第 4 回{マイコン・モータドライバ回路} 2年 1 機械工学科 有馬純平 マイコンとは マイコンとは microcontroller(microcomputer という説もある)の略で,CPU・メモリ・ タイマーカウンタ・I/O などの機能を備えているものです.いわゆる小型のコンピュータ です.マイコンを回路に組み込みプログラム書き込めば様々な電子機器を動かすことがで き,日常生活のあらゆるところ(家電製品,車など)に使われています.オートメーショ ン研究部ではロボットを制御するために使います.以下に代表的なマイコンを紹介しま す. ・PIC ・STM ・PSoC ・H8 ・LPC ・その他いろいろ ・AVR ・ARM マイコンがあれば,ロボットを制御できると上で述べましたが,具体的にどんなことが 出来るかを以下に示します. ・数値計算,論理演算. ・パソコンと通信する. ・センサの出力を読み取る. ・その他いろいろ. ・IC などに命令を送る. 2 今回使うマイコン Arduino pro mini 今回使うのは Arduino という初心者でも簡単に扱えるマイコンです.(実際はマイコン が他の複数の素子と一緒に基板上に載っているマイコンボードというものです.) Arduino は日本語の資料が多く,非常に簡単で電子工作初心者に最適なマイコンと言われていま す.Arduino というマイコンにもさまざまな種類がありますが今回はその中でも小さめの サイズの pro mini を使います. 図 2-1 Arduino pro mini 1/7 Arduino pro mini の外見は図 2-1 のようになっていてそれぞれのピンのところに数字や文 字が書いてありそれぞれの端子の役割を示しています.以下にそれぞれの役割を示します. 表 2-1 Arduino pro mini の端子説明 ピン 役割 2~13 デジタル入出力用(3,5,6,9,10,11 は PWM 制御可能) A0~A7 アナログ入力用 VCC 電源出力用 RAW 電源入力用 GND グラウンド RST グラウンドに接続するとリセットされる TXD/RXI シリアル通信用 数字のピンはデジタル出力の機能があり,ここから HIGH, LOW の 2 種類の信号を高 速に出力することができ,それによって回路を制御することが出来ます.今回の LT 講習 ではモータと LED の制御に使います. A○のピンはアナログ入力の機能があり,ピンに加えられた電圧を 0~255 の値で読み 取ることが出来ます.今回の LT 講習ではセンサの出力電圧を読み取るために使います. 3 モータドライバ回路 3.1 ドライバ回路とは ドライバ回路とは,モータを動かしたり大量の LED を光らせたりするための大きな電流 を制御する回路です.通常マイコンではモータを動かすような電流を流すことができないの で,ドライバ回路を使う必要があります. 3.2 モータドライバ IC モータドライバ IC は,モータを駆動制御するための回路が内蔵されている IC です. 今回使う IC は DRV8835 という二つの DC モータを駆動させることのできるものです. ちなみにこのモータ―ドライバ IC はステッピングモータも駆動させることも出来ます. 図 3-1 DRV8835 2/7 図 3-1 を見てわかるようにこのドライバ IC には 12 本のピンがついていて,それぞれの 端子の説明は以下のようになります. 表 3-1 DRV8835 の端子説明 ピン 名称 機能 ピン 名称 機能 1 VM モータ電源 12 VCC ロジック電源 2 AOUT1 A 出力 1 11 MODE モード設定 3 AOUT2 A 出力 2 10 AIN1 A 入力 1/APHASE 4 BOUT1 B 出力 1 9 AIN2 A 入力 2/AENBL 5 BOUT2 B 出力 2 8 BIN1 B 入力 1/BPHASE 6 GND グランド 7 BIN2 B 入力 2/BENBL (注)MODE:DC モータの場合→0,ステッピングモータの場合→1 ここにあるロジック電源とは IC 内の回路用の電源で,モータ電源はそのままモータに かかる電圧です.また今回は DC モータを使うので MODE は 0 となります. 基本的には,一つのモータを動かすにはマイコンからどっち方向に回転させるか二つの 信号で IC に送り,IC 内にある H ブリッジ回路(詳しくは第 4 章を参照)およびドライバ回 路を通じてモータに電圧が加わりモータが回転するという流れです. 具体的なモータの制御の仕方は,表 3-2 のファンクションを見ながら説明します.例え ば IN1 に 1,IN2 に 0 の信号を与えるとモータは正転するといった具合です. 表 3-2 ファンクション 入力 出力 モード IN1 IN2 OUT1 OUT2 0 0 Hi-Z Hi-Z 空転 0 1 LOW LOW 逆転 1 0 HIGH HIGH 正転 1 1 LOW LOW ブレーキ ※データシートについて ここに示した表のような電子部品の使い方,注意点などを記したものをデータシートとい い,購入するときや実際に使うときに読むべき必要事項がたくさん書いてあります. 4 H ブリッジ回路 モータを回転する方向は,モータに流れる電流の向きによって変えられます.そこで一般 にモータの制御に使われるのが,H ブリッジ回路です.H ブリッジ回路は図 4-1 のようにト ランジスタを 4 つ使うことよって,モータに流れる電流の向きを変えることができます. 3/7 トランジスタはベースに電流を流すと,コレクタ・エミッタ間に電流が流れるので,図 41 において A+と B-の素子を ON にすれば正転,A-と B+の素子を ON にすれば逆転させる ことができます.また,A+と B+,または A-と B-を ON にするとブレーキという状態にな りモータが回りにくくなります.また,すべて OFF にするとストップという状態になり力 の加わった方向に回り,いわゆる空転になります.このように H ブリッジ回路によってモ ータを 4 通りに制御することが出来ます. 図 4-1 5 H ブリッジ回路 マイコン・ドライバ回路 今回はマイコンとドライバ回路を一つの基板にのせます.今回作るマイコン・ドライバ 回路はプリント基板というものを使っており,今回やってもらう作業はプリント基板に素 子をはんだ付けしてもらいます. 図 5-1 4/7 回路図 図 5-2 実際使うプリント基板 図 5-3 今回の製作物 6 今回使う素子,部品 6.1 LED Light Emitting Diode の略で日本語名は発光ダイオードです.名前の通りダイオー ドの一種で順方向に電圧を加えたときに発行します.LED は足の長さが違い長い方が アノード(陽極,+につなぐ)で短い方がカソード(陰極,-につなぐ)なのでつけるときに は気を付けて下さい.アノード・カソードの見分け方として LED の切りかけによっ て見分ける方法もあり,切りかけのある方がカソードになります.逆につけると壊れ る原因となります. 5/7 図 6-1 LED 6.2 抵抗 今回抵抗は LED に流れる電流の調整を行うために使います. 抵抗の説明はいらないと思うのでここでは抵抗の値の読み方について説明します. 下に今回使う抵抗とカラーコード表というものを載せました.抵抗値の読み方は抵抗 にある 4 本の線の色で決めます.左から第 1 色帯,第 2 色帯,第 3 色帯,第 4 色帯と 呼び,この 4 本で有効数字 2 桁と桁数および誤差を表します.下の今回使う抵抗を例 に説明します.カラーコード表より赤は 2,黒が 0,茶が 10 なので 20×10 となり 200Ωとなります.また第 4 色帯が金なので誤差が±5%となります. 図 6-2 抵抗(200Ω) 図 6-3 抵抗のカラーコード 6/7 6.3 ピンヘッダ 基板間などで電気的な接続をするために使われる部品で,今回はセンサ回路の基 板とモータそして電池に接続するために使います. 図 6-4 ピンヘッダ 6.4 ピンソケット,IC ソケット IC やマイコンなどのピンの付いている素子を差す部品です. 図 6-5 ピンソケット 図 6-6 IC ソケット 7 参考文献 ・Arduino pro mini(最終確認日 2016/03/15) https://www.arduino.cc/en/Main/ArduinoBoardProMini ・秋月電子通商(最終確認日 2016/03/29) http://akizukidenshi.com/catalog/g/gK-09848/ ・モータの可変速制御(最終確認日 2016/03/15) http://hirose.sendai-nct.ac.jp/~ckuma/micom/3048/motor1.html ・抵抗-カラーコード(最終確認日 2016/03/29) http://pasobegi.fc2web.com/frame/elecircuit/006.htm 7/7
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