産学官による先端的な研究開発プロジェクトの事業化状況等 に係る調査結果 平成28年4月19日 北海道経済産業局 【問い合わせ先】 経済産業省 北海道経済産業局 地域経済部 産業技術課 (担当:木村、比良(ひら)、渋江) 電話 : 011-709-2311(内線2587) FAX : 011-707-5324 E-mail : [email protected] 調査結果の概要 北海道経済産業局では、これまで支援した産学官の共同研究体 制(コンソーシアム)による実用化に向けた高度な研究開発プロ ジェクトについて、その後の事業化状況等について調査を実施。 調査対象プロジェクト90件(委託費総額66.1億円)のうち、 82件からアンケートを回収した結果、事業化52.4%(43件)、 累計売上高95.7億円、60名の新たな雇用が生まれるなど、 地域の新事業・新産業の創出に繋がっている事実を確認。 当局では引き続き、地域イノベーションの持続的な創出に向けて、 次世代を切り拓く挑戦的な技術開発や産学官連携による研究開 発を支援。 1 目 次 頁 1.調査概要 ①調査目的 ②調査内容 3 ③調査対象 2.アンケート調査結果の概要 ①実用化・事業化の状況 4 ②事業化による累計売上高 ③事業化に至っていない主な理由・要因 ④事業化に向けて必要とする支援策として重視するもの ⑤研究開発の成果 ⑥プロジェクトを通して得られた間接的なメリット等 ⑦雇用 ⑧知的財産関連 5 6 7 【事例1】地域の産学連携による国産小麦粉ブレンド技術の実用化研究を通じたパン・麺類の新市場の創出 8 【事例2】吹雪による道路の吹き溜まりや視界悪化を防止する高性能防雪柵の開発 9 【事例3】タマネギ成分の新たな抽出技術(BRC製法)による“おいしさ”と“機能性”を兼ね備える食品の開発 10 2 1.調査概要 ①調査目的 北海道経済産業局では、新事業・新産業の創出により地域経済の活性化を図るため、大学等の技術シーズや知 見を活用した産学官の共同研究体制(コンソーシアム)による実用化へ向けた研究開発を支援している。 これらの採択事業者等は、事業終了後5年間はその直接的成果について事業化状況報告書等を当局へ提出し ている。一方、当初目的とした直接的成果には至らずとも、当該事業で開発した技術等を当初目的とはしていな かった分野(派生分野)で事業化しているものや、事業化状況報告書等の提出期間後に事業化しているものも あり、これらの成果を確認することにより、地域の新事業・新産業の創出に繋がる可能性がある。 このため、これまで当局が実施したコンソーシアム型の研究開発型支援事業のうち、最も採択件数が多かった平成 14年度(平成13年度補正含む)以降の事業を対象として、その後の事業展開、波及効果、特許取得状況等 の調査・分析を行い、当該事業者のフォローアップ支援、他の企業の製品開発支援、知的財産権の取得支援に 繋げるものとする。 ②調査内容 アンケート調査及びヒアリング調査を実施し、調査報告書として取りまとめ。 ③調査対象 ※地域新生コンソーシアム研究開発事業(H19年度採択)からの継続分(3件)は含まない。 事業名 採択年度 採択件数 管理法人数 構成機関数 地域新生コンソーシアム研究開発事業 H14(H13補正含)~H19 71 71 360 地域イノベーション創出研究開発事業 H20~H23(※) 19 19 94 90 90 454 合 計 3 2.アンケート調査結果の概要 対象事業90件のうち、82件からアンケート調査票を回収(回収率91%)。 委託先:(公財)北海道科学技術総合振興センター ①実用化・事業化の状況 実用化 事業化 直接的成果 43件(52.4%) 35件(42.7%) 派生的成果(※1) 17件(20.7%) 14件(17.1%) 合計(※2) 52件(63.4%) 43件(52.4%) ※1.採択事業において当初目的としていた直接的成果(開発した商品・技術等)ではないが、当該事業を通じて開発した技術等を当初目的としていなかった分野で事業化した商品等。 ※2.実用化と事業化の各合計は、直接的成果と派生的成果の両方を含む事業があるため、単純合計ではない。 ②事業化による累計売上高 累計売上高 直接的成果 90億3,239万円 派生的成果 5億4,178万円 合 計 95億7,417万円 ※研究事業費(当局との委託契約額) (確定ベース、単位:百万円) 地域コンソ 地域イノベ 14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 1,595 435 846 823 1,000 708 ― ― ― ― ― ― 20年度 21年度 22年度 23年度 ― ― ― ― 415 315 234 237 小計 5,407 1,201 合計 6,608 4 ③事業化に至っていない主な理由・要因(複数回答) 0 5 10 15 20 競合技術(製品)に対して優位性を発揮できなかった 19 補完研究、事業化に要する資金が不足した 18 実用化に向け前進はしているが、補完研究に時間を要している 16 市場環境の変化により、必要な技術(製品)でなくなった 12 実用化に向けた研究開発の課題が解決できていない 9 8 販路開拓に苦労している ④事業化に向けて必要とする支援策として重視するもの(複数回答) 0 10 20 30 商談会参加、展示会参加、テストマーケティング、ビジネスマッチングなどの販路開拓支援 36 量産設備などの設備投資支援 36 企業間や人的ネットワークの構築支援 23 低利融資などの金融支援 税制上の優遇措置 40 21 8 5 ⑤研究開発の成果 計画以上の成果が得られた(9件)、ほぼ計画どおりの成果が得られた(30件)を合計すると、全体の48% 計画 ≦ 成果 ⑥プロジェクトを通して得られた間接的なメリット等(複数回答) 0 研究開発レベルが向上した。研究開発基盤を築くことができた 研究開発に関わる人材育成につながった プロジェクトで構築した産学連携、企業間連携を事業に活かすことができた 研究成果から別の研究開発テーマを生み出すきっかけとなった 異業種との交流、人脈構築等による新たな取引先の発掘等につながった 企業認知度・知名度が向上した 当初想定していなかった異なる事業分野に応用展開できた 知的財産取得意識や知識が向上した 構成企業もしくは研究者が産学連携を積極的に進めるようになった 20 14 13 12 18 21 24 27 40 38 60 53 6 ⑦雇用 累計で新たに60人の雇用を創出 ⑧知的財産関連 直接的成果 派生的成果 合 計 出願件数 122 13 135 登録件数 34 11 45 実施件数 8 2 10 供与件数 6 1 7 ノウハウ件数(※) 1 7 8 収入(千円) 29,766 50 29,816 ※ノウハウ:特許、実用新案、意匠、著作権以外の「技術情報のうち秘匿することが可能なものであって、かつ、財産的価値のあるもの」 7 【事例1】 地域の産学連携による国産小麦粉ブレンド技術の実用化研究を通じたパン・麺類の新市場の創出 ○採択事業:新規評価系を駆使しての新規道産硬質小麦からの機能性食品の開発(平成18-19年度 地域新生コンソーシアム研究開発事業) ○管理法人:(公財)とかち財団 ○再委託先:(独)農業・食品産業総合技術研究機構・北海道農業研究センター(北農研)、江別製粉㈱、㈱満寿屋商店、菊水㈱、 (国立大学法人)帯広畜産大学 ①研究開発の概要 日本は世界有数の小麦消費国であるが消費量の大半を輸入してきた。 北海道は国産小麦の約6割の生産地であり、十勝地域は最大の生産地 であるが、特に日本麺(うどん)用の中力小麦の収穫量が非常に多い。 北農研が開発した小麦「ゆめちから」は、小麦タンパク質の一種グルテンが 多い超強力の小麦であるが、本事業では北農研、帯広畜産大学、地域 企業が連携し、このゆめちから粉と道産の中力小麦粉とのブレンド技術に より、強力粉の製造技術を確立した。 このブレンド小麦粉を用いて高品質の道産小麦粉食品(主にパン、中華 麺、パスタ)を開発し、日本で初めて、多数の商品化に成功した。 ②事業化等の成果 地域コンソの研究事業費4,739万円に対して、小麦粉(累計12品 目)、パン(累計120品目)、麺(累計3品目)が商品化され、累 計売上高は約53.2億円。30名の雇用を創出した。 特に(株)満寿屋商店は、平成21年5月、全商品に十勝産小麦 100%を使用した販売店舗「麦音」を開業し、平成24年10月には、 全店の全商品を十勝産小麦100%に転換するなど、地場産小麦の活 用を地域で強力に推進した。 現在は、コンソーシアム以外の大手製パン会社・製麺会社を含め多くの 企業でも「ゆめちから」のブレンド小麦粉を活用した商品化を進めており、 市場規模が急速に拡大している。 主な商品 小麦粉 パ ン パスタ 8 【事例2】 吹雪による道路の吹き溜まりや視界悪化を防止する高性能防雪柵の開発 ○採択事業:吹雪障害防止のための翼型誘導板を有する新型高性能防雪柵の開発(平成14-15年度 地域新生コンソーシアム研究開発事業) ○管理法人:(社)北見工業技術センター運営協会 ○再委託先:北見工業大学、三英鋼業㈱(現・マルエイ三英㈱)、㈱船山組、北見鉄工協同組合 ①研究開発の概要 北海道など積雪寒冷地における冬季の道路交通障害の、吹雪による 道路の吹き溜まりや視界の悪化によって誘発されていることが多い。 従来型の吹止式の防雪柵では、吹雪で生じる“はくり渦”によって、防雪 柵が雪で埋没する場合があった。 この問題を解決するため、風洞シミュレーション実験により雪の流れを研 究していた北見工業大学の坂本教授と、防雪柵メーカーの三英鋼業 ㈱等が連携し、翼型誘導板を有する新型高性能防雪柵を開発。 流体力学的見地から風洞実験を重ねて、翼効果ではくり渦を低減し、 積雪の減少、良好な視界確保を実現。 ②事業化等の成果 平成16年度に翼型誘導板を有する新型高性能防雪柵「スノーフライ ト」の販売を開始。 平成19年に国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」に登録。 地域コンソの研究事業費4,199万円に対して、現在までの三英鋼業 ㈱の累計売上高は約15億円。北海道や東北を中心に設置し、積雪 寒冷地の交通障害防止に大きく貢献している。 産学連携の共同研究により技術的蓄積・裏付けが豊富であることが、 同業他社と比較した強みとなっている 流体力学的見地から風洞実験を行い、翼効果で“はくり渦”を低減し、 積雪の減少、良好な視界確保を実現 新型高性能防雪柵の設置事例 9 【事例3】 タマネギ成分の新たな抽出技術(BRC製法)による“おいしさ”と“機能性”を兼ね備える食品の開発 ○採択事業:タマネギの生体機能成分賦活化のための生物合理性制御技術開発(平成13-14年度 地域新生コンソーシアム研究開発事業) ○管理法人:(財)北海道科学技術総合振興センター ○再委託先:北海道東海大学、北海道医療大学、(独)産業技術総合研究所、北海道立食品加工研究センター、㈱北海道バイオインダストリー、 ㈱新薬開発研究所 ①研究開発の概要 ㈱北海道バイオインダストリーは、行者ニンニクのサプリメントを開発・販売していたが、東海大学等と連携し、北海道内で多く栽培されてい る同じネギ属のタマネギを原料とした商品化に向けた研究開発を実施した。 タマネギ成分の新しい抽出技術である生物合理性制御技術(バイオラショナルコントロール(BRC)製法)の実用化に成功。通常の15 倍の抗酸化物質(ジプロピルトリスルフィド(DPTS))と、倍増した旨み成分(グルタミン酸)の抽出が可能となり、後の用途特許の取 得に繋がった。更に、機能性調味料の原料向けの高品質なタマネギ加工品を効率的に製造する技術を開発した。 ②事業化等の成果 地域コンソの直接的成果として、「酢玉葱」と「BRCオニオン」を商品化。 上記成果を活用した派生的成果として、「北海道タマネギドレッシング」を商品化。日本野菜ソムリエ協会主催の「調味料選手権2012 (サラダ部門)」の最優秀賞受賞で注目を集め、“おいしさ”と“機能性”を兼ね備える健康志向のコンディショニング食品としてヒット商品に。 地域コンソの研究事業費2,934万円に対して、直接的成果と派生的成果を合わせた累計売上高は約2.7億円。 平成26年7月には農商工連携法の認定を受け、BRC製法による北海道産タマネギ成分を活用した新たな調味料の開発を進めている。 直接的成果 酢玉葱DHA+ BRCオニオン(ペースト) 派生的成果 北海道タマネギドレッシング 10
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