国際的な研究キャリアパスの実態と意識の調査アンケート結果 本アンケートは、環境微生物系学会合同大会2014ランチョンシンポジウム「国際的な研究 キャリアパスを築く~留学&ライフステージのハードル・メリット・デメリット」(2014年 10月24日アクトシティ浜松)に際して、微生物生態学会男女共同参画・ダイバーシティ推進 委員会が実施しました。 <結果の概要> ・微生物生態学会、環境バイオテクノロジー学会、土壌微生物学会員のメーリングリストで 匿名のアンケート参加を呼びかけ、オンライン回答を募り、97件の回答があった。 ・アンケート回答者の約半数が3か月以上の海外での研究経験を有し、このうち6割が1年 以上滞在している。留学先は、6割が米国、次いで欧州であった。 ・留学経験者は男性が多数(約8割)、留学未経験で留学希望者では女性が多数(約7割) を占めた。年齢分布から、30-40代の出産、育児等のライフイベントが女性の留学のハード ルとなっている可能性が示唆された。 ・留学のための資金は、国内公的支援機関や学内の留学支援を利用したものが多い。滞在先 の研究資金による留学も20-30%あった。留学先は研究内容やボスの人柄を重視し、留学時 に家族(配偶者や子供)がいた場合は約半数で、その内75%が留学先に家族を同行した。 ・留学経験者の多数が留学を良い経験と感じており、特にポスドク時に留学することを薦め る意見が多くみられた。 回答者97名 回答者数(97人) 留学経験 男性 女性 33 64 あり なし 47 50 男性 38 女性 12 留学先と留学期間 留学した地域 3か月未満 3か月-1年 1-2年 2年以上 ヨーロッパ 北米 アジア 1 31 留学期間 7 19 17 米国 30 カナダ 1 ドイツ 10 イギリス 4 他 6 11 15 留学費用を助成してもらった団体等 (複数回答可) 学振(JSPS)・JST等の国内公的支援機関 18 自分が所属する国内の大学・研究機関・企業等 日本国内の財団等民間の支援機関 3 滞在先の研究資金 16 滞在先の研究機関 18 留学受け入れ先との交渉に用いた手段 (複数回答可) 電子メール 31 指導教員など知人の紹介 12 直接訪問 7 学会等での面談 6 FAX 5 手紙 留学時の年齢分布(男女比) 25 女性 男性 20 人数 15 10 5 0 20代 30代 40代 50代 60代以上 留学希望者と留学経験者の年齢分布 希望者 経験者 18 16 人数 14 40 60s 35 50s 40s 30 12 30s 25 10 20s 20 8 6 15 4 10 2 5 0 0 男性 女性 男性 女性 20代の留学(身分と動機) 大学院生(国内) ポスドク(国内) ポスドク(現地) 大学院生(現地) 私費留学 0 国際的な学術的 見識を広める 1 キャリア パス 2 3 やりたい 研究を する 4 人生の 1つの 経験 5 その他 6 30代の留学(身分と動機) ポスドク 助教 大学以外の研究機関における常勤職 大学院生 准教授 その他 0 2 4 6 キャリアパス 国際的な学術的 見識を広める やりたい 研究を する 国際的 ネット ワーク の構築 人生経験 8 家族 他 40代以上の留学 ポスドク 大学以外の研究機関における常勤職 助教 その他 大学院生 0 2 4 キャリアパス やりたい 研究を する 国際的な 学術的見識 を広める 国際的 ネット ワーク の構築 人生 経験 その他 研究留学で苦労したこと(複数選択) 日常生活でのコミュニケーション ラボでのコミュニケーション 文化の違い 生活環境の違い(食事・治安など) 帰国後の対応 家族が直面した問題 その他 特になし 0 4 8 12 16 20 留学中に苦労したこと(具体例) ○研究・語学のレベルが海外での研究室滞在に満たないレベルであったため に、自信をもって堂々とコミュニケーションをとることができなかった。 ○実験環境の日本との違いに戸惑うことが多かった。 ○渡米当初は、想像以上に自分の英語が通じない事、相手の言いたい事が分か らない事が多く、生活のセットアップに苦労した。 ○英語が母国語ではない国だったので、ラボ外の日常生活で苦労した。 ○保険、税金、免許取得、アパート契約、電話、住居等の契約で問題が生じ た。 ○研究成果が出始めると嫉妬を受けた。 ○土曜日と日曜日は周りに合わせて休んでほしいと同僚から依頼された。 ○帰国後の就職先が見つからなかった。 ○帰国後,留学先と日本のギャップの大きさに戸惑った。 留学先の印象(具体例) ○各国の研究者が頻繁にお互いを訪問し,共同研究を行っていました。物理的 にお互いに顔を合わせることができる環境にあるのは欧州の強みと感じた。 ○セミナーや招待講演などを通した人間のつながりや議論の場の形勢を重視 し、予算額も非常に大きく、最先端の情報があふれていた。 ○留学先では、君が何を研究したいかが重要だ、と言われた。日本では、君が 何をやりたいかは重要なことではない、と言われたこともあった。 ○室長クラスでも勤務時間の大半を研究にあてており,事務仕事はほとんどを 部長や秘書行う環境がうらやましかった。 ○女性研究者、大学教員数が多いので、よいロールモデルとなった。 ○不正行為に対して日本よりも厳しいと実感した。 研究留学の成果(複数回答可) 人生経験として貴重な体験となった 25 国際的な学術的見識が広まった 22 やりたい研究をすることができた 16 国際的ネットワークを構築できた 14 キャリアパスにつながった 研究留学の成果(具体例) ○英語を通した技術・知識、研究哲学の習得 ○自分の現在の研究スタイルをかくりつできた。 ○国際研究のグラント獲得の行程に携わることができた。 ○トップレベルの環境を体験できたことで、自分の未熟さを知ることができ た。 ○留学先のラボで「研究力」で認められたのが、とても嬉しかった。 ○最先端の情報や分析技術を身につけれるだけでなく、多様な視点を持った研 究ができるようになった。 ○学問の長い歴史と伝統と、それに基づくと思われる研究に対する考え方が日 本と違うことがよく分かった。 ○日本にいる時よりも実働時間は短かかったのに、より多くの成果が得られ た。 ○1年半のポスドクの経験で、学術論文を7報作製することができた。 留学後のキャリアパス 留学前の国内のポジションに復帰 21 国内のポスドクに新たに雇用された 10 国内の大学の常勤職に新たに雇用された 海外のポジションに新たに雇用された 4 進学 2 その他 4 9 留学とプライベートの両立 留学時の家族(配偶者)の 有無(男性) 14 24 留学時の家族(配偶者)の 有無(女性) あり あり なし なし 8 4 留学とプライベートの両立 留学先への家族の同行 (男性) 4 20 留学先への家族の同行 (女性) 同行した 同行した 同行しない 同行しない 3 1 研究留学先の家族支援状況 ○在宅勤務でも勤務とみなされるような大学の勤務管理 ○医療費は無料でホームドクター(助産師)の割当、子育てしながら勤務をする と税率が優遇(デンマーク) ○研究所内に託児施設、乳幼児を育児中の勤務時間の短縮(給与等の雇用条件は 変わらない) ○大学や研究機関に独自の家族支援制度があった(複数回答) ○支援内容は日本と特に変わらないが、職場の理解が大きいので働きやすい。 ○育児支援が整っているため、ほとんどの人が産休を4か月ほど取りすぐ職場に 復帰している(フランス) ○Faculty position選考において、研究者夫妻の片方を採用する際にパートナーの 採用を検討 家族との生活で苦労した点 ○外国人を受け入れてくれる幼稚園を捜すのに苦労した。現地の人に相談して、 良い幼稚園を教えてもらい、紹介の上、入学できた。 ○子供3人を受け入れてくれる学校を見つけるのに苦労した。近辺の学校に片端 から電話、直接訪問し交渉した。 ○子どもは英語をほとんど勉強せずに現地の小学校に入れたため、相当なストレ スがかかっていたと思う。 ○子供は地域の学校に通ったが、言葉の問題や差別的な扱いに苦労したようだっ た。次第に慣れて友達もできた。 ○小学校の先生との交渉(アレルギー除去食など)で苦労した。 ○予防接種や病院で病状を伝えるときに苦労した。 ○自分が忙しくストレスを抱えてしまい、家庭で良い雰囲気を作れなかった。 ○配偶者が国内に仕事を持っていたため、その手当がもらえなくなった。 研究留学と家族に関するエピソード ○家族と共に海外生活する事で、滞在国と日本の良さ悪さが同時に感じられた。 ○子どもにとっては非常に良い経験。子どもの適応能力の高さには驚いた。 ○日本にいるときよりも家族との時間があったので、話し合える機会も多かっ た。 ○子供が病気になったときなど、現地の日本人に助けてもらった。 ○購入した車が故障がちで、休日に家族で遠出した際に動かなくなり、困った。 ○現地で子供の障害が明らかになりショックを受けたが、公的サポートが日本に 比較して極めて充実しているため、子供の将来を考えて現地に留まった。 ○数ヶ月の短期留学だったので特に問題はなかったが、長期は難しいと思う。 ○現地の学校に英語を知らない子供のためのサポート(English Language Learners、ELLなど)があったので助かった。 ○家族を同行できなかったことが、今でも残念に思う。 留学に適していると思う時期 ポスドク 常勤職についてから 大学院博士課程 大学院修士課程 人それぞれ 行ける時、行きたい時 学部 0 5 10 15 20 25 留学先の選定において重視すべき点 (複数選択可) ラボの研究内容 34 ラボの雰囲気/受け入れ研究者の人柄 ラボのネームバリュー/受け入れ研究者の業績 生活環境 6 家族の要望や家庭の事情など 5 留学先の国や地域 28 7 経験者の反省点や経験に基づくアドバイス ○語学・研究ともに一定のレベルに達してから行ったほうがよい。 ○期限のある目的を明確に持つべき。 ○挑戦する気持ちが重要。 ○研究以外でのコミュニケーション能力も留学生活を大きく左右する。 ○国内とのつながりをたたない事は重要。 ○若い時(博士課程か取得直後)がおすすめ。 ○留学せずに日本でキャリアを継続した方がいい場合もある。 ○留学を決める前に訪問するなどラボの雰囲気をよく知ることは重要。 ○留学中に外食に頼ったので栄養バランスがわるかったのか体調を崩した。 ○家族がいて助かったが、学生同士の飲み会などには参加できなかったのが残 念。 ○アメリカの大学院から留学するのが一番良いと思う。 ○留学前に留学先での研究計画や内容の擦り合わせをしておくのが良い。 留学希望者の割合(留学未経験者) 30 女性 男性 25 20 15 10 5 0 希望する どちらともいえない 希望しない 留学を希望する年齢 現在の年齢 20代 30代 40代 留学を希望する年齢 20代 30代 40代 50代 希望留学先と希望留学期間 希望留学先(複数選択可) 欧州 北米 アジア 南米 特になし 希望留学期間 2年以上 1-2年 6か月-1年 3-6か月 3か月未満 0 2 4 6 8 10 12 留学ができない(留学をしたくない)理由 ポストまたは研究資金が獲得できない 18 外国語でのコミュニケーションにおける不安 16 家族・家庭の事情 15 キャリアパスとしての不安 8 外国で研究経験をつむことに魅力を感じない 外国での生活における不安 6 アンケートにご回答いただいた皆様、 ご協力ありがとうございました。
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