初校 2校 ◎ 2/15 3/1 3/4 Why do they continue the research? 01 伊東健治 ITO Kenji 金沢工業大学 工学部 電子情報通信工学科 教授 マイクロ波工学 地道な取り組みを行うなかで学生たちが 世界トップレベルの性能を実現! 1 きこそが電気工学の迷宮への入口。詳しく調べ 導体回路という携帯電話通信を支える技術の ていくと周波数の計算や回路の設計など、私 開発に現場で取り組んできた。 たちの日常生活を支える電気工学の高度な知 伊東教授がこの仕事に従事していたのは、 識や技術が垣間見えてくる。 2000年前後のインターネットに接続された携 「電波送電で重要な役割を担うのが、送られ 帯電話が急速に高度化しはじめた時期。小型 てきた電波を受けるアンテナと受けた電波を 化、高性能化していく携帯電話の進化を電気 電力に変換する『整流回路』です。無線給電シ 工学の高度な技術で支えてきたのだ。 ステム実用化の課題は、アンテナで受信した 「高効率な無線電力伝達を行うためには細 電波を可能な限り効率よく直流電流に換える かな回路 技 術の集 積による高度化が必要で こと。カギを握るのは、整流回路での変換効率 す。そのような地道な取り組みを行うなかで、 です。私たちの研究室では、小型で高効率の整 学生たちも世界トップレベルの性能を実現す 流回路を考案し、世界トップレベルの変換効 る機 会を得ています。2015年には、博士前期 率80%を実現しました」 課程の学生が発表した、整流回路と同じ回路 2 3 技術を用い、無線通信分野に適用されるミク サ回路の論文が、国際学会で論文賞を受賞し 学生が発表した論文が 国際学会で論文賞受賞 ました。 学生たちが世界へ向けて成果を発信し 1 高度な回路シミュレータや電波の測定器、 信号発信 ていく姿を見るのは、私にとっても大いに刺激 機など、最先端の実験機器がそろう伊東研究室。設備の 伊東教授は、大学卒業後、36年間にわたり になります」 三菱電機のエンジニア、マネージャとして働い ここならば、どんな夢も実現できるかもしれ てきた経歴を持ち、在職中に博士号を取得し ない。伊東教授の研究室の雰囲気は希望に満 ている。専門はマイクロ波工学。マイクロ波半 ちている。 充 実 度は、金 沢 工 業 大 学の大きな強みのひとつだ。 2 伊東研究室で作製されたさまざまな電子回路。 一つ ひとつ特性や用途が異なる。 3 2015年11月、伊東研 究室で博士前期課程を修了した橋本潤さんがIEEE(米 国電気電子学会) の論文賞を受賞。そのときの伊東教授と のスナップ写真。 アンテナ 電波を使った技術で社会に貢献 4.5mm 無線電力伝送システムの開発に挑戦 整流回路 電波 直流電力 56mm 話しながら充電できる スマホが登場するかも!? 4.8mm ば、テレビと同じように電波を使って遠方から 電気を送るのです。電波なら周波数次第でより 遠くまでより大容量の電気を送れます。無線で スマホの充電もコードレスでできればいい 電力が送れるようになれば、家庭内で面倒な のに……。そう考えたことがある人も少なくな 電気配線工事をする必要がなくなります。今の いだろう。通信技術が進歩し、電話やインター 自動車は内装の内側に電気コードが絡み合っ ネットが無線で楽しめるのが当たり前の現代 たスパゲティのように詰め込まれていますが、 において、なぜか電源だけがケーブルから解 これも数を減らすことができます。すでに磁力 放されていない。よほど高度な技術が必要な を使った無線給電システムが実用化されてい のだろうか? スマホはもちろん、携帯ゲーム ますが、まだまだ課題が多く自由には使えない 機やコードレス掃除機が充電切れで動かなく のが実状。私たちは、電波を使った技術で社会 なるストレスから解放されたら生活は飛躍的 に貢献できるよう、 研究に取り組んでいます」 整流回路の拡大写真 13.1mm INFORMATION ダイオードの 容量キャンセラ ブリッジ ダイオード 電波 平滑 コンデンサ 直流電力 に便利になるに違いない。 そんな身近ながら、意外に意識されていな かった課題に挑むのが、金沢工業大学工学部 電子 情報 通信工学 科の伊東健治教 授。研究 18 電波を直流電流に換える 「整流回路」がカギを握る キーワードは「どこでもコンセント」。 無 線を 使って電 気を 送 れ ば いい ―。そ 「現在、研究室では電波を使った無線電力 れだけ聞くと「なぜそんなことができないの 伝送システムの開発に取り組んでいます。例え か?」と簡単に考えてしまいそうだが、その気づ 金沢工業大学 石川県野々市市扇が丘 7-1 教員に関する問い合わせ先 企画部広報課 TEL:076-246-4784 詳細は P43 へ 金沢工業大学で開発された整流回路。ブリッジ・ダイオードと平滑コンデンサからなる従来の 整流回路に、効率低下要因であるダイオードの容量をキャンセルする回路を新たに付加する ことで効率改善し、世界トップレベルの性能を得ている。 19
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