 テーマ(何を学ぶか): サブゲーム完全均衡について 内 容: 展開形ゲーム 第 10 回 教科書 第 2 章 テーマ(何を学ぶか): サブゲーム完全均衡について 内 容: 展開形ゲームについての復習 第 11 回 教科書 第 2 章 テーマ(何を学ぶか): サブゲーム完全均衡について 内 容: 展開形ゲームについての演習 第 12 回 教科書 第 2 章 テーマ(何を学ぶか): 破産問題と配分ルール 内 容: 破産問題 第 13 回 教科書 第 2 章 テーマ(何を学ぶか): 破産問題と配分ルール 内 容: 破産問題の配分ルールとその性質 第 14 回 教科書 第 2 章 テーマ(何を学ぶか): 破産問題と配分ルール 内 容: 破産問題に関する演習 第 15 回 教科書 第 2 章 テーマ(何を学ぶか): 総括 内 容: 全体の授業内容についての復習 試 験 教科書 第 1 章・第 2 章 講義内容全体についての試験
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