1 有期雇用契約労働者の地位確認訴訟の流れ 1.本事件の若干の経過

有期雇用契約労働者の地位確認訴訟の流れ
1.本事件の若干の経過
① 有期雇用契約の締結
・ 原告が所属する部署の人員体制を改善するため、原告が正社員から短時間労働者として1
年毎に更新する契約に転換。その浮いた人件費(従来の原告人件費の2分の1)で若手を1
人新規採用した。
② 従業員過半数代表再選(過半数労働組合なし)
・ 原告が前年の過半数代表選挙で対立候補に対し僅差で過半数代表に当選していた。
・ 原告は有期雇用契約締結2ヵ月後の当年の過半数代表選挙で会社側に示唆され立候補し
た候補に対して大差で再選。
③ 衛生委員会委員解任と再任
・ 過半数代表の自己推薦で衛生委員会委員(過半数代表推薦枠)に就任し、法定要件を欠く
衛生委員会の改善 36協定遵守 過重労働の防止 委員会議事録の周知を主張したところ
数ヵ月後に委員会の組織変更を理由に解任。その直後に過半数代表による衛生委員会委
員の推薦枠をテコに再度自己推薦で再任。
④ 雇止め口頭通告
・ この年の年末仕事納めの直前に突然次回の契約更新拒絶の通告を受ける。
⑤ 内容証明郵便で雇止め通知
・ 年明け早々に内容証明郵便で上記と同じ内容の雇い止め通知を受ける。
⑥ 弁護士依頼
・ 原告は内容証明郵便を被告の紛争を意識した対応と解釈し法定代理人を依頼。
⑦ 反論と回答
・ 原告代理人と被告間の内容証明郵便の往復で話し合いは決裂。
⑧ 労働審判ないしは仮処分の検討
・ 審判をしても決裂すると判断し提訴を決定。(内容証明郵便で雇止め通知されてから3ヶ月
経過)
⑨ 訴状
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地位確認等請求事件
訴訟物の価格 金○○○万○○○○円
貼用印紙額 金 3万4000円
請求の趣旨
1 原告が、被告に対して、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2 被告は、原告に対し、平成○○年3月16日から、毎月25日限り、金30万円及びこれ
に対する各支払日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告は、原告に対し、金○○万○○○○円及びこれに対する平成○○年7月10日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え
4 被告は、原告に対し、金○○○万円及びこれに対する平成○○年3月16日から支払
済みまで年5分の割合による金員を支払え
5 訴訟費用は被告の負担とする
1
との判決並びに第2項ないし第4項について仮執行(仮執行額の7割くらいの供託金で対抗
されるのがお約束⇒仮執行停止)の宣言を求める。
2.地裁における訴訟の展開(民事訴訟法に基づいた用語使いはできていません。)
① 訴状
・ 訴訟物の明示と原告の主張。
② 回答書
・ 訴訟に対する被告の反論主張。
③ 準備書面
・ 原告と被告の主張の応酬文書。
・ 本事件では第5準備書面まで提出。(口頭弁論までに)
④ 期日
・ 提出した準備書面を陳述する場。
・ 裁判官 両弁護人による準備書面の相互確認と次の進め方及び次の準備書面の提出締め
切り日と陳述(期日)日程の決定。
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第 1 回期日(5分で終了)、口頭弁論以外は法廷ではなく審判室等のラウンドテーブルで裁判
官 書記官 両弁護人が行う。原告と被告は出席する必要はない。
本事件では口頭弁論まで 8 回の期日があった。期日の間隔はだいたい 1 ヵ月半。(盆・年末
年始休み期間を除く)
・ 第 1 回期日、口頭弁論以外は非公開で行われる。
⑤ 求釈明
・ 準備書面による主張の応酬の中で相手の釈明を求める主張。相手方は必ずしも答える必要
はない。
⑥ 書証
・ 証拠物のことで甲○号証書(原告側)・乙○号証書(被告側)の証番号がつく。書証の一覧表
が「証拠取扱い説明書」。
⑦ 立証
・ 主張が事実であることを証明する。
・ 証人の選定(証人・敵性証人)
・ 証人の申請においては原告と被告側で交渉が行われ裁判官が調整する。
⑧ 陳述書
・ 証人が事実関係を述べた文書
・ これを元に口頭弁論(尋問)が行われる。
⑨ 口頭弁論(尋問)(速記録がとられるが、削除されている部分もある)
・ 本事件では原告側証人 1 名(原告)・同敵性証人 1 名(被告側の人)。被告側証人 3 名。
・ 原告側弁護士・被告側弁護士がそれぞれ主尋問と反対尋問を行う。
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尋問は本事件では10:00~16:00まで行われ、原告に対する尋問及び反対尋問は 1 時間
半に及んだ。
・ 尋問時間は証人ごとに決められており、時間を守らなければならない。
⑩ 和解勧告
2
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和解勧告は裁判官から提案される。
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準備書面の往復の中で裁判官の心証が固まりつつある時点で行われることがある。
本事件では 6 回目の期日で和解勧告があった。内容は 1 年分の賃金支払い+職場復帰を
求めない。原告側から和解を辞退した。
・ 口頭弁論が終了した時点で行われることがある。
・ 本事件では口頭弁論終了後引き続いて別室で和解勧告があった。内容は賃金の引き下げ
+職場復帰。被告側から和解を辞退した。
⑪ 最終準備書面
・ 口頭弁論を踏まえた双方の主張の総括。
⑫ 結審
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最終期日(9 回目)
審判室ではなく法廷で行われるが、通常の法廷ではなく審判室と同様のラウンドテーブルが
あるだけの法廷で最終準備書面の陳述が行われる。
⑬ 判決(内容証明郵便で雇止め通知されてから1年11ヶ月経過)
・ 普通の法廷で行われる。
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弁護士は欠席する。(いずれ判決文が送達されその時点から控訴期間の2週間がカウントさ
れるから。弁護士が出廷すると判決文を手交されその時点から2週間がカウントされる。)
原告の出廷も自由。なお、原告が出廷せずに傍聴席で判決を聞くことも可能。
一部認容され労働契約上の権利を有する地位は確認された。
以上
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