もう1つは買収企業の株価も割安で 1993 年の設定以来、当戦略は市場全体の下落時にもド あったり、合併でシナジーが見込まれた ローダウンを抑制できています。これは、ロングショー りして、被買収企業・買収企業の両方の トなので市場に振られず、M&Aの経過とマネジャーの 株価上昇が期待できるケースです。この ビューが合っているかという個別要因が大きいからで、 場合はどちらもロングにしますが、市場全体の変動を こまめに利益確定や損切りをしていることも奏功してい ヘッジするために指数先物などをショートにします。こ ます。当戦略はオルタナ枠に入れるのが一般的ですが、 のように案件に応じた手法の使い分けに加え、綿密なリ 近年、市場のリスクが上がって以降は、株式比率を変え サーチに基づき、時間の経過とともに合併の確信度が変 ずにダウンサイドを抑える目的で導入するケースもあり 化すれば適宜ポジションを入れ替えていきます。 ます。 ◆株式運用パネルディスカッション ESG に配慮したボトムアップ分析で、 クオリティの高いエマージング銘柄を選別 日本コムジェスト 代表取締役 高橋 庸介 氏 当 社は 1985 年にフランスで設立された株式特化の 精査して 30 ~ 40 銘柄でポートフォリオを構成します。 ブティック運用会社で、インデックスにとらわれ このように、当社ファンドマネジャーですら「きわめ ず、クオリティの高いグロース銘柄に集中投資する運用 て退屈にみえる投資手法」と自嘲するくらいシンプルな 戦略を提供しています。中でもエマージング株式の運用 投資スタイルですが、基本的なことの徹底こそが最も難 は欧米の年金基金から高く評価されており、運用資産の しく、またこれが高いリターンの再現性を生み出してい 6割がアジアを中心としたエマージング諸国で 構成さ ると確信しています。 れています。 また市場全体の影響から短期的な連鎖安は起こり得ま 過去数年、投資家のエマージング市場に対する成長期 すが、クオリティ・グロースへの集中が下振れ抑制効果 待は低く、資金も流出傾向が続いています。私たちもマ を発揮しています。私たちは5年間という長期ビューで クロ経済の点ではエマージング市場にはネガティブな見 銘柄を選んでいるため、リスクを抑制しつつ長期的に高 通しですが、株式市場は先進国と比べると 30 % 程度の いリターンを志向される投資家の方にお勧めしたい戦略 割安圏にあり、歴史的にも底に近い水準と見ています。 です。 実際の投資プロセスでは、まず定量的なスクリーニン 昨今話題の ESG も、コムジェストではすべての運用 グを行います。例えば ROE が 15 % 以上などですが、最 戦略に組み込んでいます。例えば対人地雷やクラスター も重視するのは EPS(1株当たり利益)の成長率で、来 爆弾の製造に関わっているような企業を除外するだけで 期以降の5年間で二桁成長を望める銘柄をクオリティ・ なく、バリュエーションの段階で企業価値のディスカウ グロースと定義しています。 ントレートに反映し、ESG への取り組みで高評価の企 次に二桁の利益成長を高い確率で達成できそうな 150 業はレートを軽減し、逆に劣悪な企業は上乗せします。 銘柄程度で投資ユニバースを構成しますが、ここでは5 ESG への真摯な取り組みは運用会社としての社会的責 年後の資源価格の計算が困難なエネルギーや素材関連銘 任のみならず、高いリターンの源泉としても積極的に評 柄は原則として除外し、最終的にはバリュエーションを 価できると考えるからです。 オル・イン新春セミナー in 大阪 ダイジェスト 49
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