入学式式辞 短期大学部、大学、大学院に入学される皆さん、おめでとうございます。また、ご家族 ならびに関係者の方々にも心よりお祝い申し上げます。 皆さんは「国境なき医師団」という名前を聞いたことがありますか。1971 年にフランスの 医師とジャーナリストらによって創設された医療分野のボランティア組織です。現在では 世界各地に 28 の事務局が置かれ、凡そ 3 万 8 千人以上の海外派遣スタッフ、現地スタッフが 登録し、凡そ 60 の国、地域で医療活動を行う組織に発展しています。日本には 1992 年に 事務局が設立されました。同組織の行動憲章に「国境なき医師団は苦境にある人びと、天災、 人災、武力紛争の被災者に対し人種、宗教、信条、政治的な関わりを超えて差別することな く援助を提供する」と書かれています。具体的な対象は紛争、難民・国内避難民、自然災害、 感染症の流行、顧(かえり)みられない熱帯病、病院・薬がない地域です。こうした対象国、 地域での活動に対して 1999 年にノーベル平和賞が授与されました。 授賞記念スピーチの最後にオルビンスキ会長は「国境なき医師団のボランティアやスタッ フは、人間としての尊厳がおびやかされた人びとの中で日々生活し、活動しています。世界 秩序といった大きな議論はともかくとして、人道的な行為とはこういうことです。ひとり ひとりが困難な状況に置かれた他者に手を差し延べること。それはあるときは包帯の 1 巻き となり、あるときは縫合の 1 針となり、あるときはワクチンの 1 接種となるのです」と述べ ました。私はこのスピーチの「ひとりひとりが困難な状況に置かれた他者に手を差し延べる こと」という最後の一文が強く印象に残りました。 入学生の皆さんには、自分は他者、社会との関係に置いて存在しているということを認識 していただきたい。特に、他者への思いやり、社会に対する配慮を自分の行動規範に加えて いただきたい。大学は皆さんの学びの場面を学内、学外に設定していますが、先ずは、その 場面が他者、社会関係で成立していることを認識し、大学生活のスタートを切って欲しいと 思っています。大学生活の経験について、例えば、短期大学部を卒業し岩見沢天使幼稚園を 就職先に選んだ木津(きず)さんは「1 年次に初めて付属幼稚園で実習を経験した時には、 自分が現場の先生のようになれるとは想像もできませんでしたが、子どもの教育や体のこと から保護者についての知識などを学ぶにつれて、気持ちが自然に伴うようになっていきまし た」と述べ、大学を卒業しニトリに就職した鈴木さんは「目標を見失わず、あきらめずに 自分の考えを貫いたこと、目標通り 4 年生まで野球部の活動を続けたこと」などの経験を語 っています。 二人の経験場面は異なりますが、共通しているのはそれぞれの場面で先生、仲間と出会い、 他者との関係を築いたことです。様々な経験が皆さんを成長させることは確かです。今日か ら大学生活での様々な経験が皆さんの成長の糧(かて)になることを祈っております。改めて、 入学おめでとう。以上、式辞とさせていただきます。 平成28年4月2日 札幌国際大学 札幌国際大学短期大学部 学長 越塚宗孝
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