『大変さの受け止め方』 要介護3 男性 80歳代 3年前からアルツハイマー型認知症と診断され、時間の認識ががないため、 朝なのか、夜なのかわかりません。 夜間トイレへ行き来きしますが、方向が分らなくなって部屋に戻られなくな ることがあります。奥様は傍に寝ていますが、徘徊マットブザーが鳴っても気 づく時と気づかない時があります。家族が二重の玄関の鍵をかけ忘れたり、徘 徊マットブザーのスイッチを入れるのを忘れてしまった時に限って、夜中に出 て行ってしまい一晩中歩いて、何事もなかったようにして朝ひょっこりと帰っ てきます。「ここ4~5年ずーっとこんな感じだぁ」「行く所は、決まっていっ から、そごら辺、中心に捜すんだぁ」と奥様が話してくれました。息子さん夫 婦も仕事をしながら、寒い日などの夜中に捜すのは大変ではないかと思いまし た。 ケアマネジャーとしては、田畑で転んで顔面傷だらけになって入院したこと を踏まえると、今後、家に戻って来られなくなる可能性があるのでないか、凍 死してしまう可能性があるのではないか、また転んで骨折してしまう可能性が あるのではないか、と心配している旨を伝えました。 「デイサービスを増やした方がいいのではないか、ショートも利用した方が いいのではないか」と提案しても、奥様や息子さんが「今のところ、苦でなく 見られかっらぁ」とさらりと話すのです。 本人は、こたつに座って私達の話を聞いて、にこにこ顔で、返ってくる言葉 は辻褄が合っていませんが、話し方が穏やかで、やさしさが溢れています。 奥様は、夜トイレへ行って戻られないので毎回、寝室まで連れてきて布団を かけてあげると、「ありがどなぁ」と言われるそうです。「その顔で感謝される ごど言われっと、まだやってあげたい」との気持ちになるんだそうです。 本人からにじみ出る人柄もあるのでしょう。「本人を嫌だ」と思うか、「本人 にやってあげたい」と思うか、「本人を大変だ」と思うか、「本人を看んのなん てぇたいしたごどでねぇ」と思うかは、これまでの生活の歴史の中で育まれて きた、互いに家族を思いやるやさしさから、 『大変さの感じ方・受け止め方が違 うのではないか』と思いました。 シルバー専科日和 指定居宅介護支援事業所 遠藤信子
© Copyright 2025 ExpyDoc