[迫り来る法改正の荒波-25:租借地化するファーイースト・前段] <序文> 一見、新幹線延伸開通による観光客増加に沸いているかに見える北陸地方-。 拠点ターミナルの金沢を除くと、周辺の諸都市・市区町村では、あの手この手で 誘客に必死な様です。元凶は、新幹線通過駅周辺地域はもとより、停車駅周辺で すら起こり得るパス・スルー効果(立寄り客や宿泊客の減少による経済的衰退) ではないか、と云うのが専らの観測ですが-。 新幹線が、在来線の駅舎に付設されるなら未だしも、土地収用費用の関係上、新 駅の場合は、市街地から程遠い郊外に設置されるケースも少なくないのが実情 (駅前に食堂一つ無く、だだっ広い野原にポツンと建つ九州新幹線の新鳥栖駅 が典型。東海道新幹線の岐阜羽島や長野新幹線の佐久平も同類ながら、地元出身 政治家の腕力が働いた「政治駅」、という面でやや異なる)であり、例えば、冬季 五輪開催に合せて開通した高速道と新幹線で、一時浮かれ気味だった長野の場 合も、イベント終焉で客足が遠のいたホテルは銀行管理下に入り、ベッド等の調 度品を納入していた家具屋は跡形もなく消え去ってコインパーキングと化し、 市民には、延々と続く「税負担が残った」という、歴然たる事実があるからです。 地元自治体の目算狂いも然りながら、インバウンド誘致政策や新幹線開通に よる需要増を当て込み、新店舗や複合施設展開を周到に準備してきた消費サー ビス業界にも、実は別の余波が及んでいるのです。ショッピングモールは当然な がら、今や、フードコートの充実も極めて重要な集客レバレッジの一つであると される複合施設において、とりわけ象徴的な動きが出始めている模様です。 施設側は、ブランドの認知度や評判をはじめ、仕入れ先の信用度合い、提供商品 の見極め、衛生管理状態、余材処理の適否、メニューの充実度、中心価格帯、想 定売上高、売上原価等、様々な角度から入居テナントを分析評価し、選別を行い、 準備万端整えた後、漸く開店の運びとなる訳ですが、ここへ来て、施設・テナン ト双方にとって予想外の、まさかの事態が起き始めているのだとか- その事態とは…開店間際になっての、出店予定者からの、当事者自身すら想定 外だった出店辞退の申し出です。契約違反条項に触れ、相当額の違約金支払いが 生ずる筈にも拘らず、テナント側は何故解約に踏み切ったのでしょうか? 新設の複合施設で起きた出店解約問題の核心は、何と人手不足とそれに相関 する賃金暴騰でした。地域の中核都市とは云え、北陸では異例な高額報酬提示- それでも人は来ず、時間単価は2千5百円に迄上昇、遂に出店断念に至った由。 私どもの将来にも、深い影を落とすに違いないこの問題の背景には一体何があ り、その源流はどこにあるのか-本稿では、それを探ってみる事と致します。
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