5/12 は英国「Super Thursday」 議事録など 3 点に注目!

【2016年5月11日公開】
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~丸わかり! ロンドン発★欧州経済事情~
「松崎美子」が注目テーマを一刀両断!
『5/12 は英国「Super Thursday」
議事録など 3 点に注目!』
執筆者:(ロンドン在住/元為替ディーラー)
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昨年 8 月、英中銀は金融政策判断に関する情報提供手段のタイミングを変更した。それまでは
米英欧の中銀は、それぞれ独自のタイミングで行ってきたが、英国だけが① 政策金利の発表
② 議事録 ③ 四半期インフレーション・レポート ④インフレ・レポートに関する記者会見を同じ日
に発表するという、まさに「Super ハード」な発表方法に変更したのである。マーケットは、この 3 カ
月に一度のイベントを「Super Thursday(スーパー サーズデー)」と名付け、アメリカの雇用統計と
並ぶ FX 業界のお祭り的イベントとして認識し始めたようだ。
●3 年ぶりに弱い英経済
先週英国の金融界では、軽いショックが走った。それは、Markit 社が発表した 4 月分の英サー
ビス・製造・建築業の購買担当者景気指数(PMI)全てが、2013 年来の弱い数字となったからであ
る。これはたぶん、6 月に実施される EU 国民投票で Brexit(EU 離脱)の可能性が高まったことが
経済に大きな影を落としているためと考えられる。
PMI と GDP 値との相関性は非常に高い。今回のように、全てのセクターで 3 年ぶりに弱い数字が
続いたということは、第 2 四半期 GDP が相当低い数字になることが予想される。実際に、Markit
社のエコノミストは、4 月の数字を基にして、2016Q2 の GDP を計算すると、前期比+0.1%くらいま
で下がるという予想を出している。
(チャート参照)Market 社ホームページ
http://www.markit.com/Commentary/Get/05052016-Economics-UK-economy-near-stalling-as-PMI-signals
-slowest-growth-for-over-three-years
これだけ弱い数字が続いたこともあり、英ポンドは週を通じて下落した。
●「Super Thursday」の注意点
今週木曜日は、「Super Thursday」である。私は、1)議事録、2)四半期インフレーション・レポー
ト内容、3)カーニー総裁の記者会見それぞれに注意を払おうと考えている。
1)議事録
ずばり、投票配分には要注意だ。英中銀金融政策理事会(MPC)にはカーニー総裁を含む 9 名
の理事がいる。政策金利 0.5%での据え置きは、9 対 0 での決定が続いている。しかし、先週の 3
年来の低い PMI の発表を受け、ハト派で知られている理事が「利下げ」に動く可能性がゼロとは言
い切れないところが難しい。
特に、ブリハ外部理事は 4 月末の講演で、「理論上は」マイナス金利の導入が可能と発言し、他の
理事達とは一線を画した格好となっている。同理事以外では、最もハト派として知られるホールデ
ン英中銀主席エコノミストなどが利下げに票を入れるかもしれない。
コンセンサスは、9 対 0 で据え置きである。だが、もし 8 対 1 となり利下げ票が入れば、マーケット
はそれを織り込んでいないだけに、英ポンドは大きく下げざるを得ないだろう。
2)四半期インフレーション・レポート内容
インフレ・レポート内容で私がチェックするのは、以下の点である。
3)カーニー総裁記者会見
前回 2 月の「Super Thursday」のカーニー総裁の記者会見では、以下の 5 つの発言が私の注意
を引いた。
・MPC9 名の理事全員が、次の金融政策の方向性は「利上げ」であると考えている。
・国民投票の実施にもかかわらず、世帯家計や企業の景況感はしっかりしている。
・労働市場を取り巻く環境は依然として強い。
・最近の低インフレが、賃金に影響を与えはじめてきた兆候が見える。
・英中銀は国民投票の影響を注視するが、現在のところ、Brexit 観測を巡る重大なリスク・プレミア
ムはまだ発生していない。
特に一番最初の「全員が利上げである」と未だに考えているのかが非常に気になるところ。当然
であるが、議事録で 8 対 1 となれば、この発言は無効になったと考えてよいだろう。
●週末の観測記事
週末の新聞に載ったカーニー総裁に関する観測記事の影響で、月曜日のロンドン市場では、オ
ープン早々「英ポンド/米ドル」が約 80 ポイント下落する場面があった。
5 月 8 日付けタイムス紙日曜版によると、最近カーニー総裁は主要銀行のトップを中銀に呼び、利
下げが実施された場合、各行のバランスシートはどのような影響を受けるか、個別に非公式の会
談を持ったとされている。ここでの「利下げ」がマイナス金利も含むものかは、定かでない。唯一は
っきりしているのは、この記事で書かれている「利下げ」のタイミングはあくまでも 6 月の国民投票
で Brexit(EU 離脱)が決定的となり、景気が大きく後退した場合を想定してのものであり、今月す
ぐに利下げに動くということは意味していない点である。
●ここからの「英ポンド」について
シカゴ IMM 通貨先物非商業(投機)ポジションでは、英ポンドの買い持ち(ロング)と売り持ち(シ
ョート)の差(ネット)は、大幅ショートとなっている。4 月 19 日には記録的な 55,152 コントラクトのシ
ョートであったが、一番最新の 5 月 3 日は、40,408 コントラクトのショートまで減少している。しかし、
かなり大量のショートが残っていることに変わりはない。
それもあって、もし「Super Thursday」で、1)議事録には、政策金利の決定は、9 対 0 で据え置きと
なったことが確認、2)インフレ・レポート内容は思ったほど悪くない、3)カーニー総裁の発言内容
が、思ったほどハト派ではない…、これらの条件が整えば、英ポンドは「ショート・カバー」が入るだ
ろう。ただし、冷静に考えれば、日曜日の観測記事にもあるように、国民投票の結果次第では、利
下げの可能性も出てくる局面であることを考慮すれば、カーニー総裁の発言内容はハト派になら
ざるを得ないだろう。
そのため、「ユーロ/英ポンド」がピンクのレジスタンスの上限である 0.80 ポンド台のミドルから High
に達したところで、「ユーロ売り/英ポンド買い」を仕掛けてみたい。損切りは、4 月 3 日の高値の上
に置くつもりだ。
-------------------------------------------------------------------------------【執筆者: 松崎美子氏(ロンドン在住/元為替ディーラー)プロフィール】
東京でスイス系銀行 Dealing Room で見習いトレイダーとしてスタート。18 ヶ月後に渡英決
定。1989 年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店 Dealing Room に就職。1991
年に出産。1997 年シティーにある米系投資銀行に転職。
その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、
証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。
-------------------------------------------------------------------------------【本レポートの趣旨】
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