杏林大学・杏林医学会・三鷹ネットワーク大学共催 平成 28 年度 第 3 回市民公開フォーラム 糖尿病から身を守る 平成 28 年 5 月 7 日(土) 14:00 ∼ 15:30 三鷹ネットワーク大学 会議室 ABC プログラム 司会・座長 石田 均 杏林大学医学部第三内科学教室 教授 特別講演① 14:00 ∼ 14:15 「糖尿病患者とともに歩む ~チーム医療の取り組み~」 特別講演② 14:15 ∼ 14:50 「糖尿病の合併症を克服する」 特別講演③ 14:50 ∼ 15:25 「日本人のための糖尿病食事療法を考える」 質疑応答 15:25 ∼ 15:30 山田 光洋 杏林大学医学部付属病院看護部 保坂 利男 杏林大学医学部第三内科学教室 講師 石田 均 杏林大学医学部第三内科学教室 教授 平成 28 年度 第 3 回市民公開フォーラム 特別講演② 「糖尿病の合併症を克服する」 杏林大学医学部第三内科学教室 講師 保坂 利男 糖尿病の治療の目的、目標は、血糖値と糖尿病とあいまって合併症を出現、悪化させる生活習慣病の両方を良好にする ことで、合併症を克服して「健康寿命を全うする」ことにあります。健康寿命とは、ピンピンした毎日の生活ができる年 齢です。また、良好な血糖値とは単に血糖値を正常に近づけることやヘモグロビン A1c(エーワンシー)を 6.5% 以下に するのではなく、それぞれの年齢、背景に応じて、合併症が発症、進行しない血糖値にコントロールすることになります。 糖尿病とあいまって合併症を出現、悪化させる生活習慣病とは、血圧高値、コレステロール高値、中性脂肪高値、肥満な どがあり、これを良好にする必要があります。基本は、食べ過ぎ、少なすぎ、偏った食事を見直して、適正な量でバラン スの良い食事をとることと、適度な運動になります。 糖尿病の合併症は、3 大合併症といわれている神経の障害、目の障害、腎臓の障害だけでなく、歯周病、認知症、骨そ しょう症、がん、足壊疽(あしえそ) 、心筋梗塞、脳梗塞、感染症などがあります。それらの合併症について 1 つ 1 つを 解説し、発症予防と進行予防として、それぞれの血糖値をふくめた総合的な日常管理についても解説を加えたいと思いま す。さらに、かかりつけ医から処方されている血糖コントロールのための薬と合併症に対しての内服薬についても簡単に 解説をいたします。この講演を聞かれることで、治療によって血糖値が良くなったとしても、定期的に通院する必要性も 理解していただけると考えております。 特別講演③ 「日本人のための糖尿病食事療法を考える」 杏林大学医学部第三内科学教室 教授 石田 均 日本人の健康長寿を妨げている要因に、糖尿病をはじめとする生活習慣病の増加が挙げられます。例えば糖尿病では網 膜症による失明、腎症による人工透析の導入、さらには動脈硬化の促進による心筋梗塞や脳梗塞の発症が増加します。そ して悪性腫瘍にも、生活習慣がその発症に深く関与すると報告されています。 日常の食生活のなかにおいて、私達日本人はここ最近の 50 年の間に、今までに無い急激な変化を体験しています。国 がまとめている国民健康・栄養調査によりますと、近年の日本人の総エネルギー摂取量には、この間に約− 15%の減少が あり約 1850 kcal とされています。一方で三大栄養素の摂取量については、糖質の大部分を占める炭水化物の摂取量の割 合がさらに相対的に減少したのに対し、一方で脂質の割合が逆に増加しています。そして重要なポイントとして、これら の食事内容の変化と糖尿病などの生活習慣病の増加との時間経移が、不思議なことに時期的に呼応しているのです。 興味深いことに最近になり、栄養素の「量」のみならず「質」の違いに関する重要な報告がなされています。それは同 じ脂肪や蛋白質であっても、それが肉などの動物(とくに四つ足)由来のものなのか、あるいは大豆などの植物由来なの かで、人類の身体への影響が全く異なるというものです。例えば体重を減らすために食事のなかの炭水化物の割合を減ら しますと、逆に脂質や蛋白質が相対的に増えます。しかしながら、動物由来の食材で作られたおかずだけを中心に食べて いると、植物由来中心の食材によるおかずと比べて、明らかに死亡率や心筋梗塞などの心血管イベント、あるいは悪性腫 瘍の発症が高まることが判ってきました。 幸いなことに、2013 年(平成 25 年)の 12 月に「和食」の食文化が世界の無形文化遺産に登録されました。これを機 会に今一度、私達の食生活を見直すとともに、日本人にふさわしい栄養指導の実践とその啓蒙が重要と感じています。
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