TPP の影響について バンコック駐在員事務所 小沢 康正 サワディーカップ。今回は『TPP の影響』についてレポート致します。 2016 年 2 月 TPP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)が署名されました。TPP は、モノの関税だ けでなく、サービス、投資の自由化を進め、さらには知的財産、電子商取引、国有企業の規律、環境など、幅広い分野で 21 世紀型ルールの構築を目指すものです。 また成長著しいアジア太平洋地域に大きなバリュー・チェーンを作り出すことにより、域内のヒト・モノ・資本・情報の往 来が活発化されることも期待されています。 例えば TPP 発効により企業の商流が変化する可能性として、日本で基幹部品を作り、日本の港から輸出して ASEAN 諸国で加工し、アメリカ等へ輸出するという商流です。この場合、下記③・④を満たして特恵税率を享受することで価格 競争力を持つことができます。今まででは関税があるため、コスト面で難しかった商流です。 TPP 加盟国内において原産地規則及び原産地手続が定められるメリット ①TPP 特恵税率の適用が可能な 12 カ国内の原産地規則の統一(事業者の制度利用負担の緩和) ②輸出者、生産者又は輸入者自らが原産地証明書を作成する制度の導入(貿易手続の円滑化) ③完全累積制度の実現…TPP においては、複数の締結国において付加価値・加工工程の足し上げを行い、原産性 を判断する完全累積制度を採用。日本が締結済みの EPA においても、メキシコ、ペルー等で完全累積制度を採用し ている。 ④広域 FTA 化による原産品輸送の容易化(立証負担の緩和)…二国間の FTA においては、産品の輸送の際に第三 国を経由した場合には、当該貨物の原産性が維持されているか否かについて輸入国税関に対し立証する負担があ る。一方で、TPP は全ての締結国を一つの領域とみなす広域 FTA であり、全ての締結国の領域内を移動する限りに おいては、貨物の原産性が維持されることになる。 ※出所…内閣官房 TPP 政府対策本部「環太平洋パートナーシップ協定(TPP 協定)の概要」 上記のようなバリュー・チェーンを下支えする TPP 加盟のメリットとして、原産地規則及び原産地手続が挙げられます。 輸入される産品について、関税の撤廃・引下げの関税上の特恵待遇の対象となる TPP 域内の原産品として認められる ための要件及び特恵待遇を受ける証明手続等が定められ、これらが特にモノの往来を増加させると考えられます。 関税のルールが変われば、企業は今まで以上に世界最適地生産を進めるはずです。日本で生産するものが付加価 値の高い基幹部品だけで良くなり、付加価値の低い人手の必要な作業は ASEAN 諸国内の最適地で行われる、という流 れが TPP によって加速されるのではないでしょうか。 今後は TPP によりヒト・モノ・資本・情報が自由に行き来できるようになることで、国内にも新たな投資を呼び込むことも 見込め、都市だけではなく地域も世界の活力を取り込んでいくことが可能になると考えます。皆様も新たな可能性を検討 してみてはいかがでしょうか。 201604 広告審査済
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