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二段階口蓋形成術を施行した片側口唇顎口蓋裂児におけ
る口蓋の成長発育に関する計測学的研究
本橋, 佳子; 内山, 健志
歯科学報, 100(10): 993-1013
http://hdl.handle.net/10130/965
Right
Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,
Available from http://ir.tdc.ac.jp/
993
歴 著
二段階口蓋形成術を施行した片側口唇顎口蓋裂児における
口蓋の成長発育に関する計測学的研究
本 橋 佳 子 内 山 健 忘
東京歯科大学大学院歯学研究科
口腔外科学第二講座
(主任:内山健忘教授)
年8月3冒受付)
年9月22日受理)
抄 録 法による二段階口蓋形成術を施行した片側完全口唇顎口蓋裂患児における上顎歯
槽弓と口蓋の成長発育を明らかにするため,硬Lj蓋形成術産前から動的歯科矯正治療開始前までの
士下顎の石膏模型を資料として,上顎歯槽弓の形態と唆合の観察を行うとともに,非接触型レ∼ザ
三次元計測システムを用いて口蓋の計測を行った。ついで正常児および粘膜骨膜弁法口蓋後方移動
術による一回法を施行した患児のそれと比較検討したところ,本治癒法施行患児では,前方歯槽部
に及ぶ手術皮嚢が顎発育の旺盛な時効には回避されるので,手術による発育抑制は少なかった.す
なわち本治療法寿鋸寺患児では,良好な歯槽弓形態と唆合を示していたことから,顎発育よりみた本
治療法の有用性が明らかとなった。
キーワード:片側完全口唇顎口蓋裂,二段階口蓋形成術,口蓋発育,歯槽弓形態,二次元計測
緒 ij
と,歯列不正と唆合翼常から唄噛能率の低下をき
口蓋裂のI-・次手術,すなわち口蓋形成術の目標
は正常な言語や唄境の機能,さらに良好な唆合を
獲得するのに必要な口蓋を形成することである
たす。さらに著しい上下顎不均衡は顎矯正手術の
適応となって患者に種々な負担をかけ,時には美
的コンプレックスから精神心理学的障害をも惹起
1)。なかでもとトの義も高次の機能の つである
良好な鼻咽腔閉鎖に蓋づく正常言言吾の獲得が重要
することがある。
口蓋形成術が関与する条件には,上述した言語
と顎発育という二律背反の様相があるので,古く
で,そのためには早期の手術と積極的な口蓋の後
方移動が必要となる。しかし早期に行えば行うほ
ど,また口蓋の後方移動を積極的にはかるべく骨
膜剥離の範囲や骨創の の範囲を広
くすると,鼻咽腔閉鎖機能の獲得はできるもの
の,上顎骨の発育障害をより招来することにな
る。重度の顎発育障害により上顎劣成長が生じる
別刷請求先: 〒 千葉市美浜区翼砂1-212
東京歯科大学口腔外科学第二講座 本橋佳子
から手術法や手術時期に関して数多くの論争が引
き起こされている しかし,いまだ 定の見
解に達してはおらず,この相反する問題を解決す
るため現在なおも模索が続けられている 骨
膜剥離を行って口蓋弁を作成し,口蓋の後方移動
を積極的にはかる口蓋形成術を一回法で施行する
粘膜骨膜弁法口蓋後方移動術は,良好な鼻咽腔閉
銭機能は待られるが,重度の顎発育障害と前歯部
反対唆合を生じ易いことが指摘されている。
一g翼 -
994
本橋,他:二段階口蓋形成術施行CLP児の成長発育
一方,二段階口蓋形成術は言語と顎発育両者のい
均4歳6ヵ月),硬口蓋形成術施行後の第二期(辛
わば歩み寄りのうえに立って発展してきたともい
うべき方法である。教室で採用し完全口唇顎口蓋裂
患児に運用される二段階口蓋形成術は レジ
均6歳2ヵ月),動的歯科矯正治療前の第三期(辛
均8歳6ヵ月)のそれぞれの時期に上下顎の印象
採得を行い,直ちに石膏模型を作製して研究資料
とした。これらのうち20名の患児は,第-期より
ン床とともに の中に組み込ま
れており の方法 を改変したもの
である。二段階n蓋形成術の言語成績に関しては
必ずしも満足のいくものではないといわれている
第三期までの同 イ固体における縦断的資料として
含まれている。なお被験児の模型採取時における
全身の成長は,平成2年度厚生省乳幼児身体発育
ことから 教室では による音声
の音響学的分析14)やエックス線テレビシステムに
結果および平成2年度文部省学校保険統計調査報
吾書から作成された標準成長曲線20)の暦麻に相当
よる構音器官動態の解析 さらに聴覚的評価な
どの臨床研究を・貫して行っているo その結果,
一段階目の軟口蓋形成術が的確に行われ,その後
する発育曲線の1 SD以内に含まれていた。また
u酋顎口蓋裂以外の疾患を持つものは,被験児か
ら除外した。
の言語訓練が系統的に施されれば,満足のいく言
語成績が得られているO
対照として本学小児歯科学教室所蔵の,暦麻が
調査各時期に相当する15名ずっの正常唆合を示す
模型を無作為に抽出して資料とした。これらは基
礎疾患がなく,顎顔面および全身の成長状態もと
しかし,二段階口蓋形成術は良好な顎発育が待
られるというものの本手術施行例における上顎の
成長パターンに関して経年的に長期検討した報吾
くに異常が認められないものである(以下N群と
する)。このN群の石膏模型は,同一偶人の経年
は,きわめて少ない また8歳児の上顎
歯槽弓と口蓋の形態さらに唆合について詳細に検
的資料ではなく,各時期において無作為に採取し
た横断的資料である。さらに本学歯科矯正学教室
所蔵の他施設で粘膜骨膜弁法口蓋後方移動術によ
討した報吾もみられない。
そこで著者らは,二段階口蓋形成術を施行した
る口蓋形成術を一期的に行った片側完全口唇顎口
蓋裂児11名(以下P群とする)の動的歯科矯正治療
片側完全口唇顎口蓋裂児の経年的な上下顎石膏模
型を用い,上顎歯槽弓形態および唆合の観察を行
うとともに,三次元デジタイザを用いて口蓋の形
態を計測した。ついで,健常児の模型から得た計
測結果とを比較して,本手術を施行した患児にお
開始前(第三期)における上下顎模型を資料として
用いた(表1)。
各時期における印象採得は大小各種印象用ト
ける顎発育障害の状況を明らかにすることを試み
た。さらに粘膜骨膜弁法口蓋後方移動術の施行さ
レーのうち,それぞれの被験児に適合するものを
選択して行った。印象材にはアルギン酸印象材ア
れた患児のそれと比較することにより,本治療法
の有用性を明らかにすることを目的として調査を
行った。
ロマファインファーストセット(ジーシー社製)を
用い,印象採待後置ちに硬石膏
(松風社製)を注入して上下顎石膏模型を作製し
た。なお石膏はレーザ光の乱反射防正のため,演
青色を使用した。
方 法
2.石膏模型の観察
1 )上顎歯槽弓形態の観察
1.資料および調査時期
被験児は東京歯科入学千葉病院口腔外科におい
て に基づき レジン床に
よる術前治療と 法による二段階口蓋形成
術を行った片側完全口唇顎口蓋裂児44名(以下T
上顎歯槽弓形態を ら21)の分類に準
じてタイプ分けをL と
の接触状況の観察を行った。すなわち
群とする)である。硬口蓋形成術由前の第一期(辛
1.遊離型 :両 が接近する
94
歯科学報
表1 被験児の印象採取時期および例数
二 段 階 口 蓋 形 成 術 施 行 群 (T 君羊)
健常 児 群 ( N 君羊)
第二期
第二期
11.
男
23
16
女
21
12
9
計
44
28
20
平均年 齢
4 歳 6 カ月
6 歳 2 カ月
8 歳 6 カ月
硬 口蓋 形 成 術 後 平均
*
l 年 7 カ月
3 年 11 カ月
男
5
9
10
女
10
6
5
計
15
15
15
4 歳 5 カ月
6 歳 3 カ月
8 歳 6 カ月
男
*
*
6
女
*
*
5
計
*
*
11
平均年 齢
*
*
8 歳 6 カ月
平 均 年 歯令
粘 膜 骨 麓 弁 口 蓋形 成 繕 ( P 群 )
第J 斯
が,接触していないタイプ, 2.接触型
両 が接近して - の形
ムを用いて模型の計測を行った。その過程はデジ
タイザによるスキャニング,サーフェスモデルの
で接触するタイプ, 3.重複型 :
両 が接近して重なりあうタイプ,の3
作製,データの計測からなる(図3)。まず資料と
型に分歎した(図1)0
2)唆合の観察
に調整し,模型上に後述する計測点を印記するO
ついで模型を三次元デジタイザ
全歯槽弓にわたる反対唆合の出現様相を作田22)
および北林23'らが報害した分類を改変し,以下の
測点の点スキャニングを施したのち,模型の表面
I
した石膏模型を甚底面を可及的に唆合平面と平行
(マツオ産業社製)の計測用アーム上に固定し,計
如く分類して,調査した(図2)。
反対唆合が全歯槽弓にわたってみられ
るもの
形状のデータの採取,連続スキャニングを行っ
反対唆合が と切歯部
にみられるもの
反対唆合が両側臼歯郭にみられるもの
置を算出し,三次元座標データの集合体を作製し
反対唆合が のみにみ
られるもの
デジタイザにて計測したデータをワークステー
た。すなわち レーザ光を計測対象物の表
面に照射して得られた反射光の入光角より点の位
た。この際の連続スキャニングの幅は と
した。
ション および
社製)上に出力したのち,三次元座標デー
反対唆合が切歯部のみにみられるもの
反対唆合がみられないもの
タ編集用ソフト
社製)を使用して,計測データの編集,すなわ
ち画像の回転や平滑化を行った。 CADソフト
なお調査に当たり,あらかじめ患児に中心唆舎
位で唆合するように数回練習させたのち,唆合状
態をパラフィンワックスに印言己した。
社製)を使用して
サーフェスモデルを生成するとともに各種計測項
3.三次元計測システムによる形態分析法
1)計測過程
本学保健情報学研究室所蔵の三次元計測システ
目における距離を算出した。面積はCADソフト
社製)を使用し,数値化
95
本橋,他:二段階口蓋形成術施行CLP児の成長発育
図1 上顎歯槽弓形態の分類
左 遊離型 」接触型 右 重複型
Cl
l -「∴二
-=反対唆合
図2 発生部位による反対唆合の分顛
図4 各計測点
P :上顎切歯乳頭最大膨隆点
C :右側乳犬歯口蓋側歯甑部鼻下点
C' :左側乳犬歯口蓋側歯頭部最下点
E :右側第二乳臼歯口蓋側歯頚部最下点
E' :左側第二乳臼歯口蓋側歯頚部最下点
M ・.右側第 二大臼歯口蓋側歯頚部最下点
M' :左側第--大臼歯口蓋側歯頭部最下点
T :右側上顎結節点
T' :左側上顎結節点
⑤ E' :左側第二乳臼歯口蓋側歯頚部最下点
⑥ M :右側第-大臼歯口蓋側歯頭部最下
点(第三期のみ)
距離、面積の 各種計潮
図3 三次元デジタイザによる計測過程
⑦ M' :左側第一大臼歯目蓋側歯頚部最下
点(第二期のみ)
を行った。
2)計測点および口蓋投影線
(1)計測点(図4)
⑧ T :右側上顎結節点
⑨ T' :左側上顎結節点
②と③, ④と⑤, ⑥と⑦, ⑧と⑨は,それぞれ
① P :上顎切歯乳頭最大膨隆点
② C :右側乳犬歯口蓋側歯頚部最下点
③ C' :左側乳犬歯口蓋側歯頚部最下点
④ E :右側第二乳臼歯口蓋側歯頚部鼻下点
--96
左右的に対をなす計測点である。また各種の計測
値を算出するため,萌出している全歯牙口蓋側歯
頚部最下点も表面積を計測する上での参考として
歯科学報
997
描記した。
(2)口蓋投影線(図5)
短距離
③ 第I-大臼歯部口蓋長径(以下
と略す)(第三期のみ
2つの対をなす計測点を結ぶ置線を,口蓋方向
に垂虞に投影した口蓋面上の曲線を作成して口蓋
とPとの最短距離
④ 歯槽弓後方部長径(以下 つ
投影線とした。第一期では,硬口蓋部に破裂が存
在しているので,同部に硬口蓋破裂部辺縁を輪郭
とした仮想の平面を生成したのち,その仮想平面に
と略す とPとの最短距離
(Ⅲ)口蓋高径(図8)
垂再に投影して,同様に口蓋投影線を求めたO
をし」蓋方向へ垂鹿に
口蓋幅径を求めた3つの虐線とそれに対応する
口蓋投影線との距離を等間隔な200ポイントで演
投影した口蓋平面上の曲線
をH蓋方向へ垂直に
算し,最大高径と平均高径を求めた。
① 乳犬歯部最大口蓋高径(以下
と略す) :
投影した口蓋平面上の曲線
を口蓋方向へ垂直
に投影した口蓋平面上の曲線(第三期のみ)
と との距離の最大値
② 乳犬歯部平均口蓋高径(以下 '
と略す) :
3)計測項目
(1)距離的計測
と の距離の平均値
③ 第二乳臼歯部最大口蓋高径(以下
(1)口蓋幅径(図6)
以下の4部位における対をなす2点の計測点間
と略す) :
と との距離の最大値
の座標値を加減算することにより置線距離を算出
し,口蓋幅径を求めた。
① 乳入歯問口蓋幅径(以下
④ 第二乳臼歯部平均rl蓋高径(以下
と略す) :
と との距離の平均値
と略す) :
両側乳犬歯口蓋側歯頚部最下点間の距離
⑤ 第-人臼歯部最大口蓋高径(以下
と略す)(第三期のみ) :
M-M'と の距離の最大値
② 第二乳臼歯間口蓋幅径(以下
と略す) :
両側第二乳臼歯口蓋側歯頚部最下点間の
⑥ 第・大臼歯部平均口蓋高径(以下
と略す)(第三期のみ) :
距離
③ 第一大日歯間tj蓋幅径(以下
と略す)(第三期のみ) :
と の距離の平均値
(2)面積計測
両側第I-大臼歯歯頚部最下点間の距醜
④ 歯槽弓後方部幅径(以下, Tと略す) :両側上顎結節点問の距離
(I)口蓋表面積(図9)
図9の如く輪郭線を設定し,それに囲まれた面
の表面積を演算した。
(Ⅱ)口蓋長径(図7)
上二顎切歯乳頭最大膨隆点(p)と各部の口蓋幅径を
① 乳犬歯部前方口蓋表面積(以下 と
略す) :
と乳犬歯部より前方歯牙の
求めた4つの各蕃線との最短距離を算出し,口蓋
長径を求めた。
口蓋側歯頚線にて囲まれた口蓋の表面積
② 第二乳臼歯部前方口蓋表面積(以下
① 乳犬歯部口蓋長径(以下 つ
と略す とPとの義短距離
② 第二乳臼歯部口蓋長径(以下
と略す) :
と第二乳臼歯より前方歯牙の
口蓋側歯頚線にて固まれた口蓋の表面積
と略す とPとの最
97
イこ▲札付ト l;是「粕はF三成術馳イ」二(1【lルのJlu主ブかノγ
(Ⅱ):M且pM−M’
なお第一期では,硬口蓋の破裂が残遺している
ので破裂部辺縁を輪郭とした平面を作製し,その
面も含んだ表面積として(9と(訃を貸出した。
③ 第一大臼歯部前方口蓋表面積(以下,
Mrpsと略す)(第三期のみ):
MapM−M’と第一大臼歯より前方歯牙
の口蓋側歯頚線にて囲まれた口蓋の表面積
図6 口蓋幅径
① 乳犬歯間口蓋幅径 :CrC’width
② 第二乳臼歯間口蓋幅径:E−E’width
(診 第一大臼歯間口蓋幅径:M−M’width
④ 歯槽弓後方部幅径 :T−T’width
す):
C−C’とMapCLC’で囲まれる平面の面積
② 第二乳臼歯部口蓋断面積(以下,Esps
と略す):
ELE’とMapE−E’で囲まれる平面の面積
⑨ 第一大臼歯部口蓋断面積(以下 Msps
と略す)(第三期のみ):
M−M’とMapM−M’で困まれる平面の
以下に示す直線と曲線で囲まれる平面の面積を 面積
求めた。
4.成長率
① 乳犬歯部口蓋断面積(以下Cspsと略
第一大臼歯に関する計測項目を除くすべての計
(Ⅱ)口蓋断面積(図10)
歯科学報
9掴
監完?_ _i
図9 口蓋表面積
① 乳犬歯部前方口蓋表面積: ② 第二乳臼歯郭前方口蓋表面積
③ 第一大臼歯部前方口蓋表面積:
T群, N群の第一期,第二期,第三期の3時期
における計測値の比較は,ノンパラメトリックの
検定を行った。
検定で有意差が認められた項目は,さらに多憂比
較の の検定を行ったo また各時期におけ
る成長率の検定は,ノンパラメトリックの
検定を行った。
結 果
図10 口蓋断面積
① 乳犬歯部口蓋断面積
② 第二乳臼歯部口蓋断面積:
③ 第一大臼歯部口蓋断面積
測項目において,縦断的に3期問を観察し得た同
∴患児20例の成長率を以下の如く算出した。すな
わち1.第二期成長率:第二期計測値を第-期計
測値で除したもの2.全期間成長率:第三期計測
値を第一期計測値で除したもの,である。これら
は,まず20例個々において求め,それを乎均し
て,各項冒の値とした。またN群は各時期の平均
値を用いて同様の計算を行った。
5.統計処理
1.模型の観察
1 )上顎歯槽弓形態の観察
T群の第一期では接触型が44例中32例 と
最も多く,ついで遊離型が9例 を示し,両
者をあわせて41例 であった。重複型は3例
と最も少なく観察された。しかし重複型は
第二期,第三期になるにつれて増加を示し,運に
遊離型はわずかに減少する傾向が認められた。接
触型は第-期,第二期,第三期を通していずれも
70%台と最も多く観察された。一方, P群では重
複型が であり,遊離型は1例も認められな
かった。 T群の第三期とP群との間において,こ
れら歯槽弓形態のタイプ分布はx 2検定で有意差
が認められた(表2)。
データの解析には統計解析プログラム
Base System for Windows Vcr.7.5(SPSS
縦断的観察をしたT群20例における個々の症例
の推移をみると,遊離型を示していた7例は,遊
社製)を用いた。 T群, P群の第三期にお
ける歯槽弓形態の観察の比較はx2検定を,各群
間における計測値の比較は,ノンパラメトリック
の 検定を行った。
離型が滅少して接触型が増加し,第三期には1名
が重複型に移行していた。接触型を示していた12
例は,第三期まで10例 が接触型を維持し
ており,重複型に移行したものは2例にすぎな
99 -
本橋,他:二段階口蓋形成術施行CLP児の成長発育
1000
かったO第一期において重複型を示していた1例
ほぼ第一期と同じであった。第三期においては,
は第二期,第三期においても重複型のままであっ
た(表3)。
2)唆合の観察
第一期,第二期と同様に が最も多く観察
され と の出現がそれに続い
たo いずれにしてもT群では第一期,第二期,第
T群の第-期では,切歯のみ反対唆合の
5が最も多く,反対唆合が認められない
三期を通じて切歯のみ反対唆合の が最も
多く観察された。
がこれに次ぎ,以下 および
の服であった。両 臼歯郭が反
P群ではT群と異なり,切歯部と
に反対唆合を示した が と鼻
対唆合を示す は, 1例も観察されなかっ
た。第二期における反対唆合発現様相の順位は,
も多く,過半数を占めていた。また全歯槽弓が反
対唆合を示した もT群と比べてその割合
は多かった(表4)。
縦断的観察をしたT群20例における反対嘆合の
表2 上顎歯槽弓形態の観察
様相についてみると,第二期には第一一期より矢印
の上方移動すなわち反対唆合の範囲が増大した症
例が3例認められた。逆に矢印の下方移動すなわ
(例数:人)
T群
第 一期
P群
第二 効
第 三期
3 ( 10. 7% )
2 ( 10 % ) *
第三 期
遊 離型
9 ( 2 0.5% )
接 触型
32 ( 72.7 % )
重 複型
3 ( 6.8 % )
3 ( 10. 7% )
4 ( 20 % ) *
9 ( 8上8 % )
計
44 (100 % )
28 (100 % )
2 0(10 0 % )
ll (100 % )
22 ( 78. 5% ) 14 ( 70 % ) *
0(
ち反対唆合の範囲が減少した症例が2例認められ
た。第三期においても第二期より反対嘆合の部位
0% )
2 ( 18. 1% )
が増大した症例が3例,逆に減少した症例が2例
認められた。この減少した2例の変化は
から から であった。な
検定でT君羊の第三期とP群の第三期との問
に有意差あり(危険率5%)
お第一期から第二期,第二期から第三期へと変化
しない症例は,いずれも20例中15例75%を示して
いた(表5)。
x 'lltt萱-ll. 259
自由度2
表3 縦断的観察20例における上顎歯槽弓形態の推移
第一報 第二期 第三期
遊離型 3例
遊離型 7例
メ
ヽ`接触型1例
\接触型。例
ノ′接触型 3例
メ
接触型 4例
遊離型 2例
接触型11例
接触型12例
ノ′遊離型 2例
ヽ▲
重複型 1例
重複型 1例
ノ′接触型10例
接触型10例
ヽ`重複型1例
重複型 2例
\ 重複型1例 重複型 1例
重複型1例→重複型1例-+重複型1例-重複型1例
-100-
歯科学報
1001
表4 反対唆合の発現様相
表5 縦断的観察20例における反対嘆合の発現様
相の推移
(例数:人)
T群
P 群
第 二期
第 三期
二期
T yP e l
4 ( 9 .3% )
2 ( 7. 4% )
2 ( 10 % )
2( 18.2 % )
Type 2
6( 14. 0% )
4 ( 14.8 % )
3 ( 15 % )
6( 54 -5 % )
TyPe 3
0( 0 % )
1( 3. 7% )
1( 5 % )
0( 0 % )
Type 4
4 ( 9. 3% )
2 ( 7.4 % )
2 ( 10 % )
0( 0 % )
Type 5
17 ( 39.5 % )
ll ( 40.7 % )
9( 45 % )
2 ( 18. 2% )
例
T ype 6
12 ( 27. 9% )
7 ( 26.0 % )
3( 15 % )
1( 9. 1% )
被験児
43 (100 % )
27 (100 % ) 2 0(100 % )
l l(100 % )
例→ 例-→
例→
例く
例→
例→
2 1 1 1 1
︹
例く
1
1
type 4
例
tyf)e 5
例
type 2
例」 例
T群の第一期における口蓋幅径は,いずれの項
目においてもN群との平均値の差が 以内で
あり,ほぼ同じ値を示していた。第二期における
T群の口蓋幅径は,いずれの項目でもN群と比
べて小さい値を示しており,乳犬歯間幅径
type 6
︹
tyI)e 5
2.三次元計測システムによる形態分析
1)距離的計測
(1)口蓋幅径
l 1 5 1 1 1 2
type 2
ただし, T群第-期とT群第二期は爾蝕により判
定できないもの1名ずつを除く
例例例例例 例例例例例例例例例
第-期 第二期 第三期
第一 期
と,第二期から第三期において明らかであった
(表7)。
(2)口蓋長径
T群の第-期における口蓋長径は,いずれの項
目においてもN群と比べて小さい値を示し,とく
において有意差が認められた。第三期に
おけるT群の と は, N
にEIE' および で明らかで
あった0第二期における所見は第一期と全く同様
群と比べて明らかに小さい値を示していた。しか
し,それらはP群と比べると有意差は認められな
であった。第三期には第一期および第二期と同
樵,第三期のみで観察されるM-M' を含
めたいずれの項目においてもN群と比べて小さい
いものの,大きな値を示していた。逆にT群の
は, P群と比べて小さく, N群と比
べて有意に大きい値を示していたoなお第三期
においてのみ観察される第I1--大日歯間口蓋幅径
は,三群問で相違がみられなかった(表6)。
第一期から第二期,第三期へと時期を経るにし
たがい, N群ではいずれの項目においても増大を
示し,とくに と におい
て 主 検定で有意差が認められた。
T群では第二期のC- とE- に
おいて僅かに減少したが は第三期
において増大していたo またT群の
は, N群と同様に時期を経るにしたがい,有意の
差で増大を示し,多重比較の 検定をみる
値を示していた。逆にこれらの項目は, P群と比
べるとすべて大きい値を示し, Eおよび において1%危
険率の有意差を示していた(表8)。
第一期から第二期,第三期へと時期を経るにし
たがい, N群の およびE-E'
は,滅少する傾向がみられたが,逆に
はどの期間においても有意の差が認めら
れ,増大を示した。この傾向はT群においてもN
群と全く同様であった(表9)0
(3)口蓋高径
T群の第一期における口蓋高径は, N群と比べ
て を除く項目で明らかに大
-101-
本橋,他:二段階口蓋形成術施行CLP児の成長発育
1002
表6 口蓋幅径
第J 斯
T 群
乳犬 歯 間 口 蓋 幅 径
N 群
第二期
第三期
±
±
±
±
☆
±
☆☆
±
T 群
Eー
±
N 群
第 J 大 日 歯 間 口蓋 幅 径
Tー
H = 13.879 *
土
±
±
H = 2.190
±
☆☆
±
H = 6.799
P 群
±
T 群
±
N 群
±
P群
±
T 群
歯槽 弓 後 方 部 幅 径
H = 2.303
±
P 群
第 二乳 臼 歯 問 口 蓋 幅 径
K ru Sk a l-W alliS n k
±
N 群
工59 ±
±
H = 46.864 *
±
☆
±
H = 19.057 *
±
P 君羊
±
検定 ☆: T群とN群で有意差あり(危険率5%)
☆☆ : T群とN群で有意差あり(危険率1%)
検定 * : 3時期において有意差あり(危険率5%)
表7 日蓋幅径の項目における多重比較 法)
N群 乳入歯問口蓋幅径
T君羊 歯槽弓後方部幅径
(Q値)
第二期
第一期
A 札
第二期
(Q値)
第三 期
第二 期
〕
- 3. 0304 *
2.4 817
第J 期
第二期
第三 期
- 4.2560* *
W 6.m
N群 歯槽弓後方部幅径
(Q値)
第二期
第一期
第二期
- 2.64 12 *
K-3
のとき
のとき
第三 期
- 4. 4483 * *
- 1. 8071
きな値を示していた。第二期におけるT群のCおよび は,
N群と比べて明らかに大きな値を,逆にE-E'
および では,
明らかに小さい値を示していた。第三期における
T群の口蓋高径は および
-102
で有意の差は認められないも
のの,第二期と同様にN群より大きな値を示し
た0第三期においてのみ観察される
および も
および と同様
にT群では,有意の差でN群より小さい値を示し
歯科学報 Vo上
表8 口蓋長径
第一期
T
乳 犬 歯 部 口蓋 長 径
第二期
±
第三期
検定
±工
±
H =
4. 037
±
±
H =
0. 764
T 群
H =
8. 814
N 群
Ill =
4.4 20
N 群
5`27 ±
P群
±
第 二 乳 臼 歯 部 口蓋 長 径
E lE つ
P群
T 群
第 一 大 日 郭 口蓋 長 径
N 群
M lM , len g th
P群
T
fll
I = 29l226 *
N 群
H = 32.764 *
歯 槽 弓後 方 部 長 径
T -T つ
P 群
検定 ☆: T君羊とN群で有意差あり(危険率5%)
☆☆ : T群とN君羊で有意差あり(危険率1%)
◎◎ : T群とP群で有意差あり(危険率1%)
- 検定 * : 3時親において有意差あり(危険率5%)
表9 口蓋長径の項目における多菱比較 法)
T群 歯槽弓後方部長径 T-
N群 歯槽弓後方部長径1㌧
(Q値)
第二期
第主
第 二期
(Q値)
第三 期
第二期
第J 斯
i
3.3084 * *
0.4642
第二期
第 三報
l 5.2101 * *
一上 月
K-3
のとき :*
のとき
においてもわずかに増大する傾向が見ら
ていた。しかしT群はすべての口蓋高径に関する
項目においてP群より大きい値を示し,とくに
EIE' および
れるに過ぎなかった。しかしT群では,すべての
項目で漸滅する傾向が見られ,第三期で第一期と'
で有意の差が認められた(表10)。
第一期から第二期,第三期へと時期を経るに
比べて多重比較で明らかに減少していた(義ll)。
2)面積計測
したがい, N群の およびCでは,ほとんど変化がみられ
ず,また および
(1)口蓋表面積
T群の第-期における口蓋表面積は, N群と比
べて,その差は僅微で相違はみられなかった。第
103
本橋,他:二段階口蓋形成術施行CLP児の成長発育
1004
表10 口蓋高径
第一期
T 君羊
乳 犬 歯 部 平 均 口蓋 高 径
C - C , h e igh t ( m a x )
N 群
第 二期
第 三親
±
±
±
H = 24.071 *
☆☆
±
☆☆
±
±
H =
P 群
C l C , h e ig h t( a v er )
検定
0 . 33 0
±
T 群
±
N 群
☆☆
±
乳 犬 歯 部 平 均 口蓋 高 径
】
土工
☆☆
±
P 群
土工 0 5
H = 1 3 . 4 60 *
±
H =
0. 33 9
±
T 群
H = 3 4 . 3 75 *
N 群
fl l= l 1 . 18 5
第 二 乳 臼 歯 部 最 大 口蓋 高 径
E l E , h e ig h t (m a x )
P 群
T 群
H 二
N 群
H =:Il l . 12 7
第 二 乳 臼 歯 部 平 均 口蓋 高 径
E ー
P 群
T 群
±
N 群
☆☆
±
第 一 大 臼 歯 郭 鼻 大 口蓋 高 径
M { M , h e ig h t (m a x )
P 群
±工 3 7
T 群
±
N 群
☆
±
P 君羊
±
第 一 大 臼 歯部 平均 口 蓋 高 径
M l M , h e igh t ( a v e r )
検定 ☆: T群とN群で有意差あり(危険率5%)
☆☆ : T群とN群で有意差あり(危険率1%)
◎: T群とP群で有意差あり(危険率5%)
◎◎ : T君羊とP群で有意差あり(危険率1%)
検定 * : 3時期において有意差あり(危険率5%)
二親におけるT群のN群に対する値は で
明らかで有意に小さい値を示していた。第三期に
る傾向が認められ では有意の差が認めら
れた(表13)。
おけるT群の口蓋表面積は,どの項目もN群と比
べて明らかに小さい値を示した。しかし,いずれ
もP群と比べては逆に大きい値を示し お
(2)口蓋断面積
T群の第-期における口蓋断面積は, N群と比
べて で明らかに大きな値を で小さ
よび で有意の差が認められた(義
第一期から第二期,第三期へとわたる口蓋表面
い値を示した。第二期におけるT群のN群に対す
る値は,第-期と同様であったが におい
積の変化の傾向は, N群とT群では異なってい
た。すなわちN群の は第二期で減少し第三
期で増大を は増大するものの,僅かで
ては1%危険率で明らかとなった。第三期におけ
るT群の口蓋断面積の は, N群と比べて大
きい値を示していた。しかしT群の および
あった。一方, T群の口蓋表面積は徐々に漸減す
では,逆にN群と比べて明らかに小さい値
10.1
歯科学報 Vo上
1005
表11口蓋高径の項目における多重比較 法)
T群 乳犬歯部鼻大高径
T群 第二乳臼歯部鼻大高径
(Q値)
第 二期
3. 454 9 * *
第一期
第二期
(Q値)
第三期
第二期
4.4694 * *
第一期
5.0 14 1* *
工
第二期
第三期
4.5959 * *
0.0932
T群 第二乳臼歯郭平均高径
T君羊 乳犬歯部平均高径
(Q値)
(Q値)
第二期
第三期
1.5224
第一期
第二期
第二期
3.3706 * *
第一期
工
第二期
第三期
4.0223 * *
4.0550 * *
0.4139
K-3
のとき
のとき
**
表12 口蓋表面積
T 群
第一期
第二 期
±
±
第三期
±
乳 犬歯部前 方 口蓋表面積
N 群
C fp S
±
検定
H ニ
☆☆
±
工852±
P群
H = 1.185
±
T群
H = 10.902 *
N群
H = 3.917
第二 乳 臼歯 部前方 口蓋表面 積
E fpS
P群
T群
第J 大 臼歯部前方 口蓋表面 積
N群
M fpS
P群
検定 ☆・. T群とN群で有意差あり(危険率5%)
☆☆ : T帯とN君羊で有意差あり(危険率1%)
◎: T群とP群で有意差あり(危険率5%)
検定 * : 3時期において有意差あり(危険率5%)
表13 口蓋表面積の項目における多重比較 法)
T群 乳犬歯部前方口蓋表面積
T群 第二乳臼歯部口蓋前方表面積
(Q値)
第一期
第 二期
(Q値)
第二期
第三斯
0.7479
2.8 071 *
第一報
1. 9681
第二期
第二期
第 三期
2.3217
3.0097 *
0.8552
K-3
のとき
のとき :**
105一
本橋,他:二段階口蓋形成術施行CLP児の成長発育
1006
表14 口蓋断面積
第一期
第三 期
±
T 君羊
±
±
N 君羊
☆☆
±
☆☆
土
乳 犬歯部 口蓋断面積
C Sp S
第二期
検定
‖ ニ1 0言7 5 *
工96 7 ±
P群
H = 0 .2 53
±
T群
H = 2 上帖 *
N群
H = 5 .5 57
第二乳 臼歯部 口蓋断 面積
E Sp S
P群
T君
羊
±
第J 大 臼歯部 口蓋断面積
M Sp S
N 群
☆☆
±
P群
1 64 .4 10 + 2 9. 1 50
検定☆☆ : T群とN群で有意差あり(危険率1%)
◎ : T群とP群で有意差あり(危険率5%)
- 検定 * : 3時親において有意差あり(危険率5%)
表15 口蓋断面積の項目における多重比較 法)
T群 乳犬歯部口蓋断面積
T群 第二乳臼歯部口蓋断面積
(Q値)
第一期
第二期
第二期
第三期
1.5976
2.9095 *
第J 期
1.3686
第二期
第二期
第三期
2.5920
3. 1022 *
0.6584
K-3
p- のとき :*
p- のとき
を示していた。これとは逆にP群と比較すると,
T群はいずれも大きい値を示し で有意の
差が認められた(表14)。
第一期から第二期,第三期へとわたる口蓋断面
積の変化の傾向は, N群とT群では異なってい
た。 T群の口蓋断面積は徐々に漸滅する傾向が認
められ および ともに有意の差が認
められた(表15)。
3.成長率
縦断的観察をしたT群20例における第二期成長
率で1以上の値を示したのは,歯槽弓後方部幅
荏,歯槽弓後方部長径の2項目に過ぎなかった。
30%以上の減少を示した項釦ま,乳犬歯部最大高
一106
径と第二乳臼歯部最大高径の口蓋高径であった。
一方,全期間成長率において1以上の値を示した
項目は, 3項目と増加していた。また第二期成長
率と全期間成長率の比較では,歯槽弓後方部幅径
および歯槽弓後方部長径の2項目で有意に第二期
成長率より全期間成長率の増大が認められた(義
16)0
考 察
1.研究方法について
1)被験児
法による二段階口蓋形成術は, 1歳
6ヵ月時に粘膜弁法による軟口蓋形成術を最初に
歯科学報
1007
表16 成長率
第二 期成長率
T#
I
全新 聞成長率
N #
T 君羊
乳犬 歯間口蓋幅径
±
±
第 二 乳 臼歯 間 口 蓋 幅 径
±
⊥
歯 槽 弓後 方 離 幅 径
±
±
乳 犬 歯 部 口 蓋長 径
±
±
第 二 乳 臼 歯部 口 蓋長 径
±
±
歯 槽 弓後 方 部 長 径
チ
±
乳 犬 歯 郭 前 方 口 蓋表 面 積
±
第 二 乳 臼歯 部 前 方 口 蓋表 面 積
±
乳 犬 歯 部 最 大 口蓋 高 径
±
乳 犬 歯 部 平 均 口蓋 高 径
±
第 二 乳 臼 歯 部 最 大 口蓋 高 径
±
第 二 乳 臼 歯 部 平 均 口蓋 高 径
±
乳 犬歯部口蓋断面図
第 二 乳 臼 歯 部 口蓋 断 面 積
F
N 君羊
±
工 023
±
±
±
工 004
±
0 ` 73 6 ±
工 12 3
±
工 06 7
±
0 . 6 12 + 0. 38 1 *
1. 0 - 2
±0`
の符号付順位検定で有意差あり(危険率5 %)
の符号付順位検定で有意差あり(危険率1 %)
行い,硬口蓋部に残遺した破裂に対しては4歳
6ヵ月から5歳の間に粘膜骨膜弁法による硬口蓋
従来より歯列模型を用いて口唇裂・目蓋裂患者の
顎発育を追求した方法には,直接計測法 や
三次元座標測定器 等高線図法 塊格写真
法 などが挙げられる。しかし,これら従来から
形成術を行って口蓋を二段階に形成している。
では,この硬口蓋閉鎖術を5歳
から8歳頃にかけて行うが,上顎骨は4歳6ヵ月
行われてきた計測方法は,歯列模型に含まれている
豊富な三次元情報を十分に活用しているとは言い難
い。最近,新たな計測の手段としてデジタイザによ
頃までに成人の5/6まで発育するという
の理論24)から,教室では硬口蓋閉鎖術を実施する
のを,それ以降であれば充分と考えている。また
術後1年以上かけて言語管理を行い,就学までに
正常言語を獲得させたいという理由も加味して教
る三次元計測システム35)とくにレーザデジタイザを
使用する試みがなされている
重では,硬口蓋の閉鎖を4歳6ヵ月から5歳の間
に行っている 研究対象としたT群は,すべて
この計測方法の利点は, ①非接触式に計測が行
える, ②6軸の計測軸を有しているので上顎模型
のほぼ全面を1回の設定で計測することができ
一定の方針の下に手術が施行されている。
粘膜骨膜弁法口蓋後方移動術による口蓋形成術
る, ③CADソフトの使用により容易に距離計
刺,面積の定量化が行える, ④模型上の計測点を
を一期的に行ったP群は,本学矯正歯科を受診し
た患児で,以下の条件に合致した資料を選んだO
それらは手術および時期さらに施設の詳細が明ら
サーフェスモデル上に忠実に再現することができ
る, ⑤測定精度が± と高い,ことがあ
げられる。したがって口唇顎口蓋裂のような複雑
かであるもの,鼻口腔療閉鎖術や顎裂部骨移植な
どの二次手術が行われていないもの,全身的に疾
患を有さないもの,である。
な口蓋の形態を計測するには,本システムは非常
に有用な処理機能を有していると考えられた。と
くに平均高径や距離計測に有用で ポイント
すべてにおける距離を一括して求め,瞬時のうち
2)三次元計測システム
107
1008
本橋,他:二段階口蓋形成術施行CLP児の成長発育
にその平均値の算出が可能であった。表面積の算
室で管理している口唇顎口蓋裂患者の本院におけ
出の際には,模型上の各舌側歯頚部最下点に印記
した点を利用することによって各歯牙の歯頚線を
る動的歯科矯正治療開始の平均時親を参考とした。
容易に境界線として決定することができた。口蓋
断面積の計測は任意の断面での計測が可能であっ
2.石膏模型の観察結果について
1 )上顎歯槽弓形態の観察
T群では口唇形成術さらに二段階口蓋形成術の
た。本システムにおいて口蓋高径,口蓋表面積お
よび目蓋断面積を求めて,三次元要素を追求し得
初回の手術である軟口蓋形成術が施行されている
にもかかわらず, 4歳6ヵ月時の第-期において
たことが本研究における鼻大の特徴である。
3)計測点
従来より歯列模型計測では左右歯の頑側唆頭頂
の症例が重複型すなわち を生じ
ていなかった。この理由として軟口蓋形成術時に
は上顎骨の骨膜を剥離することがないので 上
間距離38)や小高裂溝間距離の測定39)など種々の計
測が行われている。唆頭や小高裂溝を使用する方
顎骨におよぶ手術皮嚢は明らかに少なく,しかも
第一乳臼歯より前方の歯槽部には,それがおよん
汰では,摩耗,唆耗などにより計測点が不明とな
ることが多い。さらに口唇顎口蓋裂児では転位歯
でいないことに起因していると考えられる。また
口唇形成術の歯槽部におよぶ影響が少ないこと,
となることが多く,また口唇や口蓋の疲痕によっ
て,繭歯となりやすいといわれている40)。また歯
牙の形態異常,歯牙の著しい捻転や傾斜を起こす
さらに レジン床の効用にも起因していると
考えられる。硬口蓋形成術の術後4年以上経過し
強度の高い口唇顎口蓋裂児では 癌側唆頭を
計測点として使用するのは不都合であり,不正確
ている第三期においても80%と大多数が
pseを示していなかったo また,遊離型に分類さ
れるものは,加歯斜こより減少傾向が認められるも
であると思われる。 J以上のことより本研究の計測
点としては,本システムの利点を生かしうる切歯
のの,作田 河野ら44)の報吾と比較しても高い
出現率を示していた。
乳頭鼻大膨隆部,上顎結節点,萌出している全歯
牙の口蓋側歯頚最下点を使用した。
4)調査時期
P群では遊離型に分類される症例は認めず,ほ
とんどの症例が重複型を示し, T群とは有意差が
認められた。したがって顎裂部付近の歯槽部に施
本研究は調査時期を硬口蓋形成術直前,硬口蓋
形成術施行後,動的歯科矯正治療前の3期に分け
される硬口蓋形成術を上顎骨が充分発育するまで
遅延させる二段階口蓋形成術の手術理念9)が良好
て行った。第一期は硬口蓋形成術の前で,しかも
乳歯列が完成しており,計測の際にすべての乳歯
を目標として使用できる。第二期は片側性完全口
な歯槽弓の成長発育に奏功しているものと考えら
れた。
2)唆合の観察
唇顎口蓋裂児においては,ほぼ第一大臼歯萌出直
前であり 計測の際に第一期と比較できる。
T群は調査時期すべてにおいて切歯部のみに反
対唆合が限局しているタイプが, P群は切歯部と
第三期は動的歯科矯正治療は口蓋,上顎歯槽弓形
態に大きく影響を及ぼすなどの理由から,この3
期を調査時期と設定した。
に反対唆合を示したタイプが多
く観察された。このことからT群の方がP群より
良好な唆合を示していたことが示唆された。また
とくに第三期においては,完全口唇顎口蓋裂患
者は程度の差こそあれ,歯牙の位置異常に加えて
縦断的に観察したT群20例では,歯槽部に手術皮嚢
がおよぶ硬口蓋形成術後において,その75%が唆合
歯列不正,唆合異常を伴っている。さらに患者固
有における顎顔面型の不調和の修飾が加わり複雑
な様相を皇する43)ので,なんらかの矯正歯科治療
に変化を認めず,比較的良好な唆合を示していた。
は,成人白人男性における片側口唇顎
口蓋裂患者の顎発育を側貌頭部エックス線塊格写
が必要となる。したがって,第三期の決定には教
貢分析を行い,調査したところ
108一
歯科学報
施行患者の上顎切歯の位置は,とくに明
らかな変化はなかったが,上下顎の切歯の関係は
良好であったと報害している。また,その理由
として,軟口蓋形成直前までの長きにわたって
レジン床による受動的な顎矯正を行うこと
1009
く,硬口蓋形成術後の口蓋形態は,健常対照と類
似していた。この理由として骨膜剥離を行う硬口
蓋形成術を遅延させる二段階口蓋形成術の基本理
念の結果によるものであると考えられる。
教室の田辺33)は未手術口蓋裂患児における口蓋
により,萌出前の乳歯の位置の改善というよりむ
しろ萌出後の歯牙誘導の効果によるものではない
かとしている。
の成長発育の調査から口蓋裂患児の発育は,健常
対照と比べて劣ると報害している。経年的変化に
ついてみると本研究の口蓋幅径,口蓋長径および
T群における レジン床の使用を終えた時
口蓋表面積は,ともにそれらの結果とほぼ同様の
結果であった。とくに口蓋長径は田辺の報吾と同
期の平均は1歳4カ月で,この時期は多くの症例
が,上顎第一乳臼歯の萌出を認める時期である。
この時期まで レジン床による顎発育誘導を
様に口蓋前方部では減少を,口蓋後方部では増大
を示し, N群ときわめて類似した発育を示してい
行うことで良好な被蓋関係の基礎をっくることが
できたのではないかと考えられた。これらの所見
た。したがって二段階口蓋形成術そのものが口唇
顎口蓋裂児が本来有している成長発育の潜在能
は,前述の上顎歯槽弓形態の観察からも明らかと
なったように,得られた良好な上顎歯槽弓の形態
力46)を阻害するものではないと思われた。
2)口蓋高径および口蓋断面積
口唇顎口蓋裂術後患者の口蓋高径ないし口蓋の
が下顎の歯槽弓形態を誘導したと考えられた。
3.三次元計測システムによる形態分析結果につ
いて
1)口蓋幅径,口蓋長径および口蓋表面積
口唇顎口蓋裂術後患者の口蓋および上顎歯槽弓
は,一般に口唇裂手術後の口輪筋の連続性確保な
いし と口蓋形成術後の疲痕拘綿
によって,前下方-の発育障害をきたす。その結
果,健常対照群と比べて口蓋幅径,口蓋長径およ
び口蓋表面積は小さく,成長は遅れるといわれて
いる 。本研究は,第-期において,口蓋幅径
と口蓋表面積は健常対照と同様の値を示し,口蓋
長径はわずかに小さい値を示していた。これは第
二乳臼歯より前方の歯槽部におよぶ手術俊嚢が少
ないことに起因し,ヒ顎歯槽弓形態の観察結果と
同様に考察された。
T群の口蓋幅径は,歯槽弓後方部を除いてN群
より小さい値を示すものの, P群より明らかに大
きな値を示していた。前方の幅径はN群, T群,
P群の順で小さく,歯槽弓後方部幅径ではN群,
T群, P群の順で大きかった。すなわちP群は前
方が狭窄して後方が開大した扇状の変化いわゆる
をきたしている傾向が強く認
められていたのに対し, T群ではこの傾向は
深さは,手術の皮嚢のため,一般に健常対照と比
べて浅く平坦であるといわれている 。本研究
におけるT群第一期の口蓋高径および口蓋断面積
は,明らかにN群と比較して大きかった。この時
期における末手術口蓋裂児の目蓋深度は,健常対
照と比べて大きいといわれていることから こ
の結果は硬口蓋部に残達する破裂が関与したと考
えられる。
第二期および第三期におけるT群の口蓋前方部
は, N群より明らかに大きく,後方部は小さい値
を示していた。前方部が前述した健常対照より深
い口蓋を示していたのは, 4歳6ヵ月まで残遺し
ていた硬口蓋の破裂に起因していると思われる。
健常児の硬口蓋最深点は乳歯列期から混合歯列
期にかけ,後方に移動して硬口蓋前方部は相対的
に浅くなり,第二乳臼歯部から後方の硬目蓋後方
部では,深くなるように発育し,経時的に変化す
るといわれている 。その理由として,健常児
では混合歯列期前期で,永久切歯萌出を受けて口
蓋が膨隆し,口蓋前方部での高径が減少するとい
われている。口唇顎口蓋裂児においては,一般に
健常児より永久歯萌出が遅れるとの報吾もあ
り 乳犬歯部口蓋高径の形態と関係も推察され
109-
1010
本橋,他:二段階口蓋形成術施行CI.P児の成長発育
た。また口唇口蓋裂児の口蓋後方部では口蓋正中
で左右の口蓋弁を縫合するのに際し,破裂が大き
いと結果的に口蓋が浅くなるように結合されるの
で,それが起薗していることも考えられる。一期
的に口蓋破裂を閉鎖するP群ではT群と比べて有
意に浅いので,この傾向がさらに強いものと推測
される。
舌は本来口腔の中央に収まるべきであるので,
口蓋前方部において容積が大きい二段階口蓋形成
術群の方が粘膜骨膜弁法口蓋後方移動術と比べて
口腔機能ことに唄噛,構音の機能の点からも有利
と考えられる。さらに下顎前歯歯槽部を押す舌圧
が小さいことが予測され,ひいては良好な被蓋関
係をもたらしうるものと思われた。
3)成長率
縦断的に口蓋の各種計測を行うことができた20
例の第二期成長率および全期間成長率を求めたと
ころ,硬口蓋形成術後の第二期成長率は,手術の
影響を受け,ほとんどの項目が負の成長を示して
いたO しかし全期間成長率においては口蓋幅径,
口蓋長径は増加を示していた。
健常児の場合,上顎歯槽弓および口蓋は1歳ま
で急激に成長し,その後6-7歳頃まで発育速度
は著しく減じる その後12歳から17歳にかけて
再び成長発育を示すといわれている51'。 -方,冒
唇顎口蓋裂患者においては, 8歳から12歳以降前
後的な成長が乏しいという報吾がある 。本研
究のT群は旺盛とはいえないまでも,硬口蓋形成
前方の歯槽部に及ぶ手術俊嚢が口蓋の成長期に回
避されるので, P群と比べて
の程度は軽く,歯槽形態が損なわれることが少な
いことが,明らかとなった。その結果,良好な唆
合と大きくて深い口蓋を示していた。したがっ
て,二段階口蓋形成術では手術による顎発育抑制
は少なく,顎発育よりみた本手術法の有用性が示
唆された。
またT群の第一期における口蓋幅径および口蓋
表面積は,口唇形成術と軟口蓋形成術を受けてい
るにもかかわらず, N群と比べてほぼ等しい値を
示していた。口蓋長径においてはN群と比べて短
いものの,その成長パターンは, N群とほぼ類似
していた。これは ら46)が説いているごと
く口唇顎口蓋裂患児の潜在的に有している顎発育
能は,本手術によっても阻害されることが少な
かったためと考えられた。
結 論
二段階口蓋形成術を施行した片側完全口唇顎口
蓋裂児(T君羊)における上顎歯槽弓と口蓋の成長発
育を明らかにするため,硬口蓋形成術産前から動
的歯科矯正治療開始前にいたる3時期において石
膏模型の観察と三次元計測システムを用いて計測
を行った。さらに,健常児(N群)および粘膜骨膜
弁法口蓋後方移動術による一朗的口蓋形成術施行
患児(P群)のそれと比較検討を行い,以下の結巣
を得た。
術後においても歯槽弓と口蓋の成長発育が認めら
れた。今後は,二段階口蓋形成術後の
の傾向がどこまで認められるか,また二
1. T群の上顎歯槽弓は,経時的に形態の変化は
次的な顎矯正外科手術が必要でないような良好な
少なく,良好な歯槽弓が維持されていた。第三
期では接触型と遊離型を合わせて80%を占めてい
たが,逆にP群では重複型が82%を示していた。
顎発育が得られるかどうか,側貌頭部エックス線
塊格写貢分析を含めてさらに追跡調査すべきであ
ると考えている。
2. T群では,すべての時期において,切歯のみ
反対唆合のタイプが最も多く観察された。 P群
では,切歯部に加えて にも反
4 )二段階口蓋形成術施行群の粘膜骨膜弁後方移
動術群および健常児との比較
石膏模型の観察結果と三次元計測システムによ
対唆合を示したタイプが最も多く観察された。
3.口蓋幅径は,第三期において第二乳臼歯部よ
り前方の口蓋でN群が最も大きく, T群, P群
の順であった。歯槽弓後方部では,その順位が
る形態分析結果からT群とP群との比較を要約す
ると, T群では幼児期における第一乳臼歯部より
運転し, P群, T群, N群の服であった。 T群
110-
歯科学報
ilXilil
文 献
1)高橋庄二郎:口唇裂・口蓋裂の基礎と臨床,第1版
(高橋庄二郎著 日本歯科評論社,東京,
の乳犬歯間口蓋幅径では経時的に変化を示さな
かった。
4.口蓋長径は,すべての時期において, T群は
N群より小さかったが,発育パターンに関して
は健常児と同様であった。
1996.
∴
Tts Surgery, Ⅲ Alveolar and Palatal Deformities,
(Millard, D. R. ed.), 167-587, Little Brown and
Company, Boston, 1980.
3) Van Demark, D. R., Ilotz, M. M. and Nuss-
5.口蓋高径は,第--期でT群はN群より大き
かった。第二期および第三期の乳犬歯部では,
baumer, H. : Long-term speech results of the
Zurich two stage palate repair evaluated by the
T群がN群より大きく,臼歯部ではT群がN群
より小さかった。
6.口蓋表面積は,第一期でT群はN群と比べて
相違はみられなかった。第二期および第三期で
は, T群はN群より小さかった。
7.口蓋断面積は,すべての時期においてT群は
N群より乳犬歯部で大きく,逆に臼歯部で小さ
かった。
Iowa pressure articulation test. Plast Reconstr
Surg,83 : 426-428, 1989.
4) Ross, R. B. : Treatment variables affecting
facial growth in complete unilateral cleft lip and
palate. Cleft Palate J, 24 : 5-77, 1987.
5) Shaw, W. C" Asher-McDade, C., Brattstrom,
V., Dahl, E., McWilliam, J., Molsted, K., Plint,
D. A., Prahl-Andersen, B., Semb, G. andRalph,
P. S. : A six-center international study of treatment outcome in patients with clefts of the lip
8. T群はP群と比べ,大きくて深い口蓋を示し
ていた。
and palate. Cleft Palate J, 29 : 313-418, 1992.
9.硬口蓋形成術施行後においても, T群の歯槽
弓と口蓋は,成長発育が認められた。
10.二段階口蓋形成術施行患児の歯槽弓と口蓋の
成長発育は,健常児とはやや異なるものの, 8
歳6ヵ月の動的歯科矯正治療前においては,千
術による発育抑制は少なかった。
6)富樫洋介,大橋 靖,中野 久,小野和宏,神威
庸二:歯槽模型分析による検討.唇顎口蓋裂患児の顎
発育に関する研究一各種治療法の比較.平成6年度科
学研究費補助金(総合研究A)研究結果報吾書
29, 1995.
7)中野洋子:チューリッヒ大学における廃顎口蓋裂の
一貫治療について.臼歯評論
8) Hotz ,M. M. and Gnoinski, W. M. :Comprehensive care of cleft lip and palate children at
Zurich university a preliminary report・ Am J
Orthod, 70 : 481-504, 1976.
謝 辞
9) Hotz, M. M. and Gnoinski, W. M.. : Effectsof
稿を終えるに臨み,本研究課題を与えられ御指導を
賜わりました故重松知寛教授に深甚なる感謝の意を捧
げます.また本研究の遂行にあたり,資料採取にご協
力頂いた歯科矯正学講座一色泰成教授,小児歯科学講
座薬師寺 仁教授および両講座の諸先生方,計測に関
して御協力凄いた東京歯科大学口腔科学研究センター
岡野 繁氏,統計処理に関して御助言頂いた数学教室
菅野隆三教授に深謝するとともに,口腔外科学第二講
座教室貢各位に謝意を表します。
early maxillary orthopaedics in coordination
with delayed surgery for cleft lip and palate・ J
Maxillofac Sure, 7 : 201-210, 1979.
10) Hotz, M. M, Gnoinski, W. M. and Perko, M・
A : The Zurich Approach, 1964 to 1984・ Eary
treatment of Cleft Lip and Palate, (Hotz, M・
Mっ
Haubensak, R. ed.), 42-48, Hans Huber Publishers, Toronto, 1986.
ll) Perko, M. A. : TwoIStage Closure of cleft palate
(progress report). J Maxillofac Sure, 7 : 7680, 1979.
本研究の要旨は,第20回日本口蓋裂学会総会 年
6月,盛岡),第21回冒本口蓋裂学会総会 年7月,
東京),第14回
年4月
第54回日本口腔科学会総会 年5月,東京)
において発表した。
12) Fara, M. and Brousilova, M : Experiences with
early closure of velum and later closure of hard
palate・ Plast Reconstr Sure, 44 : 134-141, 1969・
13) Bardach, J., Morris, H. L., 01in, WI H・ : Late
results of prlmary Veloplasty the Marburg Projee主 ・ ト
14)小枝弘実:二段階口蓋形成術を施行した唇顎口蓋裂
児の言語成績 特に鼻咽腔閉鎖機能について.冒口蓋
-111-
本橋,他:二段階口蓋形成術施行CLP児の成長発育
1012
裂会誌
15)凌辺 一,重松知寛,内山健忘:二段階口蓋形成術
施行患児のⅩ線テレビシステムによる構音器官動態の
解析.目口蓋裂会誌
16)福原信玄,大橋靖:片側性唇顎口蓋裂患児の新生児
から7歳までの顎発育に関する研究 床二段階
手術例と健常児の比較一.目口腔科会誌, 45 :
239, 1996.
17)神成庸二,大橋堵:両側性唇顎口蓋裂児の顎発育に
関する研究 床併用二段階口蓋形成術例につい
て,目口腔科会誌, 43:
18)吉岡弘達 システムによる治療をおこなっ
た唇顎口蓋裂児の上顎歯槽弓および口蓋の成長発育に
関する研究.冒口蓋裂会誌
19) Wada. T, Tachimura. T, Satoh. K, Hara. H,
Hatano. M, Sayan. N. B and Tatsuta. U : Maxil
31)佐藤菖史:乳歯列完成期の唇・顎・口蓋裂児の上下
顎歯列形態および唆合状態に関する研究.小児歯誌,
25 : 119-141, 1987.
32)新庄信之,滝沢良之,柴崎好伸,福原達郎:片側性
唇顎口蓋裂患者における口腔形態の検討.昭歯会誌,
11 : 242-254, 1991.
33)田辺晴康:等高線図法による未手術口蓋裂患者の口
蓋発育ならびに歯牙異常に関する研究.歯科学報,
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35) Berkowitz・ S : Multidisciplinary management
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complete (Unilateral and Bilateral) clefts of the
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学歯科病院矯正科における開設以来過去3年の口蓋裂
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25)重松知寛言月山健忘 小枝弘実:口蓋裂の一次手
術.歯科学報
26)阿部本晴:口唇形成術後における上顎歯列弓の経時
的変化に関する研究 片側性口唇裂について. E]口腔
外会誌
27)麻生呂邦:片側性完全唇顎口蓋裂患者の術後の上顎
歯槽弓の経時的観察.目口腔外会誌
1996.
37)新井-仁,石川晴夫:非接触三次元形状計測シス
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39) Barrow, G・ V. and White, J. R. : Developmental changes of the maxillary and mandibula_r
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40)神山紀久男,新里正武:口蓋裂患者の蘭蝕確患に関
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41)大矢卓志,冨井恭子 山田尋士:口唇裂口蓋裂を有
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と歯数異常の発項強度,日日蓋裂会誌
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42)河田耕治,吉田幸子:片側性唇顎口蓋裂患者におけ
る形成術後の上顎歯槽形態及び歯の位置に関する研究
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察.四回医誌
43) Ricketts, R. M : Oral orthopedics for the cleft
28) Huddart, A. G., MacCauley, F. J., Davis, M.
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44)河野紀美子,鎗木 陰,産辺美恵子,近藤由紀子,
向井陽:口唇裂口蓋裂患者の矯正受診と唆合の実態一
九州大学歯学部付属病院矯正科における1 9年間の統計
1.日口蓋裂会誌
45)薬師寺登:口蓋裂手術法と上顎骨歯槽部の成長発育
に関する臨床的研究,日口蓋裂会誌
1986.
30)玄番涼一,小松世潮:唇・顎・口蓋裂患者の歯列・
口蓋形態に関する研究 口蓋弁後方移動術後の歯列・
口蓋形態の特徴.日日蓋裂会誌
-112
46) Enlow, D・ H・, Havold, E・ P., IJatham, R. A.,
Moffect, BI C" Christiansen, R. L and Hausch,
H. G. : Research on control of craniofacial
歯科学報
100, No. 10 (2000)
An NH) 仁Alつ\\
1013
birth to 25year・S, Am J Orthod, 50 : 824-841,
shop, Am J Orthod, 71 : 509-530, 1977.
1964.
47)上石 弘:口蓋粘膜法における早期型と晩期型の歯
槽弓の変化,形成外科, 38:
48)草地淳次:モアレ縞による乳歯列期日蓋形態の成長
発育に関する研究,歯学
49)堀川早番:同一小児における側方歯群の歯列,歯槽
部,口蓋の成長発育に関する累年的研究一乳歯列期か
ら永久歯列期まで一,歯科学報
1992.
51)浅井安彦:日本人顎・顔面頭蓋の成長--頭部Ⅹ線規
格写貢法による12歳から20歳までの縦断的研究,冒矯
歯会誌
52)林 勲:片側性完全唇・顎・口蓋裂者の顎・顔面頭
蓋の成長 頭部Ⅹ線頬格写真法による研究.日矯歯会
誌, 34:
53)貢鍋 均:口唇,口蓋裂患児の経年的顎顔面頭蓋発
育 側方頭部Ⅹ線規格写貢による検討.日口蓋裂会
誌
50) J. H. Shillman, M. A. : Dimentional changes
of the dental arches : Longitudinal study from
The MorphologlCal Study of the Growth and I)evelopment of Pala・te in
Unilateral Cleft Lip and Palate Children Undergolng TwoIStage Palatoplasty
人 主\ つ \MA
The Second Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Tokyo Dental College
(Chairman : Prof. Takeshi Uchiyama)
Key woT・ds I Unuateral Cleft Lip and Palate, Two-stage Palatoplasty, Growth of Palate,
AIueolar arch from, Three DiTnenSional Analysis
つ 柑Is
technique have been used in our clinic for complete unilateral cleft lip and palate (UCLP) child
ren. It has been suggested that the treatment is useful for good maxilla growth, but there have
been few studies on the long-term results of the method. The aim of this paper was to evaluate
the maxillofacial morphology of the UCLP children who underwent twoIStage Palatoplasty ln
our clinic.
The plaster models were taken before hard palate closure (phase 1), 19 months after hard
palate closure (phase 2) and before orthodontic treatment (Phase 3) in 44 children (T group)
with complete UCLPI Three arch form groups and 6 0cclusion groups were classified using
those models.
Moreover, three dimensional measurement of the palate was performed by a laser digitizer
and computer system. The data were compared those obtained from 15 normal children (N
group) and ll complete UCLP children undergoing one-stage palatoplasty (P group)・ The
growth and development pattern of palate in the T group were different from those of the N
group・ However, the T group had a good relationship of maxilla and mandible and good dental
っ
that twoIStage palatoplasty was useful for maxilla growth.
(The Shihwa Gahuho, 100 : 993-1013, 2000)
-I 113-I-