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自由論題2「東・東南アジアの経済」
報告2
櫻井宏明(国土交通省)
「東南アジアにおけるODAがFDI、輸出、GDPに与える効果」
本稿では、1985年~2013年のインドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムにおけるOD
AとFDI、輸出、GDPのグレンジャーにおける因果関係を確認した。ODAは世界か
らのODA(純額)、日本からのODA(純額と総額)、日本以外からのODA(純額)
の4パターンを作成した。また、FDIは世界からのODAと日本からのODAを用いた。
分析にあたっては、単位根検定を行い、ほぼすべての指標がランダムウォークであること
を確認した後、ヨハンセン共和分検定を行い、大部分の指標において共和分が存在しない
ことを確認した。このため、グレンジャーにおける因果関係の分析は前期差を用いて行う
こととなった。また、グレンジャーにおける因果関係の分析を行ううえでのラグは、AI
CとSCを用いた。
分析結果としての所見は以下三点である(なお、グレンジャー的な意味での因果関係の
有無をそのままODA供与の評価とすることは厳に慎むべきである)。
第一に、インドネシアではGDPがグレンジャーの意味でODAに対する原因とみられ
るなど、やや政治的な因果関係が強く感じられたのに対し、タイでは、ODAがグレンジ
ャーの意味でのFDIに対する原因であると考えられるなど、より経済的な因果関係が密
接に感じられたことである。
第二に、フィリピン、マレーシアでは因果関係はあまり出なかったが、マレーシアでは
日本からのODAよりは日本以外からのODAにグレンジャー的な因果関係が出ているよ
うに感じたほか、フィリピンでは日本からのODAと日本からのFDIを組み合わせるほ
うがグレンジャー的な意味での因果関係がみられたことである。
第三に、ベトナムはデータが 2004 年からと短期間であったこともあり、FDI、輸出、
GDPにグレンジャーの意味で因果関係がみられたのに対し、ODAをグレンジャーの意
味での原因とする因果関係はみられなかったことである。