日 時 2016 年 4 月 9 日(土)

 日
時
2016 年 4 月 9 日(土)
9:00­19:30 (受付・開場 8:15∼)
場
所
ニューヨーク大学(NYU)Langone Medical Center
550 1st Avenue, New York, NY 10016
主
催
米国日本人医師会 独立行政法人日本学術振興会
ウェブサイト
https://jmsa-nyc-forum.org
1
参加受付
会場地図
参加ご希望の方は、事前にオンラインフォームにて参加申込をし
てください。当日は、8:15 より受付を開始します。受付にて参加
費$20 をお支払いください。なお、お支払いは現金のみとさせて
頂きます。混雑が予想されるため、早めに手続きをお済ませくだ
さい。当日の参加受付も致しております。
アクセス 駐車場は使用できません。公共交通機関を使用してお越し下さい。
MTA Subway: 6 line (33st)
MTA Bus: M32-SBS (34St,1Av), M34A-SBS (34St,1Av),
M15 (31St), M15-SBS (34St)
※ 会場では Free Wifi が使用できます。
NYU MC Guest に接続後、メールアドレスを入力して下さい。 2
JMSAについて
Japanese Medical Society of America (JMSA: 米国日本人医師会)は日本人の医師、
歯科医、看護師、研修医などの医療従事者、学生を中心に会員相互の交流・協力促
進することを目的に1973年に設立されたニューヨークの非営利団体
(Nonprofit Organization)です。これまでに医療関係者のみならず、多くの企業会
員やボランティア団体のご協力により、幅広い社会活動を行ってきております。学
生への奨学金制度をはじめ、最近では東日本大震災で被災された地域への支援活動
も積極的に行っております。今回、JMSA の新たな活動のひとつとして米国で研究
活動に従事している研究者、学生への支援・交流促進のため JMSA New York Life
Science Forum を開催致します。ライフサイエンスという新たな枠組みを通して、
より多くの米国在住の皆様のお役に立てればと願っております。
JMSA 理 事 からのご挨 拶
昨年より、米国日本人医師会(Japanese Medical Society of America: JMSA)の
プロジェクトとして、立ち上げましたサイエンスフォーラムですが、多くの方に大
変好意的に受け止めていただき、今回第2回目を開催する運びとなりました。日程
は2016年4月9日(土)、場所は前回と同じくNew York Langone Medical
Center のカンファレンスルームです。一流の研究施設が複数あるニューヨークで
は、300人もの日本人研究者が様々なライフサイエンスの分野で活躍されていま
す。その方々の相互の情報交換の場を設けるとともに、一般の皆様にも、最新科学
の一端に触れていただける様に、専門家以外でも充分に楽しんでいただける企画を
設けました。 フォーラム当日は、アメリカで研究者として成功をおさめられてい
る研究者から、最新の研究成果の講演をいただくのみならず、世界的な臨床医の先
生からのお話、誰でもわかるノーベル科学賞等、内容は前回よりもさらに充実した
ものを目指しています。一般のポスター発表の公募も行います。多くの方からの応
募、参加を期待しています。
米国日本人医師会 会長
安西 弦
3
NY Life Science Forum 2016 Program
8:15-
受付・開場
9:00-9:10
開会の辞
安西 弦 (JMSA, NYU School of Medicine )
9:10-9:20
米国日本人医師会(JMSA)の紹介
柳澤 ロバート 貴裕 (JMSA, Icahn School of Medicine at
Mount Sinai)
加納 真紀 (JMSA)
9:20-9:50
2015年ノーベル医学生理学賞・化学賞の紹介
辻 守哉 (The Aaron Diamond AIDS Research Center,
The Rockefeller University)
9:50-10:50
招待講演 1: 医療・トランスレーショナルリサーチI
加藤 友朗 (New York-Presbyterian Hospital, Columbia
University Medical Center)
前原 晶子 (Cardiovascular Research Foundation,
Columbia University Medical Center)
10:50-11:20
Coffee Break
4
11:20-12:30
招待講演 2: 医療・トランスレーショナルリサーチII
小林 利子 (Japanese Medical Support Network in New
York)
星野 歩子 (Weill Cornell Medical College)
林 英恵 (Harvard School of Public Health)
12:30-14:00
Lunch Break
13:00-13:30
ポスター発表者によるone slideプレゼンテーション
14:00-14:20
2015年 ポスター最優秀賞受賞者 記念講演
海老原 章紀 (The Rockefeller University)
14:20-15:30
招待講演 3: 基礎研究
鈴木 雅子 (Albert Einstein College of Medicine)
佐野 晃之 (New York University)
廣井 昇 (Albert Einstein College of Medicine)
15:30-16:00
Coffee Break
16:00-17:30
招待講演 4: 産官学連携・公衆衛生
成田 公明 (Japan Biological Informatics Consortium)
鷲見 学 (Permanent Mission of Japan to the United
Nations)
八山 幸司 (Japan External Trade Organization)
5
17:30-17:40
運営委員長からのご挨拶
佐野 晃之 (New York University)
17:40-19:20
ポスターセッション
Multi Purpose Room (Smilow Seminar Room隣)
19:20-19:30
ポスター賞発表・閉会の辞
安西 弦 (JMSA, NYU School of Medicine )
司会 大石 公彦 (JMSA, Icahn School of Medicine at Mount Sinai)
・ ポスター発表演題のうち、優れた発表に対してJMSAからJMSA
New York Life Science Forum 2016 Presentation Award (最優秀
賞2名、優秀賞3名)が贈られます。
・ セッション時間内で質問できなかったことや、もっと深く知りたい
等のニーズにお応えして、各講演セッション終了後、講演者を交え
た座談会を別会場で開催する予定です。奮ってご参加下さい。
※ポスター会場にて軽食と飲み物をご用意しております。
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過去のノーベル医学生理学賞受賞者との
エピソードから何を学ぶか?
辻 守哉
Moriya Tsuji, M.D., Ph.D.
Aaron Diamond Professor at The Rockefeller University
HIV and Malaria Vaccine Program, Aaron Diamond AIDS Research Center
<要 旨>
幸運にも私は過去のノーベル医学生理学賞受賞者たち数人と知り合いになること
が出来た。利根川進博士、David Baltimore 博士、Peter Doherty/Rolf Zinkernagel
博士、Ralph Steinman 博士など。彼らとのいろいろなエピソードを交えて私が一
体何を学んだかをここで皆様と共有し、一緒に考察してみたい。
<略 歴>
1987 - 1990
Assistant Research Scientist, Department of Medical and Molecular
Parasitology, New York University School of Medicine, New York, NY
1990 - 1991
Instructor, Department of Medical and Molecular Parasitology, NYU School
of Medicine, NY
1991 - 1998
Assistant Professor, Department of Medical and Molecular Parasitology,
NYU School of Medicine, NY
1998 - 2003
Associate Professor (with tenure), Department of Medical and Molecular
Parasitology, New York University School of Medicine, New York, NY
2002 - 2003
Sabbatical at Aaron Diamond AIDS Research Center, New York, NY
2004 - 2014
Adjunct Faculty, Department of Medical Parasitology, NYU School of
Medicine, NY
2004 - 2012
Aaron Diamond Associate Professor at The Rockefeller University, HIV and
Malaria Vaccine Program, Aaron Diamond AIDS Research Center, New
York, NY
2012 -
Aaron Diamond Professor at The Rockefeller University, HIV and Malaria
Vaccine Program, Aaron Diamond AIDS Research Center
2015 -
Visiting Professor, Chiba University Faculty of Medicine, Chiba, Japan
7
To Be Determined
加藤 友朗
Tomoaki Ato, M.D.
New York Presbyterian Hospital
Columbia University Medical Center
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アメリカでの臨床研究
前原 晶子
Akiko Maehara, M.D.
Director of Intravascular Imaging Core Laboratory, Cardiovascular Research Foundation
Assistant Professor of Medicine, Columbia University Medical Center
<要 旨>
私 が ア メ リ カ で 臨 床 研 究 を 行 う に 至 っ た 経 緯 、 Cardiovascular
Research Foundation での研究内容の紹介、グラント等研究資金獲得
の実際、についてお話します。また日米両国での臨床研究の経験をふま
え、臨床研究における日米の相違やアメリカで臨床研究を行う利点を紹
介します。
<略 歴>
1994 年 山口大学医学部卒業。虎の門病院にて内科・循環器科研修後、
渡米。Stanford 大学,Washington Hospital Center を経て、2007 年
より Cardiovascular Research Foundation の血管内イメージング コ
アラボラトリー部門の責任者を務める。専門は血管内イメージング及び
心臓 MRI。これまでに PROSPECT trial, INFUSE-AMI trial,
HORIZONS-AMI trial 等、大規模臨床試験の画像解析を主導している。
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非言語セラピーのトラウマケアにおける有効性
小林 利子
Toshiko Kobayashi, ATR-BC, ATCS, LCAT
ニューヨーク州立免許取得/米国アートセラピー協会認定並びに指導資格保持アートセラ
ピスト, 折り紙スペシャリスト/表現折り紙療法
Bronx Psychiatric Center (BPC): Consultant, New York University (NYU) Art Therapy
Department: Supervisor and Consultant, Community of Japanese Creative Arts Therapists
(CJCAT): Founder / Moderator, Origami Therapy Association (OTA): Founder / President,
JAMSNET NY: Board Member, JAMSNET Tokyo: Member, Japan Women’s Watch
(JAWW): Member
<要 旨> 非言語セラピーの有効性は自然災害や人的災害が発生する度に繰り返し語られるが、科学的な効果
の立証が難しいためなかなか治療方法として定着しないでいる。方法論の確立は各専門分野(アー
ト、音楽、ドラマ、ダンス・ムーブメント、詩歌、表現アーツ)毎クライアントのニーズに合わせ
日進月歩を続けているが、根底にある療法理論は言葉にならない部分での人間関係性を根底に置い
ている。複雑かつスピード化している現代社会は人と人の間のコミュニケーションが最新のテクノ
ロジーの発達に影響され、クライアント各々がそれに追いついて行っているか否かが社会からの支
援を得られるか否かにも関わってきている。年代、貧富、職業、教育、私たち一人一人の選択肢な
どと複雑に絡み合い、精神的なストレスを増長させ精神疾患、PTSD/心的外傷など未だ嘗てなく多
発・多様化している。このようなめまぐるしい現代社会の状況の中で、トラウマ体験者、知的・発
達・身体障害者、精神疾患者など自己の表現手段を制約され言葉を失った人々は助けを求める言語
や手段を失い取り残されてしまう。非言語の表現には様々あるがいずれも言語化への橋掛かりにな
るという共通項を持っているので、一般的に Creative Arts Therapies (CAT )創造的表現療法と
呼ばれ、最近では東日本大震災のトラウマケアとしても目覚ましく利用され始めている。本講演で
は、演者が開発をしてきた折り紙療法(クライアント中心に物理的に手の届く範囲で行える療法)
の実践例を用い一般に馴染みの少ない非言語療法を幅広く医療に携わる専門家の皆さんにご紹介し
たい。
<略 歴>
ニューヨーク大学(NYU)でアートセラピーを学び、アートセラピーに従事、15 年余 NYU、日系・
アジア系学生を始めアートセラピストの資格や免許取得のための指導を続けている。2001 年 9・11
後、FEMA による Project Liberty の危機カウンセラーを経て、2003 年より 2015 年 5 月までニュ
ーヨークの州立精神病院に勤務。トラウマ・インフォーム・ケア(TIC)の理念に基づいた患者の治療
に関わるだけでなく、2013 年より職員対象のトラウマケアを担当。2002 年より折り紙療法協会の
前身、「エンリッチメント折り紙療法(現表現折り紙療法)」を発足。日本人クリエイティブアー
ツ・セラピスト・コミュニティー(CJCAT)を 2003 年に設立。2015 年にサイコロジカル・ファース
ト・エイド(PFA)のトレイナー育成資格を取得。今後は精神病院をベースに折り紙療法を取り入れた
トラウマケアの研究予定。日本、米国内外での各種学会発表、世界各国での折り紙ワークショップ、
論文発表、インタビュー記事、「哲学する折り紙」ほぼ3年間執筆など多数。2011 年以降は複数の
団体の東日本大震災支援プロジェクトに関わる。ニューヨークでの日系社会へは日系人会高齢者問
題協議会、折り紙療法協会代表として JAPAN Day@CENTRAL Park、国連国際学校、広島長崎平
和イベントなど数多く関わっている。「折り紙の伝導者」となることが終の夢。
10
がん転移先はがん細胞由来エクソソームが規定し、
その臓器特異性(organotropism)はインテグリンが決定する
星野 歩子
Ayuko Hoshino, PhD
Instructor, Laboratory of Dr. David Lyden
Dept. Pediatrics, Cell & Developmental Biology, Weill Cornell Medicine
<要 旨>
がん患者の死亡原因の9割は転移によると言われる。そうなると、がんの転移を抑制できれば死に
至る病では無くなるのではないか。では、がん細胞はどの様にして転移するのか。がん細胞自体に
違いがあるのか、それともがん細胞以外の我々の体を構成する正常細胞が関わり得るのか。
1889 年に Stephen Paget の seed and soil 仮説が提唱されて以来、がん転移の成立には転移に適す
る微小環境が必要であるとされてきたが、がんが特定の臓器に転移する転移の臓器特異性はがん転
移の研究における最大の謎の 1 つとされてきた。 今回我々は、臓器特異性を有するがん細胞(肺、
肝臓、脳)に由来するエクソソームには、エクソソームを臓器別に分布させる 郵便番号 の様な役
割をするインテグリン発現パターンがあることを示した。またそのエクソソームは肺の線維芽細胞
や上皮細胞、肝臓のクッパー細胞、脳の血管内皮細胞といった転移先の間質細胞に優先的に取り込
まれ、そこで転移前にがん細胞が転移しやすいニッチを形成することを実証した。最後に、我々の
臨床データから患者血中のエクソソームのインテグリンが未来の転移先の予測に有用である可能性
を示す。
<略 歴>
2011 東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了
同年
Weill Cornell Medical College (現 Weill Cornell Medicine) にて Postdoctoral Associate
(日本学術振興会特別研究員 DC2)
2013 日本学術振興会海外特別研究員
2015 Weill Cornell Medicine にて Research Associate
2016 同 Instructor
<現フェローシップ、グラント>
2015 -2018 Susan G. Komen Postdoctoral Fellowship Grant
<受 賞>
2008
Keystone Symposia Scholarship Award
2011
Excellent thesis award 2011 of The University of Tokyo
2015
The Jon Shevell Young Scientist Travel Scholarship Award
<代表論文>
1. Hoshino A., et al.,Human vascular adventitial fibroblasts contain mesenchymal stem/progenitor
cells. Biochem Biophys Res Commun. 2008 Apr 4;368(2):305-10.
2. Hoshino A., et al., Podoplanin-positive fibroblasts enhance lung adenocarcinoma tumor
formation. Cancer Research 2011 Jul 15;71(14):4769-79
3. Hoshino A, et al., Tumour exosome integrins determine organotropic metastasis. Nature 2015
Nov 19;527(7578):329-35 11
世界を健康にするための科学
̶ パブリックヘルスの考え方と実践 ̶
林 英恵
Hana Hayashi, MS, EdM, Doctoral Candidate
McCann Global Health, Associate Director
Department of Social and Behavioral Sciences, Harvard T.H. Chan School of Public
Health
<要 旨>
「どうしてあるグループの人は健康で、あるグループの人は病気になりやすいのか」
「どうして健康に悪い習慣をやめられないのか」
「どうやったら、健康的な生活を無理なく送れるようになるのか」
これらは皆、パブリックヘルス(公衆衛生)が専門としている分野です。日本は、戦後短
い間で、世界一の平均寿命を達成しました。毎年世界トップクラスの平均寿命を達成して
いる日本は、寿命の観点で言うと、健康分野のオリンピックメダル常連国といえるでしょ
う。長寿国日本の取り組みは、多くの国々が注目しています。しかし、実際は、日本人の
平均で、亡くなる前の男性で約 9 年、女性で 13 年は病気などで誰かの世話が必要となり、
自立して生きることができません。このギャップをなくし、一人でも多くの人が、与えら
れた命を、最後まで健康的な状態で全うできる社会を作ることが私の使命です。
私は現在、ハーバードでの研究と、実践の世界を行ったり来たりしながら、健康に影響を
与える社会的な要因を探りつつ(社会疫学)、個人の行動を変えていくための方法(行動
科学・ヘルスコミュニケーション)や知見を広めることを仕事にしています。本発表では、
「パブリックヘルスとは何か」に加え、研究と実践の世界を結ぶに至った背景や、そこで
の学び、これからの夢をお話しします。
この発表やフォーラムの来場者の皆さんとのインタラクションを通じて、世界がより健康
になるためのきっかけづくりができれば幸いです。
<略 歴>
千葉県生まれ。McCann Global Health アソシエイトディレクター及びハーバード公衆衛生大学院
博士候補生(日本/世界銀行共同大学院奨学生)。早稲田大学社会科学部在学中からテレビのレポ
ーターや新聞社での編集アルバイトを経て、ボストン大学教育大学院修士課程へ。国際連合児童基
金(ユニセフ)インド事務所でインターンとしてHIV予防キャンペーンに携わり、2007 年、外資
系広告会社(マッキャンヘルスコミュニケーションズ)に入社。現在はニューヨーク本社勤務。国
際機関や政府、自治体の疾患予防や健康促進事業に携わっている。ボストン大学教育大学院修士課
程修了及びハーバード公衆衛生大学院修士課程修了。専門は社会疫学、行動科学及びヘルスコミュ
ニケーション。著書に『それでもあきらめない ハーバードが私に教えてくれたこと』
(あさ出版)。
また、『命の格差は止められるか ハーバード日本人教授の、世界が注目する授業』(イチロー・
カワチ著、小学館)のプロデュースも手掛けている。料理とヨガ、瞑想、ファーマーズマーケット
巡りが大好き。将来の夢は、パブリックヘルスの理想郷を作ること。
12
顔選択性神経群の活動パターンから読み取る目の前の風景
∼「なにを」「いくつ」見ているか?∼ 海老原 章記
Akinori F. Ebihara, Ph.D.
Postdoctoral Fellow, Winrich Freiwald lab, The Rockefeller University
<要 旨>
ヒトをはじめとする霊長類は,視覚から多くの情報を得て周りの状況を判断し,意思決定
を下します。とりわけ「顔」は,相手の思考や感情,注意の方向などを知る重要な情報源
となっています。霊長類の顔認識能力は優れており,ジャングルの中に潜む相手のサルの
顔や,タイムズスクエアの雑踏に佇む友人の顔ですら瞬時に認識することが可能です。近
年,機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)の発達により,我々の脳内に,この顔認識に特化した
神経細胞群が局在していることが発見されました。これらの「顔選択性神経」は,我々が
顔を見るたびにその電気的活動を高めることがわかってきました。
ところが,これまで顔選択性神経の活動は,主にただ1つの顔に対する応答として計測さ
れてきました。前述の通り,我々の顔認識能力は,複数の顔,複数の物体が散らばる雑多
な風景の中においてこそ発揮されます。では,複雑な風景を見たときにも,これらの顔選
択性神経細胞は正確に情報を伝え,私たちの顔認識を助けてくれるのでしょうか?
この疑問に答えるため,我々はマカクザル大脳側頭葉における顔選択性細胞の活動を解析
し,神経細胞群の活動が,今見ている風景の中に一体「なにが」「いくつ」含まれている
かという情報を伝えていることを発見しました。更に,神経回路の数理モデルを開発する
ことによって,どのようにして細胞が情報を符号化しているのかを説明しました。この数
理モデルからは,顔選択的神経細胞が局在していることが情報符号化における鍵となって
いることが示唆され,「脳の機能はなぜ局在しているのか」という,神経科学における非
常に根本的な問いにヒントを与えた形になりました。
<略 歴>
2008 東京大学理学部生物化学科卒業
2015 Rockefeller 大学博士課程終了(Ph.D.in neural systems & mathematical
physics) 同年より Rockefeller 大学研究員
13
遺伝子複合解析手法と
そのトランスレーショナル研究への応用
鈴木 雅子
Masako Suzuki, DVM, Ph.D., M.S.
Research Assistant Professor, Dept. Genetics, Albert Einstein College of Medicine
<要 旨>
遺伝子配列は生物の設計図であり、親から子、子から孫への形質伝達の基本情報で
もある。したがって遺伝子配列の解析は形質伝達とその疾患との関係を明らかにす
るうえで必要不可欠なものと言える。近年、高速(次世代型)シーケンサーの登場
により遺伝子解析技術及び解析手法は大きく様変わりしている。高速シーケンサー
から得られるデータ量は非常に膨大で、その解析にはバイオインフォマティックス
のスキルと強力なコンピューターパワーを必要とする。さらに遺伝子配列情報とそ
の生物学的意義および疾患との関係を明らかするには一面からの解析ではなく多
面的な解析が必要となることから、最近の遺伝子解析は単なる遺伝子配列決定にの
みならず様々なオミックス解析との複合解析にシフトしつつある。つまりウェット
サイド(実験チーム)及びドライサイド(解析チーム)さらには形質(医療)情報
チームなど様々な分野のエキスパートが力を合わせて行う「チームサイエンス」が
より高度な複合解析を行う上で重要な鍵となる。本講演では、我々が現在取り組ん
でいる遺伝子複合解析に焦点を当て、そのトランスレーショナル研究への応用と、
最新の配列解析技術についてウェットサイド、ドライサイドの両面から紹介する。
<略 歴>
岩手大学農学部獣医学科卒業(獣医生理学研究室、首藤文榮先生)
岐阜大学大学院連合獣医学研究科基礎獣医学専攻修了(配置大学:岩手大学 首藤
文榮先生)
Clinical and Translational Research Training Program, Albert Einstein College
of Medicine 修了 (Drs. John M. Greally and Francine H. Einstein)
東京大学農学部応用生物科学科・獣医学科博士研究員(細胞生化学研究室、塩田邦
郎先生)、Albert Einstein College of Medicine, Research Associate, Associate 及
び Instructor (Dr. John M. Greally laboratory) を経て 2012 年より現職
14
腸管粘膜における免疫細胞の活性化機構
‒共生細菌と免疫細胞が作り出す恒常性の維持とその破綻‒
佐野 晃之
Teruyuki Sano, Ph.D.
Postdoctoral Fellow, The Dan Littman Lab., Skirball Institute of biomolecular Medicine,
New York University, School of Medicine.
<要 旨>
腸は解剖学上、外界と接している最大にして最も複雑な免疫器官である。病原菌が
侵入した際には、免疫系はその病原菌特異的に強く活性化され、生体を感染から防
いでいる。一方で、人の腸内には 100 兆個を超える共生細菌が生息しており、病原
菌の感染の有無にかかわらず、腸管免疫細胞は腸管に常在する共生細菌により構築
される。近年ではこの共生細菌の異常が、自己免疫疾患、精神疾患、悪性腫瘍など
の様々な疾患に関与していることが報告されてきた。しかしながら、腸管粘膜にお
ける免疫系がどのように構築され活性化されるかは未だ不明な点が多い。本講演で
はヘルパーT 細胞のサブセットである Th17 細胞を分化誘導するユニークな共生
細菌「SFB」に着目し、SFB による Th17 細胞の分化及びその活性化の分子機構に
ついて解説し、いかにして Th17 細胞が病原性を獲得し、疾患に関与するかの議論
を深めたい。
<略 歴>
2012 京都大学医学研究科修了(医学博士) 専門は生化学、分子生物学。 2012,4 New York University, Dr. Dan Littman のもと postdoctoral fellow とし
て免疫学を専攻。
2009
Merck Award for Young Biochemistry Researcher.
2010
Young Investigator Award of Kyoto University School of Medicine.
2012 東洋紡百周年記念バイオテクノロジー研究財団
Fellow 2013-現在 Human Frontier Science Program Long Term Fellow 2015 JMSA New York Life Science forum, Chair 15
海外留学助成
マウスが語る精神疾患のメカニズム
廣井 昇
Noboru Hiroi, Ph.D.
Professor of Psychiatry and Professor of Neuroscience、Albert Einstein College of Medicine
<要 旨>
統合失調症や自閉症などの精神疾患はそれを持つ者だけでなく家族及び社会における多大な損失を
もたらす。精神疾患の治療は経験的に効果があるとわかってきた薬やその薬の構造から派生した類
似薬が症状を抑えるのに一定の効果を持つ。しかしながら、従来の方法では根本的な治療には至ら
ず、これは原因となる脳内メカニズムがはっきりと把握されていないことによる。遺伝子の変異が
精神疾患に関与していることはわかってきたが、人の遺伝子のどの遺伝子がどう関与しているかは
いまだよく理解されていない。本講演では、我々が現在取り組んでいる遺伝子組み換えマウスを使
った研究を紹介する。人染色体22番では染色体構造の異常が起こりやすく、この部位の欠損ある
いは重複を持つ人では高い率で統合失調症、自閉症、知的障害が起こる。われわれは精神疾患によ
って起こるいろいろな行動異常を起こす染色体22番のいくつかの遺伝子をマウスで同定してきた。
この研究を発展させることで、われわれは遺伝子異常によって惹起される脳内での異常の解明、さ
らにそのメカニズムに基づいた精神疾患の治療の開発を目指している。
<略 歴>
PhD. McGill University, Montreal, Canada, 1991; Post-doctoral fellow, 1991-1994, MIT, Cambridge,
MA; Associate Research Scientist, 1994-1998, Yale University School of Medicine, New Haven, CT;
Assistant Professor, 1998-2005, Associate Professor, 2005-2011, Professor, 2011-present, Albert
Einstein College of Medicine, Bronx, NY
<フェローシップ、グラント>
Human Frontier Science Program Fellow、1992; NIH grants:R01DA013232、P01NS037409、
R21HD053114、R01DA024330、R01MH099660
<受 賞>
サンケイ新聞海外派遣留学生 1985; Government of Canada Award 1986; Dean’s Honor List, McGill
University 1991; NARSAD Young Investigator Award, 1998; NARSAD Independent Investigator
Award, 2006
<代表論文>
1. Fienberg, A.A., Hiroi, N., et al. DARPP-32: regulator of the efficacy of dopaminergic
neurotransmission. Science 281(5378), 838-842, 1998;
2. Hiroi N. et al. A 200-kb region of human chromosome 22q11.2 confers
antipsychotic-responsive behavioral abnormalities in mice. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102(52),
19132-19137, 2005;
3. Hiramoto, T. et al. Tbx1: identification of a 22q11.2 gene as a risk factor for autism spectrum
disorder in a mouse model. Human Molecular Genetics, 20(24):4775-85 2011;
4. Hiroi, N. et al. Copy Number Variation at 22q11.2: from rare variants to common mechanisms
of developmental neuropsychiatric disorders. Molecular Psychiatry 18: 1153-1165, 2013;
5. Takahashi, et al. Structure and function of neonatal social communication in a genetic mouse
model of autism. Molecular Psychiatry. online publication 15 December 2015; doi:
10.1038/mp.2015.190
16
医師が外交官として働くということ
エボラ出血熱流行を例に
鷲見 学
Manabu Sumi, M.D., M.P.H., Ph.D.
国際連合日本政府代表部・参事官
Counsellor, Permanent Mission of Japan to the United Nations
<要 旨>
医師である私が外交官としてどのように働いているのか、エボラ出血熱流行を例に紹介し
ます。
国連代表部(国連代)は、日本政府を代表し「国際の平和と安定の維持」等を実現するた
めに国連の場で交渉することが任務です。私は、主に保健分野を扱い、保健・衛生分野の
議論・交渉に参加する他、UNICEF(国連児童基金)等の執行理事会参加や邦人職員増強
に向けた働きかけを行っています。
昨年は、2030 年までの国連全体の目標である 2030 アジェンダが採択され、保健分野が、
貧困、人権、紛争など多くの分野に深く関わり、日本の強みを活かし世界に貢献できる分
野と改めて認識しました。
エボラ出血熱には、日本政府は他国がまだ援助が行われていない流行当初(2014 年 4 月)
から支援し最終的に約 200 億円の財政的支援を行う他、専門家派遣、防護服・緊急車両の
供与、新しい治療薬の開発・提供を行うなど官民をあげた支援を行いました。
国連代の役割(私の役割)は、日本政府としてふさわしい支援を行うため、流行の状況・
課題の情報収集・分析を行い、適切な判断材料を本国政府に提示することです。関係機関
の公式情報以外にネットワークを通じたタイムリーな非公式情報も重要です。また、日本
政府からの支援が効果的かつ透明性が高い形で行われることを確保すること、その支援自
体を世界全体に知ってもらい日本政府のプレゼンスを高める広報活動も極めて重要です。
<略 歴>
1971年名古屋市生まれ。1996年名古屋大学医学部卒業。救命救急センター等にて
研修医として勤務後、厚生労働省(当時厚生省)に医系技官として入省。厚生労働省では
診療報酬、食品安全、精神保健、国際保健、がん対策、TPPを担当。この他環境省、米
国留学(ハーバード大学公衆衛生大学院:MPH 取得)、名古屋大学大学院(公衆衛生:PhD
取得)、WHO本部(ジュネーブ)を経て、現職。趣味:料理・ジョギング。
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日本の医療は成長産業になれるか
八山 幸司
Koji Hachiyama
Director, IT Department, JETRO New York
Representative of IPA New York Office
JETRO(日本貿易振興機構)ニューヨーク事務所 情報技術部長
兼 IPA(情報処理推進機構)ニューヨーク事務所長
<要 旨>
日本政府は成長戦略の中で、医療・健康関連産業を今後の成長産業と位置付けて支援して
いる。この中には、フィットネスなど健康関連産業から、医薬品・医療機器、そして医療
にかかわるシステム・機器など多くの周辺産業が含まれる。これらが、日本国内だけでな
く海外でも競争力をもち、日本経済をけん引する成長産業になるために鍵となる技術は IT
であろう。
IT 先進国のアメリカでは、ビッグデータ、モノのインターネット(IoT)、人工知能など
の先端 IT の研究開発・実用化が進むことで産業が大きく発展しているが、特に実用化が進
んでいる分野が医療・健康分野である。例えばウェアラブルの健康管理や医療分野への活
用、遺伝子情報の分析による個別化医療、人工知能を使った診断情報の提供、IT を活用し
た創薬など、様々な形で実用化が進んでいる。むろん医療の IT 化には、IT の技術開発や
サイバーセキュリティのみならず、医療や IT に関連する法規制の整備など様々な問題の克
服が必要であり、アメリカでもまだまだ課題を解決するための模索が続いている。
さて、日本はアメリカと同じ道を進めばよいのか?いや、日本とアメリカでは状況が異な
るのでアメリカと同じことをしていてはダメだろうし、アメリカには無い日本の強みを生
かしてこそ、競争力のある産業となるであろう。しかし、ここでいう「強み」とは何であ
ろうか?今後、日本は何を取り組んでいったらよいのか、について考えてみたい。
<略 歴>
1992 年に通商産業省(現 経済産業省)入省。在インドネシア日本国大使館勤務などを経
て、2008 年から舛添厚生労働大臣直属チームに属し医療の産業化などに取り組む。その後、
2011 年に内閣官房に医療イノベーション推進室(現 健康・医療戦略室)を立ち上げ、日
本版 NIH(現 日本医療研究開発機構)の創設に向け尽力。2014 年から現職。
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最近の日本における
ライフサイエンス研究をめぐる状況と課題
成田 公明
Kimiaki Narita
President, Japan Biological Informatics Consortium
<要 旨>
第二次安倍政権発足後打ち出された成長戦略の中で健康・医療分野については全閣
僚をメンバーとする健康・医療戦略推進本部の設置、ライフサイエンス関連の予算
を一元的に執行する国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の設立等政
府全体として取り組む体制が整備された。
再生医療分野を中心に規制緩和が行われる等従来規制中心であった健康・医療分野
に産業政策的な考え方が取り入れられるようになっている。
自前主義であった日本の製薬業界もオープンイノベーションということでアカデ
ミア等との連携を図る動きがある。しばらく途切れていたバイオベンチャーの IPO
も見られるようになった。
しかしながら、ライフサイエンス関連研究予算は AMED 他政府全体でも NIH の
15 分の 1 にとどまり、民間からの研究資金提供も乏しく、ベンチャー企業への出
資も官製ファンドへの依存度が高い。
AMED の設立により研究成果の医療、産業への応用が期待されているが、限られた
予算の中で基礎研究の水準を高めていくことも要請されている。
Personalized Medicine、ビッグデータを活用した医療を推進する動きがあるが、
多様な医療の提供が可能な米国と比べ制度的な制約も多い。
また、今後の研究の担い手となる若手研究者の雇用の安定、能力を生かす環境づく
りも喫緊の課題となっている。
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< P o s t e r A b s t r a c t > 20
< 参 加 者 一 覧 > 21
NY Life Science Forumの 運 営 に つ い て
当シンポジウムは非営利団体である米国日本人医師会(JMSA)と独立行政法人日
本学術振興会(JSPS)が主催します。さらにNYにある大学の日本人会や有志も運
営に携わっています。様々な機関や有志の皆様の運営参加をお待ちしております。
JMSA NY Life Science Forum 2016 運 営 委 員
安西 弦、大石 公彦
Japanese Medical Society of America
鈴木 雅子、能丸 寛子、石上 泉
Albert Einstein College of Medicine
山路 剛史、伊藤 慶一、瀧内 剛
The Rockefeller University
山田 真太郎、西嶋(鈴木)麻也、船戸 洸佑、武田 利和
Memorial Sloan Kettering Cancer Center
園下 将大、小沼 剛
Icahn School of Medicine at Mount Sinai
阿部 隆之
Columbia University
佐野 晃之、松沢 優
NYU School of Medicine
小川 史洋
Weill Cornell Medical College
三隅田 尚樹
Mount Sinai Beth Israel
隆杉 知枝子
Jacobi Medical Center
林 英恵
Harvard T.H. Chan School of Public Health / McCann Global Health
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<次 回 予 告 >
参 加 者 の 皆 様 、お 忙 し い 中 、今 回 の フ ォ ー ラ ム に 参 加 頂 き 、運 営 幹 事 一
同心より感謝申し上げます。この有意義な会をさらに発展させるべく、
来 年 も「 JMSA New York Life Science Forum 2017」を 開 催 予 定 で す 。
つ き ま し て は 、会 を 共 に 作 り 上 げ て い っ て く れ る 運 営 幹 事 を 募 集 し て お
り ま す 。興 味 の あ る 方 は 、[email protected]ま で ご 連 絡 く だ さ い 。
来年、またお目にかかれますのを幹事一同楽しみにしております。
JMSA会 長 安 西 弦
運 営 幹 事 一 同 23