(書式5-5-1-1) 取締役の競業避止義務違反について和解する合意書 合 意 書 ○ ○ ○ ○ 株 式 会 社 を 甲 、○ ○ ○ ○ を 乙 と し て 、甲 乙 は 、以 下 の と お り 合 意 す る 。 (確認事項) 第1条 甲乙は、乙が行った下記の行為は甲の取締役会の承認を得ることなく、 会社の営業の部類に属する取引をなしたものであることを確認する。 記 平成○○年○○月○○日以降、株式会社○○○○(○○市○○ 町○丁目○○番地所在、以下「丙」という)の代表取締役に就 任し、その経営にあたった行為。 (退任) 第2条 甲乙は、平成○○年○○月○○日、乙が丙の取締役を退任したことを 確 認 す る 。ま た 、乙 は 、今 後 い か な る 形 で あ れ 丙 の 業 務 に 関 与 す る 行 為 はなさない。 (示談金) 第3条 乙は甲に対し、第1条記載の競業避止義務違反に基づく賠償金として、 金 ○ ○ ○ 万 円 の 支 払 い 義 務 が あ る こ と を 認 め 、こ れ を 平 成 ○ ○ 年 ○ ○ 月 ○○日限り支払う。 (誓約) 1 第4条 乙は甲に対し、今後、甲の取締役の地位にある限り、いかなる形態、 名 目 に お い て も 、甲 の 取 締 役 会 の 承 認 を 得 る こ と な く 、甲 の 営 業 の 部 類 に属する取引をなさないことをここに誓約する。 (清算条項) 第5条 甲乙は、乙の第1条の競業行為に関し、本合意書に定める以外、相互 に何らの債権債務もないことを確認する。 以上のとおり合意が成立したので、本書面2通を作成し、甲乙各1通を所持す る。 平成○○年○○月○○日 甲 ○○市○○町○丁目○○番 ○○○○株式会社 代表取締役 乙 ○○○○ ○○市○○町○丁目○○番 ○ 2 ○ ○ ○ 解説 (第1条) 本合意は、取締役会設置会社の場合である。 株式会社の取締役が、会社の営業の部類に属する取引を、自己又は第三者の ためになすときは、取引に関する重要事実を開示した上で、取締役会の承認を 受 け な け れ ば な ら な い( 会 社 法 3 6 5 条 1 項 、3 5 6 条 1 項 1 号 )。取 締 役 は 、 その部類に属する取引に関して有するノウハウを、会社に対して提供すること により報酬を得ているものであり、会社と競争関係にある者には原則としてそ のノウハウを提供すべきではないからである。 取締役会の承認なくそのような取引をした取締役は、会社に対する忠実義務 違反(旧商法254条の3、会社法355条)により損害賠償義務を負担する (会社法423条1項)。 (第3条、賠償額) 取締役が自己または第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引を し、これによって株式会社に損害が生じた場合、上記のとおり、任務懈怠のあ った役員等は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う(会社法423 条1項)。任務懈怠責任である以上、この責任は過失責任である。 取締役がかかる競業取引をしようとするときには、上記のとおり、取締役会 において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければなら ないが、これに違反して取引がなされたときは、当該取引によって取締役また は第三者が得た利益の額は、株式会社に生じた損害の額と推定される(会社法 423条2項)。この損害額の推定規定により旧商法にあった介入権(旧商法 264条3項)と経済的にはほぼ同様の効果が得られるので、損害額の推定規 定に加えて介入権の規定を置く理由に乏しいとされ、会社法では介入権の規定 が削除された。 総株主の同意がなければ、この責任を免除することはできないが(会社法4 3 24条)、一部免除の規定(会社法425条~427条)の適用はありうる。 会社は上記推定額により高い損害が生じたことを立証して賠償を請求する ことも可能であり、又、示談の場合、賠償額は当事者の合意により自由に決め ることができる。 (印 紙) 本件の文書には、印紙は不要である。 4
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