制御&監視向け! 小型ネットワークCAN通信入門

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制御&監視向け!
小型ネットワーク CAN 通信入門
第 4 回 CAN 通信の基本プロトコル
レセシブ
ドミナント
ドミナントとレセシブが
同時に送信されたら
レセシブ
ドミナント
ドミナントが優先される
図 1 CAN 通信の基本…レセシブよりドミナントが優先される
物理層の特性は前回解説
今回は CAN の通信プロトコルを紹介します.ISO
11898-1 として仕様化されており,主にデータリンク
層に関する規格が記述されています.
CAN は物理層とデータリンク層の規格を明確に分
けています.物理層が異なってもデータリンク層は変
わらないので,利用者はソフトウェアを変更すること
なく,物理層を選択できるというメリットがありま
す.また,デバイス・メーカはデータリンク層に相当
する仕様をコントローラ側に組み込み,物理層側はト
ランシーバ・レシーバというようにコンポーネントを
分けることで柔軟な利用が可能になります.物理層は
ISO 11898-2,ISO 11898-3 として規定されていますが,
他に 1Wire で利用する形態などもあります.
論理レベルの優劣
● CAN のレベルには優劣がある! ドミナント・
レベルとレセシブ・レベル
図 1 で示すように,CAN にはドミナントとレセシ
ブという二つの電圧レベルがあります.データ‘0’を
送る場合はドミナントのレベル,データ‘1’を送る場
合はレセシブのレベルになります.ドミナントは「優
勢な」
,レセシブは「劣勢な」という意味を持ち,衝突
した場合はドミナントが優先されます.
フレーム・フォーマット
フレーム・フォーマットとは CAN の通信データの
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御堂 将太
構造を規定したものです.ネットワークでいうところ
のパケットに相当します.
CAN では次の 4 種類のフレームと,一つのスペー
スという構造があります.
1.データ・フレーム
2.リモート・フレーム
3.エラー・フレーム
4.オーバロード・フレーム
5.インターフレーム・スペース
データを送るフレームだけではなく,なぜ複雑な構
成になっているのかと思うかもしれませんが,それぞ
れのフレームやその構成にも意味があります.
● その 1:データ・フレーム
データ・フレームの構成を図 2 に示します.デー
タ・フレームという名前から予想できると思います
が,データを送る際に使われます.基本的にデータを
送るために使うフレームはこの 1 種類だけです.デー
タ量は可変で,0 〜 8 バイトを 1 フレームで送れます.
また,メッセージが衝突した際は,優先順位に従っ
て送信の可否を取り決めています.データ・フレーム
を構成しているフィールドには伝送誤りを検知する領
域も含まれており,これによって通信品質を確保しま
す.このようにデータ以外にも優先順位付けやデータ
化けを検知するフィールドなどが含まれています.
▶スタート・オブ・フレーム(SOF)
フレームの先頭を示すフィールドで,1 ビットのド
ミナントで構成されています.CAN 通信においてア
イドル状態(CAN バスに何もメッセージが流れてい
ない状態)では,CAN バスのレベルはレセシブになっ
ています.SOF(ドミナント・レベル)を検出すると
CAN バスにつながっている他のノードたちは受信準
備に入ります.
▶アービトレーション・フィールド
フレームの優先度を表すフィールドです.優先順位
を つ か さ ど る フ ィ ー ル ド は ア ー ビ ト レ ー シ ョ ン・
フィールドの ID です.標準フォーマットの場合では
11 ビットで構成されているため,2048 個の ID を設定
第 1 回 I2C とイーサの中間くらい ! ローカル機器間ネットワーク向け(2016 年 1 月号)
第 2 回 常時接続イメージ! 制御向け CAN 通信の特徴(2016 年 2 月号)
第 3 回 CAN 通信の物理層(2016 年 3 月号)
2016 年 4 月号