ユーザニーズの視える化 ~安心して下さい。 視えて

ON01 多様化する IT サービスの継続的な品質改善
要旨
1. はじめに
現在の IT サービスはクラウドサービスやビッグデータ、IoT(Internet Of Things)など
の新しい IT 技術が次々に導入され、
「IT サービス」という言葉の考え方が大きく広がりを
見せている。
私たちシステム運用担当としてはこの IT サービスの変化に対応しつつ、ユーザニーズを
正確にくみ取り、要求に応え続けることがユーザ満足度の維持・向上に繋がると考える。
当研究グループでは新しい IT 技術からヒントを得て、
「ユーザ視点でシステムを評価す
る」ことに焦点をおき、評価した結果から「潜在的なユーザニーズに対して、継続的に品
質改善を実施する方法」について研究を行った。
2. 現状分析
現状、潜在的なユーザニーズを正確に汲みとれているかという討議をグループ内で行っ
た結果、答えは No であった。
なぜなら、現在ユーザニーズを取得する主な方法がアンケートやヒアリングとなってい
るからである。アンケートやヒアリングで得られる情報はあくまでユーザが自分自身の体
感や経験から得た情報でしかなく、私たちはその情報から推測したニーズが正しいと判断
するための指標を持っていない。潜在的なユーザニーズを正確に汲みとり、継続的に品質
改善を行うには、ユーザがシステム利用ついて潜在的に感じていることを何らかの形で指
標化(ユーザビリティの指標化)する必要があるのではないかと考えた。
3. 研究目標
ユーザビリティの指標化に向けて調査を進めたところ、いくつかの既存の指標や設計思
想(図 1)を見つけることができた。しかし、どれも「ユーザ視点の指標」とは言えないもの
であったたため、当研究グループでは「ユーザ視点の指標」を新たに策定することを研究
目標とした。
指標 or 設計思想の名前
内容
RASIS
エンジニア視点のシステム評価指標
ユーザビリティ国際規格(ISO9241-11)
使用性を評価する際の考慮点
ユーザビリティエンジニアリング原論
WEB サイトの開発における手法
人間中心設計(ISO13407)
ユーザ視点設計のプロセス
図 1. 調査の結果見つけた指標や設計思想
2015 Beacon Users' Group
ON01 多様化する IT サービスの継続的な品質改善
要旨
4.研究結果
ユーザビリティの指標化に必要な項目は以下の 4 項目である。またそれぞれの項目を数
値化するために必要な情報についても記載しており、どの情報もシステムのログ実装さえ
すれば数値を取得可能である。
①可用性(Availability)
1. インフラの停止時間(稼働率)
2. システムの停止時間(稼働率)
3. システムエラーの発生回数
②応答性(Responsiveness)
1. ユーザの操作から結果の表示まで
にかかる時間
2. アップロード、ダウンロードにかか
③操作性(Operability)
1. 操作手順数
④能率性(Efficiency)
1. 操作されていない時間
2. ヘルプ画面を開いた時間
3. エラー回数
4. 戻るボタンの押下回数
5. キャンセルの押下回数
る時間
3. DISK への I/O 開始~完了までの時間
5.検証と結果
今回は運用の場でよく目の当たりにするケースに対して、本指標を適用した場合にどの
ような改善結果に至り、それが継続的な改善につなげることができるかどうかを検証した。
机上での検証の結果、アンケートやヒアリングのみだと埋もれてしまいがちな改善点を
見つけ出すことができた。さらに改善前後の指標の数値から定量的に改善したことを説明
することができた。
6. 考察
本研究で策定した「ユーザ視点でシステムを評価する指標」は SLA や KPI などと組み合
わせることで、
「サービス評価」や「ユーザ満足度」といった定量的に評価することが難し
い内容にも根拠をもって評価することが可能となる。
またアンケートやヒアリング結果の裏付けとなることはもちろん、ユーザのアンケー
トやヒアリングの結果が芳しくない状況でもプロアクティブな改善提案ができるようにな
ると考える。
以上
2015 Beacon Users' Group