平成27年度東アジア、ASEAN地域における九州企業の 経済交流拡⼤に向けた調査概要 平成28年3⽉31⽇ 九州経済産業局国際部 調査事業の全体概要・⽬的 海外展開既に⾏っている企業や⽀援機関等へのアンケート・ヒアリングの実施並びに海外展開関連の 専⾨家を交えた先⾏事例のケーススタディーを⾏うことで、真の成功要因、進出時に準備すべき事項、 求められる⽀援施策を抽出し、もって中堅・中⼩企業の海外展開を促進することを⽬的とした調査事業 を実施中。 4つの⽬標 戦略シナリオ 本調査事業の⽬的 1.経済交流の深化と活⽤ 1.強みの強化 1.施策ニーズの抽出 2.海外展開の促進 2.弱みの克服 2.戦略的な中⻑期取り組み ⽅針の策定 3.対⽇投資の促進 3.成功モデルの輩出 4.グローバル⼈材の定着と 活⽤ ①ミッションやMOU後のフォローアップ と施策活⽤による⽀援 ②成功事例の収集と普及 3.成果事例集作成 調査事業(委託先:九州経済調査協会) アンケート調査・個別ヒアリング ゲストスピーカーによる事例発表(全5回) 成功要因の⾒える化 専⾨家集団による要因分析 アンケート調査概要 調査時期 平成27年9⽉〜10⽉ 調査概要 海外展開を⾏っている・関⼼がある企業における 実態や関⼼、課題などを定量的に把握 調査項⽬ 海外展開の現状と関⼼(展開形態、対象国・地域、展開理由) ⽀援サービスの活⽤状況 撤退・縮⼩に関する現状、撤退リスクの検討の有無 海外展開の事業への効果・影響 今後の展開⽅針 留学⽣など海外展開にかかる⼈材の活⽤状況 知財管理の現状・課題 など ※調査票は別紙 配布数 2,571通 回収数 741通(回収率28.8%) 2 アンケート調査結果概要(1/2) 1 展開状況 (1)展開概要 ・回答のあった企業のうち、6割の企業が何らかの形で海外展開を展開中と検討中と回答。 (2)展開中の国・地域 ・中国が突出し、以下台湾、韓国、アメリカ、タイの順。中国を中⼼に東アジアが⽬⽴ち、ASEANはシンガポールが最多。 (3)今後の展開先として興味のある国・地域 ・ベトナムが最多、以下タイ、アメリカ、中国、台湾の順。今後の展開先にはASEAN地域が台頭。 2 展開形態 ・展開形態は直接貿易が最多、次に直接投資となっている。今後の展開では、貿易は、直接貿易が最多で変化はな いが、間接貿易、業務技術提携の順で、直接投資は下位に下がる。 ・展開理由としては、新たな市場の開拓が突出しており、次に取引先への随伴が続き、コスト削減のための展開は少な い状況。 海外展開の取り組み状況 海外展開先の状況 海外展開の取り組み状況 展開状況 割合 展開中 関⼼のある展開先 展開中企業 今後の展開 展開中 46.8% 中国(56.3%) ベトナム(22.1%) 直接貿易 直接貿易 展開を検討中 11.3% 台湾(21.7%) タイ (8.5%) 直接投資 間接貿易 展開は考えていない 34.6% 韓国(15.1%) ⽶国(7.3%) 間接貿易 業務・技術提携 展開しているが撤退検討中 0.5% ⽶国(14.6%) 中国(7.3%) 業務・技術提携 直接投資 ⼀部撤退済み 2.3% タイ (14.3%) 台湾(7.0%) 情報収集拠点 情報収集拠点 ※海外展開に関⼼のある企業がサンプルに 多いことに注意が必要 (上位3国・地域) (上位3国・地域) 3 アンケート調査結果概要(2/2) 3 情報⼊⼿先 ・商社・貿易会社、ジェトロ、展開している企業、銀⾏が上位となっているが、今後展開を予定している企業ではジェト ロの期待が増⼤する。 4 活⽤したい公的⽀援 ・展開中の企業では販路開拓⽀援を求める割合が多く、情報提供ニーズが次に続く。今後展開を予定している企業 については、事業可能性調査(FS調査)が⽐較的上位となる。 5 撤退状況 中国が最多で半数を占め、韓国、アメリカ、シンガポール、ベトナム、台湾、オーストラリアの撤退回答があった。撤退 のリスクとしては、特に検討せず、専⾨家に相談して撤退した回答は1割に満たなかった。 6 海外展開を検討しない理由 国内需要で⼗分、⾃社製品・サービスが海外向けでない、国内経営で⼿がいっぱいが上位3項⽬。ノウハウ・⼈材 不⾜で展開できないという回答も2割程度存在。 4 勉強会開催概要 海外展開⾏っている特徴的な企業や⽀援機関を招聘し、事例発表を⾏って頂いたのち、専⾨家と意⾒交換する ことで、企業⾃らでも気づいていない成功要因や今後の課題を抽出することを⽬的に実施 第1回(11⽉5⽇) 1 調査の概要・現状分析と勉強会の論点 2 ⽀援機関から⾒た企業動向 ⽇本貿易振興機構(ジェトロ)福岡事務所 3 海外展開におけるケーススタディ 環境テクノス株式会社 第2回(11⽉30⽇) 1 本調査と勉強会の位置づけについて 2 海外展開のケーススタディ ・オーケー⾷品⼯業株式会社 ・株式会社⼋ちゃん堂創業者 【勉強会メンバー(専⾨家)】 ◆学識 九州⼤学経済学部 教授 星野 裕志 ⽒ (国際経営・物流・ビジネス) 明倫国際法律事務所 弁護⼠ ⽥中 雅敏 ⽒ (弁護⼠・弁理⼠) 第3回(12⽉25⽇) 1 海外展開のケーススタディ ・三菱⻑崎機⼯株式会社、 ・NPO法⼈映像コンテンツ産業協会 第4回(1⽉27⽇) 1 海外展開のケーススタディ ・ワイエスフード株式会社 2 アンケート調査及び個別ヒアリングの結果の検討 第5回(2⽉15⽇) 1 企業ヒアリング報告 2 事例報告 ⼤江橋法律事務所 本澤弁護⼠ ◆物流・商社 ⼭九(株)和才 護満 ⽒ (ロジステックソリューション事業本部) 三井物産(株)九州⽀社 業務部⻑ 野々村 哲雄 ⽒ ◆企業: 筑⽔キャニコム(株)代表取締役社⻑ 包⾏ 良光 ⽒ 5 ヒアリング結果(企業・有識者)から⾒る課題と解決のポイント 課題 売上・利益の確保 ◆販路の確保・拡⼤ ◆販売⽅法・売掛⾦回収の⼯夫 リソースの選択と集中 ◆パートナー確保・⼈材活⽤ ◆市場動向・ニーズの把握 リスクの低減 ◆技術やノウハウを模倣・盗⽤されるリスク ◆相⼿国制度への対応 ◆リスクヘッジ 解決のヒント ・営業・マーケティングの内製化、 ・ユーザーのニーズをダイレクトにフィードバックできる体制の確保 ・コア部部品の秘密保持 ・柔軟な売り掛け回収⽅法 ・BtoBの志向 ・信頼できるソースの活⽤ ・煩雑な業務のアウトソーシング ・必要書類のフォーマットの活⽤ ・政策的な⽀援の活⽤ ・ノウハウ・ネットワーク⼒の援⽤ ・外国⼈⼈材の活⽤ ・海外ビジネスにかかる横断的な視点 ・状況に応じた特許や商標などの知財戦略 ・コア部品・商材のブラックボックス化 ・取引形態の⾒直し ・現地視察の重要性 ・⼀定のリスクの想定と受容 ・撤退基準の事前設定 6 強みを⽣かした九州の海外展開戦略 政府が策定した⽇本再興戦略では、 2013年度からの5年間で新たな中⼩企業の海外展開を 10,000社を⽬指しており、1割経済を⽬指す九州においては、以下のような強みを⽣かしながら、アジア ASEAN地域中⼼とした海外展開戦略を策定し、1,000社の海外展開を⽬標とする。 東アジア・ASEAN地域 ⼈⼝増・⽣活⽔準向上 ◆環境問題 ◆農業・⾷品の需要拡⼤、 ◆個⼈向けサービス (美理容、教育、エンターテインメント等) 環境分野のポテンシャル ⇒K-RIPの環境クラスターネットワーク、SIIQの測定・検査技術等を活⽤ した環境・省エネ関連産業への進出 農業・⾷品分野のポテンシャル ⇒⾷料基地としての強みを⽣かした海外展開 個⼈向けサービス(美理容、教育、エンターテインメント等) ⇒⽣活⽔準の向上とともに、ニーズの増えるサービス産業への展開。 等の市場拡⼤ 県別農業産出額【農⽔省】 県名 億円 福岡 2,231 佐賀 1,207 ⻑崎 1,444 熊本 3,250 ⼤分 1,276 宮崎 3,213 ⿅児島 4,109 九州計 16,730 全国計 85,748 7 調査から⾒えてきた九州の海外展開戦略(対象国) ① 成⻑性に関⼼が⾼まるASEAN →アンケート結果からは、九州の企業の主な海外展開地域は、中国、台湾、韓国、タイ、⽶国、 シンガポール等であるが、今後の関⼼地域では、ベトナム、タイ、中国、台湾、⽶国、インドネシア、 ミャンマー等に移⾏してきており、企業はASEAN地域の成⻑性に着⽬している。加えて反⽇ 運動によるマイナス⾯も考慮し、これら関⼼地域については「親⽇国」であることをあげる声もある。 ⼀⽅、ミャンマー等については、関⼼が⾼いもののビジネスインフラの未整備を理由に危惧する声 もあるものの、商社等のヒアリングでは、インフラ整備事業の需要が⾼く急速に整備される可能性 が⾼いこと、まじめな国⺠性から将来有望との声を聞く。市場調査や現地とのネットワーク構築の 準備を⾏う必要がある。 また、中国への揺り戻しも起きつつあり、市場としての魅⼒は、以前⾼いという評価もある。⽶国 については、依然、⼤きな市場であり、ビジネス環境として整備されているという利点はあるものの、 厳しい競争環境であることや物流上でも九州の優位性がない。 ②成⻑するアジアに対する九州のポテンシャル →アジアの国々と九州は地理的近接性による物流における優位性を有している。 また、これら新興国の成⻑に伴い環境・エネルギー問題が切実な課題となることは明らかで有り、 環境技術や省エネルギー技術を有する九州地域の企業にとっては、有望な地域と⾔える。 8 海外展開を促進するための戦略的取組 1 海外への情報発信⼒強化による 認知度向上 4 留学⽣など海外⼈材を活⽤した海外展開 の加速 ・オール九州としての英語や多⾔語化による情報発信 ・ミラサポやJ-Goodtech(Webマッチング)活⽤推 進 ・中⼩企業のHPのローカライズ化の⽀援。 ・SNSを活⽤したマッチングを⽀援 ・制度、⼿続き、活⽤事例の普及による側⾯的⽀援 2 海外展開のステージに応じたシームレスな⽀ 援体制の構築 5 新興国の潜在的なニーズを顕在化させる 取り組み ・当局、中⼩企業基盤整備機構九州、JETRO と⼀体となったステージに応じたシームレスな⽀援体制 の構築 ・専⾨家(INPIT、中⼩企業基盤整備機構、 JETRO等)を活⽤した⽀援。 ・NEDOやJICA等の実証事業を活⽤し、振興 国の課題解決や潜在的なニーズを具現化することで、 市場を創出。 3 MOU等による交流環境の整備と交流機 会の提供 6 成功事例や⽀援策活⽤事例の普及によ る成功モデルの輩出 ・質の⾼いコミュニティとの交流機会の提供 ・「オール九州」としてのミッション団派遣や商談会の 実施。 ・プロジェクトベースでの有望案件⽀援 ・⽀援策の活⽤⽅法の普及促進を⾏うための 事例集の作成 9 有効な⽀援策・求められる施策ニーズ(1/2) 1.海外展開時の課題に対するニーズ 販路開拓・拡⼤ →展⽰会・商談会・ミッション派遣等に対する⽀援 海外展開の⽬的がコスト削減から販路拡⼤へと移⾏してきたこともあり、現在、展開中の企業においては、JETRO のJAPANブースへの出展やJAPANブランドやネットワーク活⽤補助⾦等による販路拡⼤⽀援施策ニーズが最も⾼い。 相⼿国の税・会計制度・貿易制度への対応 →各国事情の個別相談・情報提供 最⼤の懸念は、税・法務問題という声を聞く。そのため。今後の展開を検討する企業においては、JETRO等の国 別情報のサービスについてのニーズが⾼い。 また、パートナーを⾒つけるためには、現地の⽇本⼈企業の会議所等の事務局の情報を知りたいという声も多い。 相⼿国の市場や販路、現地パートナー確保、⽂化・商習慣への対応 →事業化可能性調査(FS調査) 本格参⼊の前の⽀援として、特に今後の展開を検討する企業において、FS調査に対するニーズは⾮常に⾼く、 利⽤した企業からの評価も⾼い。⼀⽅で⼀度、利⽤した企業は、再度の⽀援はされないことで、対象国が変わった場 合や⼀定の期間を過ぎた場合は、対象にして欲しいとの声も聞く。 ⾼度な海外⼈材の確保 →単なるワーカーではなく海外事業を任せることができるような⼈材が不⾜という中、企業と海外⼈材とのマッチングを ⾏うシステムの不⾜が課題。今年度、九州で実証的に取り組んでいるSNSを活⽤したwebマッチングシステムを ⽀援するような施策が必要かつ有効。 10 有効な⽀援策・求められる施策ニーズ(2/2) 2.海外展開に関⼼はあるものの検討に⾄らない企業の隠れたニーズ ①海外展開をするためのノウハウ・資⾦がない →海外展開事例や今回、当局作成の「海外展開ハンドブック」や「新輸出⼤国コンソーシアム」の専⾨家派遣 による⽀援が有効ではないか。また、当局で⾏っているワンストップの海外展開⽀援策説明会などによる各種⽀援 策に関する情報提供が引き続き必要。JETROのホームページには、情報があるもののホームページの階層が複雑 で必要な情報に⾏き着かないという声も多い。 ②⾃社製品・サービスが海外展開向きでない →裏を返せば、対象国向きの商品化(サービス含む)を⽀援することで可能性も広がる。JAPANブランド 育成⽀援事業やものづくり・商業・サービス補助⾦等の活⽤が有効。 11 事例に学ぶ海外展開ハンドブックのポイント Ⅰ.Whatʼs海外展開 Ⅱ.事例に学ぶ海外展開 〜はじめの⼀歩編〜 1 海外展開の⽬的を明確定め、推進する体制を整えよう 2 リスクと成果のバランスを考えよう 3 限られたリソースの中でどこまでやるかを決めておこう 4 取引先・パートナー選びは慎重に Ⅲ.事例に学ぶ海外展開 〜次のステップ編〜 1 売りっぱなし、任せっぱなしを⾒直そう 2 販売⽅法・売掛回収の⽅法を⼯夫しよう 3 技術・知財を適切に保護しよう Ⅳ.押さえておきたい海外展開⽤語集 Ⅴ.海外展開お役⽴ちリンク 12
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