[1]亜鉛二核錯体を用いた二酸化炭素とエポキシドの共重合

二酸化炭素を直接原料とする高分子合成[1]
亜鉛二核錯体を用いた二酸化炭素とエポキシドの共重合
Polymer Synthesis Directly from Carbon Dioxide [1]
Alternating Copolymerization of Carbon Dioxide and Epoxide
by Using A Zinc Dinuclear Complex
小河
綾香、赤澤
貴江、杉本
裕、井上
祥平
Ayaka OGAWA, Takae AKAZAWA, Hiroshi SUGIMOTO, and Shohei INOUE,
Faculty of Engineering, Tokyo University of Science
162-0826 東京都新宿区市谷船河原町 12-1, 東京理科大学工学部
Tel:03-3260-4272, Fax:03-5261-4631, E-mail:[email protected]
Carbon dioxide (CO2) is noninflammable and nontoxic but is regarded as one of the causes of environmental
issues. We have been studying to use CO2 as raw material for organic synthesis. As one of the utilization of CO2,
the alternating copolymerization of CO2 and epoxide produces a polycarbonate is interesting and important. In the
present study, we wish report that the successful alternating copolymerization of CO2 and epoxide was realized by
using a Zn dinuclear complex.
近年、大気中の二酸化炭素の増加が深刻となっ
この考えをもとにして、
たため、これを減らすことが課題となっている。
本研究では架橋構造を持
我々は、二酸化炭素を 使う ことに焦点をあて
つ亜鉛二核錯体(1)を合成
て研究を行っている。
し、共重合反応に用いて選
二酸化炭素は無毒で不燃性のため、合成化学の
分野では原料として有効利用が期待されている。
O
Me
択性よくポリカルボナー
X
O
O
Zn Zn
N
O
N
Me
t-Bu
Zn complex (1)
トを合成することを目指した。
二酸化炭素の利用法の一つに、二酸化炭素とエポ
錯 体 (1)0.1 mmol に 対 し て 二 酸 化 炭 素 300
キシドの交互共重合によるポリカルボナートの
mmol(50 atm)、エポキシド 25 mmol、溶媒として
合成があげられる。この合成は、当研究室におい
トルエン 2.5 ml を用いて 80℃で共重合反応を試
て Et2Zn-H2O 系 触 媒 を 用 い て 初 め て 成 功 し た
みたところ、収率 20%で二酸化炭素含有率がほぼ
(Scheme 1)。
50mol%、分子量 7300 の交互共重合体が得られた。
この共重合では触媒によって、ポリカルボナー
懸念された環状カルボナートの副生はみられな
トの他にポリエーテルや環状カルボナートが副
かった。しかし、1,4-ジオキサンを溶媒に用いて
生がする場合がある。この環状カルボナートの副
反応を行ったところ、ポリエーテルのみが生成さ
生が抑えられたと報告されている例の中には、亜
れポリカルボナートは得られなかった。しかし、
鉛-酸素-亜鉛の架橋構造を持ち、これが副反応を
性質の全く異なるトルエンと 1,4-ジオキサンの
防いだと考えられている亜鉛触媒がある。
二液を混合して反応を行ったところ、それぞれを
R1
CO 2
単独に用いたときよりもよい結果が得られた。そ
R2
Zn catalyst
+
の中でも、トルエン 2.5 ml、1,4-ジオキサンを錯
O
epoxide
体の亜鉛と等モル量(0.2 mmol)加えた際に最も大
O
O
O
+
R1
polycarbonate
R1
R2
R2
x
O
+
R1
polyether
Scheme 1
y
O
R2
O
O
cyclic
carbonate
きく収率、分子量が向上した(84mol%、17000)。
以上より、亜鉛二核錯体(1)を用いて、収率よく
ポリカルボナートだけを得ることに成功した。