気象庁 5月号 です! 平成28年 (2016年) ∼新しい空港気象ドップラーレーダーの運用開始∼ 気象庁では、航空機の離発着が多い9空港に空港気象ドップラーレーダーを設置しています。このレー ダーは空港周辺の降水の強さを観測するとともに、レーダーから発射した電波が雨粒に反射される際の ドップラー効果を利用することで、航空機の離着陸に重大な影響を及ぼす低層ウィンドシアー等、降水域 内の風を観測しています。これらの情報は、管制官を通してパイロットに伝えられ、危険な領域を回避する など、航空機の安全運航に有効に利用されています。 これらのレーダーのうち、関西国際空港と東京国際空港(羽田空港)では、「二重偏波ドップラーレー ダー」と呼ばれる新たな機能を持つレーダーとして更新し、関西国際空港では3月3日から、東京国際空 港では3月10日から運用を開始しました。 従来のレーダーは水平方向に振動する電波(水平偏波)のみを発射していましたが、新しいレーダーは 水平偏波に加えて、垂直方向に振動する電波(垂直偏波)を発射し、水平偏波と垂直偏波の反射波を組 み合わせて解析することで、落下する雨粒や雪の大きさや形を推定できるようになります。この技術により、 雨の強さについてより正確に観測することが可能となります。さらに、降水粒子(雨、雪、雹(ひょう))の判 別が可能となることから、新たなレーダー情報を提供することができるようになるものと期待しています。 空港気象ドップラーレーダーによる観測 http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kouku/2_kannsoku/23_draw/23_draw.html (参考)ドップラー効果 http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kouku/2_kannsoku/24_lidar/index7.html (参考)航空機の離着陸時における風との関わり http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kouku/2_kannsoku/24_lidar/index8.html 図1:空港気象ドップラーレーダーによる風の急変域の検出と航空機の安全運航への利用 図2:空港気象ドップラーレーダー 左:関西国際空港 右:東京国際空港 図3:アンテナ (直径7m) 図4:二重偏波による観測の仕組み 二重偏波レーダーでは、降水粒子から返ってきた水平・垂直の2種類の受信波を組み合わせて解析 することで、より精度良く降水強度を推定できるようになります。さらに、降水粒子の種類の判別 など新たなレーダー情報の開発にも応用できるものと期待しています。 図5:空港気象ドップラーレーダーによる風の急変域の観測例 左:降水の強さの画像と風の急変域(マイクロバーストとシアーライン)の検出結果 右:ドップラー速度の画像(暖色系の色はレーダーのある場所(画像の中心)から遠 ざかる風、寒色系の色はレーダーのある場所に近づく風を表します)
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