第 57 回米州開発銀行・第 31 回米州投資公社年次総会 日本国総務演説

第 57 回米州開発銀行・第 31 回米州投資公社年次総会 日本国総務演説
(平成 28 年(2016 年)4 月 9 日(土)於:バハマ ナッソー)
1.序
議長、総裁、各国総務各位、ならびにご列席の皆様、
第 57 回米州開発銀行(IDB)、第 31 回米州投資公社(IIC)年次総会にあたり、日
本政府を代表して、ご挨拶申し上げることを光栄に思います。そして、今次会合のホ
スト国のバハマの政府及びナッソー市民の皆さまの暖かい歓迎に感謝申し上げます。
本年 2016 年は日本の IDB 加盟 40 周年にあたる記念すべき年であり、このような
節目にあたる総会に際して、ラテンアメリカ・カリブ(LAC)地域の経済開発におけ
る日本と IDB の協力、IDB に期待する役割を中心に日本の考え方を述べさせていただ
きます。
2.LAC 地域の経済開発における IDB と日本の協働
持続的な成長と包摂的な開発を達成するため、インフラ投資には「質も量も」重要
であり、引き続き、量だけではなく、「質の高いインフラ投資」を推進することが必
要です。日本も、ライフサイクルコスト、安全性、自然災害に対する強靭性、環境・
社会配慮基準、ノウハウの移転等に配慮した「質の高いインフラ投資」の促進に取り
組んでおります。特に、2015 年に安倍総理が表明した「質の高いインフラパートナ
ーシップ」を更にグローバルに展開する中で、とりわけ成長が著しく大きなポテンシ
ャルを持つ LAC 地域の IDB とのパートナーシップの更なる強化を重視しています。
この点、IDB と日本は省エネ・再生可能エネルギー分野における日本の先進的な知
見 を 活 か し、中米カリブ地域を対象とした IDB と JICA の協調融資の枠組 み
「Cofinancing for Renewable Energy and Energy Efficiency (CORE)」を 2012 年に立
ち上げ、既に 3 か国に対して 8 億ドルの円借款を供与しました。今般、この CORE
の成功を土台として、対象地域を中米カリブ地域から中南米の途上国に、対象セクタ
ーを省エネ・再生可能エネルギー効果のある関連分野に、円借款の供与目標金額を
2016 年度までに 10 億ドルから 2020 年度までに 30 億ドルに拡大するなど、IDB と
の間で同枠組みを拡充することに合意しました。また、日本は同枠組みの下で融資案
件の組成段階から IDB と JICA がより緊密に協働することを支援するために、IDB に
設置している日本信託基金に JQI(Japan Quality Infrastructure Initiative)を創設し、
年間 5 百万ドルの拠出により案件組成準備を支援することとしました。CORE の枠組
みの下で、日本の優れた環境技術が LAC 地域における気候変動対策の更なる推進に
活用されることを期待します。
近年、LAC 地域では、発展の恩恵から取り残された多くの人々への支援や各国政府
の政策策定・実施能力の引上げが重要な課題となっており、日本は長年にわたり日本
信託基金を通じてこうした分野の IDB の取組も支援しています。
日本としては今後とも IDB の技術支援活動をサポートしていきたいと考えておりま
す。
3. IDB の課題と役割
世界経済が不安定化して LAC 地域の景気も後退する中、LAC 地域の主要な地域開
発金融機関である IDB は、高い格付けを維持して競争力を確保しつつ、景気後退に対
応するための域内の資金需要に応えていく必要があります。そのために、世界銀行、
アフリカ開発銀行との貸付エクスポージャーの交換や、IDB の中にある譲許的基金を
通常資本と統合する等の IDB の資本基盤を強固にする取組が進展していることを歓
迎・評価すると共に、更なる取組についても期待します。
LAC 地域は、他の地域と比べても中所得国が多いため今後の経済発展の原動力は民
間部門が中心となります。この点、IDB グループ全体で培われた民間部門支援の知見
とノウハウを一つの組織に集約して発足した「新生 IIC」にこれまで以上に高い開発
効果を期待しています。
同時に、IDB グループで革新的・パイロット的な支援を行う多数国間投資基金(MIF)
については、投資、融資、技術協力といった一揃いのツールを有機的に組合せた支援、
比較的高いリスクへの許容度、革新的なラボラトリーとしての有意義な役割を高く評
価しており、引き続き MIF がこうした機能的独自性を維持することが最も重要です。
MIF がこのような役割を十分に果たしていくため、IIC への統合を前提とはせず、MIF
の将来について検討を進め、次回パラグアイ総会で結論を出すことをサポートします。
加えて日本は、MIF が更に革新的なファイナンスを中南米に提供できるよう、日本
国内での中小零細企業強化に係る革新的ファイナンススキームの調査委託を JICA が
行うことを決定しました。これにより、MIF がその調査から得られた知見を活用して、
中南米で更なる革新的なファイナンスを提供することを期待しています。
4.結語
世界的な景気後退の中で、LAC 地域の経済状況も深刻化しており、モレノ総裁の強
いリーダーシップの下、IDB グループ全体が同地域の開発に益々貢献していくことを
期待しています。