物理化学Ⅰ・Ⅱ・演習

〈講義の
講義の形式〉
形式〉
講義は堀内が作成した「講義ノート」と教科書「アトキンス物理化学」を使って講義す
る。講義ノートについては堀内のホームページに掲載してあるので、各自プリントアウト
して用意するように。きょう配布した「基礎数学・基礎物理学」も頻繁に参照するので、
毎回持参するように。ホームページへのアクセスの仕方は;
1. 琉球大学の公式ホームページを開く。
2. 右上にある「研究室」をクリックする。
3. 理学部 海洋自然科学科 化学系にある「堀内研究室」をクリックする。
4. 左の目次の 3 番目にある「講義関連はこちら」をクリックする。
5. 各章毎にファイルが分かれているので、必要な章をプリントアウトする。
あるいは直接下記の URL にアクセスする。
http://www.cc.u-ryukyu.ac.jp/~ horiuchi/
講義に関する連絡事項、例えば休講、試験に関する連絡などもホームページに掲載する。
「講義ノート」がないと、講義内容の理解に著しい支障が起こるので、これを準備する
ことに関して何か問題がある人は相談に来るように。
図があると理解の助けになる。これについては、教科書「アトキンス物理化学」に載っ
ている図を活用するので、講義には必ず持ってくるように。
<講義(
講義(「物理化学Ⅰ
物理化学Ⅰ」と「物理化学Ⅱ
物理化学Ⅱ」)の目的>
目的>
この講義の目的は、化学現象を考察する際に必要な物理的な考え方、物理的センスを身
につけることである。
①数式で書かれた物理法則等の内容をよく理解し、そこから得られる物理的、化学的概念
を使いこなし定性的な議論ができるようにする。
②物理法則を表す数式の誘導が理解できて、その式を使って問題を解くことができる。定
量的に議論できるようにする。
必ずしも全ての人に②の段階まで求めてはいない(物理法則等の内容をよく理解するた
めには、問題を解くことが重要ではある)。最低限の目標は全員が①の段階に到達するこ
とである。
①のために記述問題(記述式・定性問題)を、②のために演習問題(計算・定量問題)を用
意したので、これを着実にこなしていけばかなり理解が進むはずである。諦めずについて
きてほしい。問題の解答例はホームページに掲載する。
講義ノートはある程度高いレベルにあわせて書いてある。例えば、アトキンスは式が天
下り式に与えてあることが多いが、講義は式の誘導をできる限り省略しないようにしてい
る。この部分がこの講義を難しいと感じさせているのかもしれないが、数学が苦手な人は
式の誘導の部分を無視してもよい。講義ノートに書いてあることを全て理解することは必
ずしも必要ではない。途中理解できない部分があっても、それで全てを諦めることの無い
ように。そのときある箇所が理解できなかったとしても、さらに学習を続けることによっ
て全体の理解が進んでから、もう一度その理解できなかった箇所を考え直してみると理解
できることがよくある。
〈評価方法〉
評価方法〉
成績はレポートと期末試験の成績によって総合的に評価する。ただし、期末試験の成績
が甚だしく良くない場合は、総合評価が可であっても不可にすることがある。
レポートについて
レポートについて:記述問題と演習問題を解答してレポートとして提出する。どの問題を
解答して提出するかは、ホームページに掲載する。
レポート用紙かルーズリーフに書いて、あるいは白紙に印字して提出する。大学ノートや
ルーズリーフをバインダーに閉じてバインダーごと提出することのないように。
「物理化学Ⅰ」、「物理化学Ⅱ」、「物理化学演習」のレポートはそれぞれ別の用紙に書いて
提出する。
期末試験について
期末試験について:ノート、教科書持ち込み可。スマホ、タブレット等は不可。試験問題
は記述問題、演習問題から選んだ問題に少し手を加えて出す。追試は行わない。
〈「物理化学演習」
物理化学演習」について〉
について〉
「物理化学Ⅰ」と「物理化学Ⅱ」の記述問題及び演習問題の解説を「物理化学演習」で
行う。問題の解答例はレポート返却後ホームページに掲載するので、予習しておくように。
また、上記の講義で説明不足あるいは、理解が不十分であると思われる箇所について、詳
しい説明を行う。
「物理化学Ⅰ・Ⅱ」の補講を「物理化学演習」の時間に行うことがある。
「物理化学演習」の成績評価は「物理化学Ⅰ」、「物理化学Ⅱ」および「物理化学演習」
のレポートの結果に基づいて行う。「基礎数学」および「基礎物理学」の演習問題を「物
理化学演習」のレポートとする。従って、「物理化学Ⅰ」と「物理化学Ⅱ」を両方受講し
ていない学生は、この講義は受講できない。ただし、聴講するのはかまわない。
(参考:過去 5 年間の状況)
「物理化学Ⅰ」
受講者数
2011 年度
57
2012 年度
51
2013 年度
55
2014 年度
56
2015 年度
59
「物理化学Ⅱ」
2011 年度
57
2012 年度
51
2013 年度
55
2014 年度
51
2015 年度
55
「物理化学演習」
2011 年度
49
2012 年度
36
2013 年度
41
2014 年度
41
2015 年度
43
合格者数
47
46
42
45
44
不合格者数(テストを受けなかった人数)
10 (6)
5 (5)
13 (5)
11 (3)
15 (5) 5 年間の平均合格率 80.6 %
45
46
49
43
42
12
5
6
8
13
(6)
(3)
(1)
(3)
(4) 5 年間の平均合格率 83.6 %
39
31
36
33
36
10
5
5
8
7
5 年間の平均合格率 83.3 %
「物理化学Ⅰ」、「物理化学Ⅱ」(そしてその他の物理化学系講義)の講義で皆さんにぜ
ひ修得してほしいことは、化学における常識、基礎となる概念である。つまり、化学を学
ぶ者なら共通して知っているべき事柄を身につけてほしいということである。どんな学問
分野においてもそうであるが、一つの分野はさらに専門が細分化され、例えば、同じ音楽
といっても、クラシック、ポピュラー、ジャズといろいろなカテゴリーが、同じ医学とい
っても、内科、外科等いろいろな領域がある。化学においても然り。有機化学、無機化学、
分析化学等々いろいろな学問領域が存在するが、そのとき同じ化学者といっても、異なる
専門分野の話をよく理解することは難しいものである。しかし、化学を学ぶ者なら、共通
して知っているべき事柄、持っているべき概念がある。それがなければ同じ化学を学ぶ者
でありながら、その間のコミュニケーションが成立しないことになる。例えば、高校生よ
り中学生、中学生より小学生というように、相手が幼くなればなるほど、相手に何かを説
明するときに、難しくなっていく。これは我々と相手の間に共通する知識、前提とする知
識に差があるからである。その差が大きければ大きいほど説明するのに苦労する。会話す
る二人の間に共通する知識があれば、あるいは一言で説明できるようなことも、それがな
いと説明が非常に難しくなる。化学的思考をするために必要な知識・概念というものが存
在し、それは化学者にとってある意味で空気のようなものである。
「物理化学Ⅰ」、「物理化学Ⅱ」(そしてその他の物理化学系講義)の講義では化学にお
けるその様な知識・概念、化学者なら共通して持っていて当然な知識・概念、その様な知
識・概念を前提として化学における日常会話(、討論)が成立するような基礎的基本的な
知識・概念、を身につけることを第一に望んでいる。物理化学は物理学を基礎においてい
るので、数式を扱うことを避けて通れない。このときまず第一に重要なことは、その数式
が表している物理的、化学的意味を良く理解することである。数式を用いて具体的な問題
を解けることは重要なことであり、物理化学の講義としてはこれも修得してほしいと思っ
ている。しかし、人間好き嫌い得手不得手があるから、数式を扱うことがあまり好きでな
い、あるいは得意でない人もいるであろう。化学を専門にしている人でも物理化学的計算
がスラスラできる人ばかりではない(むしろその様な人は少数であろう)。従って、皆さ
ん全てにこの様な計算がスラスラできるようになることを期待しているわけではない(で
きる限り多くの人にそうなってほしいとは思っているが)。極端な話、問題は解けるがそ
の意味が良く分かっていないということもあり得る。これでは意味がない(実際にいろい
ろな問題を解くことによって内容の理解が進むことも確かであるが)。より重要なことは
その物理的、化学的意味を理解することであり、そしてそれは必ずしも数式を使わなくて
も理解可能である。
このことを少し具体的に Newton の運動方程式で見てみよう。
F = m(d2r/dt2)
これを言葉で表せば、
力 = 質量 × 加速度
となる。言葉で表せば、まずこの三つの言葉の意味が理解できているかを考えてみよう。
力とは何か?質量とは何か?加速度とは何か?次にこの法則からどの様なことが分かるか
考えてみよう。物体を加速させるには、それに力を加えればよい。物体に力が加わらなけ
れば、物体の加速度は零(=速度は不変)である。質量を多く持っている物体ほど加速さ
れにくく、質量の小さな物体ほど加速されやすい。この法則を理解することによって力、
質量、加速度という概念に対する理解が深まるであろう。例えば質量は物体の加速されに
くさ、あるいは加速され易さを表していると解釈できる(この意味で慣性質量と呼ばれる
ことがある)。あるいは、加速度などは言葉で書いてあるより、数式で書いてある方が理
解しやすいと感じる人も多いのではないだろうか。数式を無理に言葉に翻訳する必要はな
いが、そうすることによってより理解が深まることもあるかもしれない。
当然のことながら、Newton の法則は数式で書かれている。そして、この式を解くこと
によって、惑星やすい星の軌道を計算することができる。打ち上げられた物体がどの様な
軌跡を描くかが予想できる。このことは我々にとって大変有用である。これによって、地
球にいつすい星が接近するかが予想できるし、ロケットを月に送る計算もできる。言葉で
表した法則ではこの計算はできない。しかし、我々全員がこの計算をできる必要はない(し
かし、例えば、同じ力を加えても物体の質量が半分なら加速度は倍になるといった程度の
定量的なことは理解すべきである)。しかし、この運動法則の内容を理解し、力とか質量
といった概念を持つことは、化学に関わらず、科学を勉強するもの全員にとって基本的な
ことであると私は思う。
「物理化学Ⅰ」と「物理化学Ⅱ」の講義で出てくる全ての計算を皆さん全員が理解する
ことを期待してはいない。ただ、基本的に物理化学あるいはそのもとである物理学の理論
が数学に基づく考察によって作られていることを理解してもらえばよい。従って、数式は
できる限り省略しないで示している。しかし、何度も言うように皆さんに特に望むことは
その理論の物理的、化学的意味を理解し、先程述べた意味で化学的常識・概念を身につけ
ることである。従って、数学の苦手な人は、あまり数式にこだわらずその意味を理解する
ことに努力してほしい。要は自分にあったレベル、ペースで講義を受講することである。
「物理化学Ⅰ」と「物理化学Ⅱ」の講義ではできる限り筋道を立てて話が進むようにし
たので、その内容はある意味でかなり難しいかもしれない。これは内容を易しくするため
に、理論的な筋道を省略して天下り的に(つまり、説明なしに唐突に)式のみを示したり、
結論のみを提示するよりも、その方が良いと考えたからである。しかし、この理論の筋道
を良く理解することは、場合によってはかなり困難を要するかもしれない(特に数学的に)。
一応理論の筋道は示すが、それは天下り式に、これが大事だから覚えなさいというように
次から次へと式などを提示するよりも良いと思うからで、その筋道を完全に理解しなけれ
ばならないというものではない。完全には理解できなくても、その理論の帰結として得ら
れる重要な結論等を理解することは可能である。講義の内容を隅から隅まで理解できれば
それに越してことはないが、それはなかなか大変なことである。枝葉末端なことは捨てて、
化学を理解する上で重要な理論、概念に関することを講義内容から抽出することが大切で
ある。これを自分の判断で行うのはもちろん大変であるから、どこが大切かは講義の際に
指摘する。
「物理化学Ⅰ」、「物理化学Ⅱ」(そしてその他の物理化学系講義)の内容は一見物理の
ようで、化学にきたのになぜこの様なことを勉強しなければならないのだろうと感じるこ
とがあるかもしれない。実際皆さんが 4 年生になって各研究室に配属になって卒業研究を
するときに、「物理化学Ⅰ」や「物理化学Ⅱ」の講義内容が直接卒業研究に役に立つこと
はないかもしれない。しかし、これらの講義で扱う内容は化学を学ぶものが等しく共有す
べきものであり、それだけ基礎的な内容なので具体的な研究に直接結びつくとは限らない
のである。この様な物理化学を含めたものが「化学」なのである。
以上はあくまでも私堀内の個人的な見解です。