見極めにおける事象関連電位の発生 大正大学人間学部人間科学科3年 増井 友紀 1 初対面の人と対人関係の形成時 優しそう 頼れそう 目つき悪いな 怖そう この人信頼してもいいのかな? それとも信頼できない悪い人かな? 2 信頼できない人に対する脳活動 (池田・古川・長谷川,2014) • 人は顔から様々な人格特性を読み取っている (Willis & Todorov, 2006) • いかにも悪いことをしそう、信頼ができない 人物の写真を見たときに、ネガティブな感情 反応と関連する事象関連電位(脳波)が活性 化する 事象関連電位(ERP):ある事象(刺激や運 動)に対応して生じる脳の電気活動 微細な電気活動のため、α波等の背景脳波に影 響を受けるが、繰り返し反応後の電位を測定し、 加算平均をして算出 3 ネガティブな感情反応と関連するERP • LPP(Late Positive Potential) • 情動の誘発や想起を示す後期陽性成分 • 400ms~800msにみられる 陽性 ポジティブ 4 信頼できない人に対するLPP • 裏切りそうな信頼できない人を見たときに、ネ ガティブな感情反応の際に生起するLPPが確認 された(池田・古川・長谷川,2014) • 誰が見ても信頼できないような(悪人顔)人 物に対して、嫌悪のような感情を感じる脳内 メカニズムがあることを示唆 5 本研究の目的 • 池田らの実験では、外国人を含む写真人物 を事前に信頼できるか、否かを他の人に評 価させた • 池田らの実験の比較 • 信頼できると多くの人が思う外国人写真 • 信頼できないと多くの人が思う外国人写真 • 本研究の関心 • 私達の生活で関わるような人物において、 相手が信頼できるのか、信頼できないのか を適切に見極め、信頼できないと判断した ネガティブな感情が生起し、直後にLPPと いった事象関連電位が誘発されるのか 6 あなたは信頼の見極めができますか? • 問1:この人は信頼できる or 信頼できない? • 問2:この人は信頼できる or 信頼できない? 7 本研究で調べたい事 • 問1:この人は信頼できる or 信頼できない? 信頼できる協力者 • 問2:この人は信頼できる or 信頼できない? 信頼できない非協力者 この人物に対して LPPが誘発される かを検討 8 今回の実験 • 私の関心:相手を見極めるための脳機能が 存在しているかもしれない‥‥ • 日常生活で関わる人が自分にとって信頼で きない人かを適切に見極め、その人物にネ ガティブな感情が生起する脳機能 • 本研究の目的 • 脳波(事象関連電位)を用いて、人を見極め る(信頼性判断)場面での脳活動を調べる • 人物を適切に見極め、信頼できないと判断し た人物を見た直後にLPPが誘発されるのか? 9 信頼できる人・信頼できない人の写真 大学生の写真 過去に行動を測定する実験に参加した人 実験:囚人のジレンマゲーム 測定した行動:「協力」・「非協力」 10 囚人のジレンマゲームの特徴 1. 非協力の優越 相手 協力(C) (D) あ な た 協 力 非 協 力 非協力 あなた 2千円 あなた 0円 相手 相手 2千円 3千円 あなた 3千円 あなた 1千円 相手 相手 0円 1千円 11 2. 相互協力の総和の利益が最も高い(協力し 合った方が2人にとっては良い) 実験方法 対象者 大正大学の男子学生6名 (平均年齢20.3歳、SD =1.1歳) 指標 • 情動の誘発を反映するとされるLPP成分 手続き • 信頼性判断課題を実施した • 事象関連電位を加算平均法で算出するため、 多くの試行数を実施 • 112試行(顔写真56枚判断×2回) 12 実験での信頼性判断課題 この人物は信頼できますか? 信頼できる 信頼できない • 実験参加者は、この人物が過去の囚人のジ レンマ実験に参加したということも知らな いまま、単純に顔を見た上で「信頼できる か」「信頼できない」かを判断する 13 LPPが検出されやすい脳の部位 LPPが検出されやすい後側頭部の O1 O2 T5 T6 Fz Cz Pzの7部位に着目! 国際10-20法 (入戸野,2005) 14 実験の結果① 先行研究(池田ら、2014)では、Pzにおいて、 信頼できないような人の顔を見た直後にLPPが 大きく誘発される 今回の実験では、Pzにおいて LPPが優位にみられなかった 15 優位な差がみられた部位① 結果 事象関連電位(LPP) 刺激提示後400msから800msの区間 O1‥‥協力者写真の平均 男3.65(SD=1.57)女4.89(SD=2.99) 非協力者写真の平均 男2.95(SD=1.09)女3.38(SD=1.75) 刺激(協力vs非協力)要因の主効果が有意 F(1,5)=18.45,p<.01) 16 優位な差がみられた部位② 事象関連電位(LPP) 刺激提示後400msから800msの区間 Cz‥‥協力者写真の平均 男2.76(SD=3.39)女3.32(SD=2.83) 非協力者写真の平均 男0.42(SD=4.46)女1.54(SD=4.32) 刺激要因と顔写真性別要因の主効果が有意 (刺激:F(1,5)=11.71,p<.05) (顔写真性別:F(1,5)=12.86,p<.05) 17 ただし、仮説とは逆の有意差 • 協力者に対してLPPの成分が誘発された • 問1:この人は信頼できる or 信頼できない? 信頼できる協力者 この人物に対し てLPPが誘発さ れた • 問2:この人は信頼できる or 信頼できない? 信頼できない非協力者 18 考察 先行研究とは異なり、 LPP O1およびCzで出現 ただし逆方向! LPP 過去の実験で協力した人物に、 嫌悪のような感情反応成分が誘 発された 19 解釈:まだまだ… 今回の結果が先行研究とは逆であった理由 • 実験参加者6人では脳波のノイズが消えず、 LPPの成分が見えにくかった • 各成分の分析区間が長く、 正しい成分の検出が行われにくかった 参加者数を 増やす必要がある! 20 今後の研究 ①参加者の数を増やしもう一度データを取る ②でも結果が出ないなら、顔写真の「協力 者」「非協力者」の 情報を与えてデータを 取る • 実験前に、「非協力者」の顔写真を覚えて もらう LPP 直感で 見抜いたとき or 経験から 見抜いたとき 21 ご清聴ありがとうございました 22
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