鹿野達史の日本経済の視点 - 三菱UFJモルガン・スタンレー証券

平成 28 年熊本地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げま
すとともに、被災地の一日も早い復旧・復興を祈念いたします。
景気循環研究所
鹿野達史の日本経済の視点
2016 年 5 月 17 日
生産は落ち込むも、底割れは回避。夏場に持ち直しへ
●景気動向指数に基づく、内閣府の景気の基調判断は「足踏み」。
CI一致指数の上
景気の弱めの動きが続いている。11 日発表の 3 月の景気動向指数では、
昇が続けば、5 月値
内閣府のCIによる景気の基調判断が、引き続き「足踏み」となったほか、
発表の 7 月に「改
12 日発表の 4 月の景気ウォッチャー調査では、景気の現状判断DI、先
善」に戻ることも。
行き判断DIが大幅に低下し、「街角景気」の弱さが示された。
景気動向指数をみると、3 月のCI一致指数は、鉱工業生産の大幅な増
ただ、4、5 月は、
加などから、前月比で 0.5 ポイント上昇し、3 カ月後方移動平均も上昇に
熊本地震の影響も
転じた(図 1)。ただ、景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」の判断
あり、生産が落ち
基準について、内閣府は、3 カ月後方移動平均が「3 カ月以上連続」の上
込み、弱めの推移
昇を示すこととしており、これを満たさないことから、「足踏み」との基
となる公算大。
調判断を続けている。
4 月以降も、CI一致指数や 3 カ月後方移動平均の上昇が続けば、最短
嶋中 雄二
景気循環研究所長
鹿野 達史
景気循環研究所副所長
シニアエコノミスト
03-6627-5131
shikano-tatsushi1@
sc.mufg.jp
宮嵜
浩
あり、4、5 月と生産活動が落ち込み、CI一致指数が弱めの推移となる
公算が大きい。
図 1. 景気動向指数のCI一致指数の推移
(10年=100)
118
116
miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp
7カ月後方
移動平均
CI・一致指数
114
112
シニアエコノミスト
03-6627-5132
福田
で 5 月値発表の 7 月に、基調判断は「改善」に戻るが、熊本地震の影響も
3カ月後方
移動平均
110
108
圭亮
106
シニアエコノミスト
03-6627-5133
104
fukuda-keisuke@sc.mufg.jp
102
景気循環研究所
100
東京都千代田区大手町 1-9-2
(資料)内閣府資料をもとに三菱UFJモルガンスタンレー証券景気循環研究所作成
2012
2013
大手町フィナンシャルシティ
グランキューブ
1
2014
2015
2016
(年、月)
2016 年 5 月 17 日
●鉱工業生産は、4、5月と前月比減少が続く可能性。
4 月の予測指数は
4 月 28 日発表の製造工業生産予測指数は、4 月が前月比 2.3%上昇、5
大幅増だが、誤差
月は同 2.3%低下で(図 2・①)、4 月については、前月比増産が続く見通
や熊本地震の影響
しが示されている。ただ、足元では、鉱工業生産の実績が予測指数の伸び
を考えると、減少
を下回っていることが多く、生産予測調査の誤差を考慮し、推計した、経
が見込まれる。
済産業省発表の 4 月の「先行き試算値」は、前月比 0.8%上昇となってい
る(図 2・②)。
5 月は、電気機械な
さらに、生産予測は 4 月 10 日時点の調査で、4 月 14 日に発生した熊本
どが大幅な減産の
地震の影響が反映されていない。熊本地震の発生を受け、部品供給網(サ
見通し。
プライチェーン)が途切れ、トヨタ自動車が全国で完成車生産を停止した
ことなどがある。4 月 21 日の本欄(「鹿野達史の日本経済の視点」16 年 4
月 21 日号)で推計した通り、自動車生産の落ち込みで、4 月の鉱工業生
産は、2%程度押し下げられるとみられ、前月比で減少となる可能性があ
る(図 2・③)。
5 月は、トヨタ自動車が、完成車の生産を全ラインで再開しており、自
動車関連の生産は水準を戻してくることが見込まれる。一方、その他の業
種をみると、生産予測調査では、電気機械、化学、電子部品・デバイスな
どで大幅な減産が予想されている。加えて、鉱工業生産の実績に対する予
測指数の誤差を勘案すると、5 月も鉱工業生産が前月比で落ち込むことが
考えられる(図 2・③)。
図 2. 鉱工業生産の推移
(10年=100)
104
102
鉱工業生産
経産省の4月の
先行き試算値②
100
予測指数を
もとにした推計①
98
96
4月のトヨタなどの減産、鉱工業生産に
対する予測指数の誤差をもとにした推計③
94
92
2014/01
2015/01
2016/01
(年/月)
生産予測指数(4/10時点)
4月 前月比+2.6%、5月 同▲2.3%
①
経産省の「先行き試算値」
4月
前月比+0.8%
②
4月のトヨタなどの減産(9万台)、鉱工業生産に対する予測指数の誤差をもとにした推計
4月
前月比▲1.2%、5月
同▲1.1% ③
(資料)経産省資料、報道などをもとに三菱UFJ モルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様ご自身でご
判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
2
2016 年 5 月 17 日
●生産の底割れは回避。夏場には、上向きの動きが確認されよう。
4、5 月の減産も、
ただ、4、5 月の減産も、直近のボトムである 2 月の水準を下回らない
直近のボトムの 2
という意味において、底割れは回避され(図 2)、6 月以降は、自動車の挽
月を下回らず。
回生産などから持ち直してくるとみられる。
自動車の挽回生産については、愛知製鋼の事故に伴うトヨタ自動車の 2
6 月以降は自動車
月の生産停止後をみると、2 月 15 日の生産再開を受けた 2 月下旬時点の
の挽回生産も。
生産計画では、3 月に生産を正常化したのち、4 月は、日当たり生産台数、
稼働日を増やし、生産台数を生産停止前の計画に比べ 2 万台程度、上乗せ
挽回生産で、6 月の
鉱工業生産を 0.4
~0.5%押し上げ。
一致・遅行比率は、
生産、景気の持ち
直しを示唆。
していた。
足元については、5 月の生産正常化ののち、6 月に 2 万台の挽回生産を
見込んでいるため、自動車部品の増産も合わせて考えると、自動車関連生
産の増加により、6 月の鉱工業生産は、0.4~0.5%程度押し上げられるこ
とになる。また、今年は、4 月 29 日からの大型連休中の平日の 5 月 2 日
を休業とする工場が多く、全般的に 5 月の生産が弱めとなることから、6
月は、その反動もあり、多くの業種で前月比増産となると予想されている。
こうした中、生産活動や景気に先行して動く先行指標も持ち直してい
る。内閣府の景気動向指数のCI先行指数は低下を続けているが、先行指
数に先行する「一致・遅行比率」(CI一致指数/CI遅行指数)は、15
年 12 月に底をつけたかたちとなっており、生産や景気の持ち直しの可能
性を示している(図 3)。景気の足踏みが続いているが、夏場には、再び上
向きの動きが確認されることになろう。
図 3. 景気動向指数のCI一致指数、一致・遅行比率の推移
(10年=100)
(10年=100)
110
105
120
100
110
95
100
90
85
90
80
70
2000
一致・遅行比率
(右目盛)
CI一致指数
(左目盛)
80
75
2002
2004
2006
2008
2010
2012
2014
70
2016(年、月)
(資料)内閣府資料をもとに三菱UFJモルガンスタンレー証券景気循環研究所作成
(以
(16.5.17
上)
鹿野 達史)
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様ご自身でご
判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
3
2016 年 5 月 17 日
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。本
資料で直接あるいは間接に採り上げられている有価証券は、価格の変動や、発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価
の変化、金利・為替の変動などにより投資元本を割り込むリスクがあります。ここに示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示している
に過ぎません。本資料は、お客様への情報提供のみを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的と
したものではありません。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に関するアドバ
イスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは今後発行する場合があります。本資料でイン
ターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自身のアドレスが記載されている場合を除き、ウェッブサイト等の内容について当
社は一切責任を負いません。本資料の利用に際してはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。
当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合があります。当社および関係会社は、
本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品について、買いまたは売りのポジションを有している場合が
あり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、当社および関係会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、
その他サービスを提供し、かつ同サービスの勧誘を行う場合があります。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の役員(会社法に規定する取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう)が、以下の会社の役員
を兼任しております:三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱倉庫。
債券取引には別途手数料はかかりません。手数料相当額はお客様にご提示申し上げる価格に含まれております。
本資料は当社の著作物であり、著作権法により保護されております。当社の事前の承諾なく、本資料の全部もしくは一部を引用または複製、
転送等により使用することを禁じます。
c 2016 Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. All rights reserved.
Copyright ◯
〒100-8127 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティグランキューブ 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 景気循
環研究所
(商号)
三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2336 号
(加入協会) 日本証券業協会・一般社団法人金融先物取引業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会・一般社団法人第二種金融商品取
引業協会
本資料は、英国において同国the Prudential Regulation Authorityとthe Financial Conduct Authorityの監督下にあるMitsubishi UFJ
Securities International plcが配布致します。また、米国においては、Mitsubishi UFJ Securities (USA),Inc.が配布致します。
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様ご自身でご
判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
4