(ちば経済トレンド 5 月号) 県内個人消費は、衣料品などのボリュームゾーンに弱さがみられ一進一退の動きが続いている 。 一 方 、年 々 増 加 す る 訪 日 客 の 消 費 傾 向 が モ ノ か ら サ ー ビ ス に 変 化 し つ つ あ り 、都 心 部 の み な ら ず 地方部でもインバウンド需要拡大の恩恵 を受けるチャンスが広がっている 最近の県内百貨店売上をみ る と( 図 表 1 )、2 月 に 閏 年 要 因 か ら 前 年 同 月 比 +0.5% 増 と (%) 25 4 か月ぶりの前年超えとなっ 20 たものの、天候不順でコート 15 など季節物の動きが悪いほか 0 ▲5 としては一進一退の動きが続 ▲ 10 いている。一方、東京地区の ▲ 15 など千葉県より勢いがある。 この違いの最大の要因はイン 千葉県 千葉県衣料品 東京地区 5 りがみられることから、全体 超 え が 2 月 ま で 11 か 月 続 く 千葉県及び東京地区百貨店の売上(前年同月比) 10 中間層の消費意欲にも若干陰 百貨店に目を向けると、前年 (図表1) ▲ 20 ▲ 25 1月 15年 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 16年 2月 【注】出所:(千葉県)県内主要百貨店の売上データをもとに㈱ちばぎん総合研究所が作成 (東京地区)日本百貨店協会 バウンド消費の多寡である。訪日外国人の人気が高い銀座の百貨店では、消費税だけでなく関税・ 酒税・たばこ税も免税となる「空港型免税店」を店内にオープンさせるなど、来日客の取込み策を 強化したことも奏効している。 最近のインバウン ド消費の特色につい て、訪日外国人1人 (図表2)訪日外国人1人当たり費目別旅行支出 宿泊費 光庁訪日外国人消費 2015年 2014年 2013年 動向調査、図表2) 前年比 をみると、買物代が 2015年 2014年 当り費目別支出(観 最も大きなウェイト を占めている傾向に 45,465 45,471 45,955 飲食費 交通費 32,528 32,140 28,013 18,634 16,259 14,278 (単位:円/人) 娯楽サービス費 5,359 3,464 3,366 買物代 73,662 53,278 44,691 その他 518 564 390 総額 176,167 151,174 136,693 (単位:%) 宿泊費 ▲ 0.0 ▲ 1.1 飲食費 交通費 1.2 14.7 14.6 13.9 娯楽サービス費 54.7 2.9 買物代 38.3 19.2 その他 ▲ 8.2 44.6 総額 16.5 10.6 【出所】観光庁「訪日外国人消費動向調査」 変 化 は な い も の の 、 前 年 比 伸 び 率 で は 娯 楽 サ ー ビ ス 費 が こ の 1 年 で 54.7% 増 と 大 幅 拡 大 し て い る 。 今後も訪日リピーターを中心に日本の四季や郷土料理・文化などを堪能したいという、モノからサ ービスへの消費ニーズ変化は更に強まることが予想され、現在は買い物の1割程度の規模に過ぎな いサービス支出が今後は重みを増していくことが確実である。県内を訪れる外国人客は成田空港周 辺 や ベ イ エ リ ア に 集 中 し て お り 県 内 全 域 に 行 き 渡 っ て い る 訳 で は な い が 、訪 日 客 の 少 な い 地 域 も「 爆 サービス買い」傾向の高まりをきっかけに、外国人を呼び込め るチャンスが広がっている。実際に 県内企業へのヒアリングにおいても、南房総のレジャー施設では「人数は少ないものの徐々に外国 人客が増えつつある」との声が聞かれる。また、鴨川地区ではメディカルツーリズムと合わせて温 泉など日本文化の体験が好評を得ている事例もある。 2年続けて今秋も実施される成田から外房・南房への 高速バス実証運行や地方創生加速化交付金 などを上手に使いこなしつつ、外国語での案内看板やガイドツアーなど受入態勢の整備もいち早く 進め、全国で繰り広げられるリピーター争奪戦 に県内各地域の魅力を引き上げつつ、いかに勝ち残 って訪日客増加の恩恵を県内隅々にまで行き渡らせ るかが、千葉県にとっての喫緊の課題である。 (大村)
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