守り育てよう 美しいホタルの里 甲賀市立甲南第二学校 校長 倉田 三郎 TEL 0748-86-2157 FAX 0748-86-0179 E-mail : [email protected] 学校の前を流れる杉谷川を中心に、身近な自然を活用した環境学習 に取り組んでいる。価値ある体験活動をとおして、子どもたちは主体 的にホタルの飛び交うふるさとを守り育てようとしている。 1 総合的な学習の時間には、4年生で杉谷川を 学校の概要 本校は、滋賀県東南部に位置し、三重県伊賀 中心に「ホタル探検隊」「ホタルのふるさとを守 市と隣接している地域にある。学校周辺は田園 り、育てよう」、5年生で「愛・LOVE 琵琶湖」 地帯が広がり、豊かな自然に恵まれている。 の学習フィールドとして活用している。 本校の前を流れる杉谷川には、6月になるとホ ●ホタルの学習(4年生) タルが乱舞し光の川ができあがる。また、杉谷川 単元計画としては、①杉谷川を探検しよう(価値 は小魚やヤゴ、サワガニ等も生息し、全校児童の ある体験・課題発見)<杉谷川探検>→②それ行 「価値ある体験」のフィールドにもなっている。 けホタル探検隊(課題発見・課題追求)→③ホタル 本校では、特色ある学校づくりの一環として、 の夕べでみんなに伝えよう・秋の集いでみんなに 豊かな自然環境を守り育てる学習(ホタルの学 伝えよう・他の学校と交流しよう(表現)→④ホ 習)を4年生の総合的な学習に位置づけて取り タルのふるさとを守ろう<次の学習、生活に生か 組んでいる。 す>という流れで学習するが、児童の実態や思考の (1) また、春には校区の南端部に位置する新田地 流れの変化で単元計画は変更されることもある。 区に全校児童が出かけ、山や池、川などのフィ ールドを生かし、豊かな自然とふるさとの人の 温かさにふれる「新田探検」を実施している。 (1) 2 「価値ある体験」とは問題解決学習につながる体験活動 環境教育実践事例 本校児童は、杉谷川が大好きである。春から 夏にかけては、休み時間になると水中めがねや 網を持って、多くの児童が杉谷川を遊びのフィ ールドとして活用する。また、生活科や総合的 <水生生物との出会いー杉谷川探検ー> な学習(愛称:杣っ子タイム)では、問題解決 杉谷川探検では、いろいろな水生生物を採取 学習につながる「価値ある体験」の場にもなって し、観察する。その中から「ホタルは今、どこ いる。 にいるんだろう」などの疑問を持ち、「それ行け 低学年の生活科で ホタル探検隊」の課題作りにつなげていく。観 は、小魚(オイカワ 察した生き物は、杉谷川に返してやる。課題追 やカワムツ、ドンコ 求の課程では、地域に住んでおられるホタル博 等)やヤゴ、サワガ 士にゲストティーチャーとして来ていただき、 ニ等の観察ができ ホタルの生態や飛翔の時期、温度など自分たち る。本年度は、2年 で調べてわからないことや地域の自然について、 生で育てていたヤゴが <ヤゴの脱皮する瞬間> いろいろと教えていただいている。 トンボに脱皮する瞬間を観察することができた。 また、全校で行う「新田探検」では、ホタルが育 つ杉谷川の上流にある岩尾池・大沢池にカヌーを 低学年で豊かな自然を全身で体感し、4年生 浮かべて、池の中央の水を触ったり、臭いを嗅い では、O’PAL(株)よりインストラクターに だりしながら五感をとおしての体験学習も行っ 来ていただき、杉谷川の上流に位置する岩尾池 ている。そして、この水が杉谷川へと注いでいる や大沢池にカヌーを浮かべ、池の真ん中までこ こと、この美しい水や周囲の環境を守っていく ぎ出し、水に触れたり、風を感じたり五感をと ことの大切さや池の干拓の歴史などについても、 おしてホタルのふるさとの水を体感し、池の干 「新田名人」(新田地区に住んでおられる方)か 拓の歴史を「新田名人」から教えていただく。 ら教えてもらった。 表現活動の一環としては、「ホタルの夕べ(P TA主催)」「秋の集い(学習発表会)」「甲賀水 源の里交流広場(地域振興局建設管理主催)」「三 重県いなべ市立立田小学校との交流会(社会見 学旅行)」での発表や交流を行い、表現の場を多 くすることで自分たちの学んできたことを自信 を持って発表できるようにしている。 また、ホタルを育てる取組みでは、児童は二 <カヌー体験ー岩尾池・大沢池で活動ー> 人一組でホタルの幼虫を飼育し、毎日のように 5年生では、より上流の杉谷川の源流を探検 餌のカワニナを与えるなど成虫になるのを楽し し、水と森林の関わりがあることや、この水は みに世話をしている。昨年度は4匹だけだが、 琵琶湖へ流れ込んでいることを学習し、フロー 羽化したホタルの成虫を杉谷川に返すことがで ティングスクールへつながる「愛・LOVE・琵琶 きた。今後も、ホタルの飛び交う環境を守り、 湖」の環境学習に発展する。6年生は、岩尾山 ホタルを育てる取組みを続けていきたい。 に登り、自然を体感するとともに「岩尾山の七 <羽化に成功したホタルと児童ー昨年度ー> 不思議」を息障寺のご住職より教えていただい ている。このように各学年毎にダイナミックな 体験活動を行っている。 3 成果と課題 「ホタルの学習」は、価値ある体験をとおし て、課題を作り、追求、表現していく問題解決 学習にたいへん適している学習素材である。ま た、問題解決学習は、児童の主体性を育てる。 冬の寒い杉谷川にも、休み時間に出かけていく 姿や毎日のようにホタルの幼虫の餌の世話をす (2)新田探検 る4年生児童の様子は、そのことを象徴してい 5月に行う「新田探検」では、全校児童が校区内 る。また、地域の人々に関わってもらうことで、 の新田地区に小一時間かけて歩いていき、地域 自分たちのふるさとの「良さ」を認識したり、 の方々に児童とともに学習に関わっていただき、 その自然を守っていこうとする心情も育ちつつ 自然豊かな地域での体験活動を行っている。この ある。 学習は、生活科、総合的な学習の導入になる。 <新田探検の活動例> 今後の課題としては、この学習を継続してい くとともにマンネリ化しないように児童の姿を 1、2年 新田の春見つけ・川遊び 見取り、評価と指導の一体化を進め、常に学習 3 年 新田ウォークラリー を見直し、進化させていく必要があると考える。 4 年 水に親しもう(岩尾池でカヌー体験) また、児童の学習を地域へと発信してゆき、 岩尾池の碑文、開拓の歴史 家族ぐるみ、地域ぐるみで、「美しい自然の残る 5 年 杉谷川の源流を探る 自分たちのふるさとを守り育てていこう。」とい 6 年 息障寺の歴史を訪ねて う意識へと広がっていけば理想的であると考え 岩尾山の七不思議 る。
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