2016/04/26 志摩 力男 氏 相場展望レポート( 相場展望レポート(2016 年 5 月) 5 月相場展望 予想レンジ ドル円 ユーロドル ユーロ円 豪ドル円 108.00-115.00 1.1000-1.1500 122.00-130.00 83.00-88.00 <これまでの流れを振り返る> 5 月の相場展望を考える前に、これまでの相場の流れを振り返ってみたいと思います。 振り返ることで、今この時点で、何がマーケットのフォーカスなのか、どういった動きが当局者 から望まれているのか、どこにリスクがあるのか、そういった点が見えてくると思います。 今年は年初から波乱の相場展開でした。日経平均は年初の 1 万 9 千円前後から 1 万 6 千円割れと なり、米ダウも 17,500 ドル前後から 15,500 ドル割れ、原油をはじめ商品価格は低迷、ドル円は 年初 120 円前後から 115 円台に突っ込みました。 きっかけになったのは、中国が人民元を「少し」切り下げたことです。中国からの資金流出が人 民元を切り下げないと対処できないほど大規模なものになっているのではないか、中国経済がつ いにスローダウンするのではないか、周囲の新興国は中国以上に深刻な景気後退に追い込まれる のではないか、こういった懸念が典型的な「リスクオフ」を呼び込み、世界中の株価等が急落し ました。 こうした流れに歯止めをかけたのが、2 月 26・27 日上海で行われた G20 です。G20 では、実体 経済以上にマーケットが混乱していると指摘され、財政が出せる国(具体的には主として中国) は財政を出して対処すること、過度の通貨安競争への警告も示されました。同様に FRB も金融引 き締めスタンスをかなり緩め、イエレン議長はかなり「ハト派的」スタンスを示し、市場の回復 を側面支援しました。 その結果、市場は「リスクオン」へと急展開し、30 ドル以下であった原油価格は 40 ドルを優に 上回り、米国株は史上最高値近辺を試そうという動きになっています。新興国市場にも急激に資 金が回帰し、ブラジルレアルは安定、ボベスパは年初来 20%前後の急反発、アルゼンチンは 15 年ぶりの起債に成功しました。 ところが、世界的には「リスクオン」の地合いとなったのですが、取り残されたのが日本です。 上海 G20 で打ち出された諸政策から、実は「上海合意」なる「ドル高是正の密約」が交わされた のではないかとの観測が市場に流れ、ドル円は 110 円を割り込み 107.68 円まで急落しました。円 の上昇が日本株の足を引っ張り、史上最高値に挑戦する米ダウとは対照的に、現状 1 万 7 千円台 半ばでの推移となっています。 <マクロ的に見た、今後の展開> 世界の資産市場を回復させることに成功した G20 当局者達ですが、基本的には中国がかなり財政 を出して中国経済を支えたこと、FRB の緩和姿勢が反転成功の2大要因だったと言えます。 しかし、これが永続するかと言えば、はなはだ心もとないところがあります。 中国は財政を出して経済を支えましたが、それは中国が必要としている構造調整とは本質的に相 容れないものです。中国経済不振の根本要因は、賃金上昇で製造拠点として国際競争力を失いつ つあること、そして不動産価格が上がり過ぎていて、とても維持できない水準にあることです。 エコノミストの多くは人民元が 30%程度下落する必要があるのではないかとみており、それこそ が本当に必要な調整であると考えられていますが、今この時点で人民元が調整するとまた「リス クオフ」の世界に戻ってしまいます。それを防いだのが G20 での合意だったのですが、必要な調 整を先延ばししたともいえます。 今年の夏から後半にかけて、中国がまた必要とする構造調整に動くのではないか、そういう懸念 があります。 また、FRB の金融緩和姿勢ですが、おそらく引き締めたくてもなかなかできない状況が続きそう です。米国の雇用情勢はこれまでとは違い、かなり逼迫しつつあることが 30 年ぶりに低い新規失 業保険申請件数の数字に現れています。これまでハト派的であった地方連銀の総裁が打って変わ ってタカ派的になっていることが象徴しています。意外に早い時期に、引き締め路線に戻る可能 性、これもリスクです。 この原稿を書いている時点では、4 月 FOMC の結果、それから 28 日の日銀政策決定会合の結果 はわかりませんが、こうした流れを踏まえて 5 月の相場予想をしたいと思います。 おそらく、G20 で作った「リスクオン」の流れをどう持続させるかということが、当局者の課題 だと思います。それに反する状況は出現しないのではないかというのが基本路線となります。 <ドル円> 107 円台を見た後に、大きく反発しました。ルー米財務長官に「円高ではあるが、動きは秩序的」 と発言され、日本の当局が介入できない以上、円高がさらに進むのではないかと懸念されました。 しかし、その懸念を払拭するかのような大きな反発を見せています。おそらく、4 月 28 日に日銀 は ETF 増額を含めた金融緩和を進めるものと思われます。5 月の伊勢志摩サミットに向けて、日 本もそれなりの政策を打ち出して行くという流れが見えています。 世界の潮流に立ち遅れましたが、日本も「リスクオン」の流れに参加してくるのではないかと思 われます。株価の上昇とともに、円安も進み、113 円から 115 円を伺う可能性があるのではない かと考えます。 <ユーロドル> 一昨年は、大きく売られたユーロドルですが、2015 年は大きく見て 1.05-1.15 のレンジ相場で した。この流れが今年も続いています。ECB の金融緩和に限界が見えており、更なる金融緩和は 考え難くなっていますが、FRB が何れかの時点で金融引き締めに向かうのでユーロ高にも限界が あります。こうした、どっちつかずの状況が続きそうであり、1.10-1.15 の基本レンジを大きく 抜けないのではないかと思われます。 <ユーロ円> これまでドル円の下落に連れて、緩やかな円高トレンドでしたが、ドル円反発の影響を受けてユ ーロ円も若干回復する可能性が考えられます。 <豪ドル円> 世界的リスクオンの回帰から豪ドルも対ドルでは大きく上昇しましたが、円高の影響から豪ドル 円は抑えられていました。ドル円の反発を受けて、豪ドル円も反発、90 円方向を試しに行く展開 を想定したいと思います。 志摩 力男(しま りきお) 氏 プロフィール 慶應義塾大学経済学部卒 1988 年~1995 年 ゴールドマン・サックス証券会社 2006 年~2008 年 ドイツ証券等 大手金融機関にてプロップトレーダー(自己勘定トレーダー)を歴任、 その後香港にてマクロヘッジファンドマネージャー。 世界各地のヘッジファンドや有力トレーダーと交流があり、現在も現役トレーダーとして活躍。 ■ご留意いただきたい事項 マネックス証券(以下当社)は、本レポートの内容につきその正確性や完全性について意見を表明し、また保証するも のではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を 推奨し、勧誘するものではございません。当社が有価証券の価格の上昇又は下落について断定的判断を提供するこ とはありません。 本レポートに掲載される内容は、コメント執筆時における筆者の見解・予測であり、当社の意見や予測をあらわすもの ではありません。また、提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されることがござ います。 当画面でご案内している内容は、当社でお取扱している商品・サービス等に関連する場合がありますが、投資判断の 参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。 当社は本レポートの内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資にかか る最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。 本レポートの内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに転用・複製・配布 することはできません。 当社でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等に は価格の変動・金利の変動・為替の変動等により、投資元本を割り込み、損失が生じるおそれがあります。また、発行 者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本を割り込み、損失が生じるおそ れがあります。信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠 金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が 生じるおそれがあります。 なお、各商品毎の手数料等およびリスクなどの重要事項については、「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」 をよくお読みいただき、銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身のご判断で行ってください。 マネックス証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第165号 加入協会:日本証券業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
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