科学と技術「サイエンスカフェ」を用いた授業効果

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Title
科学と技術「サイエンスカフェ」を用いた授業効果
Author(s)
吉川, 裕之; 吉田, 隆
Citation
吉川裕之ほか: 研究紀要(奈良女子大学附属中等教育学校), 2010, 第
51集, pp. 82-88
Issue Date
2011-03-31
Description
URL
http://hdl.handle.net/10935/2682
Textversion
publisher
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奈 良女子 大 学 附属 中等 教育 学校 研 究 紀要 第51集(2011年3月)
科 学 と技 術rサ
イ エ ンス カ フ ェ」 を用 い た授 業 効 果
吉川
1.は
裕 之 、吉 田
隆
じめ に
平 成17年
度 よ りス ー パ ー サ イ エ ン スハ イ ス クール の 指 定 を受 け 、学 校 全 体 の カ リキ ュ ラ ム 開発 を
行 う中 で 、4学 年(高 校1年 生 に あ た る)に 、平 成19年 度 か ら学 校 設 定 科 目 「
科 学 と技 術 」 を設 置 し
た。 こ の科 目は 、時 代 が要 求 す る新 しい 能 力 と して の 「
生 活 科 学 リテ ラ シー 」(市 民 が 日常 生 活 にお い
て様 々 な事 柄 を科 学 的 に判 断 で き る知 識 と素養)を 育 成 す るカ リキ ュ ラム を 目標 とす る も の で あ り、
科 学 と技 術 との 関係 につ い て 理 解 を深 め る と と も に、 生 活 科 学 リテ ラ シ ー を21世 紀 の 「
も のづ く り」
に必 要 な基 本 的 能 力 と して 育 成 して い く こ とを ね らい と して い る。 授 業 カ リキ ュ ラム で は最 先 端 のテ
ク ノ ロ ジー が どの よ うな し くみ で で き て い るか を、 科 学 技 術 の歴 史 を踏 ま えな が ら、 体 験 的 な学 習 と
理 論 的 な学 習 を組 み 合 わ せ て 学 習 で き る よ うに構 成 した 。
カ リキ ュ ラ ム 開発 の 一 つ の 成 果 と して サ イ エ ンス カ フ ェ の授 業 化 が挙 げ られ る。 イ ギ リス で始 ま っ
た と され る サ イ エ ンス カ フ ェ が、 日本 で も行 われ る よ うに な っ て き た。 講 演 会 で はな く、 科 学 者 と気
軽 に語 り合 う手 法 を、授 業 と して実 施 す る 取 り組 み は、 科 学 技 術 の最 先 端 を理解 し、 教 材 と社 会 との
接 点 を探 る有 効 な 手 段 で あ る こ とが 明 らか に な っ て きた 。 公 開研 究 会 で の サ イ エ ンス カ フ ェ の様 子 か
らそ の授 業 効 果 を検 証 す る。
2.サ
イ エ ン ス カ フ ェ へ の 取 り組 み と 題 材 の 設 定
「
サ イ エ ン ス カ フ ェ」 と は、 演 台 の 上 か ら講 演 者 が 一 方 的 に話 をす るの で は な く、 講 演 者(ゲ ス ト
と呼 ぶ)と 参 加 者 が飲 み 物 な どを飲 み な が ら、 同 じフ ロア で気 軽 に語 り合 う場 で あ る。 「
科 学 と技 術 」
の 中 で も新 しい科 学 ・技 術 へ の ア プ ロー チ と して 、 サ イ エ ン ス カ フ ェ を 取 り入 れ た 。 サ イ エ ン ス カ フ
ェ で は 、 ゲ ス トと参 加 す る生 徒 との距 離 が近 く、 生 徒 が 疑 問や 自 らの意 見 を発 言 しや す い 。 全 て の参
加 者 が 、テ ー マ とな る理 論 や 技 術 につ い て発 信 者 とな り、 そ の空 間 を創 っ て い く。 サ イ エ ン ス カ フ ェ
の取 り組 み は 、 単 な る特 別 授 業 で は な い。 指 導者 は 仕 掛 け を行 い 、 生徒 の 自主性 の 中で 運 営 を促 す 。
テ ー マ を決 め る話 し合 い を生 徒 が持 ち 、 ゲ ス トと打 ち合 わせ を し、会 場 を 準備 しな が ら当 日の進 行 を
行 う。 そ の た め 、 生 徒 に も 「
主 体 的 に参 加 した 」 とい う意 識 を強 烈 に残 す こ とが 可 能 で あ る。
サ イ エ ン ス カ フ ェ を授 業 化 す る 中 で 、授 業 と して の 連 続 性 ・継 続 性 は サ イ エ ンス カ フ ェ を カ リキ ュ
ラ ム の 中 に位 置 づ け る上 で 重 要 で あ る。 科 学 と技 術 で は 皿期 に代 替 エ ネ ル ギ ー 、 特 に風 力 発 電 と太 陽
光 発 電 へ の カ リキ ュ ラム を設 定 して い る。 持 続 可 能 な 代 替 エ ネ ル ギー の必 要性 は 明 らか で あ り、 これ
か ら科 学 技 術 に 関 わ りを持 っ て生 き て い く生徒 に と って 、 エ ネ ル ギー 問題 は避 けて 通 れ な い課 題 で あ
る。 代 替 エ ネ ル ギ ー と して 、 現 在 期 待 され て い る太 陽 光 発 電 、 風 力 発 電 に つ い て 、 も のづ く りか ら理
論 理 解 とい う科 目の コ ンセ プ トを生 か し、太 陽 電 池 の 製 作 、 風 力 発 電 機 の分 解 ・組 み 立 て を授 業 で行
っ てい る。 太 陽 光発 電 と して 生 徒 がイ メ ー ジす るの は、 校 舎 や 家 屋 の屋 根 に 取 り付 け られ て い る タイ
プ の も の で あ る。 しか し、 こ う した シ リ コ ンパ ネ ル 以 外 で も現 在 様 々 な太 陽 電 池 の研 究 が 行 われ て い
る。 太 陽光 発 電 の 一 形 態 と して、 生 徒 が 実 際 に製 作 で き る色 素 増 感 型 の太 陽 電 池 を製 作 し、 よ り理 解
一82一
を深 め て い くカ リキ ュ ラム を考 案 した。 そ の 中 で 、 シ リコ ンパ ネ ル との違 い や 現 在 の研 究 、今 後 の見
通 しな どを もっ と専 門 的 に研 究 者 か ら聞 き 取 る機 会 を準備 す る こ とを考 え た。 この 新 科 目で は 、 高度
に発 展 した科 学 や 技 術 を、 一 部 の専 門家 だ け に任 せ て お け る状 況 で は な くな っ て い る とい う問題 意 識
を生 徒 に持 たせ よ うと して い る。 消 費 者 が製 品 を よ く理 解 し 「
賢 い 消費 者 」 に な る とい っ た個 人 的 な
レベ ル の 問題 だ け で は な く、 地 球 規 模 の環 境 問題 を も意 識 した 社 会 的 な レベ ル の 問 題 に対 す る判 断力
が求 め られ る。書 物 や 映 像 か らの調 べ 学 習 に終 わ る の で は な く、問 題 の核 心 に迫 るた め には 、 「
サイ エ
ン スカ フ ェ 」 とい う授 業 ス タイ ル が適 当 で あ る と考 えた 。 今 後 、生 徒 は サ イ エ ンス カ フ ェ で得 た知 識
や 刺 激 を元 に 、色 素 増感 型 の 太 陽 電 池 を製 作 す るカ リキ ュ ラ ムへ と進 め て い き 、 実 感 を持 っ た代 替 エ
ネ ル ギー 授 業 を 達成 して い く。
3.サ
イ エ ン ス カ フ エの 展 開
(1)テ ー マ
サ イ エ ン ス カ フ ェ∼新 しい 太 陽 電 池 が未 来 を拓 く∼
(2)科 目名(ク
ラス)、 授 業 者
(3)ゲス ト
「
科 学 と技 術 」(4年 選 択 生)、 吉 川 裕 之
佐 川 尚(京 都 大学 准 教授)
(4)授業 の展 開
0.会 場 セ ッテ ィ ン グ、 ゲ ス トとの 打 ち 合 わ せ
放 射 状 に 並 べ た 机 の配 置 や プ ロジ ェ ク ター ・パ ソ コ ン とい っ た機 器 類 、 和 や か な雰 囲気 作
りの た め の飲 み物 の 準備 な どを生 徒 が行 う。 事 前 の メー ル で のや り取 りか ら、 司会 担 当生 徒
は ゲ ス トと流 れ の 打 ち合 わ せ を行 う。
1.ゲ ス ト紹 介
司会 の 生徒 か ら、 本 日の流 れ の確 認 とゲ ス トの 紹 介 を行 う。
2ゲ
ス トか らの 講 演(50分)一
太 陽 光発 電 の実 情 か ら、 新 た な太 陽電 池 と し
て 有 機 薄 膜 太 陽電 池(色 素 増 管 型 太 陽 電池)の
今 後 の利 用 の 可能 性 を、環 境 問題 に も話 を広 げ
な が ら専 門家 の 立 場 か ら語 って い た だ い た。ま
た 、一 般 的 な メ リ ッ トとい っ た話 題 だ けで はな
く、 「
科 学 と技 術 」 選 択 生 に 向 け た セ ル 構 造 や
電 流 密 度 と電 圧 の 関係 か らみ る性 能 評 価 とい
っ た理 論 的 な話 題 に も触 れ て い た だ い た。
3.テ ー ブ ル トー ク(30分)
ゲ ス トか ら2つ のテ ー マ を 与 え られ 、 テ ー ブル ご と に話 し合 っ た。 テ ー ブ ル に着 い た授 業
選 択 生 徒 と公 開研 究 会 の 参 加 者 は 自己紹 介 か らス ター トし、 それ ぞれ に 意 見 を 出 し合 い、参
加 者 や ゲ ス トと意 見 を交 換 した 。
4.全 体 の ま と め(10分)
5.会 場 の 片 付 け
(5)講 演 内容
● 太陽か らのエネルギー
● 太陽エネルギーは膨大!
-83一
●
どの くらいの太 陽 電池 が あれ ば よいの か?
●
太 陽電 池 は 「電池 」で は な い?_一
●2030年
紳
に 向 けた太 陽光 発 電の 目指 す姿
●
いろ い ろな太 陽電 池
●
各種 太 陽電 池 の効率 化 の変 遷 と予想 曲 線
●
色素 増 感太 陽 電池 のセ ル構 造 と発 電の しくみ
●
グ レッツ ェル セル世 界 の作 製 の実 際
●
有機 電子 材 料 の活用
●
ぐに ゃ っと曲 が る次 世 代太 陽 電池
●
カ ラ フル で フ レキ シ ブル な太 陽電 池
●
有機 太 陽電 池 の新素 子 構造 の 開発
●
変換 効率10%と
●2050年
●
4.サ
(1)テ
長期 安 定作 動2.6万 時間 以上 は実 現可 能 か?
に 向 けた再 生可 能 エネ ルギーの 普及 予測
世界 の 動 向 と日本 の 目標
イ エ ン ス カ フ ェの 授 業 効 果
ー ブ ル トー ク の 記 録
テ ー ブ ル トー ク と して 設 定 され た40分
時 間 の 配 分 で 、 課 題2と
課 題3に
の 問 に 、ゲ ス トか ら示 され た テ ー マ は 以 下 の3題
で あ っ た。
つ い て は 重 ね 合 わ せ な が ら話 し合 い を 進 め た 。 そ れ ぞ れ の テ ー ブ
ル で 話 し合 わ れ た 記 録 を ま と め て み る 。
【課 題1】CO2(温
室 効 果 ガ ス)の
排 出 削 減 目標25%(2020年
ま で)に
つ い て 、 支 持 す る 理 由 と反
対 す る 理 由 の リ ス トを そ れ ぞ れ 作 っ て み ま し ょ う。
【課 題2】Qlを
【課 題3】
解 決 す る 方 法 の 一 つ と し て 、 新 しい 太 陽 電 池 を ど の よ うに 利 用 す れ ば よ い で す か?
温 室 効 果 ガ ス 削減 の た めの アイ デ ア
1班
【課題1】
〈支持 す る理 由 〉
・対策 で き る国(先 進 国)が や る、2596は や るべ き
・赤 道の 国 では た くさん 発 電で き る
・い た る ところ に設置 す る⇒景 気 が 良 くな る、経 済効 果
く反対 す る理 由 〉
・数字 が い きな り大 きい 、政府 の 補助 の 対象 が車
・車 に乗れ な い と生活 が不 便 にな る
・少 しず つ増 やす べ き
・具 体 的 に ど う しよ うとい うのが な い
・税 金 が上 が るか も
・リサ イ クル で きな い と
・2020年 に向 けて では な くその 先 も見す えて
・政 府が もっ と動 か な い と
【課題2】
宇 宙 に とば して太 陽の 近 くで発 電 、 それ を地球 にお くる(ケ ー ブル 、電 波)
埋 立地 に太 陽 光発 電だ けの場 所⇒ だれ もい ない と ころ、海 の 上
弱 い電 気 で発 電で きるよ うに
シ リコンの リサ イ クル 方法 の研 究
2班
【課題1】
〈支持 す る理 由 〉
・温暖 化 の防 止 、化石 燃料 の枯 渇
・数値 目標 を定め て いる
一84一
・使 用 電 力の増 加 を見 込 む
・他 の 国 も同 じよ うな削減 目標
く反対 す る理 由 〉
・デ フ レ、削減 によ る補 充の不 安
・認 知 度が 低 い
【課題2】
電柱
身近 な もの に導入 ⇒ 国民 に意 識 を
月面
繊維 にす る
乗 り物
山 の斜 面
サ ハ ラ砂 漠
・目標 が高 い
・家 計へ の 負担 増
モデ ル都 市
3班
【課題1】
〈支持 す る理 由 〉
・将来 的 にデ ー タが ある な ら
・身近 な もの に普及 した ら便 利 に なる
・これ か ら用 来の 総電 力量 が増 えるの だか ら今か ら変 えて い こう
く反対 す る理 由 〉
・前 回で きな い 、結 局 で きな い
・ス ペイ ンの 二の 舞
・段階 的 に
・政府 が動 か な い と⇒ 金が な い
・本 当 に地球 が守 れ るの か
【課題2】
太 陽の 当 た る とこ ろす べ て(信 号 、道 路 な ど)自
動車 の 動 力
4班
【課題1】
〈支持 す る理 由 〉
・日本 が 先進 国 と して のす ご さを示せ る
・目標 をお くの は 良い
・削減 は必要
・2596は大 きす ぎる 、 しか し、 多少の 不便 を して 、徐 々 に減 ら して い く
・氷 が解 け続 ける 、削減 しよ う
く反対 す る理 由 〉
・日本 は他 に す る ことが あ る
・目標 が 高 す ぎる
・負 担が 大 きい
・暖か くな るの は良 い、作 物 が よ く取 れ る
・氷 は溶 けな い 、必要 な い
【課題2】
身 の 回 りの もの に付属 させ る。た だ し不便 は い らな い
日本の 地理 をいか して山 につ け る
停 電 して もい い国 に しよ う
他 の発 電 でや って い ける よ うにす る
充電 で きる よ うに しよ う
超 電導
自給 自足
5班
【課題1】
〈支持 す る理 由 〉
・目標 と して は 良い
く反対 す る理 由 〉
・25%と は どの程 度か わか らな い
・生活水 準
・毎 年3%な
・20年 は 短す ぎ る
・全体 を理 解 しな い と行動 で きな い
ど もっ と少な く
【課題3】
ハ イ ブ リ ッ ドカー
節電
物 を大 切 に(ご み を 出 さな い、包 装 しな い)
CMで ど うすれ ば どれ だ け減 るか を宣 伝す る
義務 に しな い とみん な 動か な い
モ デル 都市 を作 ってみ る
6班
【課題1】
〈支持 す る理 由 〉
・南の 島 の水 没
・目に見 え る 目標(数 字 に見 え るの は良 い)・
感 情 ・正 義
・異 常気 象
・伝 染 病(テ ン グ熱)・
農作物
・湿 地帯 、 ヴ ェネチ アや モル ジブの 人 との議 論が 必 要か も
く反対 す る理 由 〉
・経済 問題(失 速)・
大 き いサ イクル の 中で 温暖 化
・太 陽の 黒 点 ・
・国家 戦略
・京都 議定 書 ⇒ 日本 だ け削減
・マニ フ ェス トに載 せ ろ!・
冷 え始 め る
なぜ25%
【課題2】
道路にしく
(2)ア
ン ケ ー ト結 果
サ イ エ ン ス カ フ ェ を 実 施 した 結 果 に っ い て 、 感 想 ・自 己 評 価 と し て ア ン ケ ー ト調 査 を 行 っ た 。
-85一
■
も っと全 体 で話 し合 いた い ■■■■■■1■
■■■■■■
もっ とテー プル トー ク を楽 しみた い
も
、1
っ と講演 を しっか り と聴 きた い ■■■■■圏■■■■■■
リラ ック ス状態 のほ うが 印象 に ・
・■ ■■ ■■i■ ■■■■■■■i■ ■■■
これで は集 中 で きな い1■
一1
一
■
一
■■■■■ ■■■■■■■■1
(3)生 徒 か ら の 聞 き 取 り
サ イ エ ン ス カ フ ェ の 司 会 を 担 当 し た 生 徒 か ら 、 後 日 聞 き 取 り調 査 を 行 っ た 。
Oサ イ エ ンス カ フ ェへ の取 り組 み の 中で特 に 興味 深か った こ とは何か
自主 的 な活動 を求め られ て いた ので 、普 通の 授業 の よ うに受 動 的で はな く、能 動 的 に動 いて い くとい う点 で は、色 々
大 変 な部分 もあ ったが 、面 白 く感 じた 。普段 の生 活 で はあ ま り考 え な いよ うな こ とだが 、実 は生 活 と非常 に密 接 に関 わ
って いて 、生 活 に は絶 対 に必 要 な ものだ と改 め て感 じた。エ ネル ギー とい ったテ ーマ を考 える授 業が4年 生 で は他 には
存在 しな い。 その 点で テー マ が良 か った 。
Oゲ ス トの 先 生 との打 ち合 わせ につ いて感 じた こ とは何か
全 く会 った ことも話 した こと もな い人 と メール のや り取 りを した り、打 ち合 わせ を した りす るの はす ご く緊張 しま し
た 。ま た 、言 葉 づか いな どもす ご く気 に しま した。打 ち合わ せ では進 め て い く上 で重 要 な事 柄 、知 って いて ほ しい こ と
な どを中心 に話 を しま した 。講 師の 先 生 と話 して い く うちに 、自分 は ど うア プ ロー チす る と良 いか 、何 を考 えて進 め れ
ばよ いか を考 えて い ま した 。
0司 会 を して いて 感 じた こ とは何 か
普 段 の授 業 では 決 して聞 けな い最 先 端 の話 を聞 くこ とが で き 、それ が 自分 た ちの 生活 と密接 に関 わ って いて 、 とて も
興味 深 か った 。ま た、 あま り考 えな い よ うな 「自分 た ちの将 来の 生活 に 関わ る エネ ルギ ーの 問題 」 な ども考 え る ことが
で き、広 い視 野 で考 え る ことが で きた。み ん なが ふつ うは興味 が な いか らあん ま り真 剣 に聞か な い だ ろ うとい うよ うな
気 も したが 、雰 囲気 が 良か った ことや 、話が 面 白か ったの で、真 剣 に聞 いて い るな と い うの が感 じられ た。 自分 は話 を
聞 きな が ら要 点 をま とめ 、次 の テー ブル トー ク に ど うつな げ るか とい うこと を意 識 した。な かな か難 しか ったが 良 い経
馬
剣こもな った 。
Oテ ー ブル トー ク につ い ての 印象 は何 か
1回 目の サ イエ ンス カ フ ェの とき 、あま りうま くテー ブル トー ク をす る こ とがで き なか った ので 、 ど うすれ ばよ いか
を真 剣 に考 え た。そ こで 考 えた のは 話 し合 った 内容 を ボー ドに 書 いて それ を提 示 しなが ら話 す とい うこ とだ。そ の よ う
にす る ことで 、よ りみん な にわ か りやす く、また 自分 た ちで も意 見 をま とめ やす くな った な と感 じた。 テー ブル トー ク
は講 演 の 中で提 示 され た問 題 を話 し合 うと い う方 法 を事前 に先生 と打 ち合 わ せ して いた 。先 生か らアイ デア が ほ しい と
い う投 げか けを いただ いた ことが 楽 しか った 。普 段 の生 活 の中 で考 え ない こ とを考 え させ られ る楽 しさ を味 わ え た。そ
れ が非 常 に良か った と思 う。講演 の 中身 を振 り返 りなが ら、 自分 な りの考 え を発 表 し合 うこ とで視 野 も広 げ る こ ともで
一86一
きる し、考えることもできた。発表もボー ドを利用することで、何を話 しているかがわか りやすかった し、なによ り講
師の先生が 自分たち以上に理解 しやす く、スムーズに解答出来た り、コメン トをした りす ることが出来たので大変効果
的だったと思った。
0講 演会との違 いは何か
普通の講演会は自分たちでは用意や打ち合わせ、 どういうテーマで話を していただ くか等 を話す こともできない し、
あんなに和やかに聞 くことも、疑問に思 っても質問をする こともで きないだろう。それに対 してサイエンスカフェは気
軽に講師と話をすることができるし、他の参加者 とも意見の交換や、ち ょっとした疑問についてもお互いに話 をするこ
とができる。なにより人 と人の距離が近いのでいろいろな ことができる。そ ういうことで講演会よ りも印象に残 りやす
いし、気軽に参加 しやすい。この点が違いとしてあげられ るだろうと思 う。
(4)テ ー ブル トー クの 効 果
筆 者 が経 験 して きた 企 業 や 大 学 が主 催 す るサ イ エ ンス カ フ ェ で は 、講 師 か らの 講 演 が あ り、会 場 か
ら講 師 に質 疑 応 答 が あ る とい っ た ス タ イル が 多 か っ た 。 コー ヒー な どを飲 み な が ら とい う点 で は通 常
の講 演 会 と違 い 、 雰 囲 気 は和 や か で あ り、講 演者 も同 じフ ロ ア で質 問 しや す い 雰 囲 気 作 りが行 われ て
い た。 しか しサ イ エ ンス カ フ ェ は単 に 「
気 軽 な講 演 会 」 で は な い。 筆 者 が この サ イ エ ン ス カ フ ェ とい
うス タイ ル の提 案 を受 けた 時 に、授 業 化研 究 へ と進 め た理 由 は 、「
科 学 につ い て語 り合 う場 の 提 供 」 こ
とこそ が大 切 で あ る と点 で あ っ た。 それ は 、 「
講 演 をす る者 」 「
講 演 を聴 く者 」 の 垣 根 を取 り払 う こ と
は も ち ろ ん の こ と、 「
講 演 を聴 く者 」 同 士 が科 学 ・技 術 をテ ー マ に コ ミュ ニ ケ ー シ ョン を行 う こ とが 、
サイエ ンスカフェの 「
カ フ ェ」 で あ る意 味 で あ る。 講 師 か ら新 た な知 識 を 学 ぶ の で は な く、 ゲ ス トか
らの新 た に得 た 知識 を、 そ れ ぞ れ の参 加 者 が これ ま で 培 っ て き た知 識 や 経 験 か ら語 り合 い 、新 た な疑
問や 提 案 を他 の参 加 者 や ゲ ス トとぶ つ け あ い な が ら、 理 解 を深 め 、語 り合 うこ と を楽 しむ こ とが大 切
で あ る。 知 識 の 一 方 的 な伝 達 で は 、生 徒 は流 れ 込 ん で くる知 識 を理 解 し よ うとす る。 授 業 で行 う講 演
会 で あれ ば 、 な お さ ら 「
講 演 内容 を理 解 す る」 こ と を求 め られ る雰 囲気 とな る。 理 解 で き な か っ た こ
とに対 す る質 問 、 よ り深 め よ う とす る質 問 は あ っ て も、 自信 の意 見 を気 軽 に語 り し、 参 加 者 に 同意 を
求 め た り、 あ るい は 議 論 した り、 講 演 内容 に 対す る評 価 を述 べ る こ とは な い。 話題 提 供 を終 え た ゲ ス
トがテ ー ブル を 回 り、 話題 とな っ た課 題 に コメ ン トした り、 質 問 に答 え る この サ イ エ ン ス カ フ ェ ス タ
イ ル で は それ らが 達 成 され の で あ る。
本 校 で実 施 す るサ イ エ ンス カ フ ェ は 、講 演 を話 題 提 供 と した 語 り合 い が サ イ エ ンス カ フ ェ授 業 化 の
根 幹 を な して い る。 生 徒 に はそ の趣 旨を何 度 も事 前 に告 げ、 参 加 者 の方 々や 講 演 をい た だ くゲ ス トの
先 生 と、講 演 に つ い て 、 何 で も気 軽 に話 して よい と指 導 し、 ア ン ケー トや 聞 き 取 りの 結 果 、そ の趣 旨
を理 解 し、 さ らに 自主 的 にカ フ ェ を 工夫 しな が ら運 営 して い こ う とす る姿勢 が 育成 され て い る こ とが
伺 え る。 太 陽電 池 にっ い て 、 一 般 的 な知 識 しか持 た な い 生 徒 の何 気 な い 質 問 は 、研 究 者 に とっ て 、 自
分 の研 究 を 高校 生 が ど う捉 え る か を直 に 聞 き 取 る こ とが で き る機 会 とな り、 お 互 い が 刺 激 で き る こ と
もサ イ エ ン ス カ フ ェの 意 義 で あ る。 極 論 で は研 究者 か らの講 演 を 聞 い て 、研 究 の 必 要 性 を感 じな か っ
た とき に 、率 直 に 「
そ ん な 研 究 必 要 です か?」 とゲ ス トにぶ つ け て み て 、研 究者 が ど う答 え る か 聞 い
てみ られ る の が サ イ エ ンス カ フ ェ の よい と ころ だ と指 導 し、 実 際 に通 常 の講 演 会 で は先 生 に対 して失
礼 とも取 れ る質 問 を気 軽 にゲ ス トにぶ つ け 、 そ こか ら考 え よ う とす る 姿 が 見 られ た 。
-87一
5.成
果 と課題
か
誠 凝 難 学;濯
ク で は ブ レイ ンス トー ミン グ の よ うに 、 多
馬
Σ㍉ 四 麺 ず 崎
昌
♂
奮L
、
」
総 懇 欝 轟 こ
ピ 酒レ 、
積 極 的 に発 言 し、 ま た 参加 者 の意 見 を 聞 く
∵1慰 灘 蕪 \∼燈
商蹟 嫁
問 を大 切 に した い 姿 勢 が ア ン ケー トか らは伺 え た 。
本 授 業 に参 加 した 向 山玉 雄 は 次 の よ うに この授 業 を評 して い る。 「
授 業 で の サ イ エ ン ス カ フ ェ の印
象 はず いぶ ん違 っ た 。 先 ず 良 く計 画 され て い て 、 生 徒 の 活 動 を 中心 と して講 師 の研 究 者 と参 加 者 の参
加 が有 機 的 で適 切 に考 え られ てい た。 コー ヒーの 代 わ りに ジ ュース類 とお 菓子 だ っ た が 、 そ のせ い ば か
り とは と も思 え な い が 、 雰 囲 気 は柔 らか で 、適 度 の 緊 張 感 で 生 徒 が 自然 体 で 学 習 す る姿 が 見 られ た。
問題 意 識 が 高 く事 前 学 習 が 適 切 だ っ た の だ ろ う、 講 演 の 話 も容 易 に理 解 して い る様 子 が 実 感 され た。
太 陽 光 発 電 の よ うな 最 先 端 の 科 学 技 術 を理 解 す る と共 に社 会 的 問題 や 環 境 問題 もか な りの レベ ル で理
解 した こ とが想 像 で きた 。 授 業 担 当 の先 生 に よ る授 業 とはい ろ い ろ な と こ ろで 差 が 出 るだ ろ う こ とを
実 感 した。 生徒 た ちは 科 学 技 術 の何 を学 ぶ か 、誰 を呼 ぶ か か ら計 画 を 立 て 、授 業 の 組 み 立 て ま で 実施
してい く過 程 の参 加 体 験 も大 き な効 果 を発 揮 した の で は ない か と感 じた。」(向 山 玉 雄 「
科 学 と技 術 の
授 業 を 『サ イ エ ンス カ フ ェ』 で」 技 術 教 室2010.6)
授 業 と して の サ イ エ ンス カ フ ェ にお い て 、講 演者 と生 徒 の 双 方 向 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョン だ け で は な
く、 参 加 者 同 士 の サ イ エ ンス コ ミュ ニ ケ ー シ ョン を効 果 的 に深 め る た め に は 、 ゲ ス トの他 に も多 種 多
様 な参 加 者 が求 め られ る。 本 校 で も様 々 な授 業 で 、 生 徒 同士 が 話 し合 う場 面 を設 定 して い る が 、公 開
研 究 会 で の カ フ ェ の 実 施 はそ の点 で絶 大 な効 果 が 得 られ て い る と考 え る。 そ して 、 様 々 な背 景 を持 つ
者 か らの意 見 を ぶ つ け合 った 中 で 、新 しい技 術 に対 して 自分 の意 見 を持 っ こ とが 、 これ か らを生 き る
生 徒 に とっ て 、 現代 社 会 が 抱 え る課 題 に 向 き合 う姿 勢 とな る。 啓 蒙 型 の 学 習 ス タイ ル の限 界 、 サ イエ
ン ス ス カ フ ェ の ス タイ ル が 、 中等 教 育 段 階 の 学 習 カ リキ ュ ラ ム と して効 果 的 で あ る こ とは 明 らか に な
りつ つ あ る。 サ イ エ ンス カ フ ェ を新 しい学 び の ス タイ ル と して の定 着 に 向 けて 、今 後 は特 にサ イエ ン
ス コ ミュ ニ ケ ー シ ョン に よ る科 学 と技 術 の あ り方 へ の 意 識 変 化 、 問題 全 体 の 理解 達 成 度 の検 証 を繰 り
返 し、 生 徒 に考 え る場 を与 え続 け る こ とが重 要 で あ る。
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