セ ラ フ ィ ム ・ ゾ ー ン 熾天使空域3 銀翼少女達の邂逅 榊 一郎 Ichiro Sakaki 立ち読 み 専 用 立ち読み版は製品版の1〜20頁までを収録したものです。 ページ操作について ▶(次ページ)をクリックするか、キー ◦頁をめくるには、画面上の□ →キーを押して下さい。 ボード上の□ もし、誤操作などで表示画面が頁途中で止まって見にくいときは、上 記の操作をすることで正常な表示に戻ることができます。 ◦画面は開いたときに最適となるように設定してありますが、設定を 変える場合にはズームイン・ズームアウトを使用するか、左下の拡大 率で調整してみて下さい。 ◦本書籍の画面解像度には1024×768pixel(XGA)以上を推奨します。 原案・監修 松田未来 口絵・挿画 BLADE 第二章 異国 第一章 父親 序章 目 次 第三章 復活 9 あとがき 榊一郎 17 松田未来 64 226 126 230 人物紹介 とよ さき しょう いち ろう 豊崎将一郎 工学系の専門学校生。 曽祖父が第二次世界大 戦中、日本海軍の戦闘 機乗りだったこともあ り、飛行機についての 知識をもつ。 おい はま みお 追浜 澪 将一郎のはとこ。天真爛漫で おっとりしているが、その分、 鈍くさい。日本海軍零式艦上 戦闘機 五 二 型 の『 エ ッセン ス・モデル』に突如選ばれた。 零式艦上戦闘機二一型の出力先 に選ばれた少女。将一郎と澪を 助けたが、当初は、ある過去か ら二人と距離を置いていた。 かすみ が うら み さき 霞ヶ浦海咲 グラマンF6F〈ヘルキャッ ト〉の『エッセンス・モデル』。 澪達との戦闘で傷を負ったが、 将一郎に拾われ今は同じアパ ートで暮らしている。 アンジェリーナ・ テイラー グラマンF8F〈ベアキャッ ト〉の『エッセンス・モデル』 。 大破したアンジェリーナの『心 臓』を中心として修復・再生さ れたので、基礎的な知識以外、 記憶を持たない存在に。 双子で、P-38〈ライトニ ング〉の『エッセンス・モ デル』。 ルーナ(姉)& ステラ(妹) フー・ファイター 適格者にエッセンス・ モデル出力を実行する 謎の存在。 セ ラ フ ィ ム ・ ゾ ー ン 熾天使空域3 銀翼少女達の邂逅 9 序 章 飛行機。 は さだめ お に空を飛ぶ為、長い歴史の末に生み それは自じ由 んぞう つばさ 出された人造の翼だ。 からだ ど こ 宿命を負っている人間という 元より、地を這う ま 生き物が、空に舞い上がろうとする事そのもの に無理が在る。人間の身体は、何処をとってみて ね は ね りょう うで も空を飛べるようには出来ていない。神話の様に、 ま もちろん ただ鳥を真似て羽根を 両 腕に付けてみれば良い ⋮⋮というものでは勿論、無い。 すい む だ か び ︱ 無理を押 だからこそ飛行機というものは、そつの い し通す為、人が持てる限りの全てを費やして せんたん 先端技術の粋を集めて作られる。 ほどこ の増加に繋がるのを理由に施されない事があるく つな こに無駄は一切無い。飛行機の設計は華美な そそ う しょく たぐ と そう 装 飾 の類いを受け付けない。塗装ですら、重量 らいだ。 だからこそ⋮⋮人間を乗せて空へと舞い上がる、 10 おそ の お ゆう び それが目的であって、美しくなるのはただの結 果だ。 ︱ 無駄を削ぎ落とし、効率を追い求め、延々と、 ただ 飛ぶ為に。 そう。飛そ行機は進化する。常に進化し続ける。 うになった。 は流体力学に基づいた優美な曲面で構成されるよ もと られるようになった。速度を追求する為に、機体 みっぺい 最新の冶金技術によって作り出されるジュラルミ や きん そ ざい 新の知識と技術を惜しみなく投入する。 す その目的の為だけに、徹底的に研ぎ澄まされたが あらわ 故の美しさが、その姿には自然と顕れる。恐らく 素材は木と布から全金属製になり、発動 機体パの ワー 機の出力は一二馬力から一〇〇〇馬力を超えるよ と 人類が生み出した機械の中でも、究極に近い機能 うになった。金属も、軽量なアルミ合金の中でも てっていてき 美を、飛行機は秘めているだろう。 ンや超ジュラルミン、そして超々ジュラルミンへ ゆえ 飛行とはつまり、人としての能力の限界を破る という事であり、人をより上位の存在へと押し上 と変わった。 たど げる為に辿るべき、長い長い道程の一歩とも言え あこが る。だからこそ人は神に憧れるのにも似た気持ち むき出しだった操縦席は完全に密閉されるよたう になり、より高い、より速い飛行に操縦者が耐え いっ しゅん エ ン ジ ン で、この飛行機というものを作る事に注力した。 より高く。より速く。より遠く。 りも⋮⋮自由に。 そして何けよ た けい か 人類の歴史に比べれば一 瞬 とさえ言 くら 木製の桁に布を張った翼に、小さな発動機を載 せ、わずか三六メートルほどの距離を飛んでから ︱ 半世紀 える様な時間しか経過していないにも拘わらず、 飛行機はめざましい発展を遂げてきた。 性能の向上を図るため、設計者達は用いうる最 みにく さら はっ き 醜い姿を晒す事もない。脚が引き込まれた なぜ⋮⋮こんな無粋なものを取りつけなければ ならないのだろう。 める鋲ですら平らにしているというのに。 びょう 気抵抗を極限まで減らすために、機体の外板をと それが戦闘機だ。 体は流体力学の最先端を応用し、どこまでも な機 め 滑らかで優美な曲線を描いているというのに。空 以外の機能を一切排し、徹底的に研 飛んで闘う やいば ぎぬかれた刃。 たたか の無駄を排し、ただ空の高みを目指した、 し一こ切 う 至高の造形品。 はい の何割かを損ねてしまう。少なくとも霞ヶ浦中尉 そこ ⋮⋮とさえ思える。 その瞬間にこそ、飛行機は飛行機として完成する ため いき しかし⋮⋮ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ しかし地上にいる時や飛行甲板に降りた時など、 どうしてもこの﹃余計物﹄が、その機体の美しさ かすみ が うら よう へい 霞 ヶ浦洋平海軍中尉は、こっそりと溜息をつ いた。 ︱ ぬ にはそう見える。 あふ だいだいいろ の目の前には 橙 色に塗られた機体が 今 もく彼 ねん ほとん 一機、黙然と存在する。その姿は確かに殆どを流 ち なまぐさ 線型で構成され、機能美に溢れている。戦闘機と ︱ を 論、一度飛び上がってしまえばそれらは翼下 勿 しゅう のう おう とつ に 収 納され、ごてごてとやたら凹凸の激しい形 彼の目には、それは無粋なものであるかの様に すら映る。 それが気になる。 だが、だからこそ洋平しは ゅきゃく 着陸・着艦に用いる主 脚 だ。 でも 純 粋だと彼は思う。 じゅんすい 求められた機能を発揮するその姿は、何処ま いう血 腥 い任務を背負いつつも、空を舞う姿は ︱ 序章 11 12 ぶ かっこう そんな風にすら洋平は考えてしまう。 ︵そりゃあ、着陸ができなきゃいかんのは承知の れない。洋平は苦笑して整備員を振り返った。 ﹁ん、いや。なんというか⋮⋮﹂ 優美な翼の下に突き出た主脚を目で示しながら 言う。 ﹁この不格好な脚が無ければ、飛行機というのは 上だが、それにしても不格好だ︶ 飛んでいる最中の自分の機体は、自分で見る事 は出来ない。 ﹁そりゃ仕方ありませんよ。こいつが無ければ中 よぎ 整備員は まだ納得しない様子の洋平を見て ふと何かを思いついたというような表情を浮かべ ︱ 尉も地上に戻れないんですから﹂ もっと美しいだろうと思ってね﹂ また⋮⋮間近に並んで飛ぶ 僚 機を見ればその 美しさはすぐに分かる。 ﹁それは分かってるんだが⋮⋮﹂ かたすみ び続ける飛行機が開発されないものだろうか。そ りょう き だから、洋平は地上にいる飛行機を見るのがあ まり好きではなかった。いっそのこと、永遠に飛 こっけい んなある種、滑稽な考えすら頭の片隅を過ったり て、彼に言った。 おっしゃ もする。 ﹁まあ、中尉の 仰 ることもわかります。でも、 目の付け方次第で、この脚も﹃綺麗に﹄見えます き れい ﹁どうかされましたか、霞ヶ浦中尉?﹂ よ﹂ なが 飛行前の整備点検をしていた整備員が、洋平に 声をかけてきた。 腕を組んで目の前の飛行機を眺める自分の姿に、 ﹁目の付け方次第⋮⋮?﹂ にじ し げき 何か不平不満のようなものが滲んでいたのかもし 整備員の言葉は、洋平の好奇心を刺激した。 序章 13 ﹂ ﹁さらに、信頼性が上がるのと同時に、生産性や ︱ 整備性も上がる。生産性が上がるという事は、そ くぐ れだけ数を短期間で揃える事が出来るようになる しゅよく ﹁ええ、目の付け方です。例えば わけです。そして、整備性が上がれば、前線での そろ 整備員は主翼の下を潜り主脚の油圧シリンダー に付いたトルクリンクを指さして続ける。 稼働率が上がる。どうです、中尉。こういう目で か どう ﹁主脚の引き込み機構っていうのも、なかなか面 見ると、こいつの脚はかなり﹃綺麗﹄ですよ﹂ たん おも 白いものなんですよ。 ﹃一一型﹄のごちゃごちゃ しろ した伸 縮 機構も面白いけど⋮⋮こいつは中翼単 なるほど⋮⋮と洋平は思った。 よう しん しゅく い従来の主脚に出来ました。完成度の高い機械っ 葉型から低翼単葉型に改良した事で、信頼性の高 搭乗員である彼にとって、主脚の引き込さみじ機構 がどうなっているか、などということは些事であ た。 理にかなっている、と洋平は感心し こ しょう い か せんれん し こうさく ご 出来ればそれで問題はない。 そう さ り、操縦席から操作してきちんと脚の上げ下げが ていうのは、単純で、美しい﹂ だが、整備員の言うとおり、ちょっと着眼点を 変えてやると、この機体に取りつけられている脚 ふむ﹂ ︱ もまた一つの機械であり、試行錯誤の末に獲得さ ﹁ 確かに、動く箇所が少なければ故 障 する部分 そのものが減る。いや。それ以前に機械というも れたその形状が、如何に洗練されたものなのかが 分かる。 かくとく と洋平は思う。それこそライト兄弟が造り上げた のは進歩すればするだけ形状は単純化するものだ 複葉機の複雑さに比べれば、目の前の戦闘機は恐 整備員の立場からすれば、複雑な機構は興味深 ふく よう ろしく単純な形状をしている。 14 おと ちょう へい 熟練工までもが 徴 兵されて前線に送られるよ て ま ひま うになった現在、整備に手間暇を要する複雑な機 さいよう いが、整備性に劣るし信頼性も落ちる。つまり だが⋮⋮それだけでは良い飛行機とは言えない ﹃美しくない﹄ということになる⋮⋮という事か。 のだ。 れば洗練されていて﹃美しい﹄らしい。 構は、それだけで信頼性を下げる。また、機体が 逆に、この機体に採用された機構は、彼に言わせ ﹁⋮⋮確かに一一型では痛い目にあった﹂ 大型化すると共に重くなった。同時に操縦系も重 む じゅん くなり、さらに重いのに繊細だという矛 盾 を抱 せ ん さい えていた。 いく が在った。他にも問題点が幾つか在って、初めて 鳴り物入りで登場した新型機だったが、整備員 の言う通り、脚の複雑な機構のせいで信頼性に難 着陸時の方向安定性、プロペラトルクによる か離 たむ とう とつ し せい 傾 き、唐突な姿勢の変化、航続距離 挙げて もあった。 に零戦の倍以上の時間がかかるだけで 引き込ブみ レ ー キ なく、制動機が左右で効きが違うなどということ ゼロ せ ん る不具合もその一つだ。 だった。整備員が挙げていた脚の複雑な構造によ おり、昔気質の操縦士にとっては乗りにくい機体 かたぎ いけばきりがない程に幾つもの面で問題を抱えて ︱ 乗った時の印象は最悪だった。 ︱ 単に以前、自分が乗っていた機体の素性が良す ぎただけなのかもしれないが とにかく、乗り にくい。 とうさい 動機の馬力は上がっ 勿論、新型機だけあって発 じょうしょう ている。当然に高速性能は 上 昇 する。 砲四門搭載という大火力。 また二〇ミリ機関 し よう しょ み りょく 単純にこれら仕様書上の性能向上に魅 力 を見 いだしていた搭乗者も少なくはない。 序章 15 の不 離着陸の時に必ず使用するものだけに、そ き ちょう 具合は場合によっては搭乗員と、高価で貴 重 な ︱ 機体を失う事故に繋がりかねない。 しかし ﹁これは、違うという事か﹂ いや熟練搭乗者だからこそ手を焼いた ﹁戦局か⋮⋮﹂ が混じる。 洋平の表情に苦いもずの いぶん おそ ﹁ひっくり返すには随分、遅きに失した感はある が⋮⋮っと﹂ 彼は首を振って整備員に言った。 ﹁今のは内緒にしておいてくれよ?﹂ いたずら ﹁了解であります、中尉どの﹂ 整備員は悪戯っぽく笑いながら主翼下から出て きて、洋平の横に立つと、自分がいままで点検し 者さえ ︱ 今、洋平の目の前に在る一機は、開発者達が徹 底的に改良を施したものだと聞く。あの熟練搭乗 あの機体が、どう変わったのか、単純な興味は在 ていた機体を眩しそうに見つめた。 のう り てほしいものだ﹂ ﹁本当⋮⋮戦局をひっくり返せる程の性能であっ まぶ った。 して美しい。 性能の良い戦闘機は、見た目かつら ぶ 確かに余計な主脚にさえ目を瞑れば、彼の目の 前にあるそれは、とても洗練された外観を備えて ま すご ︱ 洋平の脳裏をふと仲間や部下の顔が過る。 やつ 二度と会う事の出来ない奴ら いずれももう だった。 う いるように思えた。 ﹁勿論です。一一型とは違う。こいつは凄いです くれていたら⋮⋮俺は部下を死なさずに済んだの ﹁あと二年⋮⋮いや、一年早くこいつが完成して おれ だって出来るかもしれない﹂ よ。上手くすれば、戦局を一気にひっくり返す事 16 かもな﹂ くる事は無い。 だけだ﹂ ︱ ﹁⋮⋮そうだな。俺達はやれる事を最大限にやる 事をするだけです﹂ ﹁まあ、現場の人間は与えられたモノを使って仕 ︱ 思い出すだけでのたうち回りたくなる。 彼らは、お国の為にと、性能で劣る機体で米英 いど ち の戦闘機に挑み そして散っていった。 零戦は良い機体だが、最強無敵であった時間は 短く、アメリカの物量、そして何よりも新型機開 おのれ 目視点検を始めた。 洋平は整備の 溜息を一つついてそう言うと 終わったばかりのその機体に歩み寄り、飛行前の う 発力の前に、搭乗員達は性能差を必死に己の腕で ︱ 埋めるしかなかった。 えら も許されずに前線に送られ やわ 墜とされる事が増 お もそも腕の良い搭乗員も随分と減った。 だがそ じゅう ぶん 今や 充 分に教育すら終えていない学徒さえ動 員され始めていると聞く。搭乗員も熟練になる間 えた。 ならそうなったんでしょうが﹂ ﹁⋮⋮偉いさん達が、もう少し頭の柔らかい連中 整備員の言葉にも苦々しいものが滲んでいる。 ぐ ち だがここで愚痴をこぼしても死んだ者が戻って 17 父 親 第一章 アンジェリーナ・テイラーはアメリカ人である。 てんけい の仕事の関係で日本に住んで長く、日本語 父 りゅう ちょう あやつ はし も 流 暢 に操れるし、箸を使って食事も出来るが、 それでも基本的な気質は、アメリカ人の典型的な それだ。今の日本的な表現を借りれば﹃肉食系﹄ おおざっ ぱ とでも言うのだろうか。 ︱ 総じて大雑把だが何事にも積極的で気が強い。 ためら だから ﹁⋮⋮なあ⋮⋮アンジェ?﹂ へい かげ ひそ 躊躇いに揺れる声が、彼女の背中に触れる。 ﹁⋮⋮やっぱり⋮⋮やめた方がええんちゃうかな ぁ⋮⋮﹂ ﹁だったらミオだけ帰れば?﹂ だがアンジェリーナは塀の陰に身を潜めたまま、 相手を振り向かずに応じた。 ぬし ﹁うっ⋮⋮﹂ 声の主は言葉に詰まる。 18 ス ト レ ス だれ とアンジェリーナは思う。無理な我慢で が まん 何とも気弱げだ。ヤマトナデシコは控えめなの が美徳だなどというが、時と場合によりけりだろ ︱ う 精神的抑圧を溜め込むのは誰の為にもなるまい。 ﹁あなたも気になってるんでしょ﹂ いくらいの格好だった。 ﹁あなただってしてるでしょうが。変装﹂ とアンジェリーナはここでようやく背後の相手 を振り返って言った。 くろかみ そこに居るのは、ある意味でアンジェリーナと は対照的な日本人少女だった。 なおさら つや ﹁そりゃ⋮⋮そう、やけど⋮⋮﹂ りな 長く艶やかな黒髪と、ミドルティーンであ おさな がら、子供っぽい丸みをあちこちに残した幼げな つぶや だが尚も声の主はぶつぶつと呟くような声でこ う続けてきた。 顔立ち⋮⋮これに今は度の入っていない丸眼鏡を なお ﹁こんなん⋮⋮コソコソ後をつけるんは⋮⋮その 掛けて、髪を三つ編みにしているせいで、普段よ ち せつ 0 0 めがね ⋮⋮良ぅないと思うねん⋮⋮そんな格好までして りも尚更、子供っぽい雰囲気が強くなっている。 おいはまみお 0 ふん い き ⋮⋮﹂ まと 0 0 変装というには稚拙だが、これは仕方在るまい。 事前に準備が出来たわけでもないのだから。 きんぱつ 0 0 確かに今のアンジェリーナは普段と少し装いが 違う。 0 0 追浜澪。かつてのアンジェリーナの敵であり、 まあ、色々あって今は仲間⋮⋮と言えなくもない 0 少女である。まあ、ある一面では敵のままだが、 0 プに纒めてニットキャップの中 長い金髪をアあッ お ひとみ に押し込み、碧い瞳は濃いサングラスの下に隠さ それはさておき。 と たん 0 ば、コンビニに入った途端に通報されても仕方な れている。これで更にマスクでもしようものなら 20 ゆ ゆ そしてアンジェリーナ達が先程から注視してい るのは、その高級住宅街の象徴とも言えるような ﹁これは由々しき事態なのよ﹂ ﹁あ⋮⋮アンジェ、由々しき、なんて日本語知っ 一軒だった。何処かの旅館を想わせる、純和風の すで よい くち 必要が無い建物 ︱ こわ が ということだ。 ﹂ understand? ﹁あ、あんだすたん⋮⋮﹂ うなず ﹁ そ れ が 嫌 な ら 行 動 あ る の み よ。 Do you いや ﹁それは⋮⋮﹂ ﹁ミサキの抜け駆けを許していいの?﹂ ぬ ﹁え? でも ﹂ ︱ 平屋造り。要するに土地をたっぷり確保出来てい てるんや?﹂ いら だ るので、わざわざ二階建てにして床面積を増やす つぼ 高級住宅街に居た。 しゃれ じゃっ かん 相手のボケっぷりに 若 干の苛立ちを覚えなが らアンジェリーナは言った。 もしれないのよ?﹂ ﹁いい? ショウの将来がこれで決まっちゃうか ﹁ Shut up ﹂ なのよ﹂ ﹁由々しいで悪けりゃ、洒落にならない緊急事態 ︱ 二人は今 周囲を見回せば、最低でも百坪以上の敷地に立 つ民家ばかり。家々の塀は長く高く、その一方で かんせい 平屋が多く⋮⋮景観を損なうような高層マンショ ンは見当たらない。閑静な上に、既に宵の口とい い。たまに見る車はタクシーか、そうでなければ うこともあって、人の姿も車の姿も殆ど見かけな 将にぃは絶対ええ顔せんと思う⋮⋮﹂ 壊れた人形みたいにぎくしゃくと頷く澪。 ﹁でも⋮⋮私らがこんなことしとるって知ったら、 しょみん 達が住む庶民の街とは違う空間だった。 高級外車で⋮⋮見るからに普段、アンジェリーナ 書 店 に て お 求 め の 上 、 お 楽 し み く だ さ い 。 形 式 で 、 作 成 さ れ て い ま す 。 こ の 続 き は ★ ご 覧 い た だ い た 立 ち 読 み 用 書 籍 は P D F
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