アリルクロライド

ケミカルプロフィル
アリルクロライド
(Allyl chloride)
化審法
C A S
消防法
別 名
溶解度:水への溶解度 0.36wt%。ほとんどの
(既)2―123
107―05―1
危険物第 4 類第 1 石油類非水溶性液体
塩化アリル,3―クロロプロペン
有機溶剤に溶解する。
蒸気密度:空気 1 に対し 2.6
"
CH2=CH・CH2Cl
C3H5Cl;分子量:76.53
!
概
性
急性毒性:
要
アリルクロライドは,分子内に二重結合と塩素
をもち,反応性に富んだ化合物である。
毒
経口,ラット,LD50
700mg/kg
経口,ラット,LD50
460mg/kg(RTECS)
眼,鼻などの粘膜を刺激する。吸収を繰り返す
と胃腸および肝臓障害を起こす。
〈一般物性〉
性
状:ニンニク臭の無色透明液体
比
重:0.9382
沸
点:44.96℃
#
製
法
予熱したプロピレンに塩素を,プロピレン過剰
で約 500℃ で反応させる。冷却後液化したアリル
蒸気圧:39.3kPa(20℃)
,53.3kPa(30℃)
クロライドを蒸留生成する(図 1)
。なお 1,
3―ジ
凝固点:−134.5℃
クロロプロペンなどが副生する。
粘
度:0.336mPa・s(20℃ 液)
比
熱:1.63J/℃(30℃ 液)
20
D
屈折率:n
1.4160
$
生
産
昭和電工が生産をやめたため,現在のメーカー
表面張力:25mN/m(20℃)
はダイソー,鹿島ケミカル,
住友化学工業の 3 社。
蒸発潜熱:381J/g
エピクロルヒドリンへの自消分が大部分で,生産
燃焼熱:1845kJ/mol
引火点:−31.7℃
発火点:293℃
爆発限界:2.9∼11.2vol%
78
CH3・CH=CH2 + Cl2 !" CH2=CH・CH2Cl + HCl
プロピレン
塩素
アリルクロライド 塩化水素
図1
ファインケミカル
ケミカルプロフィル
表1
メーカー・生産量(2007 年)
表2
エポキシ樹脂の国内生産出荷推移
(単位:トン)
メーカー
(単位:トン)
工
場
ダイソー
水
島
64,
000
生
産
215,
193
210,
781
229,
199
238,
664
鹿島ケミカル
鹿
島
50,
000
出
荷
233,
678
231,
949
241,
859
249,
478
2004
2005
2006
2007 年
13,
000
住友化学工業
合
生産量
計
127,
000
版などに用いられている。
量全体の 90% 以上が自消用である。
また,国内のエピクロルヒドリンの用途はエポ
エピクロルヒドリンを原料とするエポキシ樹脂
キシ樹脂向けが約 70% である。ほかにアリルエ
が好調なため,ダイソーは生産能力を 1 万トン増
ーテル類,合成ゴム,純加工樹脂,安定剤などの
産し合計 6 万 4000 トンとしたが,需要が生産量
用途がある。
の上限で安定しているので 2004 年以降フル稼働
が続いている。
ダイソーはアリルクロライドを主力製品として
位置づけ,今後も力を入れていくようだ。
中国でのエポキシ樹脂の需要の増大(年間 10
%以上の伸び)により,その原料であるエピクロ
ルヒドリン,さらにその原料のアリルクロライド
の需要は前年比 10% 程度の伸びとなっている。
また,鹿島ケミカルで生産されたものは旭硝子
が販売している。
国内のエピクロルヒドリンメーカーはダイソ
ー,鹿島ケミカル,住友化学工業の 3 社で,いず
れも原料のアリルクロライドからの一貫生産。
!
需
要
原油高により,原料であるプロピレンの価格の
アリルクロライドの需要は 12 万トン強である
が,その内訳はエピクロルヒドリン向けが 90%
上昇はあるが,製品価格に上乗せが可能な状態に
ある。
以上,その他 10% 弱がジアリルフタレート樹脂
中国の景気の上昇を受けて,しばらく需要が生
(DAP)
,アリルアミン,アリルエーテル類,高
産を上回る状況が続くとみられるため,市場は堅
分子凝集剤,医薬中間体,塗料などであり,輸出
調に推移していくと思われる。
はわずかである。
DAP 樹脂はダイソー独自の製品で,電子・電
"
価
格
気部品用成形材料,UV 硬化印刷インキ,装飾用
価格:500∼600 円/kg
包装材料・衣料のホットスタンピングホイル,不
荷姿:180kg ドラム缶,
飽和ポリエステル樹脂の架橋剤,住宅内装用化粧
2008年12月号
Vol.37 No.1
2
10m3 タンクローリー(最近多い)
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