藤戸レポート 「年度末最終相場」の処方箋 2016 年 3 月 29 日 年度末最終相場 いよいよ 3 月最終週を迎え、国内機関投資家は極めてナーバスになる。 平年並みの相場動向であれば、「自然体」で静かな年度末となるが、株価 が急落した年度となると、様々な思惑が絡んで株価が特異な動きを形成す ることが多い。例えば、アベノミクス相場では 2013 年度の年度末が、そのケ ースにあてはまるだろう。2013 年度はアベノミクス相場の全盛期であり、4 月 の「異次元緩和」によって株価は大商いで急伸した。兜町が興奮に満ちて いた時である。日経平均は 5/23 高値 15,942 円をマークして株高が続くよ うに思われたが、バーナンキ FRB 議長(連邦準備制度理事会議長・当時) の「量的緩和策の段階的縮小」示唆によって、急速に暗転した。日経平均 は 6/13 安値 12,415 円まで売り込まれ、約 3 週間で▲22.1%の厳しい急落 となった。その後、半年近い調整を経て、ようやく 5 月高値をクリアしたのが 大晦日も近い 12/25 であり、日経平均は大納会に 16,320 円の高値をマー クした。この時、私は NHK の仕事で東証にいたが、安倍総理が予定外の 東証訪問で 2013 年相場を締め括ったのが印象的だった。ところが、2014 年 4 月からの消費増税(5%→8%)のネガティブ効果を織り込む動きが顕在 化し、外国人投資家は 2014 年の冒頭から大幅売り越しを見せた。1 月第 1 週から 2 月第 1 週の間に、外国人は現物株式・株式先物合計で、実に▲2 兆 8,673 億円の売り越しだった。当然ながら、日経平均は 2/5 安値 13,995 円にまで急落した(グラフ 1)。今度は 1 ヵ月余で 2,325 円安・▲14.2%の下落 であった。結局、2013 年度相場は、歓喜と失望が織りなす波乱に満ちた相 場展開だったのだ。この 2013 年度の最終盤(2014 年 3/24~31)は、日経 平均が+251 円、▲52 円、+53 円、+145 円、+73 円、+131 円の大幅 高で幕を閉じることになった。波乱相場であればあるほど、「神の見えざる 手」が機能するチャンスは増えるように思える。 「低価法」と「原価法」 機関投資家は、年度末に「低価法」による簿価の洗い替えを行う。以前 は、3/31 の大引け値一発で洗い替えを行っていたが、今はほとんどのファ ンドで 3 月・月中平均価格を採用している。簡略に言えば、A 銘柄の簿価 (取得コスト)が 1,000 円であっても、3 月・月中平均価格が 500 円であれ ば、手数料等の再取得コストを勘案して 500 円+アルファ(昨今は僅少な 金額である)が、新年度の簿価となる。もちろん、500 円弱の評価損が計上 されるわけだ。重要なのは、新年度から A 銘柄は 600 円でも売却益が計上 できることになる点だ。「原価法」では出るはずのない水準で、「利益確定売 り」が出ることがしばしば起きる。したがって、個別銘柄ごとに 3 月・月中平 均価格をチェックしておく必要がある。新たなるテクニカル的な「節目」となる だけに、日経平均や TOPIX の 3 月・月中平均価格も重要である。3/24 時 点では、日経平均で 16,827 円、TOPIX で 1,356 である。 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 2016 年 3 月 29 日 ストラテジー マーケット分析 (グラフ 1) 消費税増税(2014/4)前に 外国人投資家が大幅売り越し (億円) 60,000 (円) 日経平均と外国人投資家動向 25,000 (出所) AstraManagerのデータをもとにMUMSS作成 20952 (6/24) 50,000 20,000 日経平均(右メモリ) 40,000 16320 (12/30) 15942 (5/23) 30,000 15,000 14865 (2/12) 20,000 10,000 10,000 0 5,000 -10,000 外国人投資家売買動向 (現物+先物・左メモリ) -20,000 2013/1 2013/7 2014/1 2014/8 2015/2 2015/9 2016/3 0 兜町の中には、いまだに「原価法」のセオリーが生きている場合があっ アナログ・セオリーは機能し て、しばしば驚く。よくあるのが、滞留日数による「節目」の計測だ。例えば、 ない B銘柄は700円前後の滞留期間が長く、ここが「節目」とするロジックである。 ところが、「原価法」の個人(まさか個人で低価法の人はいないだろう)であ れば適用できるが、「低価法」採用の機関投資家の場合には、既述のように 3月・月中平均価格が400円であれば、450円でも「利益確定売り」が可能と なるのだ。特に、2015年度のように荒れた相場の場合には、新年度入り以 降に、思わぬ水準で機関投資家の「利喰い売り」が出るケースが多くなる。 兜町伝統の「アナログ・セオリー」は機能しなくなるので、注意が必要だ。 「時価会計」と「簿価会計」 年度末特有のことではないが、もう一つは多くのファンドが「時価会計」を 採用していることに留意しなければならない。昨年の 5~6 月相場のような 強調展開となると、必ず「株式を持たざるリスク」とか、「買わないリスク」という 慣用句を、あまり勉強していないブローカーが用いるケースが増えてくる。し かし、多くのファンドは「時価会計」であり、新たに株式を買わなくても保有 銘柄の株価上昇によって組入比率が自動的に上昇する仕組みになってい る。驚いたのは、昨年 11 月のアヤ戻り相場で、あるメディアが、「機関投資 家は持たざるリスクを意識している」との怪しげな記事を配信したことだ。昨 年 11 月相場が本格的な戻り相場なのか、アヤ戻りなのかという本質的な議 論は置くとしても、株価が上昇すれば自動的に組入比率が上昇するという 根本的なシステムを無視した内容だった。兜町では、いまだに「原価法」や 「時価会計ならぬ簿価会計」の世界に取り残された人々が少なくないのだ。 こうした古色蒼然たる伝統セオリーを、逆手に取った利用法がある。それ は、怪しげなブローカーが「株式を持たざるリスク」に言及した場合、「相場 の天井が近い」という鉄則である。昨年 5~6 月相場に際しては、まさにこの 鉄則が切り札となった。 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 2 2016 年 3 月 29 日 ストラテジー マーケット分析 「株式配当取り」を考える 期末特有の現象として、「株式配当取り」も隆盛を迎える。なにせ 10 年国 債利回りが▲0.1%という御時勢である。株式配当利回り 3%や中には 4%台の 銘柄もある。インカム・ゲインに渇望した投資家が、積極的に動くケースが多 い。ただし、注意を要するのは、「好配当」だけに目が眩んで、企業の業績 動向やビジネス・モデルに注目しない場合には、配当で得た数倍のキャピ タル・ロスが出るリスクが付きまとうことだ。以前、某外食産業の株主優待が 楽しみという個人投資家に話を聞く機会があった。確かに、「優待券で好き なハンバーガーが食べられる」というのは魅力的だ。しかし、株式の評価損 をカウントすると、ハンバーガーの値段は 100 万円という世界一高い価格に 変身してしまった。ネット・ベースの評価を心掛けよう。 業績変動率の高い銘柄は避け 株式配当取りに際しての注意点としては、まず業績のボラティリティの低 い銘柄を選択すべきである。当然のことだが、年度によって業績のブレが大 きければ、好調な時はいいが不振となれば直ちに減配や無配転落のリスク が台頭することになる。特に、鉱業、石油、鉄鋼、非鉄金属、海運、商社等 のコモディティ価格との連動性が高い業種は、大増配もあれば無配転落も 珍しくはない。QUICK 等で表記されている株式配当利回りは、あくまでも予 想であり、想定外の下方修正や巨額の減損損失があった場合には、実際 に決算発表が行われる 4 月末から 5 月にかけて、大きく変動することもあ る。3/24、三菱商事が 2016/3 期の見通しを 1,500 億円の赤字(従来は 3,000 億円の黒字)、三井物産も 700 億円の赤字(同 1,900 億円の黒字) に大幅下方修正した(グラフ 2)。いずれも資源関連の巨額の減損損失が原 因である。三菱商事は今期年間配当 50 円予想を変えないが、三井物産は 減配を示唆している。両者ともに日本を代表する優れた企業だが、コモディ ティ価格の大暴落は予想を遥かに超えていたということだろう。世界を見て る (グラフ 2) 減損発表で一旦 調整となった大手商社株 (円) 大手商社の株価推移 (円) 1,900 2,400 2104 (3/8) 三菱商事(右) 1,800 2,200 1,700 2,000 1,600 1,800 1508.5(3/8) 1,500 1,600 C 1,400 1,400 三井物産(左) 1,300 1,200 1,200 1,000 (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 1,100 2015/10 800 2015/11 2015/12 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 3 2016/1 2016/2 2016/3 2016 年 3 月 29 日 ストラテジー マーケット分析 も、代表的な鉱山メジャーであるヴァーレ、BHP ビリトン、リオ・ティント等も、 いずれも業績が急悪化し、株価も長期の下落トレンドにある(グラフ 3)。やは り、2000 年代前半からのコモディティ・バブルの創生と崩壊が、世界有数の 企業の屋台骨を動揺させたのだ。各国中央銀行の超緩和策と、新興国の 薔薇色成長シナリオが空前のバブルを育んだ。そして、膨大な油田・鉱山 開発が進捗して生産を開始した矢先に、薔薇色シナリオは崩壊して、後に は巨額の損失が残った。商社以外でも、上記の業種に関しては下方修正リ スクが付いて回る。足下ではコモディティ価格が反発傾向で、来期に関して は今期で膿みを出した効果も期待できる。しかし、先行きには不透明感が 残るだけに、慎重スタンスが要求されよう。 (グラフ 3) 鉱山メジャーの株価が 長期下降トレンドに (ドル) BHPビリトン、ヴァーレの株価推移 (ドル) 24.0 80.0 69.30 (7/29) 22.0 70.0 20.0 60.0 18.0 BHPビリトン(右) 15.59(4/8) 16.0 50.0 14.0 40.0 12.0 10.0 18.46 (1/20) 8.0 30.0 20.0 ヴァーレ(左) 6.0 10.0 4.0 2.13(1/26) (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 2.0 2014/1 業界環境も吟味 0.0 2014/3 2014/6 2014/8 2014/11 2015/2 2015/4 2015/7 2015/10 逆に、NTT、NTT ドコモ、KDDI 等の通信は業績が急変化する可能性は 低く、安定的な配当が期待できる。従来は薬品も同様な評価だったが、バ イオジェンとエーザイのアルツハイマー型認知症治療薬「BAN2401」に見ら れるように、有望新薬の開発が順調か挫折するかによって、業績や株価も 大きく振れる状況に変化している。また、ヒラリー・クリントン候補を始め、多く の大統領予備選に参加している候補が、「薬価が高過ぎる」との批判姿勢 を強めていることも、間接的に影響するリスクがある。昨年は米株市場でベ スト・パフォーマーの一つであった医薬品・バイオは、S&P 産業グループ株 指数 24 業種の中で、年初来パフォーマンスは銀行に次いでワースト 2 位 である。S&P500 種指数は▲0.39%と横ばい水準だが、銀行▲12.58%、医薬 品・バイオ▲8.32%と低迷が続いている(3/24 時点)。こうした内外の業界環 境も勘案して、配当取りを心掛けるようにしたい(グラフ 4)。 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 4 2016 年 3 月 29 日 ストラテジー マーケット分析 (グラフ 4) 次期政権を睨み、米国市場で 医薬品・バイオが軟調 S&P500(24業種)の下落率上位(2015年末~3/24) 銀行 -12.58 医薬品・バイオ -8.32 自動車・部品 -7.14 各種金融 -4.67 保険 -3.17 ヘルスケア -2.72 半導体・同装置 -2.61 小売り -2.53 消費者サービス ソフトウエア・サービス (%) -16.0 0.24 0.27 (出所)BloombergのデータよりMUMSS作成 -14.0 -12.0 -10.0 -8.0 -6.0 -4.0 -2.0 0.0 2.0 「外国人の目」を持つ 配当取りを考えた場合、どうしても避けて通れないのが金融株である。例 えば、3/24 時点のみずほ FG の予想配当利回りは 4.36%もある。他の株価 指標を見ても、予想 PER6.8 倍、PBR0.53 倍という一般的には超割安水準 にある。同日の 40 年超長期国債利回りが 0.56%であることを考えても、魅力 があると考える人は少なくないだろう。NISA(少額投資非課税制度)を利用 して、初めて株式投資を行った方の中でも、この割安感と好配当に着目し た人は多い。問題は、みずほ FG の株価推移である。昨年 5~6 月の堅調 相場では、6/1 に高値 280.4 円を示現していた。ところが、その後長期の下 落トレンドを形成し、今年 2/12 には安値 149.3 円まで売り込まれている。実 に下落率は 46.7%と半値近い水準にまで軟化している。最高値で買ってい ないにしても、多くの投資家が評価損を抱えている可能性が濃厚だ(グラフ 5)。年 4%超の配当を取っても、株価で 4 割ヤラレれば元も子もない。幾度 か指摘したが、日銀のマイナス金利政策導入が決定されて以来、業績の先 行きを不安視した投資家の売りが途絶えないのだ。3/14 には 188.8 円まで 戻る局面もあったが、黒田総裁の「マイナス金利は理論的に▲0.5%まで可 能」との発言で、再び腰折れの様相を強めている。これは日本だけではな い。マイナス金利政策の先達である欧州では、より金融株の業績悪化・株 価下落が顕著になっている(グラフ 6)。外国人の目で見れば、「マイナス金 利政策=金融の収益悪化・株価下落」は、苦い実体験なのだ。最大の売買 主体である外国人が、どう考えているかも大切な要素だ。 「成熟・衰退企業一覧表」に また、経験の浅い投資家がよく嵌る罠としては、「株式配当利回りランキン グ」等で、高いものに素直に投資するパターンがある。好配当銘柄は、もち ろん株主還元に積極的というポジティブな面もある。しかし、好配当の裏に は、ビジネス・モデルが陳腐化し、成熟から衰退の影が忍び寄っている銘柄 も少なくない。逆に、成長性を評価された銘柄は、必然的に高株価となり、 堕すリスク 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 5 2016 年 3 月 29 日 ストラテジー マーケット分析 (グラフ 5) 配当利回り 4%台でも 「上がらない」みずほ FG (%) (円) みずほFGの株価と配当利回り推移 11.00 350 (出所) AstraManagerのデータをもとにMUMSS作成 10.00 280.4 (6/1) 300 263.2 (11/19) 9.00 250 8.00 みずほFG(右) 7.00 200 ▲46.2% 6.00 150 149.3(2/12) 5.00 100 4.00 配当利回り(左) 50 3.00 2.00 15/4/1 (グラフ 6) マイナス金利政策拡大で 欧州銀行株指数が続落 15/5/22 15/7/8 15/8/25 15/10/15 15/12/3 16/1/25 16/3/11 ユーロストックス銀行株指数とECBの政策金利 (%) 1.00 0 (p) 180.0 (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 中銀預金金利 ⇒▲0.1%(2014/6/5) ⇒▲0.2%(2014/9/4) ⇒▲0.3%(2015/12/3) ⇒▲0.4%(2016/3/10) 0.80 C 160.0 0.60 140.0 0.40 120.0 0.20 ユーロストックス銀行株指数(右) 100.0 0.00 80.0 -0.20 中銀預金金利(左) 60.0 -0.40 -0.60 2014/1 40.0 2014/4 2014/8 2014/11 2015/3 2015/7 2015/10 2016/2 株式配当利回りは低水準で推移することが多い。つまり、好配当銘柄ランキ ングは、見方を変えれば「成熟・衰退企業一覧表」に堕すリスクを抱えてい るわけだ。しかも、成熟から衰退に移行すれば、減配や無配転落リスクも増 大することになる。株式投資は、当然ながらキャピタル・ゲイン、インカム・ゲ インの総トータルで評価しなければならない。業界環境や、個別企業の業態 態をチェックすることなく、まるで株式配当や株主優待が「タダでもらえるオ 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 6 2016 年 3 月 29 日 ストラテジー マーケット分析 マケ」のような感覚に陥っているとしたら、これは銭失いの近道である。よく 投資雑誌に載っている「株式配当利回りランキング」を見ると、「100 万円の ハンバーガー」に近いような銘柄が並んでいる場合が少なくない。その罠に 嵌らないためには、業績変化率、財務健全性、中期成長性といったファクタ ーにも目を配ることが重要だ。 米系円高論者の変容 (グラフ 7) 円高の影響で 17,000 円台が 重荷となる日経平均 日経平均が 17,000 円台に乗ると、どうも上値が重くなる状況が続いてい る。その大きな要素の一つに、為替の円高傾向がある。ドル/円相場は、 3/17 高値 1 ドル=110.67 円まで円高に振れる局面があった。「FRB のハト 化」を材料としたものだったが、今回も下ヒゲを出す形で、その後 113 円台 まで戻す展開となっている(グラフ 7)。確かに、米景況感、FRB の年内利上 げピッチの鈍化観測が大きくドル相場に影響を与えているものと思われる。 依然、110 円割れのリスクが払拭されたわけではないが、一部で気になる報 道が出始めたことに注目する必要があろう。ファンダメンタルズの要因は別 にしても、年初からの動きには米系銀行の円高シナリオが背景にあった可 能性が濃厚である。このアイデアにヘッジファンドがのったことによって、 CFTC(米商品先物取引委員会)の円先物買いポジションが、3/8 時点で 64,333 枚にまで膨張したものと思われる。過去最高である 2008 年 3/25 の 65,920 枚に、あと僅かにまで肉薄していた (グラフ 8)。ところが、結果的に 110 円ブレークに失敗したことから、一部で円買いポジションの巻き戻しが 起き始めたようだ。3/23 のブルームバーグによると、本尊であるこの米系銀 行のアナリストが、「ヘッジファンドは、ドルの買いポジションを 2014 年以来 の低水準に減らした。したがって一段とドルを売って、相場を押し下げようと する勢いは鈍化している。ドルが投機的資金の急激な流出で急落する可能 性は低い。下落が 2 ヵ月目に入っているドルは反転する公算が大きい」との レポートを出した。これが相場転換の兆しとなるかもしれない。 (円) 日経平均と円ドルの推移 (円) 136 21,000 20,000 132 19,000 日経平均(右) 18,000 128 17,000 124 16613 (3/18) 16,000 15,000 120 円/ドル(左) 14,000 116 13,000 C 12,000 112 110.67(3/17) (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 108 15/10/1 11,000 10,000 15/10/29 15/11/27 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 7 15/12/25 16/1/26 16/2/23 16/3/22 2016 年 3 月 29 日 ストラテジー マーケット分析 (グラフ 8) ファンド筋の円買いポジション 巻き戻しの兆し 相場転換の兆し 確かに、CFTC 発表の主要 6 通貨(円・ユーロ、ポンド、豪ドル、カナダド ル、スイスフラン)に対するヘッジファンドのドル先物ポジションを見ると、 2014 年 5/6 には 2,690 枚のドル売りという極端なポジションがあった。そこ から 2015 年 11/24 の 403,047 枚という過去最高にまで、ドル買いポジショ ンを積み上げて行ったのだ。それが今年 3/22 時点では、再び 53,346 枚 にまで急速にシュリンクしている。つまり、ドル買いのポジションはカラカラに 近い。約 10 分の 1 に急減したヘッジファンドのドル買いポジションを見る と、米系の本尊が指摘しているように、ドル売り圧力は弱まって反転するとの 見方もできよう(グラフ 9)。もう一つの状況証拠は、この 3 月までに 1 ドル= 130 円を主張していたドル高/円安論者が、「年末で 122 円」に大幅後退し たことだ。相場の世界は、どこまでも冷徹・非情であり、「曲がり屋に向かえ」 という格言さえある。本尊が変身し、円安論者がトーンダウンしたとなれば、 逆にドルが強含む可能性を考えるのが古狸である。FRB の動向がキー・ポ イントだが、足下の相場は日米の景況感格差、FRB と日銀の政策スタンス の格差を軽視している状況にある。これに需給転換の可能性を考えると、3 月米雇用統計等を材料に、円高シナリオが変容を迫られる可能性もあろう。 反騰トレンドは継続中 日経平均は 2/12 安値 14,865 円でボトムを形成し、緩やかな反騰トレンド にあるとの認識には変化がない(グラフ 10)。足下の揉み合いを見て嫌気す る向きもいるが、既に 2 月安値から 2,000 円以上戻っている状況で、利益 確定売りが出るのは当然のプロセスである。ここに、波乱年度の期末相場と 為替の行き過ぎた円高シナリオ是正を想定すれば、反発エネルギーを蓄 積中と考えるのが妥当だろう。確かに、大手商社に見られたように、今後も下 方修正リスクは顕在化しよう。しかし、新年度入りとなれば、投資家の視点は 今期から来期へとスイッチして行く。過度な楽観は禁物だが、今期下方修 正で株価がさらに崩れるとの見方は適切ではない。現に、三菱商事、三井 物産ともに、下方修正発表の翌日には株価が切り返しに転じている。したが 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 8 2016 年 3 月 29 日 ストラテジー マーケット分析 (グラフ 9) 約 10 分の 1 に急減した ファンド筋のドル買いポジション (グラフ 10) 予想 PER13 倍割れから 反発に転じた日経平均 日経平均と予想PERの推移 29.00 23,000 日銀 追加緩和 (2014/10) 27.00 消費税増税 (2014/4) 25.00 日銀 マイナス金利 (2016/1/29) 20952 (6/24) (円) 21,000 19,000 23.00 15942 (5/23) 16320 (12/30) 17,000 21.00 (倍) 日経平均(右) c 16901 (9/29) c 15,000 14865 (2/12) 19.00 ① ② 17.00 11,000 15.00 予想PER(左) c c 13.00 12.96(5/21) 11.00 2013/5 13,000 9,000 12.97(2/12) 7,000 2013/10 2014/4 2014/9 2015/3 2015/8 2016/2 って、銘柄選別でも、今期よりも来期の変化率が高い好業績銘柄にウェイト を移すべき局面と考えている。ただし、業績相場的色彩が強まるのは、4 月 末~5 月の決算発表からだ。今は、まだその前段階にあり、今期のヤラレ業 種・ヤラレ銘柄が浮揚する不思議な相場も、同時並行的に進行するだろう。 依然、株価のモメンタムは上である。 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 9 2016 年 3 月 29 日 ストラテジー マーケット分析 「命短し、恋せよ乙女」 「染井吉野の花見の頃までは株価は戻るだろう」と指摘してきた。TV 東 京の番組でそう言うと、司会の蟹瀬キャスターに、「昔、桜が咲く頃に景気が 回復するといった政治家がいましたね」と笑われたが、今もその見解を持続 している。ただし、参議院選挙がある夏場までを展望すると、このまま株価 が上昇トレンドを継続するとも思えない。なぜならば、第一に「原油底入れ 反騰説」は懐疑的に見ている。OPEC、非 OPEC を問わず高水準の原油生 産は継続している。4/17 の「増産凍結会合」や 6 月の OPEC 定例総会で、 劇的な原油戦略転換が実現するとは思えない。WTI 原油先物価格が、 2/11 安値 1 バレル=26.0 ドルから 3/22 高値 41.9 ドルまで戻ったのは、こ うした原油関連会合をネタにした投機筋の動きで説明がつく。ヘッジファン ドの WTI 原油先物ポジションは、2/16 ボトム 158,987 枚から 3/22 には 307,977 枚にまで急増している。戻り限界となれば、彼らは躊躇なく利喰っ てくるだろう(グラフ 11)。再び原油安・株安となるリスクは少なくない。第二に は、米景況感の好転があれば、再び FRB が利上げに傾斜するリスクがある ことだ。「イエレン議長のハト化」が今回の世界的なリスク・オン・モードの母 であり、その変容は再び市場を動揺させよう。一方では、安倍政権の大型 景気浮揚策が具現化して、株価を支える局面もあろう。つまり、7 月選挙ま でに、日経平均は、おそらく一波動 2,000~3,000 円の激しい上下動を繰り 返すものと思われる。徹底した逆張り姿勢が望まれよう。ただし、今はまだ 「降りる」局面ではない。「イル・マニーフィコ」(偉大な)と形容されたロレンツ ォ・デ・メディチも、「命短し、恋せよ乙女」と言っている。 (グラフ 11) 短期急増となったファンド筋の WTI 原油先物ポジション 藤戸 則弘 投資情報部長 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 10 【重要な注意事項】 (本資料使用上の留意点について) ・ 本資料は当社が信頼できると考える情報ベンダーから取得したデータをもとに作成されておりますが、機械作業 上データに誤りが発生する可能性があります。当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに 示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示しているに過ぎません。本資料は、お客様への情報提供の みを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的としたものではありま せん。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に 関するアドバイスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは 今後発行する可能性があります。本資料でインターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自 身のアドレスが記載されている場合を除き、アドレス等の内容について当社は一切責任を負いません。本資料の 利用に際してはお客様御自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 (利益相反情報について) ・ 当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合がありま す。当社および関係会社は、本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品 について、買いまたは売りのポジションを有している場合があり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、 当社および関係会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、その他サービスを提供 し、かつ同サービスの勧誘を行う場合があります。 ・ 当社の役員(会社法に規定する取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう。)が、以下の会社の役員を 兼任しております。:三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱倉庫 (外国株に関する注意事項について) ・ 外国株式に関する資料は、Form 10-K 等当該外国法に基づく「有価証券報告書」と同等の公的書類、年次報告 書(Annual Report)、四半期報告書、アーニングリリース等の会社発表による公開情報をもとに作成しております。 当社によるレーティング、投資判断、業績予想等は含みません。また、データの取得・入力時期の違い等により、 本資料と外国証券情報の数値等が異なる場合があります。 ・ 本資料で取り上げられている外国証券は、我が国の金融商品取引法に基づく企業内容の開示は行われておりま せん(金融商品取引法上の情報開示銘柄を除く)。当該外国証券の開示情報は、主要取引所の所在する国の開 示基準に基づいています。 (リスク情報について) ・ 日本および外国の株式・債券への投資は、株価の変動や、発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する 外部評価の変化、金利・為替の変動等により、投資元本を割り込むリスクがあります。 (手数料について) ・ 国内株式の売買取引には、約定代金に対し最大1.404%(税込み)の売買手数料をいただきます(ただし約定 代金が193,000円以下の場合は最大2,700円(税込み))。株式は、株価の変動等により、損失が生じるおそれ があります。 ・ 外国株式の売買取引には、現地委託手数料と国内取次手数料の両方がかかります。現地委託手数料等は、その 時々の市場状況、現地情勢等に応じて決定されますので、その金額等をあらかじめ記載することはできません。 詳細はお取引のある部店までお問合せください。国内取次手数料は、約定代金に対して最大1.080%(税込 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