看護師養成の教育年限4 年を訴え

News Release
報道関係者各位
公益社団法人 日本看護協会 広報部
2016 年 5 月 13 日
厚労省医政局、老健局へ予算編成に関し要望
看護師養成の教育年限 4 年を訴え
公益社団法人日本看護協会(会長:坂本すが、
会員 70 万人)は 5 月 12 日、厚生労働省の神田
裕二医政局長、三浦公嗣老健局長に、来年度の
予算編成などに関する要望書を提出しました。
報道関係の皆さまにおかれましては、要望の
趣旨をご理解いただき、さまざまな機会にご紹
介いただきますよう、お願い申し上げます。
■医政局
神田局長に要望書を手渡す坂本会長(右)
重点要望として「看護師養成の教育年限4年
の実現」をはじめ「『特定行為に係る看護師の研修制度』の推進」
「地域包括ケアシステ
ム推進のための人材の育成」「看護職員の確保・勤務環境改善対策の推進」「医療機関・
施設等における医療安全の更なる確保・推進」「周産期医療体制整備の推進」の 6 点を
挙げました。
坂本会長は、基礎教育が過密で実践能力育成に必要な時間が確保できない現状を説明。
早急に基礎教育を抜本的に見直す必要があり、「加えて地域包括ケアを推進する上で、
看護師がキーパーソンとなり役割を果たすための高い能力が必要」と、今後更に必要な
教育を追加するためにも、教育年限を 4 年にする必要性について理解を求めました。
神田局長は「地域包括ケアを進める上で、看護の役割は重要。看護師の役割や基礎教
育の充実については今後、議論する予定だ」との考えを示しました。
■老健局
急増する在宅療養者や認知症の人とその家族、重度要介護者の医療・介護ニーズに
対応し、地域包括ケアシステムを実現するため「介護施設等における外部の看護人材活
用による医療提供体制の整備」「介護施設等における看護人材の育成・定着に向けた研
修支援の充実」など 4 点を要望しました。
介護施設などで働く看護職員は配置数が少なく、研修の機会を得にくい一方、さま
ざまな場面で高度な判断や他職種との連携を求められるため、研修機会の拡充や整備を
はじめ、育成や定着に向けた支援を求めました。
三浦局長は「地域の中での看護人材には大いに期待している」と前向きに答え「看護
職員が離職せず、病院や介護施設、訪問看護ステーションなど地域の多様な場を経験す
ることでキャリアアップできる仕組みを考えることも重要ではないか」と述べました。
<リリースの問合せ先> 公益社団法人日本看護協会 広報部
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前 5-8-2 電話:03-5778-8547
FAX:03-5778-8478
E メール [email protected]
ホームページ http://www.nurse.or.jp/
平成28年5月12日
厚生労働省
医政局長神田裕二殿
.、^
公益社団法人日本看護協会
会長坂本す 力
=^
^
^
平成29年度予算に関する要望書
人々が、どのような健康状態であっても住み慣れた地域で生活できる社会を目指して、目
下、地域包括ケアシステムの構築に向けた様々な施策が進められています。地域包括ケア
システムを実効性の伴うものとするためには、医療の専門職の機能が地域において広く十
分に確保されることが不可欠であり、また、人々の二ーズに迅速に対応できる仕組みを整え
ることも急がれます。
昨年10月に施行された「特定行為に係る看護師の研修制度」および「離職した看護師等
の届出制度」は、上述の課題に応えるために創設された制度です。これらの制度が期待さ
れる成果をあげるために普及・推進を図るとともに、より良い制度とするための評価や見直し
に取弊且むことが求められると同時に、地域包括ケアシステムの構築を、それぞれの地域に
おいて着実に推進する看護職の育成も急がれます。この基盤となる看護師養成制度の抜本
的見直しは重要であり、急務です。
また、安心・安全な医療・看護提供に直結する看護職の勤務環境の改善に、継続して取
畔且むことの重要性は言うまでもありません。
さらに、周産期医療提供体制の整備を推進し、安全で安心な出産環境を確保することは、
次世代の育成を支援し、健全な社会・地域をつくる要となります。
以上の理由により、平成29年度予算案等の編成にあたっては、以下の事項につきまして、
'尽力を賜りますよう、要望いたします。
重点要望事項
1.看護師養成の教育年限4年の実現
2.「特定行為に係る看護師の研修制度」の推進
3.地域包括ケアシステム推進のための人材の育成
4.看護職員の確保・勤務環境改善対策の推進
5.医療機関・施設等における医療安全の更なる確保・推進
6.周産期医療体制整備の推進
1.看護師養成の教育年限4年の実現
国民の二ーズに応え安全な医療・看護を保障するため、早急に、看護師養成の教育年限を
4年に延長されたい。
要望の背景
高齢社会の進展、医療の高度化・複雑化など、看護を取り巻く状況は変化し、看護師には、
短期の入院期間で集中的に高度な医療を提供することが求められている。また、複数の疾
患を有する高齡者の増加などにより、より複雑な病態を的確に把握・対応することも必要とさ
れている。これらの求められる役割に対応するための、看護師基礎教育の改革は不可欠で
ある。
直近の看護師基礎教育のカリキュラム改正は平成21年であるが、その改正案が検討され
た厚生労働省「看護基礎教育の充実に関する検討会」の報告書においては、看護基礎教
育の抜本的な検討を早急に行う必要性が指摘されている。しかし、平成21年の改正は現下
の問題点の解決のための限局的な改正にとどまっている。この改正においては「看護の統
合と実践」の分野が新設され、基礎分野・専門基礎分野においても教育内容の追加がなさ
れた。しかしながら、教育の総時間数は3000時間とほとんど変わらず、その結果、教育の過
密化がより一層進んだ。各科目あたりの教育時間数は減少し、特に 1 科目あたりの実習時
間は激減しており、実践能力を育成するために必要な教育時間の確保がなされていない。
このような教育の現状から、平成 21年のカリキュラム改正後も、新人看護師の実践能力と
臨床現場で求められる能力とのギャップは改善されていない。この教育の不足は、毎年
フ.5%にも及ぶ新人看護師の早期離職と、ヒヤリハットや医療事故などの医療安全上のりスク
の増大にもつながっており、教育の抜本的な見直しは一刻の猶予もない状況にある。
加えて、今後、地域包括ケアにおいて、病院完結型医療から地域完結型医療への転換を
進める要となるのは看護師である。多職種連携を推進しつつ、急オ生期医療から在宅医療ま
でそれぞれの場で、タイムリーに的確な医療・看護を提供するとともに、生活の質の視点をも
つて患者を支える役割を果たすなど、その活動の内容はさらに多様化・高度化することが想
定されており、それらに見合った教育内容の追加も必要である。
以上のことから、看護師基礎教育の教育内容・教育時間の不足は明確であり、国民の二
ーズに応え安全な医療・看護を行うために、必要不可欠な教育内容を追加し、教育年限を4
年に延長されたい。
1
2.「特定行為に係る看護師の研修制度」の推進
D 「特定行為に係る看護師の研修制度」の推進
①地域の中小規模病院、介護施設、訪問看護ステーション等に勤務する看護師を対象に
特定行為研修を実施している指定研修機関への財政措置を図られたい。
②特定行為研修へ看護師を派遣する訪問看護ステーションや介護施設等に対し、代替職
員の確保のための特段の財政措置を図られたい。
(3)「特定行為に係る看護師の研修制度」について、看護師へのさらなる周知を図ると共に、
医療関係職種や国民へも周知をされたい。
要望の背景
本制度は、2025年に向けて、急j曽する地域の医療二ーズに対応するため、効率的かつ
効果的な医療が提供できるよう創設された。そのため、その趣旨に資するよう、自施設等の
看護師のみならず、地域の中小規模病院、介護施設、訪問看護ステーション等に勤務する
看護師を対象に特定行為研修を実施している指定研修機関に対し、特段の財政措置を図
られたい。
また、本制度は、すでに医療現場等において活躍している看護師を対象としているため、
制度推進のためには、現在の職場に在籍しながら、研修を受講できるような支援が不可欠
である。特に、1施設あたり看護師の人数が少ない訪問看護ステーションや介護施設等にお
いては、研修への派遣が困難な状況にあるため、研修の受講の機会が広がるよう、e ラーニ
ングの活用と併せて、代替職員の確保などに特段の配慮が必要である。そこで、特定行為
研修へ看護師を派遣する訪問看護ステーションや介護施設等に対し、特段の財政措置を
図られたい。
さらに、多様化・複雑化する医療二ーズに対し、安全かつ効果的・効率的に医療を提供
するという本制度の趣旨に鑑み、特定行為の実施にあたっては、本研修を修了した上で手
順書により実施することを推奨すると共に、本制度が現場の看護師に効果的に活用されるよ
う周知を図られたい。周知にあたっては、本制度の活用による組織としての医療の質向上や
患者・家族への介入の成果など、本制度の導入・活用による効果が具体的にイメージできる
よう、紙媒体のみならず、動画等での情報提供についても特段の財政措置を講じられたい。
また、本制度が真に有用なものとなるためには医療関係者および国民に制度が正しく理解
されることが必要である。医療関係者や国民に対し、本制度についての周知を図られたい。
2
2)特定行為に係る看護師の研修制度の評価および見直しの検討
①特定行為研修を修了した看護師の活動の成果について事例収集等を行うモデル事業を
実施し、本制度の効果について検証されたい。
②とれまでの検討の過程において、特定行為とするかについては引き続き検討が必要とさ
れた行為について、早急な議論の再開をされたい。
長巨三旦d)1占、jミ
本制度は 2015年10月より施行され、研修修了者が現場で活動を始めている。また、試
行事業を経て特定行為研修を修了した看護師の中には、すでに医療の質向上や患者負担
の軽減、効率的な医療提供に資する成果を上げている人もいる。そこで、特定行為研修を
修了した看護師の活動の成果について事例収集等も含めて把握されたい。その結果を踏
まえ、研修のあり方や現場における体制整備等の観点から本制度がその創設趣旨に資する
効果を上げるための彪、要な要件について検証されたい。
また、医道審議会保健師助産師看護師分科会看護師特定行為・研修部会において、大
多数の委員から「特定行為とするかについては引き続き検討が必要」という意見が出た行為
について、医療現場の実情に鑑み、早急に議論を再開すべきである。
3)グレーゾーンを明確化するとともに診療の補助とされた行為を看護師が実施す
るにあたっての適切な措置
①特定行為に係る看護師の研修制度に関する検討の過程において議論された診療の補
助に含まれるかどう力Ⅷ愛昧であった行為について、国としての見解等を明示されたい。
②明確化された診療の補助行為については、看護師の実施にあたり、安全に実施するため
に必、要な教育内容を検討するとともに、必要な体制整備等を記載したガイドライン等を作
成されたい。また、必要な体制整備等に特段の財政措置を講じられたい。
要望の背景
「特定行為に係る看護師の研修制度ルこ関する検討の過程において、有識者会議では今
まで多くの看護師が実施していなかった難易度の高い行為も含め、診療の補助として分類
された。しかし、特定行為以外の行為については、国としての見解等は示されていない。そ
のため、看護管理者からは、これらの行為を着護師が新たに実施するかどうかについて、ど
のように考え、対応すればよいかという問い合わせも多い。
3
したがって医療現場における混乱を最小限にするためにも、国としての見解を示すととも
に、実施にあたっての留意事項や必要な体制整備等も記載したガイドライン等を作成し、周
知するとともに、必要な体制整備等に対し、特段の財政措置を講じられたい。さらに、安全な
実施にあたって必要な教育内容について、看護基礎教育に追加することも含め検討された
し、
3.地域包括ケアシステム推進のための人材の育成
1)病院看護師を対象とした退院支援関連研修の充実
在宅療養への移行を円滑に進めるために、病院看護師を対象とした退院支援関連研修の
充実を図られたい。
要望の背景
平成28年度診療報酬改定において、退院支援に関する評価の充実が図られた。新たに
設けられた「退院支援加算」の算定要件には、病棟看護師の参画が明記され、治療の経緯
や患者の状態をよく知る病棟看護師の役割の重要性が評価された。
在宅療養にスムーズに移行し、地域で安心・安全な療養生活を送るには、入院早期、あ
るいは入院前の外来受診から在宅療養を想定した上でさまざまな調整の必要がある。
さらに、今後の認知症や独居高棚者・高齢者世帯の増加>患者の高齢化・重症化といっ
た社会変化に伴い、退院支援の必要性はますます高まると考えられる。
今後は病院内の限られた職員のみでなく、病棟等でケアを提供する看護職員全員に在
宅療養・退院調整の知識が必要である。
そのため、病院看護師を対象とした在宅療養・退院支援に関する研修内容の標準化及
び研修受講が広がるよう財政措置を図られたい。
2)訪問看護提供体制の整備にむけた指導者の育成
(1)在宅医療・訪問看護ハイレベル人材育成事業の継続を要望
訪問看護の研修を支えるための指導者養成と研修体制の整備のため、在宅医療・訪問看
護にかかるハイレベルケア人材育成事業を平成29年度以降も継続されたい。
豆巨妄旦4)1占、号王
訪問看護に従事する看護職員は現在約4万人と増加したが、今後の在宅療養二ーズや
少子高櫛化の進行をふまえ、訪問看護人材の確保・活用策を全国的に展開する必要があ
4
る。こうした状況に鑑み、日本看護協会では訪問看護未経験者向けの入問講座となる「訪
問看護入門プログラム」を開発し平成28年度は、本プログラムの全国的な普及を計画してい
る。一方で、研修の増加により、専門知識等を教授する講師人材の不足が懸念される。訪
問看護に対する専門知識や経験を豊富に備え、地域の研修や、事業所の運営1耐壬の訪
問看護師を支えることができる指導者を養成が喫緊の課題である。
国において、訪問看護指導者養成プログラムの開発と、プログラムに沿った指導ができる
知識・技術を備えた人材の育成のための研修「在宅医療・訪問看護ハイレベルケア人材養
成事業」を平成29年度以降も継続することを要望する。
(2)在宅医療・訪問看護ハイレベル人材育成事業の拡充
在宅医療・訪問看護ハイレベル人材育成事業に、地域包括ケアシステム構築推進における
地域の訪問看護リーダー養成事業を追加されたい。
要望の背景
地域包括ケアシステム構築の推進に向けて、在宅医療・介護連携事業が各地で進めら
れている。訪問看護が医療二ーズの高い療養者の支援や取組を通して行政保健師、多職
種等と協働して、地域の二ーズにあった看護サービス提案事業の実施により、行政施策へ
の反映が必要である。
そこで、地域の訪問看護事業所を束ね、行政保健師等と協働し、地域の在宅療養にお
ける多様化した課題解決、地域づくりの視点を持った訪問看護師の政策リーダーを養成し、
在宅医療・介護の効率的な推進の支援を図ることを提案する。
国において、地域の訪問看護リーダー育成プログラムの開発と研修を平成28年在宅医
療・訪問看護にかかるハイレベルケア人材育成事業に追加することを要望する。
4.看護職員の確保・勤務環境改善対策の推進
1)看護職員の勤務環境改善・就業促進対策の推進強化
(1)ナースセンター事業の強化
①中央ナースセンター事業に係る補助金を拡充されたい。
②都道府県ナースセンターの効果的な運営を行うために必要な費用および人材の確保に
関して都道府県に助言されたい。
要望の背景
5
①平成27年4月より第5 次NCCS の職業紹介システム「eナースセンター」の運用を開始し、
求職登録のスマートフォン対応でシステム上での応募機能の追加等、利用者の利便性を強
化し、求職者が順調に増えつつある。
また、平成27年10月1日の改正看護師等人材確保促進法施行により、雛職時等の届出制
度が始まり、看護師等の届出サイト「とどけるん」を通じて、従来、ナースセンターを利用して
いなかった看護職の求職登録も増えつつある。
しかし、全国の看護職の数を考慮すると、ナースセンターでの職業紹介利用者および離職
時等の届出者数は少なく、周知の課題が残る。
そこで、ナースセンターによる看護職の就業支援の効果をより高めるべく、NCCS のセキュリ
ティ対策の強化及びナースセンターの離職時等の届出制度の周知への予算を講じられたい。
②都道府県ナースセンターの運営費は主に各都道府県行政の一般財源より捻出されている。
昨年 W 月に看護師等の人材確保促進に関する法律の改正が施行されたことにより、届出
制度の受付および届出者の状況に応じた支援等都道府県ナースセンターが担うべき役割
が増えているにもかかわらず、必要な事業費が行政からの補助金で手当てされていない。
また、医療介護確保総合基金(以下、基金)を活用し、ナースセンターの機能強化を行って
いる都道府県は少ない。
都道府県ナースセンターが担うべき役割を遂行するためにも運営に必要な費用を助成する
よう都道府県行政へご助言いただきたい。
たとえば、今後増加が予測される定年退職者の再雇用の促進について、再就業相談会や交
流力フ工等の取弊且みは一部の都道府県ナースセンターに限られている。そのため、全国に
拡大することは急務であり、このような取弊且みを実施するためにも必要な財政措置を図られ
たい。
(2)人確法基本指針の改訂
人材確保法基本指針(看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針)を、
現状と当面の課題を踏まえて速やかに改訂されたい。
要望の背景
「看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針(平成四年十三月二十
五日X文部省/厚生省/労働省/告示第一号)」は、告示から20年余を経て、看護職員確
保の必要性は当時以上に高まっているものの、看護職員の就業実態並びに確保を巡る状
況が大きく異なっており、新たな指針の策定が期待されている。
人材確保法並びに同指針の果たした役割と成果を総括したうえで、看護職員の就労の
6
実態と確保に向けた課題を踏まえ、将来に向けた看護人材確保の基本方針を明確に示す
べきである。
改訂に際しては、看護労働の負担軽減に向けた改善目標(夜勤回数上限、勤務間インタ
ーバル確保、長時間労働の儒邨艮、休日の確保、労働安全衛生対策の強化、育児・介護等と
の両立支援にかかわる柔軟な勤務、等)を、具体的な数値目標を掲げて盛り込まれたい。さ
らに、
0看護師等の届出制度と再就業支援対策の充実
0セカンドキャリア人材の就業促進
等の政策課題についても、取弊且みの方向性を示されたい。
③医療分野の『雇用の質』向上の取組みの促進
都道府県医療勤務環境改善支援センターの機能拡充及び効率的な運営について、調査
研究事業の成果を踏まえ、労働基準局と連携のうえ、都道府県主管課に助言指導された
し、
・都道府県看護協会が取弊且む勤務環境改善に向けた事業について、所要の経費の助成
を含めた連携を進めること
【事業例】都道府県看護協会が開催するワーク・ライフ・バランス推進ワークシ,ツプ、医療従
事者向けワーク・ライフ・バランス1ndeX調査費用
要望の背景
平成 27年度厚生労働省委託事業「医療分野の勤務環境改善マネジメントシステムに基
づく医療機関の取組みに対する支援の充実を図るための調査・研究」の提言においては、
医療勤務環境改善支援センター機能の拡充に向けた具体的な方策が示されており、当該
提言並びに取組み好事伊K富山県、鳥取県等)等を踏まえ、労働基準局と連携のうえ、都道
府県主管課に助言されたい。
とくに、都道府県看護協会が開催する「ワーク・ライフ・バランス推進ワークショップ」等の
医療機関支援活動は、自主的取組みへの組織的支援であり、各地で実績を上げてきたも
のである。ワークショップ参加施設の中には、看護職に限らず医療従事者全体の取組みとし
て活用している伊ルあり、今後そのような形での展開が可能と考えられる。また、「ワーク・ライ
フ・バランス 1ndeX 調査」は日本看護協会が当初看護職員を対象として開発したものである
が、現在医療従事者全般・事務職員等も利用可能なものへの改訂を行っているところである。
「ワークショップ事業」を医療勤務環境改善支援センターと連携した事業として位置づけ、
「ワーク・ライフ・バランス1"d餓調査」費用と併せ、運営費用について助言されたい。
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④看護職員の勤務実態の把握
看護職員の勤務環境改善に向け看護職員の勤務実態を把握し、現状と課題を明確にされ
たい。
雲チ三召d)1占、景;
改訂人確法基本指針に看護職の労働負担軽減に向けた改善目標を、具体的な数値目
標を示して盛り込んでいただきたい。
また、具体的な数値目標は、あらためて国内の看護職の勤務実態および勤務特性が及
ぽす健康への影響等を把握されたうえで、設定されることが重要と考える。とくに夜勤・交代
制勤務に伴う健康りスクについては、国際がん研究機関、国際産業保健学会などが指摘し
ているが、日本では医療従事者が世界的にも例を見ない長時間かつ不規則なシフト編成で
の夜勤を行っているにもかかわらず、その勤務が及ぽす健康への影響、労働安全衛生の観
点からの課題等についてデータが収集されていない。この際、国の責任において、もしくは
研究機関・関係団体等への委託により、調査研究を実施されたい。
5.医療機関・施設等における医療安全の更なる確保・推進
①「医療安全管理者の業務指針および養成のための研修プログラム作成指針」の検証およ
び見直しを図られたい。
②医療事故調査制度において、医療事故調査等支援団体の支援体制に地域差が生じな
いような対策を講じられたい。
③病院以外の医療・介護提供施設における医療安全の確保について検討を進められた
し、
長亘1塁4)1,景:
医療・介護提供体制の改革による医療機関等の機能分化の推進や、チーム医療の進展
など、医療を取り巻く環境は大きく変化している。このような状況の中、医療安全の確保は、
一層重要となっている。
医療安全管理の要となる医療安全管理者の養成は、平成 19年に作成された「医療安全
管理者の業務指針および養成のための研修プログラム作成指針」に基づいて、さまざまな
団体が研修を開催し、養成を行っているが、当該業務指針ならびに研修プログラム作成指
針は、平成 19年以降、一度も見直しが行われていない。機能分化が進む中、各施設の機
能や医療安全管理体制の整備状況に合わせ自律的に活動できる人材が求められており、
現在の医療を取り巻く変化を踏まえた医療安全管理者の役割を明示したうえで、指針を見
8
直す必要がある。
平成27年10月に診療所・助産所を含むすべての医療機関を対象に施行された医療事
故調査制度では、医療機関は原則、医療事故調査等支援団体の支援を受けることとすると
されているが、支援団体の支援の体制や運用は、地域よって様々である。制度施行の平成
27年10月から平成28年1月までの4力月間、医療事故調査等支援センターへの相談件
数は 729 件であり、対象となる医療機関側では、本制度について手探りで進めている実態
がある。このため、医療機関の実情がわかる各地域での迅速で適切な支援体伶井菁築が急務
であり、地域ごとに支援体制に格差が生じないよう、実態を把握するとともに支援策を講じら
れたい。
また、従来の医療安全施策は病院を中心に進められてきたが、機能分化および地域包
括ケアの推進により、療養の場は拡大しており、病院以外での医療安全の確保は急務であ
る。しかし、病院以外の各施設での医療安全に関する実態すら明確ではなく、実態を把握
のうえ、医療安全確保に向けた検討を進めることが必要である。
6.周産期医療体制整備の推進
1)周産期医療体制の検討と推進
(1)「周産期医療体制整備指針」への検討事項の明記
周産期医療提供体制の整備に向け、次の事項を検討・明記し、実現されるように推進された
し\
①総合周産期母子医療センターの機能強化として、副センター長等、マネジメントを担う部
門に助産師も位置付けること。また、搬送においてコーディネート機能を担う看護職を配
置すること。
②各都道府県周産期医療協議会構成員に、総合周産期母子医療センターに勤務する助
産師を加えること。
③地域周産期母子医療センターや一般病院産科病棟の機能と要件を明確にすること。
④周産期に関連するマンパワ一の確保を図ること。
雲i!晝d)雫号,ミ
周産期医療体制整備は地域の実情をふまえて都道府県が行うこととなっているが、その
基本方針は国が策定することとなっており、周産期医療体制整備指針が示されている。
高度医療を必要とする二ーズの増大に対する受け入れ能力の不足や産科の混合病棟の
増加による療養環境の悪化、周産期医療を担う助産師の就業先偏在や研修体制整備等が
課題となっている。
9
高度医療を必要とする対象者が適時、必要なケア提供を受けられるようにするためには、
周産期医療体制における効果的な機能分化と役割分担、搬送と退院における調整機能の
強化が求められる。
そのためには、周産期母子医療センターのみならず、周産期医療を担うその他の医療機
関についても要件を明記されるよう検討されたい。混合病棟化が進む地域周産期母子医療
センターについても、当該施設が有する機能に相応の療養環境が整備されるよう病棟機能
に関する要件を明記されたい。
また、搬送と退院における調整機能の強化として、各都道府県周産期医療協議会の構成
員に総合周産期母子医療センターに勤務する助産師を加えるとともに総合周産期母子医
療センターに搬送に関するコーディネートを担う看護職を配置する事を検討し、明記された
し\
さらに、総合周産期母子医療センター等で開催される周産期医療関係者に対する研修
について、助産師や看護師に対する周産期関連の研修の整備を図るためにも、総合周産
期母子医療センターの副センター長として助産師を位置づけることを検討し、周産期医療
整備指針に明記されたい。
「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会報告書」(平成21年3月)では、潜
在助産師の発掘や他科に勤務する助産師を産科に呼び戻すことによる人材確保の検討の
必要性も明記されており、潜在助産師数の把握と助産師の需給計画の検討を進めることで
周産期医療を担う医療職の確保を図られたい。
②周産期医療専門官(助産師)の配置
周産期医療体制整備に資する助産師の活用推進を図るため、地域医療計画課救急・周産
期医療等対策室に周産期医療専門官として助産師を配置されたい。
要望の背景
周産期医療提供体制において、助産師は産科医・小児科医と共にその一翼を担う機能
を持っており、医政局通知「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推
進について」(2007年12月)や、医政局長通知「分娩における医師、助産師、看護師など役
割分担と連携等について」(2007年)、「安心と希望の医療確保ビジョン」(2008年)、「チーム
医療の推進について」(2010年)等において、助産師の専門性の発揮が期待されている。
周産期医療の一端を担う助産師においては就業先偏在是正や実践力強化が課題として
あげられ、安全で安心な出産環境の確保に影響を及ぽしている。また、周産期における母
または子の長期入院による母子分離や遠隔地での入院による家族分離等が課題となって
おり、母子関係や家族形成過程に支障をきたさないような政策立案が求められている。
10
現在、救急・周産期医療等対策室には、産科医・小児科医の専岡官は配置されているが、
助産師の専門官は配置されておらず、母子関係や家族関係の構築支援をふまえた施策が
十分とは言えない。日本における虐待防止は、出産後の対応だけでなく、周産期の対応が
非常に重要であり、周産期においても母子関係や家族関係の構築についての視点をふま
えた施策が考慮されることが求められ、女性とその家族の視点に立ち周産期における支援
を実施する事ができる助産師の活用が有用と考えられる。
周産期医療機能体制の整備のためには、周産期医療機関の連携が重要であると同時に、
周産期医療機能体制を担う医療関係者の教育体制整備も重要であり、助産師をめぐる課題
に関する早急な解決は体制整備に不可欠であること、加えて周産期における、母子関係・
家族関係を考慮が必要であることから、医系専門官に加え、看護系の専問官として助産師
の配置を図られたい。
2)助産師の人材確保と機能強化
助産師の人材確保と機能強化に向け、次の事項の実現を図られたい。
①助産師出向支援導入事業の継続と助産師出向コーディネーター養成研修に対する予算
措置
②院内助産所・助産外来の推進と標準的な指標の開発及び普及
要望の背景
周産期医療体制整備において、周産期医療を担う人材不足や分娩施設・病棟の閉鎖、
助産師の偏在等が喫緊の課題となっている。
平成 27年度より看護職員確保対策総合的推進事業にメニュー化された「助産師出向支
援導入事業」は、助産師の偏在是正、安全で安心な出産環境の確保につながるものである。
平成 27年度の実施都道府県の実施状況を把握し、好事例情報を発信する等今後も一層
の推進を図られたい。
なお、助産師出向には、助産師出向コーディネーターが重要であることが明らかとなって
おり、その早急な養成が求められる。助産師出向コーディネーター養成研修に対する予算
措置を講じられたい。
助産外来・院内助産所については国においても平成20年以降推進してきた経緯があり、
周産期医療体制整備において不可欠である。現在、助産外来の導入・開設数は947件、院
内助産の導入・開設数は 166 件となり、導入・開設数は増加している。しかし、院内助産所
の構造・設置状況、対応する助産師の人数、ケア提供体制等、その実施体制はさまざまで
ある。周産期医療体制整備指針においては、周産期医療体制に係る調査分析項目として
「院内助産所および助産外来の活動状況等」が挙げられており、数の把握のみならず、活
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動内容の把握が必要であるため、助産外来・院内助産所開設に関する標準的な指標を開
発すること及び普及を推進されたい。
3) NICU/GCUから退院する児の在宅療養に関わる看護職の育成
MCU/GCU から退院する児の在宅療養に関わる看護職育成のための標準的教育プログラ
ムの開発と試行について予算措置を講じられたい。
要望の背景
国においては、妊娠・出産・育児における切れ目のない支援の強化を図っている。正常
経過をたどる妊娠・出産・育児において切れ目のない支援の強化はもちろんのこと、
NICU/GCU から退院する児については、退院後の支援体制が十分でないことから、MCU
での長期入院を強いられる場合等、母子関係や家族関係の構築が困難になることがあり、
切れ目のない支援に対する二ーズはより高いといえる。
MCU/GCU から退院する児が在宅療養するために必要な支援は、単に在宅へ移行する
ための支援だけでなく、児の成長発達を考慮した支援が求められる。そのためには、在宅療
養へ移行する際に関わる看護職すべてが、対象となる児の状況を理解した上で、適時、退
院に必要なさまざまな調整を行う必要がある。しかし、本会が行った「医療機関と訪問看護ス
テーションにおけるNICU退院後の母子とその家族への支援に関するフォーカスグループイ
ンタビュー調査」(平成27年)では、医療機関の看護職が行う退院指導には対象者の在宅療
養の状況や成長発達を考慮した内容が十分に反映されていないことが明らかとなった。
このことから、医療機関に勤務する看護職が小児の在宅療養の現状や成長発達に関す
る理解を深められる教育プログラムの開発と試行を推進されたい。
また、全国訪問看護事業協会「医療二ーズの高い障害者等への支援策に関する調査報
告書」(H22年度厚生労働省障害者総合福祉推進事業)によると、18 歳以下の利用者割合
が 0%の訪問看護ステーションは 47.4%と、小児の在宅療養支援を行っている訪問看護ス
テーションが少ないことが明らかとなっている。今後は、小児の在宅療養支援を行える訪問
看護ステーションの増加が必要であるため、訪問看護師が小児の在宅療養を支援できるよ
うになるための教育プログラムの開発と試行についても推進されたい。
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4)助産サービス推進室の設置
妊産祷婦と新生児の命を守るために、助産師がその役割・専門性を充分発揮できるよう、看
護課に助産サービス推進室の設置及び助産専門官(助産師)の配置を推進されたい。
要望の背景
「まち・ひどしごと創生基本方針検討チーム報告書」では、妊娠期から子育て期にわたる
様々な二ーズに対応した切れ目のない支援体制の構築と全国どの地域に住んでいても安
心して出産できる周産期医療体制の確保の重要性が述べられている。
また、「女性の健康の包括的支援の実現に向けてく3 つの提言>」では、安全で安心な
出産環境について、院内助産所の活用や、産前・産後ケアの充実の担い手として、助産師
等の専門職の活用を図り、女性の健康を包括的に支援する政策を推進する法的基盤と体
制を厚生労働省に設け、新法に基づく基本方針の策定、協議会の運営等の事務を担当さ
せるべきであると提言している。
女性の健康を包括的に支援する政策推進に関する運営事務の担当者設置は、一億総
活躍社会の実現にも資するものであり、すべての妊産撫婦と新生児の命を守り、女性の健
康を支援する助産師の活用に向け、助産サービス推進室を設置されたい。
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平成 28年5月12日
老健局長
三
厚生労働省
浦公嗣殿
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公益社団法人日本看護協会
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会長坂本す
平成29年度予算編成に関する要望書
高齢者が住み慣れた地域で最期まで、またその家族も介護離職することなく
安心して暮らせる社会の実現に向けて各地で地域包括ケアシステム構築と推進
が本格的に進められていきます。
急増する在宅療養者や認知症の人とその家族、重度要介護者の医療・介護二
ーズに対応し、地域包括ケアシステムの理念を実現するために、在宅・介護分
野の看護の体制整備と人材確保に、引き続きのご支援をお願いいたします。
つきましては、平成 29年度予算案の編成に際し、以下の事項についてご検
討ならびにご配慮を賜りますよう、要望いたします。
要望事項
介護施設等における外部の護人材活用による医療提供体制の整備
認知症高齢者のための、護師を含む多職種協による訪問療養支援(服
薬管理等)モデル事業の実施
認知症対応力向上研修の;旨者層の成および研の機会拡充
介護施設等における護人材の成・定着に向けた研支援の充実
1.介護施設等における外部の看護人材活用による医療提供体制の
整備
D 介護施設等における外部からの訪問看護の導入
特養や居住系サービスにおける医療二ーズ対応、夜間・緊急対応体制を強
化するため、外部からの訪問看護の導入について、対象となる疾患や状態像
の拡大を検討されたい。
呈碁工豊d)1与号{
「終の棲家」の役割を果たす特別養護老人ホームや、認知症グループホーム、
特定施設入居者生活介護等では入居者の重度化が進み、医療二ーズ対応や夜
間・緊急対応の強化が求められている。
しかしながら、全ての特養や居住系サービスが内部の体制として医療職を必
要数常時配置することは困難であり、また「生活の場」に濃厚な医療提供体制
は不要であることから、今後は必要に応じ適時適切に、外部の看護人材活用に
よる医療提供体制を整備すべきである。
以上のことから、現行制度では特養において末期がんおよび精神科訪問看護
のみ、認知症グループホームにおいては末期がんや厚生労働大臣の定める疾病
等に限り医療保険適用が認められている「外部からの訪問看護サービス導入」
について、対象となる疾患や状態像、契約による夜間緊急時対応など、拡大の
方向性を検討されたい。
2)介護施設等における外部の専門性の高い看護師によるコンサルテー
ション・技術指導の導入
特養や居住系サービスにおける医療二ーズ対応、ケアの向上を図るため、外
部の認定看護師・専門看護師等、専門性の高い看護師によるコンサルテーシ
ヨンや技術指導を行うモデル事業を実施されたい。
基巨1翌d)1号号忌
特養や居住系サービスの看護職員は配置数が少なく、研修のために長期間職
場を離れることが困難なことから、利用者の重度化に伴う医療二ーズ対応や、 認
知症対応のスキルアップの機会に恵まれていない。
そこで、現行制度ではがん緩和ケアと祷瘻ケアについて認められている「専門
性の高い看護師による訪問」(訪問看護師との同行)について、訪問先および対
象となる疾患・状態像の拡大を検討し、特養や居住系サービスの看護職員が、祷
癒や糖尿病、認知症のケア、感染管理等について、外部の専門性の高い看護師か
らコンサルテーション・技術指導を受けるモデル事業を実施されたい。
1
2.認知症高齢者のための、訪問看護師を含む多職種協働による訪
問療養支援(服薬管理等)モデル事業の実施
在宅療養する認知症高齢者に対する、看護師を含む多職種協働による訪問療
養支援綱艮薬管理等)のモデル事業実施のための財政措置を講じられたい。
呈巨1塁d)1号牙{
近年、また今後も急増が予想される認知症高齢者においては、認知症に加え複
数の慢性的な身体疾患を抱える人も非常に多いが、日常的・継続的に複数の内服
薬を適切に管理することは困難であり、服用の誤りによって身体に重大な影響
を及ぼす恐れが大きい。
認知症高齢者が住み慣れた地域のよい環境で最期まで安心して暮らせるため
には、服薬管理を中心に在宅療養を見守り、支援する仕組みが必要である。現在、
地域で医療・介護に携わる専門職がそれぞれ個別で訪問する制度はあるが、関係
者間での適切な情報共有が難しく、認知症の人や家族が安心できるトータルな
支援にはつながりにくい。訪問看護師、薬斉嶋市、ケアマネージャー等多職種での
訪問が可能になれば、たとえば服薬管理においては服用状況の確認、残薬の確認
や効能の詳細な説明、重複の有無、必要な支援の検討などが効率的に実施できる。
認知症高齢者もその家族や地域住民も健康に、安心して住み慣れた地域で暮
らし続けられる基盤づくりのひとつとして、在宅療養する認知症高齢者に対す
る、訪問看護師を含む多職種協働による訪問療養支援(服薬管理等)のモデル事
業実施のための財政措置を要望する。
2
3.
認知症対応力向上研修の指導者層の育成および研修の機会拡充
認知症対応力向上研修の指導者層の育成および研修の機会拡充のための十分な
財政措置を講じられたい。
認知症の人が住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らせるためには、医
療機関を受診、入院の際にも、認知症の人に対応した適切なケアを受けられる
ことが重要であり、病院看護師の認知症ケアに関する知識や技術、認知症対応
力の向上が急がれる状況である。
そのためには認知症対応力向上研修が全国で偏りなく行われ、より多くの看
護師が受講できることが必要であり、認知症対応力向上研修を各地域や医療機
関で実施運営、指導できる人材の育成が喫緊の課題である。
現在高齢者や認知症の人へのケアの専門性を持つ看護職として、老人看護専
門看護師93名、認知症看護認定看護師5田名(平成27年2月現在)が全国で
活躍している。このような専門性の高い看護職が所定の研修を受け、認知症対
応力向上研修における指導者となれば、全国の看護師のすみやかな認知症対応
力向上に非常に効果的である。
以上のことから、認知症対応力向上研修の指導者層の育成および研修の機会
拡充のための十分な財政措置を講じられたい。
3
4.介護施設等における看護人材の育成・定着に向けた研修支援の
充実
D 介護施設等における新規採用看護職員への導入研修の整備
介護施設等における看護職員の確保・育成・定着を支援し、早期離職を防
止する取り組みとして、新規採用者や介護施設への就職希望者を対象とした
導入研修の実施、外部研修の受講に係る代替要員の確保等について、地域医
療介護総合確保基金(介護分)の事業例として明示し、全国的な支援体制を
整えられたい。
旦烹喜旦d)1,号{
介護施設における常勤看護職員の離職率は、特養21.5%、老健16.4%と介護職
員よりも高率であり、さらに入職1年以内の看護職員籬職率は特養39.8%、老健
認.3%と非常に高率である。(日本看護協会「特別養護老人ホーム・介護老人
保健施設における看護職員実態調査」2015年)
高い早期離職率の背景としては、介護施設の看護職員は医療機関からの転
職・異動者が多く、必ずしも介護施設における看護の基礎知識・技術や基本的
な制度・報酬、多職種連携についての理解が十分でないにもかかわらず、導入
研修や施設内でのωTによる育成体制が整っていないことが挙げられる。
全ての都道府県で看護人材の育成・定着のための研修体制が整備されるよう、
基金の事業例として明示し、全国的な普及を図られたい。
2)
「特別養護老人ホーム看護リーダーフォローアップ研修」の実施
介護施設等における看護職員の労働環境改善、ケアの質向上を図るため、
厚生労働省「高齢者権利擁護等推進事業」の一環で実施している「特別養護
老人ホーム看護リーダー養成研修」のフォローアップ研修を実施し、看護管
理者のマネジメントスキル強化に向けた支援を実施されたい。
皇巨工豐d)1号号王
日本看護協会では平成17年度から、厚生労働省「高齢者権利擁護等推進事業」
の一環で、各都道府県から「特別養護老人ホーム看護リーダー養成研修」を受託
し、看護管理者の育成を行ってきた。平成27年度までの研修修了者は 1,噐8名
に上るが、これまで修了者の自施設や地域における実践状況についてフォロー
アップが行われておらず、研修成果の検証につながっていない。
多様な看護人材が介護施設等に定着し、働き続けられる環境を整備するため、
「特別養護老人ホーム看護リーダー養成研修」のフォローアップ研修を実施し、
看護管理者のマネジメントスキル強化に向けた支援を実施されたい。
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