エルサルバドルという国 みなさんはエルサルバドルという国を聞いたことがあるでしょうか。中米諸国の中 で一番国土が小さく、火山や山間部が多いのが特徴です。気候は乾季と雨季に二分さ れる亜熱帯気候ですが、アジアに比べるとからっとしていて過ごしやすいです。 特に、私の任地である東部モラサン県は山間部に位置するため、様々な場所で美し い風景に出会えます。他県や首都等の都市部に住む人々からは開発途上地域と呼ばれ ることも多いですが、電灯が少ない為に夜はとてもきれいな星空を見ることができ、 また断水が起きれば水が使えることのありがたみを知ることができます。適応するま では大変なこともありましたが、まもなく赴任後 2 年目を迎える今となっては、私は 自分の任地が大好きと公言するぐらい、ここでの生活を満喫しています。 また、エルサルバドルの人々はとても日本人に似ていると感じることが多いです。 例えば、「働き者で勤勉であること」「人に対する思いやりがあること」など。ま た、この国の人々にとって家族はなによりも大切な存在であり、子供と一緒に出勤す る場面も多く見られます。家族以外にも隣人やコミュニティ毎の人と人との結びつき は強く、繋がりや絆を大切に生活するその姿勢は、人と共に生きる社会ではとても大 切なことだと改めて気付かされる瞬間も多いです。 活動について 私は現在、FUSAL という現地の NGO に所属し、5 歳未満の子供や妊婦の栄養改善を 通して貧困克服を目指すプログラムに取り組んでおります。 内容としては、対象地域の9つの自治体を定期的に巡回し、身長・体重測定の計測 とデータのモニタリング、対象住民に栄養補助食品の配布、またそれを使った調理の ワークショップや、親子でモノづくりや歌を一緒に歌うなどの知育のワークショッ プ、そして必要に応じてビタミン剤を提供するなど、業務は多岐にわたります。また それ以外にも、持続可能な社会形成という枠組みで開発専門家の同僚と共に、青少年 や母親、地域ボランティアを対象に自己啓発のワークショップも行っています。その 中でも特に、知育ワークショップにおいて母親や子供たちと一緒にモノづくりを行 い、知育の必要性や重要性を母親たちと共有します。また青少年を対象にした自己啓 発のワークショップでは日本文化紹介等も導入し、異文化を知ることで自国文化に対 する客観的な視点や自尊心を高められるようなアクティビティを行い、多くの人々と コミュニケーションを重ねることにも注力しています。というのも、現地に暮らす 人々の考えや価値観を知ることは活動上必要不可欠であり、また私が青年海外協力隊 を志望した動機も「それを知りたい」「自分で体感したい」と考えた為です。実際、 着任直後よりも時間をかけて関係性が構築された現在の方が、活動の幅や内容も少し ずつ広がってきていると感じています。 共に日々働く同僚は医師や栄養士、児童福祉専門家、開発専門家、普及員など、 様々な職種を持つ 12 人ほどのチームで、皆とても仕事熱心で陽気な方々です。巡回の 移動中や事務所内でも常に笑い声が絶えず、着任直後の余裕のなかった私はイライラ する時も度々あったほど(笑)ですが、現地に適応できる様になった今となっては、彼 らと笑い合える時間に救われることが多いです。着任当初から現在に至るまで、まだ まだスペイン語が拙い私の言葉にも聞く耳を持ち、チームの一員として接して下さる 同僚の皆、また同じようにいつも笑顔で迎えて下さる巡回先の地域ボランティアや対 象住民の方々には、ただただ感謝するばかりです。 異文化理解とか、互いの文化を尊重するとか、言葉にするのは簡単にできても、実 際は多くの困難が伴うことを私はここにきて初めて学んだような気がします。もとも と幼少時から海外経験があったおかげで、学生時代の留学先でも楽しいことばかりで 困難に出会うことは今ほど多くはありませんでした。でも困難があるからこそ、その 壁を乗り越えてわかり合えたときの喜びは計り知れず、感情を共有できる瞬間は、と ても言葉では言い尽くせないくらい幸せです。まもなく残りの任期もちょうど 1 年と なりますが、最後まで現地の方々との時間を大切に共有していけるよう、これからも 積極的に行動していきたいと思っています。
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