ショートコメント vol.51 (2016 年 4 月 22 日) テーマ:大阪では個人預金が前年比で減少 ~マイナス金利導入の影響か? 景気の鈍化による影響の可能性もあり~ ●直近の預金残高はプラス幅が拡大 全国的な預金の動向をみると、直近(2016 年 2 月末)の国内銀行での残高は 684.8 兆円。前年比では 3.9%増となった。前月の 2.9%増に比べると、ややプラス幅が拡大している(図表 1) 。 2 月中旬からマイナス金利がスタートし、消費者を中心とし た様々な動きの変化が伝えられていたが、2 月末の状況をみる 限り、預金の増加傾向が強まる形となっている。 【図表 1】 (%) 5.0 国内銀行における預金額の推移(前年比) 4.5 3.9 4.0 3.5 3.0 2.9 2.5 ●預金種別によって異なるトレンド 2.0 預金は、一般預金、公金預金(地方公共団体などの預金) 、 金融機関預金などに分けられ、さらに一般預金には個人預金が 1.5 1.0 0.5 0.0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 含まれる。図表 2 で預金の増減に対するぞれぞれの寄与度をみ ると、その種別によって動きに大きな違いがみられる。 2014 2015 16 ※月末残高の前年比 ※国内銀行銀行勘定。ただし、整理回収機構、ゆうちょ銀行を除く (出所)日本銀行「都道府県別預金・現金・貸出金(国内銀行)」 全体を押し上げているのは主に金融機関預金であり、2 月の 急増が目立つ。その急激な動きから判断すると、マイナス金利 【図表 2】 の影響もあり得る。もちろん断定はできないものの、国債金利 (%) の低下も進むなか、資金の振り向け先が少なくなった結果とも 4.0 考えられよう。 2.0 預金額の推移と種類別寄与度(前年比) 5.0 3.0 1.0 0.0 ●大阪では個人預金が減少 -1.0 一方、先ほどの図表 2 をみると、個人預金はプラス幅が縮小 -2.0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 2014 しており、ここ数年では最低の規模となっている。 さらに、個人預金の動向を地域別にみると、全体的に右下が りの傾向がみられる中で、大阪は前年比でマイナスとなってい る(図表 3) 。前年割れとなったのは 1 月からであるが、2 月に なって減少幅が大きくなっている。 どもマイナスになるという不安感から、預金を下ろす動きが取 りざたされていた。現金を金(ゴールド)に換える動きや、金 庫を購入して家で保管する「タンス預金」の増加などである。 この動きが個人預金の増勢の鈍化、あるいは大阪での減少幅 の拡大につながったのかどうかは、今のところは判断が難しい。 16 一般預金(個人除く) 金融機関預金 預金合計 (出所)日本銀行「都道府県別預金・現金・貸出金(国内銀行)」 【図表 3】 個人預金の推移(前年比) (%) マイナス金利の導入後、消費者の間では、定期預金の金利な 2015 個人預金 公金預金 その他 6.0 全国 東京 大阪 愛知 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 -1.0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 2014 2015 16 (出所)日本銀行「都道府県別預金・現金・貸出金(国内銀行)」 趨勢的な下降は昨年後半から始まっていることから、景気の鈍 化によって預金を取り崩す動きも考えられよう。 ※本稿は情報提供が目的であり、商品取引を勧誘するものではありません。また、本稿は当社が信頼できると判断した各種デー タに基づき作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。なお、本稿に記載された内容は執筆時点 でのものであり、今後予告なしに変更されることがあります。 1 【図表 4】 ●今後の注目点 今のところ個人預金が前年を下回っているのは、大阪のほか 3 県(山梨、和歌山、高知)である。今後の注目点としては、 3 月以降、この数がどう変化するかである。過去の預金動向を (%) 6.0 個人預金の推移(前年比)と景気の関係 5.0 4.0 3.0 みる限り、景気循環との連動性はそれほど強いわけではない 2.0 (図表 4) 。仮に預金の減少傾向が長期化するようであれば、 1.0 マイナス金利導入の影響が大きいとも考えられよう。 0.0 (年) ※シャドー部分は景気後退局面 (出所)日本銀行「都道府県別預金・現金・貸出金(国内銀行)」 内閣府「景気動向指数」 本件照会先:大阪本社 荒木秀之 TEL:06(4705)3635 mail:[email protected] ※本稿は情報提供が目的であり、商品取引を勧誘するものではありません。また、本稿は当社が信頼できると判断した各種デー タに基づき作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。なお、本稿に記載された内容は執筆時点 でのものであり、今後予告なしに変更されることがあります。 2
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