[46] 火山灰流堆積物 ① 大陸上での火砕物質の割れ目噴火は,火山灰流堆積物(ash-flow deposit)と 呼ばれる硬い火山性凝灰岩の広大なシート(地層)を形成した. ② イエローストーン国立公園の一連の森林は,そのような火山灰流の下に埋 積されたことがある. ③ 惑星上での最大規模の火砕堆積物のいくつかは,4500 から 3000 万年前の中 期新生代に,現在の西部アメリカのベイスンアンドレンジ(Basin and Range) 地域にあった割れ目を通って噴出した火山灰流であった. ④ この火砕性の激発(的噴火)の間に放出された物質の総量は 500,000 立方キ ロメータ―という信じ難いほどの体積であり,ネバダ州全域をほぼ 2 キロメ ータ―の岩石で覆いつくすほどのものであった! ⑤ 私達が知る限りでは,人類はこれらの壮観な事件の一つも目撃したことが ない. ジオシステム相互作用 [47] ① 火山は,固体物質だけではなくガスも製造する化学工場である. ② ③ ④ ⑤ ⑥ 勇敢な火山学者は,噴火時に火山ガスを採取し,それらを分析してその組 成を決定した. 水蒸気が火山ガスの主要な構成物(70 から 95 パーセント)であり,二酸化 炭素,二酸化硫黄,そして少量の窒素,水素,一酸化炭素,硫黄そして塩素 がそれに続く. 噴火は,膨大な量のこれらのガスを放出する. いくつかの火山ガスは地球の深部に由来することがあり,初めて地表に向 かって上昇していく(進んでいく). ある火山ガスは,再循環した地下水と海水,再循環した大気中のガス,あ るいは初期の岩石形成時に捕獲されたガスである. [48] ① 地球の初期の歴史の間に,火山ガスの放出は海と大気を生み出したと考え られている. ② 激しい火山活動の時代は地球の気候に繰り返し影響を与え,それらが地質 記録に証拠が残されているいくつかの大量絶滅の原因であるようだ. ③ そのため,火山ガスの性質と起源は,生物圏を含めた他のジオシステムの 研究にとってたいへん重要である. 火山活動と水圏 [49] ① 地球の水圏と岩石圏との間の相互作用は,多くの火山ジオシステムにおい て重要なプロセスである. ② 火山活動は,溶岩あるいは火砕物質が流れることを止めても中断しない. ③ 大きな噴火の後の数十年あるいはさらに数世紀の間,火山は,噴気孔 (fumarole)と呼ばれる小さな火道から,ガスの臭気,水,そして水蒸気を 放出し続ける(図 12.17). ④ これらの発散物は,水が蒸発したり冷却すると周囲の地表面に沈殿する溶 解物質を含んでおり,(地表面を)コーティングする堆積物(例えばトラバ ーチン)を形成する. ⑤ ある沈殿物は有用な鉱物を含むことがある. 図 12.17 インドネシアのメラピ火山では,噴気孔が硫黄の堆積物に覆われている. [50] ① 噴気孔は,熱水活動(hydrothermal activity),すなわち高温の火山岩とマグ マを介して(through の適訳は各自で考えてほしい)の水の循環が地表に現 れたものである. ② 埋積されたマグマ(数十万年間高温を維持する)に達する循環している地 下水は過熱され,温泉と間欠泉となって地表に戻る. ③ 間欠泉(geyser)は,ときおり雷鳴のような轟音を伴う,断続的に勢いよく 噴出する高温の水の噴泉である. ④ 合衆国で最もよく知られた間欠泉は,イエローストーン国立公園のオール ドフェイスフルであり,約 65 分おきに噴出し,高温の水の噴射を空中に高 さ 60 メートルまで舞い上げる(図 12.18). 図 12.18 イエローストーン国立公園のオールドフェイスフルは,約 65 分おきに 60 メー トルの高さまで噴出する. [51] ① 熱水活動で形成された蒸気と高温の水は,地熱エネルギーの源として開発 (利用)することができる. ② 熱水活動はまた珍しい鉱物を堆積させる原因となっており,そのような鉱 物はたいへん経済的に価値のある比較的希少な元素,特に金属を鉱床中へと 濃集させる. ③ 第 4 章で注目したように,熱水相互作用は特に膨大な量の水とマグマが接 触する中央海嶺の拡大センターで激しい. 火山活動と大気圏 [52] ① 火山噴火と天候及び気候の変化との間の関連は,地球システム相互作用の もう一つの良い例である. ② 南メキシコのエルチチョンの 1982 年噴火とフィリピンのピナツボの 1991 年噴火は,硫黄を含むガスを大気圏へと地表上数 10 キロメータ―(の高さ) まで放出した. ③ 多様な化学反応を経て,そのガスは数 1000 万(メートル)トンの硫酸を含 んだエアロゾル(細粒な空気中の霞)を形成した. ④ このエアロゾルは,太陽の放射の多くが地球の表面に達することを妨げ, 全地球の温度を数年の間降下させた. ⑤ その世紀の最大規模の爆発的噴火の一つであるピナツボ山の噴火は,1992 年に少なくとも 0.5 ℃の全地球的な気温低下を招いた. ⑥ (ピナツボからの塩素放出はまた,生物圏を太陽の紫外線放射から保護す る自然の防御物である大気圏のオゾンの損失を加速させた). [53] ① インドネシアのタンボラ山の 1815 年噴火の間に大気圏へと巻き上げられた 岩屑は,さらに大規模な寒冷化を招いた. ② 翌年,北半球はたいへん寒い夏を経験した.ニューイングランドでは,7 月 に吹雪があった! ③ 気温の降下と火山灰の降下は,広範囲に及ぶ不作の原因となった. ④ 90,000 人以上の人々がその“夏の無い年”に死に,バイロン卿に陰気な詩 “暗黒”を書く着想を与えた. 私は夢とはいえぬ夢を見た. 太陽の輝きは消え,星は 光もなく,行方もなく,果てしなく,暗い宇宙を 彷い,凍った地球はあてもなく 揺れ動き,月もない暗い大気の中 朝は来ては去り ― 来ても昼はなかった. この侘びしい荒廃におののき 人類は情熱を失い,心は凍てつき ただ己だけのために光を求めた. 火山活動の全地球的パターン [54] ① ② プレートテクトニクス理論の出現の以前,地質学者は,太平洋の縁に沿っ て火山が集中することに注目し,それにリング・オブ・ファイア(火の環) というニックネームを付けた. プレートの沈み込みという見地からのリング・オブ・ファイアの解釈は, 新しい理論の偉大な成功の一つであった. ③ 私達は既に,溶岩の組成がプレートのテクトニク環境でどのように変化す るかを検証した(図 4.11 を参照せよ). ④ この項では,私達はプレートテクトニクスが,火山活動の全地球的パター ンにおける全ての主要な特徴をどのように本質的に説明できるかを示す.
© Copyright 2024 ExpyDoc