図 4-154 排気系まわりの遮熱板配置例 図 4-152 穴ふさぎの適用例 遮熱板 動力ユニット 発泡ウレタン遮音材 (フロントピラーロア内) 排気系 図 4-155 走行中の車体まわりの静圧分布の例 穴ふさぎテープ (サイドシル) 上下方向成分=揚力 赤:高圧力 青:低圧力 図 4-153 遮音・吸音材の適用例 ルーフライニング (吸音仕様) フードインシュレータ (吸音仕様) 前後方向成分=抗力 リアフェンダライナ (吸音仕様) ダッシュボードインシュレータ /フロアカーペット (吸音仕様もしくは遮音仕様) フロントフェンダライナ (遮音仕様もしくは吸音仕様) ネルを二重にした遮熱板もある.遮熱板には一般的に 軽量で放熱性の良いアルミ板材が使われる. フロントボデーでは,フードの温度上昇を防止する ためフード裏面に遮熱材が設定される場合もある. 4-6-4 空力 自動車が走行すると,空気の流れにより車体まわり 置に近く,面積も大きいため効果が大きい.吸音材に の圧力場が変化し,表面圧力の総和として自動車には はフェルト等の多孔質材が用いられる.図 4-153 は自 .現在の空力開発では空気 空気力がかかる(図 4-155) 動車の遮音・吸音材の実施例である. 力の前後方向成分の抗力を低減して燃費性能に貢献す 4-6-3 遮熱 68 ることが重要な役割になっている.抗力を減らす有効 な手段としては,車体後流の全圧損失域を低減するこ 高温になると悪影響を受ける部品(ブレーキ配管,燃 . とと,車体近傍での縦渦抵抗の低減がある (図 4-156) 料タンク,高電圧ケーブル等許容温度が低い部品,乗 全圧損失域を低減するためには,流れを剝離させずに 員・荷物が接触する車体パネル等)を動力ユニットや排 車体後端まで導きながら車体後部を絞り込むことが有 気系等の放射熱から保護するために遮熱対策が行われ 効であり,縦渦抵抗を低減するには主流方向を法線に る. とった面上での圧力差を減らすことが有効である.抗 これらの部品と熱源とは許容温度を超えぬよう伱間 力の低減は,キャビン,エンジンルーム,荷室等のパ をとって配置することを基本とするが,必要伱間がと ッケージと商品性で優先されるデザインの両立を図り れない場合には放射熱を防ぐ目的で遮熱板を設ける. ながら外形形状の工夫で行う.以下にその例を説明す 図 4-154 に排気系まわりの遮熱板の配置例を示す.放 る. 熱量の大きい触媒やマフラとフロアの間には大きな遮 (1)全圧損失低減のために車体表面は段差が少なく, 熱板を設けてフロア温度の上昇を防いでいる.下側の スムーズに後部まで絞り込まれるバレルシェイプが望 遮熱板は草地停止時の火災防止が目的である.また, .流れの偏向が大きくなるフロント ましい (図 4-157) 走行後の車両停止時には空気の流れが滞り,排気系の バンパフェイシアのコーナ部や A ピラーでは段差低減 熱気は遮熱板の切れ目から集中的に上昇してフロアを や形状の変化をなだらかにして剝離を低減している(図 加熱するので,これを防ぐために熱気の流れも考慮し 4-158 (a) ) .フロントバンパフェイシアコーナでは剝 た部品形状や配置とする.遮熱効果を上げるため,パ 離を抑えホイールアーチからの損失流出を抑えるエア る空気伝播音の寄与が大きい.空気伝播音の対策は, より,高周波音性能の予測や,吸遮音材の形状/配置 伝播経路対策と音源対策に大別される. /物性などによる対策検討が可能である.また,SEA 音響伝播は,音波の変動圧力が車体パネルやガラス と FEM を組み合わせ,それぞれの特徴を活かした解 面を加振し,その振動から車室内側に音響放射する透 析法の研究例(32)も報告されている. 過音や,車体 高周波音は源流となる音源での対策が合理的である. 間を回折して車室内側に伝わる 間透 過音などによる現象である.伝播経路にはグラスウー たとえば,エンジンであれば燃焼圧力やトルクの変動 ルなどの吸音材も活用され,その吸音特性を正しく考 低減に加えて,放射音の予測などが行われている(図 慮する必要がある.これら音響伝播現象の予測には, 6-12) .音源や放射音を理解し,これらを解析のイン SEA や FEM による解析技術が活用されている. プットデータとして活用することで,車体の効率的な SEA は,音波や振動の位相現象を無視して一次元要 防遮音設計が可能になってきている. 素のパワーフローを解析する手法であり,モデル作成 また,高速走行時においては,流れの複雑な乱れに が比較的容易で解析負荷も小さい.一方,FEM は位 よりフロントピラー周りなどの風切音が顕在化する. 相や共振現象を考慮し三次元モデルを用いる解析法で 発生する音源の予測は,非定常の流体解析による圧力 あり,音圧や粒子速度の音響現象を可視化することに 場の結果から,Lighthill-Curle 理論などを利用し,遠 方点の音圧評価が行われてきた.実際の改善検討では, 車室内への主要な透過面である,ガラス面などの表面 圧力の変動レベルを評価する例(33)がみられるようにな 図 6-9 FEM による車内音解析結果 った.風切り音解析例を図 6-13 に示す.表面圧力変 動レベルを適切に補正することで車室内音の検討に用 音圧 正 いられている. 高周波音対策では,このような音響伝播や音源の予 測技術を活用し,合理的な設計検討が行われている. 6-3-7 乗り心地解析 負 車体開発において乗り心地解析は,路面から車体へ 図 6-10 入力点剛性の算出例 図 6-12 エンジン放射音解析 Accel. /Force〔m/s2/N〕 フロントサスペンション 取付け部 Z 方向入力点応答 10 倍 等価剛性 ライン 10 2 3 4 5 6 7 100 2 3 図 6-11 制振材を積層した車体 FE モデル 制振材 パネル 第 6 章 CAE 5
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