アリルイソチオシアネート

ケミカルプロフィル
アリルイソチオシアネート
(Allyl isothiocyanate)
化審法
C A S
消防法
食衛法
別 名
(既)2―1689
57―06―7
危険物第 4 類第 2 石油類
食品添加物(着香料)
イソチオシアン酸アリル,揮発ガイシ
油
各種の製剤の開発も行われている。
〈一般物性〉
外
観:無色または淡黄色透明な液体
臭
気:カラシのような強い刺激臭
比
重:d 2020 1.018∼1.023
屈折率:nD20 1.528∼1.531
CH2=CH−CH2−N=C=S
"
C4H5NS;分子量:99.16
!
概
毒
性
急性毒性:
経口,ラット,LD50
112mg/kg
マウス,LD50
308mg/kg
要
イソチオシアン酸エステル類(R・N=C=S)は
皮下,ラット,LD50
92mg/kg
天然ガイシ(芥子)中に配糖体(図 1)として広
マウス,LD50
80mg/kg
く存在しており,特有の強烈な刺激臭をもってい
経皮,ウサギ,LD50
88mg/kg
る。アリルイソチオシアネートは 1959 年にイソ
チオシアネート類から分離され,新たに食品添加
物に指定された。食品香料としての用途のほか
に,近年は食中毒菌に対する抗菌性が注目され,
#
製
法
合成法とガイシからの抽出法があるが,現在で
は主として合成法により製造されている。
!
合成法:塩化アリルとチオシアン酸塩をエ
タノール中で加熱反応させ,生じたイソチア
O−SO3K
ン酸アリルを蒸留して沸点 148∼154℃ の留
S −C6H11O5
分をとる(図 2)
。
CH2 = CH − CH2 − N = C
図1
2008年3月号
配糖体
Vol.37 No.3
"
抽出法:黒ガイシ,白ガイシまたは日本産
75
Chemical Profile
CH2=CH−CH2−Cl +
Na−N=C=S !"
CH2=CH−CH2−N=C=S +
チオシアン酸 Na
塩化アリル
NaCl
イソチオシアン酸アリル
図2
表1
メーカー・生産量(2006 年)
(単位:トン)
メーカー
日本テルペン化学
ハーマン&ライマー
工
場
生産・輸入量
神
戸
36
(輸入)
く使用されている。強い臭気と刺激性があり,添
加量はごく少ない。
近年,本品の抗菌性が注目され,各種の用途展
10
開がなされている。食中毒菌である大腸菌やサル
(現シムライズ)
合
品香料であり,練りワサビ,練りカラシなどに広
計
46
(シーエムシー出版推定)
モネラ菌,腸炎ビブリオ,黄色ブドウ球菌などを
はじめとする各種細菌類や,カビ,酵母などに対
して強い抗菌力があるとされ,抗菌剤として水系
ガイシを圧搾して脂肪油を除去したのち,そ
製剤,水系粉末製剤,フィルム製剤,カプセル製
のかすを磨砕,温湯を加えて酵素分解し,水
剤などの開発が行われている。
蒸気蒸留する。
#
!
生
産
国内では日本テルペン化学が生産している。同
社は 1919 年にしょうのう,しょうのう油の加工
価
格
価格:4000∼7000 円/kg
荷姿:ポリ容器,アルミ缶(5kg)
,
ペール缶(20l )
(シーエムシー出版推定)
から発足し,第二次大戦後はテルペン分野の総合
的な研究開発を基礎として広範囲な有機ファイン
ケミカル分野で,医療,農薬,香料,有機過酸化
物などに進出している。
文
"
需
献
要
国内需要は生産・輸入量と同じく約 30 トンで
1)食品添加物公定書
ある。用途はワサビ,カラシなどの香辛料用の食
76
ファインケミカル