外国衛星TV受信における 干渉のメカニズム

解
説 携帯電話用周波数と外国衛星TV
第2回(3回シリーズ)
3.5GHz帯及びその隣接帯域での
外国衛星TV受信における
干渉のメカニズム
第4世代移動通信システムの3.5GHz帯周波数帯域の使用にともない、Cバンドを使用した外国衛星TVの受信において混信
が発生する可能性が高まっている。今回は干渉のメカニズムなどについて紹介する。
取材協力:株式会社NTTドコモ、KDDI株式会社、ソフトバンク株式会社
既に基地局は
既に基地局は
稼動状態に入ったはず
稼動状態に入ったはず
の高速移動体通信の1つである4Gシステム
電波が発射されているはずであり、
その影響
の利用周波数として、3480∼3600M H zの
を受けている外 国 衛 星 T V 受 信 設 備ユー
周波数帯域を割り当てることを決定。最終的
ザーもいるかもしれない。
に同帯域のうち各40M H zを、N T Tドコモ、
前号の記事(月刊『B-maga』2016年3月
号掲載 )では、第4世代移動通信システム
(以下4Gシステム)
で3480∼3600MHzの周
KDDI/沖縄セルラー電話、
ソフトバンクモバイ
ル
(現ソフトバンク株式会社)
に割り当てた。
干渉源は基地局と端末
干渉源は基地局と端末
この3480∼3600MHz( 以下3.5GHz帯)
波数帯域を使用することが決まり、
これによっ
は、
これまで衛星通信や放送事業用のSTL
ここからは、3.5G H z帯で起こる干渉の基
て同帯域及びその隣接帯域で放送されてい
回線などで利用されてきた。
そのため干渉の
本的なメカニズムについて説明する。
このあ
る外国衛星TVの受信設備に対して混信が
影響を受けると考えられる既存通信システム
たり、外国衛星TV受信設備のユーザーに対
発生する可能性を指摘した。
まずはそのおさ
を使用する事業者(免許人:無線局免許を
して“釈迦に説法”的な内容かもしれないが、
らいと現状の確認をしておきたい。
取得した事業者)
との調整が進行している状
改めて確認いただければ幸いだ。
スマートフォンの急速な普及などにより、移
況だ。
まず全てのケースに共通する話だが、4Gシ
動体通信サービスのデータ通信量は増加の
そして同様に干渉の影響を受けると考えら
ステムに起因する電波干渉において、干渉
一途をたどっている。
こうした状況を踏まえつ
れるのが、個人所有・使用の外国衛星TV受
源は大きく2種類ある。当然1つは4Gシステム
つ、世界最先端のワイヤレスブロードバンド環
信設備。今後、3.5G H z帯周辺のCバンドで
基地局。
そしてもう1つが4Gシステム対応モバ
境を実現するための方針として、総務省が公
放送されている番組などを受信する際に、混
イル端末だ。
表する「ワイヤレスブロードバンド環境実現に
信が発生する可能性がある。
3.5GHz帯の4Gシステムのモバイル端末と
NTTドコモ、KDDI/沖縄セルラー電話、
ソ
基地局間の通信では、TDDという通信回線
情報通信審議会傘下の携帯電話等高度化
フトバンクの3者は、すでに、4Gシステム用基
の多重化方式が採用されている。T D Dは
委員会における技術検討を踏まえ、次世代
地局を順次設置している状況。3月末には4G
Time Division Duplexの略で、時分割複
システムの電 波の発
信と訳される。TDDは同一周波数で基地局
向けた周波数再編アクションプラン」
をもとに、
■図1:携帯3社が2016年春より新たに使用する周波数帯と隣接帯域
58 B-maga April 2016
射を開始するとしてい
及び端末において極短時間でそれぞれ送信
るので、小誌が発行さ
と受信を切り替えることで、同一周波数で送
れている4月上旬には
受信を可能とする技術だ。つまり基地局から
すでに日本のどこかの
発信される電波も4G対応モバイル端末から
限られた場所で4Gの
発信される電波も周波数帯は変わらず、
どち
が出てしまう
(図2)。
■図2:線形増幅と信号の歪み
また4Gシステムの隣接帯域となる3480∼
3600MHz以外の隣接帯域でも、4Gシステム
基 地 局や端 末から、不 要 発 射とよばれる
3480∼3600MHzから漏れ出る電波が存在
する
(図3)。不要発射は、主波に比べて非常
に低いレベルの電波であるが、基地局が外
国衛星TV受信設備の近隣に設置される場
合などでは、不要発射の中で外国衛星T V
の受信周波数と同一の成分により、前述の
外国衛星T Vを受信する周波数が3480∼
3600MHzの場合と同様な信号対雑音比の
劣化現象を引き起こすことがある。
外国衛星TVを受信する周波数が4Gシス
らも外国衛星T V受信の際の干渉波になり
波からTV信号を取り出すことが難しく、視聴
テムの隣接帯域となる場合に、前述の増幅
そのものができなくなったり、視聴できたとして
器飽和と不要発射による信号対雑音比の
実際にはモバイル端末が送信する電波は
もブロックノイズの出現等の影響が出たりする
劣化のどちらの原因により影響を大きく受け
基地局のものほど強くないが、
モバイル端末
可能性が高くなるだろう。状況にもよるが、将
るかは、外国衛星TV受信設備の性能や、
4
得るというわけだ。
が衛星TVの受信設備に近接した場所で使
来的に4Gシステムの基地局が数多く建設さ
Gシステム電波の特性(主波と不要発射のレ
用される場合には、
モバイル端末からの電波
れると、
この帯域で放送されているチャンネル
ベル差)
などにより異なるが、多くの場合は前
の影響を受ける可能性があることを頭に入れ
の視聴は、少なくない地域で厳しくなると推測
者の要因が支配的になると思われる。
ておいていただきたい。
される。
ここまで3.5G H z帯の干渉メカニズムを説
一方、外国衛星T Vを受信する周波数が
明してきたが、実際に干渉の影響が発生する
3 4 0 0 ∼ 3 4 8 0 M H z あるい は 3 6 0 0 ∼
か否かは受信設備のアンテナの設置状況、
同一帯域と隣接帯域における
同一帯域と隣接帯域における
4200M H zの隣接帯域では、大きく2種類の
外国衛星TV受信設備(LNA、LNB、
チュー
干渉の概要
干渉の概要
要因により干渉が発生する。
ナー)
の種類、4Gシステム基地局と外国衛星
さて4Gシステムの外国衛星T Vの受信設
衛 星 からの 微 弱な所 望 信 号を増 幅 する
るので、4Gシステムの運用が開始されても、
備に対する干渉のメカニズムについてだが、
LNAやLNB(以下、増幅器)
が飽和すること
必ず、外国衛星TVの受信設備に干渉によ
外国衛星T V番組を載せている衛星からの
で所望信号が歪んでしまい、受信に不具合
る有害な影響が発生するとは限らない。
電波の周波数が、4Gシステムと同一の周波
が出るケース。外国衛星TV受信設備で一般
まず、外国衛星T V受信設備で受信する
数帯である3480∼3600MHzであるケースと、 的に利用される増幅器は、所望信号のみで
3400∼3480MHzおよび3600∼4200MHz
はなく、受信できる周辺帯域の他の信号も含
である隣接帯域(図1)
でのケースについて考
め全てを増幅する。
しかし
える必要がある。
周囲の帯域に大きな電力
外国衛星T Vを受信する周波数が3480
TV受信設備間の離隔距離等によって変わ
次 回 は 、このメカニズムを 踏まえて 、
3.5GHz帯の外国衛星TV受信設備の干渉
への対応策などについてお伝えする。
■図3:主波と不要発射
の電波があると増幅の際
∼3600MHzの場合は、4Gシステムの帯域と
に増幅器の飽和が起きて
重なるため、4Gシステムからの電波(基地局
しまい、信号全体が増幅
や端末から送信される電波)
が外国衛星TV
器の線形領域で増幅され
の信号電波に重畳してしまう。
このため、4Gシ
ず、その結果、所望信号
ステムの基地局が外国衛星TV受信設備か
が歪み、T V受信に影響
ら比較的離れた場所で運用されている場合
(*)でも、衛星からの所望信号電力対雑音
3.5GHz帯等における宇宙無線通信用受信設備に対するお問い合わせ窓口
(**)電力比の劣化により、外国衛星TVの電
(*)電波は、伝搬する距離に応じて電力が減少するた
め、4Gシステム基地局が遠いほど、外国衛星T V受
信設備への影響は小さくなる。
(**)
ここでは4Gシステムからの電波が主な雑音とな
ることを想定している。
認定事業者は、外国衛星T V受信ユーザー等向けに相談窓口を開設。混信回避対策のための工事業
者情報や、代表的なフィルタの型番等の参考情報を提供している。
TEL.0120-959-195(通話料無料)
受付時間:9時∼17時(土日・祝祭日および年末年始を除く)
April 2016 B-maga 59