第3章 全体計画の推進 第3章 1 全体計画の推進 特別支援教育を推進するうえでの課題 調布市においても,特別な支援を必要とする児童・生徒が増加するなか,学級数の増加に伴う教室 等の施設整備や指導・相談体制の充実などの課題が顕在化しています。特別支援教育を取り巻く状況 の変化と課題を的確に把握・調整しながら,全体計画を着実に推進していく必要があります。 (1)平成26年度特別支援教育検討委員会の概要 平成26年度には,指導室を中心に特別支援教育検討委員会を設置し,特別支援教育にかかわる 現状と課題について協議しました。 ① 主旨 情緒障害等通級指導学級や,知的障害学級の新たな設置等について協議を重ねました。児童・ 生徒数,施設面の状況等を把握し,教育プランの改定も視野に入れ,検討・協議しました。 ② 組織 小・中学校長会の推薦する者,教育総務課長,教育総務課施設担当課長,学務課長,指導室長, 教育相談所長,指導主事 ③ 主な協議内容 第1回(平成26年10月 6日)・・・通級指導学級*について 第2回(平成26年11月17日)・・・知的障害学級について 第3回(平成26年12月18日)・・・調布市の特別支援教育の総括について ④ 通級指導学級について 現状・・・平成27年度の開設を目標に,飛田給小学校に4校目の特別支援教室拠点校*を設置 課題・・・5校目の小学校特別支援教室拠点校*の設置や,中学校2校目の通級指導学級の設置 通常の学級に在籍する特別な支援を要する児童・生徒の支援体制 ⑤ 知的障害学級について 現状・・・小学校の児童数は減少傾向にあり,中学校は増加傾向にある。 課題・・・知的障害学級の増設よりも,通常の学級における特別な支援を要する児童・生徒へ の支援が必要であり,通常の学級に支援員を配置する必要がある。 ⑥ その他の調布市の特別支援教育について 現状・・・七中相談学級は,本来情緒障害の生徒を受け入れる場であるのに,学校不適応の生 徒を受け入れる場になっている。 課題・・・七中相談学級の在り方を適応指導教室「太陽の子」の在り方とともに,検討してい く必要がある。 (2)特別支援教育検討委員会で協議された課題 3回の検討委員会での協議を通して,調布市の特別支援教育の課題を次のようにまとめました。 ① 通級指導学級について ○小学校の通級指導学級の設置については,平成27年度に設置した飛田給小学校ゆずりは 学級を含めた4つの特別支援教室拠点校の状況を3年間見ていくこととし,平成30年度 に改めて検討・協議することが望ましい。 ○第六中学校つぐみ教室の指導体制の充実が必要であり,この時点では,情緒障害の固定学 級の検討も必要であるとの意見も出されました。そのための条件として施設の予算,教員 の配置,対象生徒の確保が挙げられました。 ② 知的障害学級について ○小学校の知的障害学級の増設は,引き続き対象児童数の状況を基に判断することが望ましい。 - 48 - 第3章 全体計画の推進 ○中学校では,東部地域に固定学級を増設することも検討しましたが,現在設置されている3 校間の在籍人数のバランスを図る必要がある。 ③ その他の調布市の特別支援教育について ○七中相談学級の今後の在り方として,具体的な作業を進めていく必要がある。 ○平成29年度以降に,七中相談学級を適応指導教室として設置し直すことが望ましい。 (3)平成26年度特別支援教育検討委員会以降に生じた特別支援教育を推進するうえでの課題 ① 知的障害学級の体制 知的障害学級については,小学校で北部地域に,中学校で東部地域に設置校がなく,その増設 が問われています。しかし,対象児童・生徒数の状況を将来に渡って的確に捉える必要がありま す。知的障害学級対象の児童・生徒数については,年度によって増減があり,平成31年度まで は,北部地域の小・中学校の児童・生徒数は増加の傾向にあり,教室数が不足する見込みで,施 設改修や普通教室の増設が優先であると考えます。 このような状況を踏まえて,小学校は北部地区,中学校は東部地区では特別支援学級の増設に ついて時間をかけて検討・協議する必要があります。 ② ことばの教室及び適応指導教室の体制 ア ことばの教室の在り方 平成27年度において,ことばの教室に通っていた児童が急増した状況にありました。こと ばの教室の児童が増加した要因として,児童の実態に応じた特別な指導により,構音障害や吃 音等による児童の学習上または生活上の困難な状況の改善や克服が見られ,退級した事例が増 え多方面からのニーズが高まってきていることが挙げられます。 今後は,ことばの教室の取組のさらなる周知とともに,教室の増設等を視野に入れた検討, 協議が必要になると考えています。 イ 適応指導教室の在り方 不登校児童・生徒に対しては,国から適応指導教室指針が平成15年に示され,県費負担教 職員を配置することはできません。区市町村で適応指導教室を設置し,職員を配置することが できると示されています。 調布市では,適応指導教室「太陽の子」を設置し,不登校児童・生徒を対象とした個別指導 や小集団指導を実施しています。しかし,不登校生徒は,七中相談学級で通級指導を受ける形 態で取り組んでおります。本来は,七中相談学級の生徒も適応指導教室での個別指導や小集団 指導を受ける必要があります。 ウ 不登校対策と七中相談学級の在り方 七中相談学級は,昭和59年に相談学級として設置され,翌年には,中学生13名を受け入 れて開級しました。昭和60年当時は,通級による指導学級を通して不登校対応を行ってきま した。しかし,平成5年に通級指導学級が法制化されましたが,調布市では,その後も七中相 談学級の在り方を変えずに,不登校生徒を受け入れています。 七中相談学級の状況は,通級指導学級として1学級の認可を都教委より受け,都費による2 名の教員を配置しています。指導体制については,通級指導学級では,8時間を上限としてい ますが,七中相談学級では週5日毎日登校している生徒もいます。七中相談学級は定員が10 名で,体験通級を含めても20名となっていることから,生徒の受入数には限界があります。 このことを受けて,中学校としての適応指導教室の在り方を検討・協議する必要があります。 ③ 特別支援教室拠点校の在り方 ア 小学校について 平成27年4月には,市内4校目の特別支援教室拠点校*が飛田給小学校に「ゆずりは学級」 として開設しました。今後は,市内4校での巡回指導*と拠点校での通級指導の状況を把握し - 49 - 第3章 全体計画の推進 て,検証を行っていきます。その成果と課題を整理し,市内に新たな拠点校を増設する必要が あるかどうかを検討・協議します。 イ 中学校について 調布市では,中学校の特別支援教室拠点校の対象生徒は増加傾向にあると捉えており,中学 校の特別支援教室拠点校の設置を検討するとともに,第六中学校の「つぐみ教室」を拠点校と して位置付け,支援の充実について検討・協議する必要があります。 また,中学校における特別支援教室巡回指導を視野に入れますと,市内2校目の情緒障害等 通級指導学級*の設置が必要になりますが,七中相談学級が本来,情緒障害等通級指導学級と して東京都から認可を受けていることから,その在り方を整理し,適正な運用にすることが求 められています。 中学校における市内2校目の情緒障害等通級指導学級については,東京都の動向を注視しな がら取り組むとともに,不登校生徒への適応指導教室の整備体制を整える必要があります。 ④ 東日本大震災からの教訓 特別な支援を必要とする子どもたちが,住みやすく,安全なまちは,すべての市民にとって住み やすく,安全なまちといえます。震災の経験を生かし,各学校におけるマニュアルや防災訓練等の 充実に努めるとともに,地域の特別支援学校を含めた学校間相互の情報共有を図るなど,災害時に おける協力や支援体制の構築が求められます。 さらに,避難所等においては,地域との連携・協力が不可欠であり,日頃から,特別な支援を必 要とする子どもたちに対する関心や理解を深めていただくための取組が求められます。 2 計画の推進体制 全体計画の推進に当たっては,調布市基本計画及び調布市教育プランに掲げる特別支援教育にかか わる施策や主要事業等の進捗状況について,振り返り・評価・見直しなど,的確な進行管理を行うと ともに,関連する部署との情報共有や連携・調整を図りながら,取組を着実に推進します。 これまで,就学相談*にかかわる体制は,教育委員会教育相談所,学務課,指導室が連携して進めて きました。現在,知的障害学級や通級指導学級対象の児童・生徒が増えていることや,就学に際して, 就学等検討委員会の答申と異なるケースも増えてきています。さらに,学校では対応が困難な保護者 等との相談ケースが増えている課題があります。 このような状況を踏まえ,これまでの関係部署の在り方を見直すために,教育委員会の組織体制を検 討・協議する必要があります。 - 50 -
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