解説 Ⅰ 実験事例4 ヒトのDNA抽出(生物:遺伝子) 準備上のポイント (1)透明カップ 容量が 60mL ほどの小さい透明カップを用意する。一人に1個の透明カップが必要であり、 また、食塩水を口に含むときに透明カップに口をつけることから使いまわしができない。一学 年全体で実施するとなると多数のカップが必要になるので、大きい透明カップは高くつく。ま た、扱う液量が少なく、容器が小さいほうが観察しやすいことから、このサイズの透明カップ が適している。 (2)3%食塩水 授業が始まる前までに 5mL の食塩水を入れた透明カップを生徒の人数分だけ用意しておく と、授業の進行がスムーズでよい。生徒の口に入れるものなので、食塩水の分注につかうピペ ットは新しいもの(使い捨てタイプの透明ピペットか、5mL が測りとれるチップ交換タイプ のピペット(マイクロピペットの大容量タイプ)が便利で使いやすい。 食塩水を入れた透明カップは実験バットにまとめておき、実験が始まるまでは埃やゴミなど の混入を防ぐためにラップで覆っておく。 (3)冷エタノール 使用直前までは冷蔵庫においてよく冷やしておく。各班に配れるよう、小型の試薬瓶に入れ、 分注用のピペットと一緒に配る。 Ⅱ 実験操作上のポイント (1)細胞の採取 ・歯で頬の内側を擦るとき、生徒によって擦る程度が違う。ここで細胞が採取できていなけれ ば DNA は抽出できない。きちんと細胞が採取できるよう、丁寧に擦るなど指示する。 ・3%食塩水は濃いので口の中に塩味が残る。口の中を水でゆすいでよいことを告げる。 (2)タンパク質分解の酵素処理 ・加温した方が酵素処理の効果が大きい。特に冬場など教室内が寒い場合は、湯煎またはイン キュベーターで処理温度を高くした方がよい。 (3)エタノールによる DNA の沈殿 ・比重が小さいエタノールが食塩水の上に層をつくり、食塩水とエタノールの二層に分離する。 エタノールを一気に注ぎ込むと食塩水と混ざってしまい、DNA は抽出できない。壁面に沿わ せてゆっくりとエタノールを加えるよう指示する。 Ⅲ 実験結果のまとめ方等の工夫 (1)用いた試薬の役割を考えながら、考察をまとめる。 (2)透明カップに現れた DNA の性状をよく観察させる。 Ⅳ 実験の効果 自分の細胞からとった DNA を見ることができるということで、DNA の存在をより身近に感じるこ とができる。
© Copyright 2024 ExpyDoc