農政経済学分野 生物資源生産科学コース ◉社会科学的に食料・農業・農村・資源・環境のあり方を考える 卒業生の 活動の分野 農政経済学分野の学生は現代社会の諸要求に対応できるので,農林水産省や県庁などの行政機関をはじめ,銀行,農協,商社, 食品メーカー,テレビ局,コンピュータ・メーカーなど,就職先も広範多岐にわたっています。 経済格差の解決策を議論するWTOの国際交渉 【食料経済分析学研究室】 は, 食料や貿易をめぐる経済格差の 農政経済学分野は,食料農業政策学,農業経営学,食料経済分析学,食料流通学,環境生命経済学の5つの 原因と解決策を究明しています。 研究室から構成され,社会科学的な視点から国際色豊かに,食料・農業・農村・資源・環境に関する教育と 経済格差は, アグリビジネス等が大規模かつ少数となって 研究を行っています。 マーケットの支配力を強める, 不完全競争が大きな原因の1つ 国際穀物価格の変化と原油価格、そして世界の食料需給は・・・ 分野長による分野紹介 となっています。また, 経済格差の解決には, マーケットのはた らきと政策をうまく組み合わせて, 競争と保護のバランスをと 国際穀物価格の変化と原油価格,そして世界の食料需給は… 下図は 2007 年 7 月から 2015 年 3 月下旬までの原油と穀物価格(シカゴ相場)の日々の変化です。原油価格 3月下旬までの原油と穀物価格 (シカゴ相場) の日々の変化 12 月までのわずか は 下図は2007年7月から2015年 2008 年 7 月 に 1 バレル当たり 145 ドル(WTI)に まで上昇したあとは急激に下落し, です。原油価格は2008年7月に1バレル当たり145ドル にまで上昇したあとは急激に下 半年間に 3 分の 1 の 35 ドルになりました。これに伴(WTI) って,ダイズを含む穀物価格(シカゴ 相場)も同様に上 落し, 12月までのわずか半年間に3分の1の35ドルになりました。これに伴って, ダイズを含む穀 昇し下落していま す。食料が燃料に使われるという時代となっています。そのような農産物に対する需要の拡大 物価格 (シカゴ相場) も同様に上昇し下落しています。 食料が燃料に使われるという時代となっ は農業にとってプラスとなり、世界の生産量も拡大していますが,同時に食料価格が原油価格や経済の動向に大 ています。そのような農産物に対する需要の拡大は農業にとってプラスとなり, 世界の生産量も きく左右される時代になっています。その後、原油価格は 100 ドルレベルに上昇し、50 ドルを下回るほどに下 拡大していますが, 同時に食料価格が原油価格や経済の動向に大きく左右される時代になって 落もしています。こうした中、食料輸入大国そして経済大国の日本は、自国のことだけでなく、世界の食料が安 います。その後, 原油価格は100ドルレベルに上昇し, 50ドルを下回るほどに下落もしています。 定的に供給されるよう、どのように対応し、どのように世界をリードすべきでしょうか。 こうした中, 食料輸入大国そして経済大国の日本は, 自国のことだけでなく, 世界の食料が安定 世界の食料輸出国、輸入国、貧困国の食料事情をしっかりと調査・研究し、あるべき食料需給政策、農業政策 的に供給されるよう,どのように対応し,どのように世界をリードすべきでしょうか。 世界の食料輸出国, 輸入国, 貧困国の食料事情をしっかりと調査・研究し,あるべき食料需給 について、一緒に考えてみようではありませんか。 ることが重要です。 私たちの研究室は, 以上の究明を, 経済分析 や統計分析, シミュレーション分析のツールを利用して, 科学的 に行っています。 写真は, 経済格差の解決策を議論する, 世界貿易機関 (WTO) の国際交渉の一場面です。 (写真:WTO/Jay Louvion and Annette Walls) 青果物卸売市場でのセリ取引 生態系・生物多様性の保全と農業環境政策 政策, 農業政策について, 一緒に考えてみようではありませんか。 農政経済学分野長 前田 幸嗣 私たち消費者が安全な食料を安定的に確保す るには,食料をどのように生産,分配したらよいでしょ うか。食料の生産, 分配を支える農業や食品工業, 食品流通業を持続的に発展させるには,これらの 英国の農業環境政策によって保全された田園景観とフットパス 産業に競争と保護のどちらが必要でしょうか。食料 の生産や分配,消費を自然環境と調和させるには テレビでよく活気あるセリ取引の様子が放映される。こ 生物多様性は, 地球の自然の豊かさを表現しており,すべ どうしたらよいでしょうか。これらを研究しているのが のセリ取引を行っている農産物卸売市場は, 全国各地で生 ての人々に生活と繁栄の基盤を与えています。生物多様性 農政経済学分野です。 産される農産物を集荷し, 価格を決定し, 小売業者に分荷す のグローバルな経済的利益とそれが失われたときの損失 研究は,経済学や経営学などをもとに,社会科 ることにより, 社会に農産物を供給する重要な役割を果た は計り知れませんが, 文字通りその価値が 「計り知れない」 学的に行っています。しかし,経済学や経営学の理 している。 このような流通機能がしっかりと発揮されてこそ, ために, 経済分析の枠組みの中で省みられず,その結果, 環 論を単に応用すればよいわけではありません。農業 農産物の需給は安定化され, 生産者は売れ残りがでないよ 境破壊が進んできました。そこで, 自然資源の質や量といっ が自然条件に左右される点や,家族や地域社会に う販売でき, 消費者は不足することのないよう購入できる。 た国富の変化を, 自然環境はもちろん, 2次的自然である農 世界には農産物の需給が不安定で流通の近代化が求めら 業・農村環境の中でも捉え, 経済的に評価し, 生態系の保全 れる地域もあるし, 需給の安定化が達成されてもさらなる や再生に役立つ政策を考えています。先進国・途上国を問 よって営まれる点など,他産業にはない特質を十分 に踏まえなければなりません。そのため,農政経済 学分野では,フ ィールド調査や統計分析を利用した, 事実にもとづく実証研究が特に重視されます。 現在,農政経済学分野では,食料消費の多 様化,経済のグローバル化,食料の安全性や環 境保全に対する消費者意識の高まりなどを背景に, 研究の多様化が進んでいます。それにともない,学 農業経営リスク管理・食品トレーサビリティを支援する情報システム 安全な食料を持続的に供給するためには, 農業 生産・経営におけるリスク管理や食品流 通経路情報を管理するトレーサビリ ティが重要になっている。これらを支 援する情報システムの現地実態調 査や設計・開発が期待されてい る。そうした情報システムのある べき姿を一緒に考えましょう。 食の安全に関する国際共同研究 ア,欧米の学生が相互に留学する機会も増えてい 日本は供給カロリーベースで6割を, アメリカや 中国など海外からの農産物輸入に依存している。 安全な食料を持続的に供給するためには, 各国に おける現地調査やリスク認知状況など国際的な 共同研究が重要になっている。安全な食料を持続 的に提供できる次世代の農業や食料生産につい て, 理論的, 実証的に学びましょう。 社会科学と実証,多様性を特徴とする農政経 済学分野で,ぜひ一緒に学びましょう。 しょう。 んか。 卒業生からのメッセージ 「自分の興味関心を広げてくれた研究室」 室を選択できます。 など多岐にわたっています。農政経済学分野とアジ ます。 わず, 環境保全とバランスさせながら, 地域振興や農業発展 をいかに図るかという課題について, 一緒に取り組みませ 農政経済学分野では,基礎として統計学やミクロ経済学等を学んだ後,自分が興味を持った研究 生の就職先も,食品メーカーや公務員といった食 料,農業に関係する業種だけでなく,銀行や商社 高度化を目指している地域もある。農産物流通のあり方に ついて, 理論的・体系的に学び, 現場を訪れ, 考えていきま 私が所属していた食料経済分析学研究室は,食料貿易や食料産業にまつわる政策を対象にして, 経済分析や統計分析,シミュレーション分析のツール等を用いて科学的な研究を行っています。メリハ リをつけて研究に取り組めば,自分の時間を作りやすいため,学業とアルバイトや部活を両立すること も可能で,自分の興味関心を広げることができます。 ぜひ,農政経済学分野で充実した大学生活を送ってください! 2011年 学部卒業 澁田 浩介 2014年 末安 英輝 福岡県農林水産部 筑後農林事務所 八女普及指導センター ニビシ醤油株式会社
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