営 経 どのように嵩張る商品が多く、それらを保管す 増えていきました。荒物屋ですので藁や畳表な 販路の拡大とともに扱う商品の種類や量も おります。 場所も変わらず紺屋町の店舗での商売を続けて やっていたこともあり無理な店舗展開はせず、 24 岩手経済研究 2016 年4月号 サ ロ ン 創業時は神仏の燈明に使用する「燈心」の販 るために店舗や倉庫の建物も増改築してまいり ◇ ◇ ◇ 当店の所在する紺屋町は盛岡城に近い奥州 ましたが、家訓にある「質素倹約」という言葉 売を生業としておりましたが、行商先の紫波町 ました。増改築は主に3代目と4代目の時代、 街道沿いに位置し、かねてより商家や職人がい りましたが、交通が発達するとともに遠方へ商 日詰の方で仕入れた藁や藁工品、周辺地域で作 江戸時代末期から明治時代末期にかけて行われ た町であります。現在でも盛岡を代表する銘菓 のとおり、決して背伸びはせず、安全性を大事 られたかごや荒物など、次第に扱うものを増や ており、この頃が一番商売の方も順調だったそ や工芸品、飲食店、銀行等の歴史ある建造物が 品を送ることも増えていき、特にも藁工品は漁 しながら商売を続けてまいりました。その後、 うです。土蔵の一つは隣の商家より譲りいただ 多く残る地域で、県内外からの観光客や修学旅 に身の丈に合った経営を代々心掛けてまいりま 畳表やござ(当時は主に紫波産)を扱うように いたものもございます。土蔵の一部を他の方が 行生なども多く訪れております。また多くの市 に使用する縄を沿岸部へ、履物等を北海道の方 「これからもこの町で」 当店は盛岡市紺屋町で荒物雑貨の販売をし ております。 商売を始めたのが1816年。今年で創業 なり、また代々「森 九兵衛(もり くへえ) 」 を名乗っていたことから、お客様から「ござ屋 ご使用になっていた時期もありましたが、現在 民に親しまれている中津川がそばを流れてお した。これまでも家族をはじめ少数の従業員で の九兵衛」を縮めた「ござ九」という愛称で呼 でも建物はそのままで店舗兼住居と商品倉庫と へ多く送っていたそうです。 ばれるようになりました。今でもその名を使用 っしゃいます。 り、川沿いの道を好んで歩かれる方も多くいら 増築によって商店規模は大きくなっていき して使用しております。 200周年を迎えました。父の跡を継ぎ、現在 森 理 彦 し商売をさせていただいております。 もとから盛岡周辺の方への販売を行ってお 私が7代目として毎日店に立っております。 ござ九 森九商店 (盛岡市) 代 表 経 営 サ ロ ン もしれません。 外観を目にしたことがある方がいらっしゃるか いただくこともあり、市外の方でも建物や店の この中津川と共に川沿いの土塀の外観をご紹介 ありがたいことに、盛岡の風景の一つとして 資源のひとつとしてまちのためになる活動をし 域の皆様に少しでも恩返しができるよう、地域 民団体から支援協力を頂戴しました。そんな地 ースの土蔵の壁の修復工事、どちらも市内の市 の補修工事、一昨年に行った店舗内の中庭スペ ては、9年前に行った裏側の川沿いの土蔵の壁 を求めに初めて来店されるご近所の方も多くい 一瞬にして変わった2011年3月、生活用品 ます。しかし、当たり前だと思っていたことが うに、商売としては依然、厳しい時代ではあり 同業のお店も市内には数えるくらいしかないよ ◇ ◇ ◇ 住む場所、買う場所の選択肢も増える昨今、 この紺屋町周辺のまちのことをもっと多く てまいりたいと考えております。 「このような機会がないと入りづらかった」 、「お ントを行っております。当店を訪れた方からは、 方々と協力して数年前より「まち歩き」のイベ こそ必要とされる店屋でありたい。 「ここにあ を実感しました。ここに暮らす方々がいるから する地域で手に入れることができるありがたさ らっしゃいました。私自身も求めるものを生活 の方に知っていただこうと、周辺の商店主の 店だということを初めて知った」 、 「そもそも入 ること」を大切に、ここに暮らす皆様の生活に 200年の節目はこれまでを振り返り、これ っても良い建物だとは知らなかった」 、といっ 以前、 「老舗は顔が知れているからと思って外 からの商売を考える機会とし、昨年亡くなった 少しでもお役に立てるよう、これからも誠実に に営業をしない」と言われ、襟を正す思いをし 父をはじめ先祖代々の当主へ感謝の気持ちを忘 た声もいただきました。商店として地元の方に たことがございましたが、このような声を肝に れず、この先も紺屋町の地で商売を続けていけ 商品を届けてまいります。 銘じ、今後も発信することに力を入れてまいり るよう一層努力をしてまいります。 はまだまだ認識されていないと実感しました。 たいと思います。 あったからこそ、当店も長く商売を続けさせて 思います。そのような地域住民の方々の支えが の繋がりや関係を大切にされる方が多いように 地柄というものもあるのかもしれませんが、人 が多く存在している都市であり、そういった土 うぞ覗いて行ってください。 えかもしれませんが、お近くにお越しの際はど 多種の雑貨を扱っております。入りづらい店構 の竹細工、縄やロープ、上敷ござやマット等、 わしやまな板などの台所用具、かごやザルなど ◇ ◇ ◇ 現在は箒をはじめとした清掃用具、洗剤、た 盛岡は100年以上の歴史を持つ老舗企業 いただいていると感じております。最近におい 岩手経済研究 2016 年4月号 25
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